3時50分に起床。まだ少し早かったのでもう一眠りする。次に目覚めたのは4時30分だった。このキャンプ場はシジミ取りの漁師さんが朝の4時30分から漁船のエンジン音を響かせてくれるので目覚ましはいらない。テントの入口を開けると今日の空は曇りで、残念ながら日の出は見られそうになかった。 朝食にラーメンを自炊し出発の準備を整えていく。昨夜は雨も降っていなかったが、あいにくサイクリングジャージーは乾いていなかった。それでも今日も雨は降っていなかったので濡れたままのサイクリングジャージーを着る。もうこれが日課となってしまった。冷たくて気持ちいいので病みつきになる。
テントは今回の北海道自転車ツーリングで4泊目のキャンプにて初めてフライシートが乾いていたので撤収は楽だった。出発間際に昨夜なくしたお箸のキャップを再度捜してみる。あたりが明るけれは見つかるかとも思ったがダメだった。やはり新しいお箸を購入しないとダメなようだ。カブのライダーは先に出発してしまい私も6時ちょうどに女満別湖畔キャンプ場を出発する。
この国道39号線の女満別から美幌までは直線が延々と続き、昨日走った時には追い風で楽だったが今日は向かい風となっており、なかなか自転車が前に進まない。それでも朝一番という事もあって自転車を順調に走らせ、7時ちょうどに美幌の街中にあるコンビニに到着した。
コンビニで凍らせたペットボトルとパンとおにぎり、さらに500ccの牛乳を購入。店の前で2回目の朝食としてパンを食べながら牛乳を飲む。牛乳を500cc飲むのはかなり辛かったが、紙パックでは持ち歩くこともできないし、他に入れる場所もなかったので無理して全部飲む。まだ気温の上がらない朝一番にこれだけの牛乳を飲むのはなかなか大変だ。 7時10分に美幌のコンビニを出発し国道243号線を走る。私は今回で美幌峠に登るのは4回目になる。そのうち美幌側から登るのは3回目になるが、過去2回はいずれも荷物を積んでいない状態だったので、荷物をフル装備の状態で美幌側から登るのは初めてだ。ところがこの国道243号線は若干の登りと向かい風でなかなか前に進まず苦しむことになった。しかしそんな時にもライダーからの声援は励みになる。この区間はツーリングマップルのお勧めの道になっており、ライダーは多いし何より道の両側に白樺が延々と植えられている中を走るのは気持ちのいいものだ。
8時40分にパーキングを出発。ここからは急な登りが延々と続く。ここまではずっと晴れていたが、美幌峠の登りが始まると曇り始めた。ありがたいことだ。おまけに向かい風なので暑さからはずいぶん救われた。ギアを落として無心でひたすらペダルを回す。あとどれくらいあるのだろうなどと考えてはいけない、ひたすらロボットのようにペダルを回すだけだ。 美幌峠の上り坂を一定の調子で登っていると、途中でお尻が痛くなってきたので、9時30分から5分だけ休憩してエネルギーの補給にチョコを食べて再び出発。するとお尻の痛みは嘘のように消えていた。肩こりもそうだが、わずかな時間休憩しただけでも一瞬で痛みは消えてしまう事が多い。その頃から曇り空が一段と濃さを増し、だんだんと雲行きが怪しくなってきた。
10時ちょうどにようやく標高490mの美幌峠の頂上に到着。しかし駐車場に入ってもどこが道の駅の建物なのかもわからないほどの深い霧で、どう考えても展望台から屈斜路湖が見えるとは思えず、展望台に行くのは断念する。まるで美空ひばりさんの名曲「美幌峠」の歌詞にある「何も見えない峠に立てば… ああ最果ての美幌峠に霧が降る」そのものだった。北海道自転車ツーリングで美幌峠に登るのはこれで4回目だが、展望台に行かなかったのはこれが初めてだ。 その代わりに道の駅の外にあるトイレで給水しようとしたら、洗面台に「この水は飲めません」と書かれていた。道の駅の建物の中なら大丈夫だろうと考え、建物の中のトイレで給水し少し水を飲んだが、何か味が変だった。飲めないとは書かれていなかったが大丈夫だろうか?
休憩もせずに10時10分に道の駅を出発。深い霧の中を下っていくが、霧で視界が悪く正直言って怖かった。10分ほど下ったところにあるパーキングで休憩。パンを食べながらアスファルトの地べたに座って旅の日記を書き10時40分に出発する。このパーキングは屈斜路湖が見えそうで見えず、私が旅の日記を書いている間も何台かの車が屈斜路湖見たさにやって来ては屈斜路湖が見えないとわかるとすぐに立ち去っていった。 このパーキングから先は霧がなくなっていたが、やたらと寒くて凍えながら下ってきた。下に着いたら暖かいことを期待して下ったが、なかなか暖かくはならず、もう少し下りが続いていたら凍死してしまうのではないかと思ってしまうほど寒かった。おそらく15℃は下回っていただろう。15℃以下で峠を下る時にはウインドブレーカーかレインスーツを着る必要があることを実感する。 下まで降りてくると20℃くらいまで気温は回復し、ようやく生き返った。美幌峠を下り終えて和琴半島へ走る途中で、道道588号線への分岐が見えてきた。この道道588号線の先にある津別峠を見上げると中腹から上には雲が懸かっており、とても展望が望めそうにはなかった。昨日チミケップ湖に行っていたら今日はこの津別峠を越えていたはずだ。しかしこの天気だったら何も見えないだろうし行かなくてよかったと言うべきだろう。 今日は天気が良ければ和琴半島湖畔キャンプ場にテントを張って荷物を下ろし、軽量化した自転車で摩周湖に行くつもりだった。しかしどう見ても摩周湖方面の空は曇っており、摩周湖を取り囲む外輪山の上の方も雲で隠れて見えない。この様子だと摩周湖が霧で見えないのは明らかだ。そこで私は摩周湖に行くのを断念し、このまま南下してシラルトロ湖まで走ることにした。
昨年の北海道自転車ツーリングからEdyを導入しており、ローソンやセブンイレブンでは現金が必要なくなっていたが、今年はEdyへのチャージも現金ではなくカード払いにしたので、なおさら現金が必要なくなってしまった。今回の北海道自転車ツーリングでも1万円ちょっとしか持ってきていないが、それでもまだ全然減っていない。現金を使う場所と言えば温泉とキャンプ場、そしてセイコーマートくらいだろう。 太陽の日差しがきつかったので、お金を下ろしたついでにタオルをほっかむりに被って日除けにして走り始めたが、すぐに太陽は雲に隠れてしまった。しかも和琴半島ではあれだけ晴れていた空が弟子屈に近づく頃には今にも雨が降り出しそうになった。私は雨が降り出す前に食事と休憩を済ませようと考え、休憩できる場所を探しながら国道243号線を走ったが北海道にそんな場所があるはずもなく、結局弟子屈近くまで国道243号線を10kmほど走ることとなってしまった。
それからも雨の降りそうな弟子屈を目指して走り、13時15分に弟子屈に入る。弟子屈は2年前にも2回通ったがいずれも雨だった。この町は妖怪雨降らしでも住んでいるのだろうか? 弟子屈にはコンビニがあったが、まだサイドバッグに食料はあったし、この先シラルトロ湖までには磯分内と標茶にコンビニがあることを知っていたのでここはパスする。 国道243号線から国道391号線に入ろうとして、うっかり間違って道道53号線に入ってしまい、釧網本線の陸橋を越えたところで気づいてすぐにUターンする。今度は間違えないように慎重に走って国道391号線に入る。国道391号線に入ってすぐに目にゴミが入った。いつもだったらサングラスをしているので目にゴミが入ることはないので、なぜだろうと思ってよく見ると、自分はサングラスをしていないことに気付いた。サングラスをどこにやったのだろうと記憶を探るが、サドルの穴に刺した以外に記憶がない。しかしそのサドルには自分が座っており、サングラスはない。私はすぐに自転車を止めて、サイドバッグのどこかにしまったのではないかと探したが無駄だった。 私はすぐに先ほどの休憩場所まで引き返そうかと考えた。しかし先ほどの休憩場所から既に7kmほど走っており、おまけに先ほどの休憩場所に置き忘れたのが確定しているわけではない。どこに落としたかもわからないのに往復14kmも戻る気にならず、しかも走行中に落としていたら、今頃牧草地に落ちているか車に踏まれているかもしれない。結局サングラスは断念することにした。 後で休憩時に自転車を撮影した写真を拡大して調べたら、先程休憩した場所で撮影した写真にはしっかりとサドルにサングラスが刺さっており、休憩場所に置き忘れたのでないことは間違いない。きっと走行中にどこかに落としたのだろう。だとすれば、もしこの時、引き返していたとしてもサングラスが見つかる可能性は極めて低かったと思われる。 私はすごくショックだった。あのサングラスは山本光学製の自分にぴったり合ったお気に入りの偏光サングラスで15000円以上するのだ。値段だけの問題ではない。この北海道自転車ツーリングでサングラスなしで走ると目にゴミが入りまくるのだ。この先どうしようかといろいろ考えるうちに、せっかく国道391号線の景色のいい牧草地帯を走っているのに周りの景色も見ないでひたすら自転車を走らせていた。 いったいどこで落としたのだろう? 昨日のお箸のキャップといい、今日のサングラスといい、自分の不注意でこんな事になるのだ。しかしいくら悔やんだところでこぼれた水はコップには戻らないし、せっかく北海道を自転車で走っているのだからくよくよ考えるのはやめて走りを楽しむことにした。お金で解決できるものはお金で解決すればいいのだ。カメラやメモリーカードなどお金で買えないものをなくした方がもっとショックだったろう。 さて、気を取り直して走り始めたが、サングラスがないと眩しいし目にゴミが入るので、代わりのサングラスだけはどこかで調達したい。そこで私は磯分内のセイコーマートに入りサングラスを探した。が、あいにくセイコーマートにはサングラスは売っていなかった。仕方なく牛乳とパンを買い店の前で食べた。 セイコーマートに売っていなくてもローソンかセブンイレブンならあるかもしれない。確かこの先の標茶にはセブンイレブンがあったはずなので、そこで探すことにして再び国道243号線を走り始めた。この頃になると再び太陽が顔を出し、写真撮影する心の余裕も生まれたことから周りの景色を楽しみながら走る。
買ったばかりのサングラスをすぐに使い始めると、これが案外よかった。もちろんこれまで使っていたサングラスに比べると色々と不満点はある。かなりサングラスが濃くて晴れの日ならいいが、曇りや雨の日には暗すぎて見にくかったり、妙に紫色に色が付いていたり、レンズの上と下でサングラスの濃さが違うので自転車が振動すると視界の明るさが変わるのだ。しかし880円という、これまで使用していたサングラスの1/20の価格差を考えるとこれで十分だ。
途中の道沿いにあるパーキングで写真を撮ったりしながら16時30分にようやくシラルトロ湖キャンプ場に到着した。憩いの家かや沼のロビーで受け付けを済ませてフリーサイトに行くと、ファミリーテントは1つもなくライダーのテントばかり6〜7つ張られているだけだった。ここはそんなにライダーに人気のキャンプ場だったっけ?
しかし17時前では食事もまだ早いので、その前にキャンプ場奥にある蝶の森のさらに奥にあるシラルトロ歩道に行くことにした。自転車に乗って17時ちょうどに出発。蝶の森に乗り込むが、シラルトロ歩道がどこにあるのかわからない。展望台はあったが、ここの展望台は周りの木々が邪魔をして視界があまりよくない。それでもとりあえず展望台に登って写真を撮るが、やはり眺めはいまいちだった。おそらくここの展望台は木々がまだ葉を付けていない雪解け直後でないと眺めを楽しむことはできないだろう。
シラルトロ歩道は釧路湿原の脇をかすめるように作られた全長600mの遊歩道で、前半の250mは見通しの悪い湿原の上を歩く木道で、木道の脇には所々に釧路湿原の自然を説明する看板がある。残り350mはハイキングコースのような山道が続く。そしてその先には展望台があった。
この展望台の近くには野鳥観察舎もあったが、穴の開いた壁があるだけで私にはよくわからなかった。私が展望台を立ち去ってから10分後くらいに釧網本線を列車が走っていったが、こればかりは仕方がないだろう。ここから列車を入れた写真を撮影するには、あらかじめ時刻表で列車の通過時刻を調べておく必要がありそうだ。
北海道自転車ツーリングでは毎回レジャーシートを持ってきていたが、今回はこれまで使うのを忘れていたので今日初めてレジャーシートを広げてその上に座って自炊を行う。レジャーシートがあると確かに便利ではあるが、これまで初日以外は夕食時ずっと雨が多かったのでなかなか使う機会がなかったのだ。 18時30分から食事を開始。今日は米も上手に炊け、また中華丼がおいしかったことからたくさん食べることができた。ついでにデザートとしてヨーグルトも食べる。ヨーグルトは4個パックのものを買ったので、たくさん食べないとなくならない。すぐに後片づけを済ませ18時40分から温泉に入りにキャンプ場隣の憩いの家かや沼に歩いて行く。 この茅沼の玄関前には小学校高学年から中学生くらいの野球少年が監督と思われる大人に引率されて大挙して集まっており、玄関前で監督から野球の指導を受けていた。この野球少年達は見知らぬ私や他の観光客にも自ら進んで挨拶していたので、指導が行き届いていると思ってしまった。 この憩いの家かや沼は良心的だ。日帰り入浴は400円という低価格でありながらシャンプーや石鹸があり、しかも湯船の数は多く露天風呂は見晴らしはそれほどでもないが塀で囲まれておらず開放感があってすばらしいのだ。私はどうしてもここの露天風呂の写真が撮りたくて、あらかじめカメラを露天風呂に持ち込んでおき、露天風呂から人がいなくなるのを見計らってすかさず写真を撮った。小さなコンパクトデジカメなら風呂場に持ち込むのも簡単だが、大きな一眼レフだと持ち込むのも大変だ。 それにずっと露天風呂に浸かって待っていると熱いので、時々ベンチに座って涼むが、ここの露天風呂にはブヨがたくさん飛び交っており、露天風呂から人がいなくなるのを待っているうちに足を何ヶ所かブヨに刺されてしまう。蚊と違ってブヨに刺されると大変だ。かなり大きく腫れるしきっと1週間は跡が残ることだろう。
22時から明日の予定を考える。明日はサルボ展望台とサルルン展望台に行った後、細岡展望台、そしてダートの山越えで岩保木山展望台と岩保木水門をまわり、釧路の和商市場に行って勝手丼を食べ、釧路阿寒自転車道を走って釧路市湿原展望台の遊歩道の先にあるサテライト展望台に行き、鶴居村のキャンプ場に行く予定だ。距離が短い場合は阿寒湖まで走ってもいいかもしれない。 今日は美幌峠こそ越えたが、120kmしか走っていないのにずいぶん疲れたような気がする。やはり旅の日記を書きながら100km以上走るのは無理があるのだろうか? それにしても今日はサングラスをなくしたことでとてもブルーな気分になり、一時はどうなることかと思ったが、神のご加護かすぐに代わりのサングラスも入手することができ助かった。帰宅したらまた新しいのを買うことにして、今回のところはこのサングラスで旅を楽しむことにしよう。 今日は昨日と同程度の寒さなので、ジャージの上は着ずにシュラフから片足だけ出して寝る。寒くなったらシュラフを着込んでいることだろう。22時30分に就寝する。隣のテントのいびきがかなりひどいが、きっと人のことは言えないだろう。
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