昨日は夜中に一度目が覚めたが、よく眠れた方だ。目が覚めると4時50分だったので起きることにした。夜中は寒いかと思っていたが、ジャージーの上を着てシュラフにくるまっていたら、朝起きたとき汗ばんでいた。テントの中で着替えてシュラフを畳んでテントの外に出ると、空が一部晴れていた。全体的には曇り空だが雨が降りそうな天気ではない。これなら濡れずに峠が越えられそうなので、すぐに支度を開始する。
本来であれば道北から道東に抜けるのに北見峠を越えるはずだった。しかし昨日は調子が悪かったことから層雲峡オートキャンプ場に避難しようと北見峠や浮島峠のある国道273号線ではなく、石北峠や三国峠のある国道39号線に入ってしまった。ここから北見峠に行こうと思えば行けなくはないが、国道273号線との分岐まで標高差で200mも下るのが嫌だったので、そのまま峠を登り続けて石北峠を越えて道東に入るようにしよう。遠軽に抜けるはずが留辺蘂に抜けてしまうが、どうせ当面の目的地はチミケップ湖なので問題はあるまい。 キャンプ場入り口でゴミを捨てて自転車で走り始めたが、キャンプ場を出たところでカメラを入れたウェストバッグを忘れたことに気づき慌てて戻ってくる。まあ普段からカメラは使っているので忘れてもすぐに気づくが、峠を越えてから気づいていたらとんでもないことになっていただろう。
7時前に昨日発見していた層雲峡温泉街入り口のコンビニに到着。すると店の前に二人のチャリダーがいて、自転車を逆さまにしてパンク修理をしていたので話しかける。彼らは私の自転車を見て、ランドナーに最新のパーツが組んでいると言って感心していた。彼らの自転車はスペシャライズドの自転車だったが、ダボがないのでシートポストキャリアにすべての荷物を積んでおり、衝撃でシートポストが折れてしまいそうだった。彼らが言うには耐荷重9kgのところを6kgに抑えているそうだが、それでも精神的に悪そうだ。 コンビニに入ると念願の凍らせたペットボトルが売っていたのですかさず購入。今日は暑いかどうかもわからないが、凍らせたペットボトルがないよりあったほうがいい。ついでにパンと牛乳も買って店の前で彼らと話しながら食べる。彼らはパンク修理を終わらせるとこれから峠を下ると言って先に行ってしまい、私もパンを食べて7時10分にコンビニを出発する。
流星の滝には観光客が多く集まっていたが、奥にある銀河の滝にはまだ人が少なかったので、銀河の滝をバックに自転車の勇姿を撮る。残念ながら自分撮りできるほど人が少ないわけではなかったのでそれは断念。今度は流星の滝に行こうとするが、その頃には観光バスが2台もやって来て滝の周りには観光客であふれだし、流星の滝の撮影は自転車なしで遠くからだけ撮影し、逃げるように去っていった。
新大函トンネルを抜けるとすぐに大函がある。今から3万年前、かつて大雪山のお鉢平にあった中央火山が巨大噴火を起こし、この噴火で発生した火砕流や熱雲による堆積物が冷え固まる過程で体積を収縮させ、四角形や六方称形となったものが柱状節理と呼ばれる現象で地質的には溶結凝灰岩と呼ばれている。当時の層雲峡一帯はこれらの堆積物に覆われていたが、その後一万年以上もかかって石狩川の浸食を受けるなかで、屏風のような幅広い柱状節理の岩壁が規格正しく石材を並べたような大函の壮大な景観が作り出されたとのことだ。しかし壮大で神秘的な層雲峡を自転車で満喫した私には大函の景色も小さなものに見えた。この大函には休憩所があり、木陰の下にベンチまであったので、私は8時10分から20分だけ旅の日記を書いて休憩し、8時30分に出発した。
それからも比較的緩やかな登り坂を登り続け、10時10分にチェーン脱着場で休憩。パンを食べながら今度は20分ほど旅の日記を書く。旅の日記を書いていると先ほど大雪湖ですれ違った2人組のチャリダーが挨拶しながら追い抜いていった。頂上まであとどれくらいか聞かれたが、私だってそんな事は知らない。しかし私の予想ではあと4kmくらいと見込んでいたのでそう言っておく。同方向に進む仲間ができ楽しみだ。 10時30分にチェーン脱着場を出発して再び石北峠の坂を登る。ここからは登坂車線があって勾配も6%とこれまでの中では一番急になっており、汗を流しながら走り続けた。すると途中の道端で先程のチャリダーが休憩していた。どこまで行くのかと尋ねたら北見まで行くそうだ。途中までは一緒だしまたどこかで逢うだろう。 さらに坂を登ると10時50分に石北峠の頂上にようやく到着。石北峠と書かれた標識の前で記念撮影を行う。頂上の気温は24℃と表示されていたが、急な坂を登り続けていたせいで暑くてたまらず、峠の茶店でソフトクリームを買って食べた。よく見ると石北峠の駐車場からさらに階段を登ったところに展望台のような場所があるのが目に入った。しかしあそこまで登るのに相当階段を登らないとならないし、眺めが期待できるとは限らないので断念してしまう。 そもそも層雲峡オートキャンプ場からここまで標高差550mだから、出発から2〜3時間、すなわち9時頃には着くだろうと考えていた。しかし実際には標高差だけでなく距離もかなり離れており、予想の2倍近くの出発から4時間30分もかかってしまった。このペースで本当にチミケップ湖まで行けるのだろうかと心配になり始めた。 ソフトクリームを食べていたら先程の2人組のチャリダーがやって来た。彼らの自転車はジャイアントのグレートジャーニーとルイガノだった。グレートジャーニーはドロップハンドルでグリップシフトという最新型で、まだ今年の5月に買ったばかりというので、いきなり買ったばかりの自転車でこんな1050mもある峠に来るとは根性があると感心する。 彼らは今朝、層雲峡のホテルから来たという。しかし彼らの自転車の荷台に積まれた荷物を見ると、どう見てもキャンプ道具を積んでいる。彼らが言うには「軟弱なのでホテルにばかり泊まって、まだキャンプ道具を使ったことがない」そうだ。それだったらキャンプ道具を自転車に積んでも重いだけでしょと言うと、いずれはどこかでキャンプするとのことだった。しかし今日も既にこの段階から北見のホテルに泊まると言っていたので、私には彼らがこの北海道旅行中にテントを張ることはないように思われた。
急カーブの続く急な下り坂を下ると、今度は緩やかな下りの直線が延々と続く。こうした直線が続くと自転車は何もせずに惰性で25〜30kmくらいのいいスピードで下れるから嬉しい。急な下り坂だとブレーキをかけながら下ることになるので、せっかく苦労して登ったエネルギーを無駄にするようでもったいない。しかしブレーキをかけずにかつ25kmくらいで下り続けると、登りで溜めた位置エネルギーを有効に利用できているようで嬉しい。 石北峠を越えると天気は晴れになり坂を下る度に気温が上がっていくのが肌で実感でき、既に30℃に達しているだろうことが容易に想像できた。今日の北見地方の天気予報は曇り一時雨のはずなのにどこが雨なのかと言いたくなる。今年は天気予報の雨がまったく当たらない。 国道39号線の緩やかな下り坂を下っていると国道沿いに「くまがい北きつね牧場」という看板が目に入った。私は立ち寄ろうかどうしようか考えたが、チミケップ湖まではまだまだ先が長かったので先に進むことにした。国道沿いにはキタキツネが鎖につながれて飼われており、このキタキツネを見るだけなら無料らしい。私もキタキツネの写真を撮ろうかと考えたが、外はかなり暑くてキタキツネはみんな粗末な小屋の中でお昼寝していたので撮影は断念する。
塩別つるつる温泉の手前にパーキングがあったので12時ちょうどから木陰で休憩することにした。おにぎりを食べて旅の日記を書き30分ばかり休憩。層雲峡で買った凍らせたペットボトルがちょうど飲み頃になっており、ぬるくなっていたボトルの水を何杯か詰めてゴクゴクと飲み干す。この頃には気温も相当に高くなっていたので冷たい水はとてもおいしかった。 時間があったのでちょっと自転車をチェックしてみたところ、後輪タイヤの減りがとても早い事に気付いた。2年前の北海道自転車ツーリングから使用しているタイヤなので新品ではないが、少なくともトレッドの溝はあったはずだ。しかし今確認すると溝がほとんどなくなってしまっている。3日間でこんなに減ってしまうようなら11日間は持たないような気がしてきた。今後後輪タイヤをこまめにチェックして、必要であればタイヤのローテーションを実施しよう。 12時30分頃、先程のチャリダー2人組がやって来て同じ場所で休憩。彼らはやはり今日は北見のホテルに泊まるという。せっかくキャンプ道具を積んでツーリングしているのだからキャンプ場に泊まればいいのにと思ってしまうが、人のやることには口出しできない。彼らはブログをやっていると言っていたが、どんなブログだろう? 帰宅後に探してみることにしよう。 出発間際に今日の行き先について考えてみた。ここからチミケップ湖までは、あと60kmほどある。しかもダートの峠を300m以上登らなければならないのだ。おそらく到着は6時間後、19時近くになってしまうことだろう。さすがにそんな遅くまで走っていられないし、ダートの峠でパンクでもしたら目も当てられない。その場で野宿だ。よく考えたら一昨日、もうこんな無茶はすまいと誓ったばかりではないか。今日はおとなしくすぐ近くの温根湯のつつじ公園キャンプ場に泊まり、すぐ近くの温根湯温泉でゆっくりと汗を流し休憩室で旅の日記を書いて時間を潰すとしよう。 そう考えた私は彼らに別れを告げ、12時40分にパーキングを出発。温根湯目指して走り始めた。しばらく走ると道の駅「おんねゆ温泉」だ。もうキャンプ場もすぐ近くだったので立ち寄る予定はなかったが、生牛乳120円という大きな看板にすい寄せられてしまい気づくと牛乳を飲んでいた。ここの生牛乳は紙コップ一杯120円だが300円払うと飲み放題になる。自転車ツーリングしていると牛乳など1リットルでも飲めるが、つい先程パーキングで冷たい水を大量に飲んだばかりだったので、飲み放題には挑戦せず一杯だけにする。こんなのがあることを知っていたらのどを渇かした状態でやって来て、飲み放題にチャレンジするところだったのに。しかし残念なことにここの牛乳は生牛乳と言っても市販の牛乳と大差ないレベルで期待したほどではなかった。北海道で色々と牛乳を飲んできたが、やはりラワンドライブインの牛乳を上回るおいしさの牛乳に出逢ったことがない。
そう考えた私はツーリングマップルとにらめっこした。留辺蘂の八方台森林公園キャンプ場はここから10kmほどしか離れていないので近すぎるし、美幌のみどりの村森林公園はここから60kmも離れているので逆に遠すぎる。北見にツーリングマップルには載っていないが山のうえ展望広場キャンプ場があり、隣には温泉があることを知っていた。北見だったらここから30kmくらい。2時間もあれば到着だ。そう考えると、私は山のうえ展望広場キャンプ場に泊まる事にして北見を目指して走り始めた。 石北峠を越えてから晴れていた天気は温根湯を過ぎた頃から曇りとなり、気温も下がって走りやすくなってきた。おまけにこのあたりもまだ緩やかな下り坂が続いており、順調に距離を伸ばした。14時ちょうどに留辺蘂に到着。コンビニでアイスを買って店の前で食べる。さらに走ると北見温泉が見えてきた。ここなら八方台森林公園に近いし、ここに泊まればよかったかなと考えないでもなかった。 さらに国道39号線を西へと自転車を走らせると、14時40分に道道143号線と分岐する相内の交差点に到着した。ここからチミケップ湖まで30kmほどだが、標高差300mのダートの登りを考えると4時間近くかかるだろう。さすがにそんなに遅くまでダートの山道を走っていられないのでチミケップ湖は断念し、そのまま北見目指して国道39号線を西へと走り続けた。
美幌に行くためには北見市街を通り抜けねばならない。私はこうした市街地を走るのが大嫌いだったが、東京に住んでいた時に鍛えた技、メッセンジャー走法を使い自転車で片側二車線のうち完全に一車線占拠して信号が青になったら猛ダッシュで車の流れに乗る走りをしたおかげで、案外信号には引っかからずに北見の市街地を通り抜けることができた。 しかしその為に体力の消耗も激しく、端野を過ぎたあたりでハンガーノックに襲われた。しかも前方の雲行きが怪しくなってきたので、16時ちょうどから雨が降り出す前に道ばたでパンを食べて休憩する。温根湯の手前のパーキングで休憩してから既に3時間以上が経過し、この頃から右肩が肩こりで痛くて仕方がなくなってきたが走りながら腕を回してごまかす。実際のところ走りながら腕を回しても痛みの解消にはほとんど効果はない。わずか5分だけでも休憩すると劇的に改善するのはわかっているのだが、先を急ぐので休憩することなく自転車を走らせ続けた。
当初は美幌のみどりの村森林公園キャンプ場に行くつもりでいた。しかしここは近くに温泉がなく、一番近い温泉「びほろ温泉後楽園」まで片道5km、往復10kmは走らなければならない。よく考えたら温泉に行くのに10kmも走るのだったら、ここから10km先にある女満別湖畔キャンプ場に行った方がいいのではないか。あそこならキャンプ場の隣に温泉があるし、温泉は23時まで営業しているので、夕食を食べてから温泉に行けば狭いテントで旅の日記を書かなくても温泉の休憩室でのんびりと旅の日記を書くことができる。そう考えた私はさらに10km離れた女満別湖畔キャンプ場目指して走り始めた。
17時50分に女満別湖畔キャンプ場に到着。フリーサイトに行く前に観光案内所で受付を済ませようとするが、あいにく既に観光案内所は閉まっており受付をする事ができなかった。そのままフリーサイトにあるいつもの私の指定席に行くが、指定席のすぐそばにファミリーテントが乱立しておりうるさそうだったのと、今日は雨になりそうだったので、内陸側の大きな木の下にテントを張る。
18時30分から炊飯開始。もう暗くなりかかっていたが、どうにかライトもつけずに米を炊く。何度か網走湖に夕陽を見に行ったが、残念なことに今日は雲が厚くて夕陽は見れそうになかった。今日の夕食は牛丼とワカメの味噌汁。米は相変わらず堅かったが、食べられないほどではない。おそらく火が強すぎるのが原因だろう。味噌汁は汗をかいた後の塩分補給に必要で塩分はとてもおいしく感じる。
19時10分には後片付けも終わり、着替えの支度をして隣の湯元山水、美肌の湯に行く。ここの温泉はヌルヌルしていて肌がスベスベになる。露天風呂でゆっくりし19時40分からジュースを飲みながら休憩室で旅の日記の続きを書く。今日は午前中までは順調に旅の日記を書いていたので午後の分を休憩室で書いていたが、それでもすべて書き終わるのに1時間30分ほどかかってしまった。
今日は第一ステージの層雲峡から温根湯までは71kmを6時間40分という超ローペースで走ったが、温根湯から女満別までは73kmを4時間50分という超ハイペースで走った。これも後半は下りが多かったのと追い風だったこと、そして気温がそれほど高くなかったためだろう。それにしても後半にこれだけ走るのだったらチミケップ湖まで行けたように気がしてならないが、まあ私の好きな女満別湖畔までたどり着いたことだしよしとしよう。 テントに入り22時から明日の予定を考える。明日は美幌峠を越えて屈斜路湖に行き、和琴半島にテントを張って軽量化した自転車で摩周湖に行くか、もしくは屈斜路湖を通り抜けて多和平かシラルトロ湖まで行くとしよう。 このキャンプ場は北見のワンセグの電波が入るのがありがたい。3日ぶりのニュースを見ると、今年の夏は猛暑で異常気象だと言っていた。ここ北海道も確かに暑いが、暑くても30℃止まりなので自転車で走れないほどではない。今夜はかなり暑いのでジャージーの上を着ずに22時30分に就寝する。このキャンプ場は私のお気に入りのキャンプ場だが、シーズン中はファミリーばかりでうるさいのが難点か。
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