昨夜は一度も目覚めることなく、ぐっすりと寝ることができた。寝る直前に飲んだウィスキーが効いていたのだろうか。目覚めると4時20分だったが、今日はテントは設営したまま撤収はしないので5時まで寝ることにする。次に目覚めると4時50分だったので起き出すことにした。テントから出ると外は一面の曇り空だったが、空の所々には晴れ間もあり、雨の降りそうな気配は今のところない。しかし天気予報では今日は曇り時々雨となっているので油断はできない。 朝食にラーメンを作り出発の準備をする。今朝は激しく露付きしており、洗濯物はまったく乾いていなかったが、どうせこれから坂を登ると汗で濡れるのだし、いつものように濡れた服をそのまま着る。今日は荷物を積み込む必要がないので準備を手早く済ませてしまい、6時にはキャンプ場を出発する。さすがに出発直後はまだ体が温まっていなくて寒かったのでウィンドブレーカーは着たままだ。
地図を見ながら6時30分に、どうにか道道966号線まで出て十勝岳目指して走り始める。前方に見えるはずの十勝岳は明らかに雲に隠れて見えなくなっており、この先は雨が予想された。道道966号線に入ってすぐに美沢パーキングがあったが、まだキャンプ場を出発して間がなかったのでパスする。こま道道966号線は、まだ朝早いこともあって交通量が皆無に等しく、自転車を道の真ん中に立てて自転車を撮影する。
それからも頑張って道道966号線を登り続けた。この道道966号線は、最初のうちはほとんど平地と変わらないくらいの登りが続く。そのうちに傾斜が徐々にきつくなってくるが、その時、道の左側に遊歩道か自転車道のように見える走りやすい道があるのを発見した。いかにも走りやすそうな道だったので、道道966号線を外れ遊歩道に自転車を乗り入れて走ることにした。下りだとさすがに遊歩道は怖いが、登りだとちょうどいいくらいだ。しかもアスファルトに苔が大量発生しており、緑色の絨毯の上を走っているかのようで気持ちよかった。これが下りだと苔でスリップして怖いが、登りだと気持ちいい。こんな遊歩道があって、しかも傾斜もそれほどきつくないので、初心者にもお勧めできるコースに違いない。 7時45分に自転車を止めたついでにパンを食べて5分だけ休憩する。白金温泉が近づくと傾斜が次第に急になり、レインスーツを着ていたら暑いので、レインスーツの上だけ脱いで腰に巻き付けて走る。そして8時ちょうどに白金温泉到着。途中の美沢パーキングから1時間30分で登ってくることができた。標高差にして350mと言ったところだろうか。何だかあっけないくらい簡単に登ってくる事ができた。朝一番で体力があり、しかも気温も低かったというのもあるのだろうけど、何よりサイドバッグの中身が空だったのが一番大きかっただろう。 しかしこれで安心してはいけない。これでやっと半分登っただけなのだから。白金温泉で記念撮影してさらに道道966号線を登る。先ほどの遊歩道は白金温泉までしかなかったので、ここからはいつものように車道を走る。しかし白金温泉を過ぎると雨が降り始めたので、腰に巻いていたレインスーツを再び着て走ることとなった。
坂を登りながら、私はテントに忘れ物をしたことに気付いた。今日は十勝岳まで登った後、そのまま美瑛を観光し、美瑛の町で銭湯に入ってキャンプ場に戻ってくるつもりでいた。しかし肝心の石鹸とシャンプーを忘れてしまったのだ。まあ石鹸とシャンプーがなくても銭湯には入れないわけではないが、あった方がいいに決まっている。
急坂を登りきり、8時50分にどうにか望岳台に到着。駐車場に自転車を止めて、歩いて少し登り望岳台の石碑を撮影する。この頃から霧が急に深くなり、視界は100m程度まで落ちてしまった。9時ちょうどに望岳台を出発。再び望岳台からの急な下りを下るが、雨の中の急な下りなので、ブレーキシューがそろそろ危なそうだ。
さらに登ると9時30分に吹上露天の湯に到着した。私はここは標識だけ撮影して素通りするつもりでいたが、標識の前にチャリダーがいたのでついでに話しかけた。彼はトレックのロードの自転車にほとんどの荷物を背中に背負って走っていた。さすがにテントは持っていないのでライダーハウスを泊まり歩いているそうだ。彼は上富良野から登ってきたので、私と逆のコースだ。そこでお互いのこれまで走ってきたコースの坂の情報を交換する。私のこれから向かう先は、あと2〜3kmほど走れば下りになるとの事だった。 彼は私の自転車のサイドバッグの後ろに缶酎ハイの缶が入っているのを見て「飲みながら走ってるんですか?」と聞かれた。まさかそんな事はしないと否定し、昨夜テントの中で飲んでいた寝酒の空き缶を、どこかコンビニのゴミ箱にでも捨てようと持ち歩いているだけだと言う。しかし酒を飲みながら自転車を走らせるチャリダーがいたら、それはそれですごそうだ。 彼はたった今、吹上露天の湯に入ってきたばかりで、とってもよかったと私にも勧めてくれた。私はもともと吹上露天の湯に入るつもりはなかったが、もうほとんど十勝岳まで登ったも同然だったし、彼があまりにも勧めてくれるのと、混浴露天風呂と聞いて、入ってみる事にした。 駐車場に自転車を止めてタオルだけ持って少し歩くと、温泉が見えてきた。この時点でこの温泉は観光客から丸見えだと判明。しかし最近私は肝が据わってきたので、そんな程度では気にしない。しかし露天風呂だけでなく、脱衣場まで男女同じで、しかも囲いも何もないので、これまた観光客から丸見えという状態だった。それでもその時は観光客もほとんどいなかったので、私は手早く服を脱いで露天風呂に入った。吹上温泉露天の湯は温度も適温だし、眺めは… 霧で何も見えなかったけど、囲いが何もなく開放的で素晴らしい。そのうちに夫婦連れが入りにきたので、奥さんの方はどうするのだろうと思っていたら、当然のように水着を着ていた。こちらは素っ裸だから恥ずかしいんだけど。十分暖まったので湯船を出て再び服を着た。その頃から観光客が増え、女性陣が大挙して押し寄せ、足湯だけ浸かっていくので、素っ裸で入っていた男の人たちが出るに出られなくなっていた。着替えも含めて30分ほど吹上温泉露天の湯で堪能し、10時ちょうどに出発する。チャリダー君の言葉を信じて温泉に入ってよかった。
ここから下りが始まる。下りはじめてすぐに、十勝岳と上富良野へのT字路にぶつかった。私はここで悩んだ。あと260mほど登れば十勝岳だ。私はここまで来たのだし、ぜひとも行ってみたいと思っていたが、どうせ行ったところでこの霧では何も見えない。それよりも早く美瑛観光したいという気持ちの方が強く、上富良野への道道291号線へ下っていった。 道道291号線を下り始めるとすぐに雨が止み霧が晴れ始めた。私はこれまでずっとレインスーツを着ていたが、さすがにこの下りでは寒くてレインスーツを脱ぐ気にはならず、レインスーツを着たまま下っていった。路面が濡れていたのでスピードは時速30km/h以上は出さないようにブレーキをかけつつ下る。ブレーキシューは中山峠、ニセコ、オロフレ峠を下るときにずいぶんすり減らしてしまったので心配だったが、どうにか下りきるまで持ちこたえてくれた。家に帰ったら間違いなく交換する必要があるだろう。 道道291号線を下ってくると、上富良野のフラヌイ温泉の前の道を通過し、たどり着いた先は、昨日お昼に立ち寄ったコンビニの前に出てきた。私はこのコンビニを見た途端、昨日と同じように富良野川沿いの島津公園で弁当を食べようと考え、コンビニに入ることにした。コンビニ前の交差点で6人組のチャリダーと遭遇し挨拶する。女性も混じっていたのでどこかの大学のサイクリング部と思われたが、道道581号線からやって来たので、いったいどこに行っていたのだろうと思ってしまった。
上富良野の町から国道237号線までの道の途中で、前方遙か遠くにソロのチャリダーの姿が見えた。どうも私の方がペースが速いようで、その差はみるみる縮まっていく。しかし国道237号線の交差点に来た時、彼の姿は神隠しにあったように忽然と消えた。どこに行ったのだろうと交差点であたりを見渡すと、別のソロのチャリダーが国道237号線を中富良野方向から走ってきた。ところが彼は私のいる交差点を左折し、名もなき道へと入っていった。いったいこの先には何があるというのだろう。私はツーリングマップルを確かめると、どうやらジェットコースターの道というのがあるらしい事がわかった。ジェットコースターの道とは美馬牛近くの国道237号線から南西に延びる西11線道路の通称で、波打つように大きくアップダウンを繰り返しながら延々と伸びる直線道路なことからジェットコースターの道と呼ばれているそうだ。景色のいい事で知られているが、アップダウンが激しくチャリダーにはハードルが高いのと、今日は曇っていて景色も望めそうになかったので今日のところは断念する。 ソロのチャリダー二人に相次いで逃げられ、私は一人で国道237号線の深山峠を登り始めた。峠と呼べないほどの深山峠を越え、昨日網走交通バスのバスにはねられかけた路肩の狭い道を走る。昨日はここで美馬牛へ逸れたが、今日はまずクリスマスツリーの木に行く予定にしていたので、そのまま国道237号線を直進。するとかんのファームが見えてきた。ここはきれいに花が咲き誇り美しかったので立ち寄ることにした。駐車場の入り口近くにチャリダーの自転車が一台止まっていたので、自分もその後ろに自転車を止めて12時10分から中を見学する。かんのファームは四季彩の丘にも劣らぬほどきれいだったが、曇り空ではあまりいい写真は撮れなかった。
写真撮影を終えて自転車に戻ると、先ほどのチャリダー君が自転車に戻ってきていたので話しかける。彼はジャイアントのランドナーもどきのマウンテンバイクに乗っており、まだ大学生だがツーリングのキャリアは相当なものだった。彼はライダーハウスやキャンプ場には泊まらず、ひたすら野宿や道の駅に泊まると言うので、道の駅はトラックのエンジン音がうるさくないかと聞くが、彼にとってはもう慣れたもので問題ないようだった。私は絶対ダメだろう。多少の音なら問題ないが、10mの距離で大型トラックのディーゼルエンジンの音が一晩中していたら眠れないことだろう。彼は私の自転車がデモンタブルだと一目で見破ったので、輪行の方法や装備についても話をする。彼は私の自転車を見て、ホームページを書いてませんかと言われた。どうやら彼にはホームページで私の自転車を見た覚えがあったようだ。 彼とは20分ほど話をしていたが、お互いの旅に出発していく。彼はこの後、美瑛方向に走るらしい。私も同じ方向だが、私はこれからクリスマスツリーの木に行くので、すぐに彼とは別れ、国道を離れて美瑛の丘へと入っていった。
次は新栄の丘だ。私はクリスマスツリーの木から急降下し、谷を越えて坂を登り新栄の丘に到着した。新栄の丘は駐車場に柵がないので、自転車やバイクの写真を撮るには一番適しているような気がする。美瑛には千代田の丘、三愛の丘、北西の丘、マイルドセブンの丘、就実の丘、赤羽の丘など数多くの名前の付いた丘が存在するが、個人的にはこの新栄の丘が一番のお気に入りだ。
ケンとメリーの木は1972年にケンとメリーが出演する第4代スカイラインのCMで、このポプラの木をバックに撮影された事からケンとメリーの木と名付けられた。ちなみに第4代スカイラインはこのCMから通称ケンメリと呼ばれている。
ケンとメリーの木の次はセブンスターの木だが、そこに行くまでにはパッチワークの路を通る。パッチワークの路の名前の由来は、このあたりは連作による不作を防ぐ為に、同じ畑でも毎年のように作物を変えて育てているので、それが緑や黄色や茶色のカラフルなパッチワークをあてたように見える事からパッチワークの路と名付けられている。よってこのパッチワークの路から見える光景は毎年異なるそうだ。
セブンスターの木の名前の由来は、この木が1976年にセブンスターのパッケージに採用された事から、その名が付いたそうだ。ここは観光客も多く。長居したくなかったので、一枚だけ写真を撮ってすぐに退散する。
私は親子の木を目指して稜線上の道を走り続けた。するとありがたいことに太陽が顔を出し始めた。空を見ると青空が広がっており、これはしばらく晴れが続きそうな雰囲気だ。せっかく空が晴れ始めたのだから、私はここでも自分撮りに挑戦する事にした。
稜線上の道を走ると親子の木に到着するが、親子の木は近くから見てもあまりよくわからないので、そのまま素通りする。親子の木のすぐ近くにお化けの木があるので、これはすぐ近くから撮影する。次はマイルドセブンの丘だが親子の木を撮影したかったので、一度反対側の坂の下まで下って親子の木を撮影する。ここから見る親子の木が一番親子らしく見えると思う。
途中丘の上からマイルドセブンの丘を見るポイントがあったので、思わず自転車を止めて写真を撮っる。15時ちょうどにマイルドセブンの丘に到着。しかしマイルドセブンの丘に到着した頃から太陽が雲に隠れてしまった。このマイルドセブンの丘は1978年にマイルドセブンのCMのロケ地として選ばれた事からこの名前が付いたそうだ。マイルドセブンの丘は観光客の車が多くて撮影するのに時間がかかったが、休憩がてらにパンを食べながら観光客の車が立ち去るのを待ち、どうにか希望通りの写真を撮影。さすがにこの場所では観光客が多すぎて自分撮りはできなかった。マイルドセブンの丘の上にも観光客の車が多く丘の上から写真だけ撮って逃げるように帰ってきた。
北西の丘はケンとメリーの木に近く、太陽が雲から顔を出しそうだったので立ち寄る事にした。ケンとメリーの木から300mほど西にある私だけの撮影ポイントでカメラを構えて待つ事5分。ようやく太陽が顔を出し、無事に晴れたケンとメリーの木を撮影する事ができた。
先に撮影ポイントに来ていたおじさんは大きなカメラを持っていたので何かと尋ねると、ペンタックスの6×7だったのでびっくりしてしまう。今時フィルムのカメラを使っている人でさえ珍しいのに、それが6×7と知ってなおさら驚いてしまった。こんなカメラを使っている人も少ないし、ましてフィルムはますます入手できなくなっていることだろう。
暗くなる前に急いで戻って18時40分にテントに戻ってきた。テントの写真だけ撮影してすぐにテントにこもって旅の日記書いたが、きょうも休憩時間中にあまり旅の日記を書かなかったので、書き終わるのに3時間もかってしまった。今日は美瑛観光だけ済ませたら、すぐにテントに戻って旅の日記を書いてしまい、夜はゆっくりと過ごすはずだったのに、結局昨日と同じになってしまった。まあ満足いくまで美瑛の丘と木を回ってきたのだし、それはそれでいいのだが。 今日は朝の段階では十勝岳が雨で行くのを断念していたら行くところもなくなってしまい、一昨日と同じようにOFF日となるところだったが、気合いで十勝岳に登ったおかげで充実した一日を送ることができた。十勝岳への登りも自転車が軽かったおかげで、それほど苦しむこともなかったし、通過するはずだった吹上温泉露天の湯に行くことができ素晴らしくよかった。おまけに午後からは晴れてくれたおかげで、青空まではいかなかったが、晴れた美瑛を堪能することができた。 北海道自転車ツーリングも残すところあと2日。明日は旭川経由で月形まで120kmほど。明日は最後の夜なのでぜひともズボンを洗濯したい。その為にも月形に早く到着するよう早く起きることにしよう。明日の天気予報は曇り時々晴れ。まずまずの天気だろう。 なぜか22時を過ぎてからキャンプ場で打ち上げ花火をするバカな家族連れがいて、他のキャンパーたちが文句を言っても「夜に打ち上げ花火をしてはいけないというルールはない」と言い張って、相変わらず打ち上げ花火を行い、周りのキャンパーから散々文句を言われていた。しかし非常識なキャンパーも増えたものだ。ルールにない事は何をしてもいいと言って他の人の注意も無視するようなバカな親に育てられた子供はどんな大人に育つのだろうと思ってしまう。それにしてもこのキャンプ場は今日もフリーサイトの家族連れはほとんど車をフリーサイトに止めたままだし、マナーがなっていない。このキャンプ場は管理がなっていないと思われた。 22時前には旅の日記も書き終わり、ツーリングマップルを見ながら明日の予定を考え、22時30分に就寝する。今日も少し寒くなりそうなので、暖かくして寝る。
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