昨日の騒ぎがあったので少し寝坊して4時50分に起きる。どうやら外は小雨が降っているらしいが、屋根の下にテントを張っていたので浸水の心配もないし安心だ。シュラフとマットとジャージを片付けてテントから出ると昨日のおじさんがもう起きていた。どうやら昨日騒いでいた若者たちはこのキャンプ場で2時間ほど騒いだ後、さらに奥に入って林道の終点で寝ていたおじさんの横で騒いでいたらしく、寝れなかったとぼやいていた。まったくとんでもない連中だ。テントを撤収し昨日食べそこねた弁当とカップ野菜を食べる。寝酒だけは今夜に持ち越しになりそうだ。テントを撤収する際、雨が激しくなってきたが、屋根の下なので雨はまったく気にする事なく撤収できた。しかも張り綱やペグを一切使用していないので撤収も早くて楽だ。 おじさんにお礼を言って6時前に出発する。レインスーツを着て完全雨装備で出発したが、出発する時には雨が止んでおり、昨日とは逆に日高山脈方向は青空が見えていた。出発する時、レインスーツを脱ごうかとも考えたが、昨日のようにまたすぐに降りだしたら嫌だし、少し寒かった事もあったのでレインスーツを着たまま走る。道道111号線は札内川園地キャンプ場からは緩やかな下りになるので走りやすい。しかも途中から少しだけ太陽が顔を出し、太陽に向かって走るのは何となく嬉しいものだ。写真を撮りながらも道道111号線と道道55号線のまっすぐな直線道路をひた走り、1時間で20km先の中札内に到着した。
この道の駅にはライダーが何人かテントを張って泊まっていた。バイクだったら10分も走ればキャンプ場くらいあるだろうにと思っていたが、きっとトイレも水道もある道の駅が気に入ったのであろう。しかしトイレ近くの人通りの多い場所にテントを張っていたので、夜中でも近くを人が歩く事が気にならないのだろうかと不思議に思ってしまった。 道の駅で休憩しているとトラックの運ちゃんに声をかけられた。どこに行くのと聞かれたので、昨日、日勝峠を越えて、今日は然別湖まで行くと言うと「方向が反対じゃないか」と言われた。確かに日勝峠から然別湖に行くなら中札内はまったく逆方向だが、ピョウタンの滝を見たかったのだと説明する。しかしピョウタンの滝の為だけに往復100km以上も逆方向に走ってしまうのだから、我ながら呆れてしまう。トラックの運ちゃんは私が東京都港区から来た事を知ると、東品川には荷物の配達でよく行くと言っていた。苫小牧→仙台のフェリーで仙台に上陸後、順番に配送しながら南下し、最後に品川の国連センターに届けて、品川でパチンコをするそうだ。何を届けるのかまでは聞かなかったが、トラックの形状からして何かの液体のように思われた。後で知った事だが、同じ形状のトラックに牛乳と書かれていたので、おそらく牛乳を運んでいたのであろう。しかし国連も市販の牛乳を買わずに北海道から直送させるとはたいしたものだ。 7時過ぎに道の駅を出発すると、今度はコンビニに行き、昨日見つけた凍らせたペットボトルを購入する。これがあるのとないのとでは大違いだ。どれくらい大違いかというと551の蓬莱がある時とない時くらい違う。いつでも冷たいジュースが飲めると考えただけで元気100倍になるのだ。
そのまま国道236号線を北上すると幸福駅の標識が見えてきたので行ってみる事にした。幸福駅は国道から300mほど入った所にあったが7時25分に到着。まだ朝早かったのに土産物屋が開いていたのにはびっくりする。この時間だと観光客はほとんどいないのに店を開ける意味があるのかと思ってしまう。誰もいないホームに入って写真を撮ったり幸福の水を飲んだりして時間を潰した。
幸福駅を出発し再び国道236号線を北上する。昨日は南南東からの向かい風で走りにくかったが、今日も風向きは同じで追い風となったので自転車で走りやすい。帯広目指して国道236号線を走っていると500m程離れた牧草地に親子連れと思われる野生の鹿が遊んでいるのが目に入った。知床で人間慣れした鹿を撮影する事はあっても、こういった場所で野生の鹿を撮影できる機会はほとんどなかったので自転車を止めて鹿を撮影する。
ちなみに愛国駅の名前の由来は、このあたりに愛国青年団という開拓団があった事から愛国という地名になり、1929年に愛国駅が開業したとの事だ。1973年にNHKの紀行番組「新日本紀行」において「幸福への旅 〜帯広〜」として紹介された事から知名度が上昇し、「愛国から幸福ゆき」という切符が一大ブームとなる。1972年には年間でたった7枚しか売れなかった「愛国から幸福ゆき」の切符が、翌年には年間で300万枚も売れたらしい。しかし愛国駅も幸福駅同様、1987年に広尾線の廃線と共に愛国駅も駅としての役目は終え、愛国駅の駅舎は改修され、現在は交通記念館となっている。
しばらくは自転車道と呼ばれる歩道沿いを走る。もちろんこんな雑草だらけのデコボコな歩道は走れないので車道を走る。8時45分にそろそろお腹が空いてきたので帯広の町に入る前にパンを食べる事にした。さすがに朝食はおにぎりではなく弁当を食べたので、3時間ほどもってくれたようだ。今日は9時までに50kmを走破しており何だか嬉しい。 この先どうするか、ツーリングマップルを見ながら考える。そういえば日高のキャンプ場で知り合ったライダーは帯広で豚丼を食べたと言っていた。せっかくだから私も帯広名物豚丼でも食べようかと思ったが、よく考えたらたった今パンを食べたばかりだし、何より帯広の中心部には入りたくなかったので、豚丼は断念し帯広の町をかすめるように走る事にした。 名ばかりの自転車道を走るのは断念し道道216号線で北上。さらによくわからない街中の道に入り、恐ろしいほど急な坂を下って帯広の街中に入ったところで完全に現在地を見失ってしまったが、とりあえず北上を続ければJR根室本線か国道38号線にぶつかるはずだから道に迷う事はない。それにしてもここ帯広の町も平地だけではなく、十勝川の南側は丘になっていた。やはり北海道の大きな町で平地だけなのは釧路だけなのだろうか。街中を走っていると途中にホームセンターを見つけた。私はここでなくなりかけているガスを買おうかと思ったが、まだ持ちこたえそうだったのでギリギリまで購入を待つ事にして先へ進む。
国道241号線を走っていた時、弟子屈まで141kmと書かれた標識を見かけた。この国道241号線がどのようなルートで弟子屈まで行くのか不思議に思ったが、士幌、足寄、阿寒湖畔、双湖台を通って弟子屈に行く、一昨年通ったあのルートだという事がわかった。なるほど、この道だったら足寄周辺と阿寒湖から弟子屈までは走った事がある。 10時ちょうどに国道241号線と道道133号線との交差点に到着し、脇にあったパーキングで休憩する。朝キャンプ場を出発する時には雨が降っていたので日焼け止めを塗っていなかったが、さすがに太陽の直射日光を浴びて腕が日焼けでヒリヒリしたので、ここでしっかりと日焼け止めを塗っておく。 ここから然別湖に向かうには西から順に道道133号線と国道274号線を通るコース、道道133号線と道道54号線と国道274号線を通るコース、道道337号線と国道274号線を通るコース、国道241号線と国道274号線を通るコースの合計4つのコースがある。さらに私は十勝平野はわずかに丘のような地形をしており、川の部分だけ低くなっている事に気付いていたので、川を横切るには激しいアップダウンを繰り返す事になり、できる事なら川は横切りたくない。また一番東の国道241号線は少し大回りになるので避けたい。それよりも国道274号線の信号なしの直線道路がアップダウンを繰り返しながら16km続くというのを体験してみたかったので、道道337号線で北上した後、国道274号線で西に進む事にする。
道道133号線から道道37号線への分岐に通りかかった時、家畜改良センター十勝牧場展望台に行こうかと思った。昨日清水円山展望台に行きそびれていたし、今日は晴れているのでぜひとも展望台から十勝平野を見ておきたかったのだ。しかしツーリングマップルを見ると、片道8km近くのダートを走らなければならないし、おまけに展望台というくらいだから間違いなく登り坂だろう。登り坂のダートを炎天下に8km。ちょっと考えたくないような光景なので今回はパスする事にした。 道道337号線に入ると、ひたすらまっすぐな直線が続く。天候が良くなってきた事もあってここでも写真撮影を繰り返す。やがて11時10分に国道274号線に到着。国道274号線に入ってすぐに道端で休憩する。この国道274号線もひたすらまっすぐな直線だ。ツーリングマップルには「アップダウンのある」と書かれていたので、チャリダーには辛そうだなと思っていたが、実際には確かにアップダウンはあるものの、それほどきついというわけではなく、しかも追い風という事もあって、これならチャリダーにも十分お薦めできる道だと思ってしまった。ただここでも写真撮影をしようとするが、この国道274号線は先程の道道337号線に比べて交通量が多いので、写真撮影の為に車が途切れるのを待つのにずいぶん待たされてしまった。
東瓜幕パーキングエリアを出発し、さらに国道274号線を西に進むと、しだいに雲がなくなって快晴に近付いてきた。東ヌプカウシヌプリなどの山々が頂上まではっきりと見えるようになった。かなり暑いが写真撮影には最適だ。追い風を背に受けながら楽な走りだ。今日は午前中で92kmも走破した。まるで3年前のガムシャラな走りが復活したようで嬉しい。 国道274号線を西に走り続け、ようやく道道85号との分岐に到着した。もうここから先はコンビニはない。今ある携行食はおにぎりが1つと、先程買ったパンが1つ。これだけで白樺峠を越えなければならない。それならば携行食は残しておく事にして、どこかで昼食でも食べてから白樺峠に挑む事にしようと考えた。あたりを見回すと「森のオアシス グルメの里」という食事処があったので、そこで食事をする事にした。
テーブルに新聞が置いてあったので冷やしラーメンが出てくるまでの間、世間の情報を見ておく事にした。北海道自転車ツーリングの間、テレビ、ラジオ、新聞などは一切見ていないので、世の中で何が起きているのかまったく知らないのだ。新聞を見ていると、その中で一番私の目を引いたのがホンダが1週間ほど前のF1ハンガリーGPで優勝したという一面広告だった。とうとうホンダF1第3期で優勝したかと感慨深くなってしまった。 注文から15分後に出てきた冷やしラーメンは具の種類が思った以上に多く、また麺もおいしかった。これはあたりだった。しかも食事後コーヒー牛乳までサービスだと言ってついてきた。お勘定をしている時、店のおじさんは店の外に車がない事に気付いたようで、外をよく見ると自転車が置いてあったからびっくりしていた。一昨日までは暑かったが昨日から気温が下がったそうで、まだ今日は走りやすいでしょと言っていた。確かにもう13時だが、今日はまだそれほど暑くない。しかし白樺峠を登りはじめたら暑い事には変わりなくなるだろう。 店を出ると今度は道道85号線を北に走る。最初のうちは緩やかな登りが続く。この段階で今日は既に100km程走っており、右ひざの調子が少しおかしかったが、気にするほどではないし、まあ何とかなるだろう。今日はこれから標高900mまで550mの登りだ。緩やかな登りを走っていると軽装のマウンテンバイクが挨拶と共に追い抜いていった。やはり軽ければ登りは楽だろうと思ってしまう。
明日行く予定の東雲湖への入口を探すが、それらしき場所はあったもののよくわからなかった。後でネイチャーセンターで確認する事にしよう。さらに道道85号線を北に走り、湖畔トンネルを抜けるとすぐに然別湖畔温泉街に着いた。 この温泉街の真ん中に然別湖を見下ろす展望台があったので、いつものように自転車を持ち込んで写真を撮り、展望台から然別湖の湖岸に降りてみる。然別湖には手漕ぎボートや遊覧船など、様々な船が浮かんでいた。時間があれば私も遊覧船に乗りたいところだが、今日はぜひとも温泉に入りたかったので断念する。
浴槽から見る然別湖はなかなかのものだったが、この温泉には湯船が1つしかなく、露天風呂はもちろんの事、水風呂さえなかった。一体この温泉のどこに1000円分の価値があるのだろうと思いながら温泉からあがる。さすがに脱衣場では服で体を拭くのは恥ずかしいので浴室の中でしっかりと体を拭いてから脱衣所に出てくる。それでも服をタオル代わりに体を洗ったり服で体を拭いたりするのは恥ずかしかった。服を着替えて休憩室で旅の日記を書こうとするが、休憩室がどこにもない。どこにあるのかまったくわからないのでロビーのボーイに聞くと、休憩室はないとの事。いったいどこで旅の日記を書けばいいのか… 1000円も払って露天風呂がないのはもちろんの事、浴槽も1つしかなく、おまけにゆっくりとくつろげる休憩室もないとは、観光地のボッタクリ価格とはこんなものかと思ってしまった。 仕方なくホテル入口のロビーで旅の日記を書くが、このロビーもそれほど広いわけでもなく、またボーイの目の前の椅子に座って旅の日記を書くというのも居心地が悪かったので30分ほどで切り上げる。ネイチャーセンターの場所がわからなかったのでホテルを出る時にボーイに聞くと目の前にあると教えてくれた。自転車を止めたまま向かいのネイチャーセンターで東雲湖への地図をもらう。地図といっても大した地図ではないが、ツーリングマップルよりはマシだ。 然別湖畔温泉街を出発する時、公衆便所があるのを見かけた。ここで給水しようかとも考えたが、どうせあと5kmも走ればキャンプ場なので、給水せずにそのまま走る事にする。然別湖畔温泉街から国設然別湖北岸野営場までの道道85号線は道幅は狭いものの、洞爺湖の周回道路のように、木立に囲まれた中を木々の間から然別湖を見ながら走るというロケーションで、とても良かった。
17時40分から自炊開始。今日はカレーとわかめの味噌汁。コンビニには立ち寄れなかったのでトマトはないが、昨夜飲みそこねた寝酒はあった。今日も米がうまく炊けたのでとても嬉しい。18時30分には後片づけも終り、然別湖の湖岸まで撮影に行ってみる。17時くらいまでは晴れていたが、夕方になると曇ってしまい夕陽を見る事はできなかった。18時40分から旅の日記を書く。今日は温泉で旅の日記をほとんど書けなかったので、テントの中で書くのに時間がかかり、書き終わった時には21時30分になっていた。 このキャンプ場はライダーもいるにはいるが、やはり家族連れが多くて、夜になってもかなり賑やかだ。天気予報では今日は曇りと言っていたが、実際には昼から晴れてくれたおかげで、十勝平野の展望や美しい東ヌプカウシヌプリ、そして然別湖の写真を撮る事ができた。明日も晴れてくれるとありがたいのだが… 今日は30℃を越える事もなく、また凍らせたペットボトルがあったおかげで、水を2リットルしか飲まなかった。このキャンプ場は標高800mを越えており、かなり冷え込みそうなので、ニセコ野営場以来、久しぶりにジャージの上を着て22時に就寝する。
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