昨夜は夜中の1時頃に目覚めたが、それ以外はぐっすり寝られたと思う。目覚めると4時20分になっていたので起きることにした。テントを出ると外は一面の曇り空だったが、雨の降りそうな気配はない。しかも露付きもなかった。そう言えば昨日の昼間はすごく寒かったが、不思議なことに今は暖かい。 今日は美瑛まで85kmほど走るだけなので急ぐ必要はないのだが、昨日寝たのが早かったので目が覚めてしまい、テントを出てラーメンを自炊する。トイレに行って気付いたが、外は霧雨が降っていた。しかし自分は木立の茂みの中にテントを張ったので霧雨があたらず、テントは乾いたままだったのでありがたかった。ウィスキーが1/3ほど残っていたが、瓶はここで捨てる必要があったので、中身のウィスキーだけ自転車のボトルに詰め替えて瓶はゴミ箱に捨てていく。
南富良野を目指したのには訳がある。本来なら富良野に行くなら金山を目指した方が近いのだが、私は標高476mの樹海峠を越えたかったので、あえて遠回りとなる南富良野を目指したというわけだ。ところで標識では樹海峠は三の山峠となっていたが、どちらが正解だろうか? かなやま湖湖岸の道道465号線を走り続け、6時30分に南富良野到着。昨日このコンビニで買った食料がまだまだ残っていたのでコンビニには寄らず、道の駅「南ふらの」にも寄らずに国道38号線に入る。国道38号線に入るといきなり登坂が始まる。そして霧雨も再び激しくなったが、坂を登るときにレインスーツを着るとよけいに濡れてしまうので、レインスーツはここでも着ないで登り続けた。これは正解だったようで、峠の途中から霧雨は降っているのに太陽まで出てきてしまった。私は虹が見えないものかと期待したが、あたりを見渡しても峠の途中からでは視界が狭くて虹は見えなかった。 6時50分にあっけなく樹海峠の頂上に到着。私はてっきり南富良野の町から200mくらい登らさせられると思っていたが、実際には100mくらいしか登らなかったようだ。頂上付近は霧雨が激しかったが、峠を下ってしまえば霧雨は止むだろうと考え、レインスーツは着ずにそのまま下り、ずいぶん濡れてしまった。しかし峠を下りきっても霧雨は止まず、結局峠を下りきってからレインスーツを着ることになってしまった。今回の北海道自転車ツーリングで初めてのレインスーツを着ての走行だ。8日目までよく雨が降らなかったものだと感心すべきであろう。レインスーツにはフードがなかったが、それほど激しい雨ではないのでまあ大丈夫だろう。
国道38号線を走っていると、麓郷への標識が見えてきた。どうやら国道38号線で山部を通らずに道道253号線で麓郷に直接抜ける道があるようだ。私は国道38号線は昨年も走った覚えがあったので、せっかくだから一度も走ったことのない道道253号線を走ろうかとも思ったが、ツーリングマップルを見るとかなりの峠があるように見えるし、これ以上雨に打たれたくなかったので断念する。 7時50分、国道237号線との交差点から少し走ったところのパーキングで休憩。もう雨は降りそうな気配がなかったのでレインスーツを脱ぎ、一昨日振内のコンビニで買ったおにぎりを食べながら休憩する。このパーキングにはかなり立派なトイレがあったのでボトルに給水しようと考えたが、あいにくここのトイレの水は飲むことができなかった。 やがて山部大橋で空知川を渡って山部の町に入る。山部の町に入ると、なぜか道沿いにメロンを売っている店が極端に増える。山部はメロンの産地なのだろうか。布部大橋で再び空知川を渡り道道298号線に入るべく国道38号線を外れ、JR富良野線の踏切を渡る。一昨日まではまったくそんな事はなかったのに、今日は湿度が高いのに朝から目が乾いている。昨日サングラスなしで走って目を乾かしてしまった影響がまだ残っているのだろうか?
鳥沼公園からは道道298号線を走らず、一本北西側の農道を走る。私はこの富良野盆地を走るとき、いつも農道を走るのが好きなのだ。国道237号線や道道298号線のように、交通量の多く後方から接近する車に絶えず気を配りながら走るより、車のまったく通らない農道を、道の両側に植えられた農作物を見ながら自転車を走らせる方が、私にとってはよっぽど楽しい。富良野に入った頃から強い向かい風が吹くようになり、自転車のスピードは時速15km/hくらいまで落ちてしまったが、遅い方が農作物がよく見えるのでよいくらいだ。
アスパラガスはもっと難しかった。森を1/10にスケールダウンしたような小さな葉がいっぱい茂った畑があったが、いったいこれが何を栽培しているのか見当もつかず、その場で考えるのは断念して結局写真に撮って帰宅後に調べる事にした。帰宅後に調べると、何とそれはアスパラガスだった。アスパラガスといえば、ツクシのように土の中からアスパラガスがニョキッと生えているのを想像する。もちろんその状態であれば私もすぐにそれがアスパラガスだとわかっただろう。しかしアスパラガスは多年草の植物で、春に収穫を終えると来年の収穫の為に放置すると、あっという間に伸びて森のようになってしまうとの事だった。さすがの私もアスパラガスが育つと、こうなるという事までは知らなかった。
道道298号線の一本北西側の農道を走っていたが、この農道はやがてベベルイ川沿いを走る道となって農作物が見れなくなってしまい、おもしろさが半減してしまった。そこでさらに奥の道に入り込むと、いつものようにどこを走っているのかわからなくなってしまった。しかし道道298号線と国道237号線で囲まれた範囲を走っている以上は迷子になることはないし、何より中富良野の北星山町営ラベンダー園が遠くからでもよく見えるので、それを見ればある程度はどこにいるかがわかるようになってしまった。 さらに中富良野の盆地を走っていると、水田に何やら小さな看板が立っているのが目に入った。「Yes! clean」と書かれた看板は米の生育者や管理状況が記載され、トレーサビリティが確保されるよう内容を明示していた。クリーン米も農薬や化学肥料の削減、そしてその証明など、ここまで徹底すればすばらしいと思ってしまった。
彼と別れて上富良野の町を走るとコンビニを見つけた。今日は昨日、南富良野のコンビニで買った弁当がまだ残っていたので弁当を買う必要はなかったが、パンと牛乳を買いたかったのと、コンビニで弁当のゴミを捨てたかったので、コンビニに立ち寄る事にした。しかしこのコンビニは上富良野の町中にあり、あまり店の前で弁当を食べたくなるようなコンビニではない。そこで店に入る前にコンビニの裏手の方に自転車を走らせて、どこか弁当を食べる事のできそうな場所がないかと探していると、すぐ近くの富良野川沿いに島津公園があり、雰囲気もよかったので、ここで弁当を食べる事にして、コンビニに戻った。コンビニでパンと牛乳を購入し、先ほどの島津公園に行く。そして公園に自転車を止めると昨日南富良野で買ったコンビニ弁当を広げ、買ったばかりの牛乳と一緒に食べた。ここは上富良野の町中にありながらなかなか雰囲気のよい公園で、私のお気に入りとなってしまった。明太子のり弁当を食べながら20分休憩し、弁当のゴミを先ほどのコンビニに捨てて、10時50分に出発する。 上富良野の町から国道237号線に入り美瑛を目指す。国道237号線に入ったところで突然横を走るJR富良野線から踏切の音が聞こえてきた。私はすぐに自転車をUターンさせて踏切に向かうが、カメラを取り出す少し前に富良野・美瑛ノロッコ号は通過していった。せっかくのノロッコ号を撮影できず私は少し残念だった。 上富良野から美瑛の間には標高288mの深山峠がある。しかし実際には100mも登らず、あっと言う間に頂上に到着してしまう。こんなのが峠と言うなら、美瑛の丘はみんな峠になってしまうような気がする。そして深山峠の頂上の反対車線には深山峠展望台があり、そこはかみふらの八景に選ばれていたので、道を渡って撮影に行く。
この深山峠からしばらくの間、国道237号線は路肩が狭くて走りにくい。それでいて交通量が異常に多いので、私は路肩ギリギリに走っていたら、バスが私の自転車ギリギリにかすめるように追い抜いていった。他のトラック等はみんなちゃんと避けてくれているし、避けようと思えば避けられるはずなのに。「やい網走交通バスの大型バス! 今度そんな危険なことをしたら、会社名だけでなくナンバーまで晒してやるからそう思えっ!」 国道237号線を離れ、美馬牛へ向かう。谷を下って登り、そしてJR富良野線を越えて美馬牛小学校へ。ここは立ち入り禁止なので外から写真だけ撮影する。この頃から美瑛の丘が美しく見えるようになってきたので、久しぶりに自分撮りに挑戦する。幹線道路ではないが観光客の車が多くて路肩に三脚を置いて自分撮りするのはなかなか大変だった。
自転車を降りて花畑を撮影に行くが、残念なことにこの頃から再び太陽は雲に隠れて空は雲一面になってしまい、あまりいい写真は撮れなかった。それでも四季彩の丘はいつ来ても花が丘一面に咲いており楽しませてくれる。今の季節はクレオメがきれいな咲いていた。花の咲き誇る丘を奥まで歩き回って15分ほど花畑の写真を撮影し、再び出発する。
哲学の木へ向かう途中の道にも、写真撮影したくなるような場所がたくさんあった。私はまだ時間も早いのだし、ここでも何回か自転車を止めて自分撮りに挑戦する。曇っていて青空が見えないのが残念ではあるが仕方ないだろう。
哲学の木はケンとメリーの木ほど有名ではないものの、やはり観光客はちらほらといる。私は観光客が写真に写り込まないような場所を選んでカメラを三脚にセットし、哲学の木の前でも自分撮りに挑戦。20分ほどひたすら写真を撮り続けた。残念な事に曇っていていまいちだった。
さらにパノラマロードを走ると三愛の丘に到着した。しかし三愛の丘は晴れていてもそれほどの眺めではなく、ましてこの天気では行く価値もないと考えて素通りする。そしてパノラマロードの写真撮影もそこそこに、坂を下って美瑛の町へ向かった。
14時45分に松の湯に到着。支度をして松の湯に入る。松の湯はもちろん地元の人が使う銭湯なので、石鹸もシャンプーもないし休憩室もない。しかしお風呂に入れないよりは遙かにマシなので、これで我慢するしかない。銭湯はどこにでもあるありきたりの銭湯だった。まだ時間も早い事もあっておじいさんが一人いるだけだった。驚いた事にそのおじいさんは、私が浴室に入ってから出るまでの20分ほどの間、ずっと体を洗い続けていた。よほどきれい好きな人なのだろう。湯船を出ると銭湯の脱衣場で30分ほど旅の日記を書き、15時45分に松の湯を出発する。 お風呂の次は買い出しだ。私は近くのコンビニで明日の朝の食事や寝酒を調達し、再びキャンプ場への帰途についた。来るときは霧雨だったが、帰るときは太陽が顔を出して晴れており、パノラマロードの緩やかな坂を登りながら写真撮影を続けた。
神奈川から来た彼は大洗から苫小牧までフェリーに乗り、苫小牧から反時計回りで回っているそうで、多くの人は時計回りで回るので、すれ違うライダーが多いとか。チャリダーもライダーも考えることは同じか。今日は上富良野の日の出公園オートキャンプ場に行ったがいっぱいで、次に十勝岳のキャンプ場に行こうとしたら霧で視界が悪すぎてたどり着けず、ここに泊まったそうだ。実家が札幌なので明日は札幌に行くとのこと。なぜか江差のようかんをさかんに勧められた。他にも函館の東大沼キャンプ場のぶよはキムアネップ以上にすごいというのを聞かされた。あとテントは安いテントを1シーズン毎に買い換えているが、やはり品質は値段に比例すると言っていた。私などはアライのテントを使っているが、さすがに値段が高いだけあって7年目だが、まだまだ現役だ。 隣のライダーとはずいぶん長く話していたので、テントに入ったのは19時40分になっていた。それから旅の日記を書くが、今日はあまり休憩時間中に旅の日記を書かなかったこともあり、書き終わった時には22時を過ぎていた。明日の天気予報を見ると曇り時々雨になっている。これでは美瑛の景色はあまり楽しめないかもしれない。十勝岳に登るという手もあるが、雨だとそれも嫌だし悩ましいところだ。これも明日の天候次第だろう。 私は最近、赤毛のアンの原作を読んでいることもあって、まだ名前の付いていない美瑛の道に名前を付けてやろうと考えていた。そこで美瑛の丘を走りながら、アンのように空想の翼をはためかせ、お姫様と王子様の登場する物語を考えてみたが、なかなかいい名前は浮かばなかった。ただJR富良野線の東側から憩川沿いを走る道だけは、丘と丘の間の谷間を走ることから、「丘を見上げる道」と名付けたが、これではダイアナが名付けるのと変わらないので考え直し、「木陰溢れる道」か「木漏れ陽の道」がいいのではないかと考えた。悪くないネーミングだと思うが、誰か使ってくれないだろうか。 このキャンプ場は家族連れが多いせいか、22時を過ぎてもうるさい。いったい何時まで騒ぐのだろうと思ってしまう。それにしてもこのキャンプ場は設備も最小限だが、管理もずさんだと思う。キャンプ場はオートサイトとフリーサイトに分かれており、フリーサイトは荷物の搬入時のみ車の乗り入れが可能なのだが、搬入が終わっても車を駐車場に戻さない人がとても多いのだ。すると高い金を払ってオートサイトを頼んで、限られたエリアで設営している人に比べて、安いお金で広いフリーエリアのスペース一杯を使ってオートキャンプしているのだから、まともにオートサイトをとった人から見ると不満が募るだろう。しかもこのキャンプ場はテントにキャンプの許可証など何も貼らないので、フリーサイトに車を乗り付けている人も、お金を払っているかどうかも怪しい。 このキャンプ場は旭川のワンセグが入ると思っていたが、残念なことに入らなかった。これでずいぶん長くニュースを見れないことになる。旅の日記を書き終えワンセグが入らないととたんにやることがなくなってしまい寝る事にした。今夜は美瑛のコンビニで買った寝酒を飲んでいたが、よく考えたら昨日飲み残したウィスキーが少し残っていたので、これを少し水で薄めて一気飲みする。これで酔いが回って気持ちよく眠れそうだ。22時30分に就寝する。
|