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北海道自転車ツーリング 15日目
羅臼〜知床岬〜ウトロ −知床観光船−
2008年08月15日

15日目の走行地図

15日目の速度グラフ
速度
15日目の高度グラフ
高度

 昨夜もアンメルツのせいで足が痛くなった。就寝の4時間以上前に使用したはずだが、それでもダメなようだ。おそらく就寝の6時間以上前に使用しないと足が痛くなってしまうのだろう。しかも昨夜は隣のテントのライダーのいびきがうるさくて何度も起こされた。私も自分のいびきはうるさいと思うので人の事はあまり言えないが、それにしてもキャンプ場中に響き渡るような大きないびきだった。
 夜中に起きるたびに雨を確認するが、まだ降っていない。4時25分に起床。テントを開けると空一面の曇天だったが、雨は降っておらずテントも濡れていない。雨降りを覚悟していただけに雨が降っていないのはありがたかった。今日は一日雨との天気予報なので撤収するなら今しかない。私はテントの中のものをすべて自転車に積み込み、急いでテントを片付けた。
撮影日時:2008/08/15 04:45:12 シャッター速度:1/15 絞り:F3.5 焦点距離:29mm
羅臼温泉野営場でのキャンプ風景
撮影日時:2008/08/15 04:57:48 シャッター速度:1/60 絞り:F5.6 焦点距離:115mm
キャンプ場には餌を求めて鹿が降りてきた
 5時にはテントの撤収が完了したが、出発するにはまだ早いので熊の湯の温泉に浸かりに行く。朝早い時間だが地元の常連客が4人ほどいた。その中に私に北オホーツクサイクリングロードを紹介してくれたおじさんもいた。1年ぶりにおじさんの姿を見て嬉しくなったが、おじさんは他の地元の常連客とずっと話していたので、私が話しかける事はできなかった。
 5時15分にテントに戻り朝食におにぎりを食べ洗面を済ませて5時30分になった。それでも出発にはまだ早いので、旅の日記を書いて時間を潰す。天気予報を確認すると昨夜までは夜半から雨になるはずだったが、今朝の天気予報では午後からの雨になっている。これなら急いで撤収する必要はなかったが、まあ急いで撤収しても問題はあるまい。網走の天気予報は今日は曇り一時雨、明日は曇り、17〜18日は曇り時々晴れに変わっていた。今日明日は雨だと覚悟していたが、状況が少し改善してきたようだ。これなら少し走ってみようかなという気にもなってくる。
撮影日時:2008/08/15 05:58:16 シャッター速度:1/30 絞り:F3.5 焦点距離:29mm
羅臼温泉野営場
撮影日時:2008/08/15 05:59:04 シャッター速度:1/40 絞り:F4.0 焦点距離:29mm
こちらは熊の湯
 5時50分にキャンプ場を出発。しかしトイレに立ち寄ったり、入り口の標識を写真撮影していたら、実際の出発は6時ちょうどになってしまった。国道334号線、通称知床峠は羅臼温泉野営場の付近が特に傾斜がきつい。しかしここをがんばって登りきると、登りは少し平坦になった。しかし覆道に入る頃から一気に登り傾斜は急になり、翔雲橋を渡って左コーナーを抜けるまで急な登り坂が続く。特に覆道の中と翔雲橋の傾斜がきつかった。
 左コーナーを抜けると登り傾斜は緩やかとなり、やがて6時40分に380mの2合目に到着。知床峠は標高741.6mだからほぼ半分登った事になる。知床峠は羅臼温泉野営場を起点として知床峠の頂上までを道のりで等分割しているので、標高380mでもまだ2合目だ。ここでパンを食べながら5分休憩する。今日は急ぐ必要もないのでゆっくり走る事にしよう。
撮影日時:2008/08/15 06:24:21 シャッター速度:1/60 絞り:F6.3 焦点距離:45mm
傾斜がきつくて空に
飛び出していきそうな翔雲橋
撮影日時:2008/08/15 07:28:08 シャッター速度:1/125 絞り:F6.3 焦点距離:29mm
6合目になると霧で
視界が30mくらいしかなかった
 ここから先は傾斜も緩やかとなりリアのギアも確実に2〜3枚上げて走れるようになる。しかし3合目あたりから霧が深くなり始め、視界は50mまで落ち込む。後方から車に突っ込まれるのが嫌だったのでリアのフラッシングライトを点灯させながら走る事にする。
 7時25分に6合目に到着。ここでもパンを食べながら5分休憩、さらに霧が深くなり視界は30mになる。さすがにこの視界では国後島や見返り峠からの眺めを楽しめるはずもなく、後続車に気を付けながら知床峠を登り続ける。前方からやってくるライダーも深い霧の為スピードを出す事ができず慎重に運転している。バイクが近づいてくると、こちらは音ですぐにわかるが、自転車は無音なので霧の中から突然チャリダーが現れたらびっくりする事だろう。
 霧の中を走り続けて7時50分に知床峠の頂上に到着した。羅臼温泉野営場から1時間50分で登った事になる。2004年に同じコースを羅臼温泉野営場から知床峠まで登った時には1時間40分で登っていたので、その時よりは10分遅い記録だが、まあ大差あるまい。
撮影日時:2008/08/15 07:53:28 シャッター速度:1/125 絞り:F7.1 焦点距離:29mm
この先に羅臼岳が見えるはずだが
撮影日時:2008/08/15 07:55:05 シャッター速度:1/125 絞り:F7.1 焦点距離:29mm
知床峠
 知床峠の頂上で写真を撮るが、霧が深くて何も見えない。仕方なく写真撮影も早々にして8時5分にはウトロ側に下り始めた。さすがに知床峠の頂上は寒かったので、下りは雨が降っていないにもかかわらずレインスーツを着て下る事にする。ウトロ側に下ると羅臼側と違って霧が出ていないばかりか、曇ってはいるが視界はよく、オホーツク海まではっきり見る事ができ、とても雨が降りそうな天気ではなかった。これなら知床観光船で観光しなくても、そのまま自転車で走り続けてもいいような気もするが、せっかくだから知床観光船で知床岬まで行ってみよう。
 ウトロ側の知床峠は直線が続くので、ブレーキをかけずに急坂を下り続けた。自転車が分解するのではないかと思えるほどのスピードで急坂を下ったが、スピードメーターを見ても60km/hには達していなかった。サイドバッグに荷物を満載した自転車でスピードを出して下るのはなかなか勇気がいるものだ。
撮影日時:2008/08/15 08:10:25 シャッター速度:1/160 絞り:F8.0 焦点距離:29mm
ウトロ側は視界もよくオホーツク海が見えた
撮影日時:2008/08/15 08:14:38 シャッター速度:1/200 絞り:F8.0 焦点距離:141mm
知床峠の急坂を下る
 知床峠をずいぶん下り、知床自然センターを通過。私はフレペの滝に行きたいと思っていた。フレペの滝には川がなく知床連山に降った雪と雨が地下に浸透し、垂直に切り立った約100mの断崖の割れ目から流れ落ちている。ホロホロと流れ落ちるさまが涙に似ている事から、地元では「乙女の涙」とも呼ばれている。知床自然センターから遊歩道を歩いて片道20分程との事だったので、ぜひとも行きたいと思っていたが、知床観光船の出航の時間があるし、今日は曇りだったので、また晴れた時を狙って行く事にして、今日のところはパスする。。
 知床自然センターを過ぎてさらに下ると、今度はプユニ岬に到着した。ここはオホーツクの美しい海岸線やウトロ港が一望できるので私のお気に入りの場所でもある。今日は曇っていたのであまり写真映りは良くないだろうとあきらめていたが、視界はよかったのでまだマシだった。もちろん晴れた時の空の青さや海の青さに比べたら全然ダメだが仕方ない。ウトロにはこれまで何度も来ているが、ほとんど晴れたためしがないような気がする。
撮影日時:2008/08/15 08:25:45 シャッター速度:1/125 絞り:F6.3 焦点距離:29mm
プユニ岬
撮影日時:2008/08/15 08:29:09 シャッター速度:1/100 絞り:F5.6 焦点距離:29mm
プユニ岬からの眺め
 プユニ岬からウトロの町並みを見下ろしていると、遙か遠くの国道334号線沿いにチャリダーの集団が、これから知床峠に登ろうとしているのが目に入った。それも10人くらいのグループが4〜5つは見える。どこかの大学のサークルだろうけど、それにしてもたくさんの大群だ。彼らはいったい今朝どこに泊まったのだろう。これだけ多くのチャリダーを受け入れる事のできるキャンプ場と言えば、知床野営場くらいしかないが、もしそうならかなり遅い出発になる。プユニ岬からさらに下っていくと、先程見ていたチャリダーの大群とすれ違った。年齢から言って大学生のサークルだろう。挨拶しながらすれ違ったが、これだけのチャリダーの大群に挨拶しながら走るのは大変だった。
 8時40分にウトロの町に入ると、知床野営場に行く前にウトロ港に行って知床観光船の乗り場を確かめる事にした。オロンコ岩のトンネルを抜けた先に知床観光船乗り場はあった。ウトロ港に行くと知床観光船と言っても大きな網走流氷観光砕氷船おーろら号で行くものから、小型のクルーザーで行くものまで色々ある。私はとりあえず一番無難なおーろら号で行く事にして、切符売り場に行き切符を購入する。6000円と高かったが、まあ仕方がないだろう。何時までに乗り場に行けばいいのか聞くと、9時50分乗船開始だが、並ばれるのだったらもっと早くから並ぶ事ができると言われた。並ばないと乗船できないのですかと聞くと、いい席を取るのだったら並ぶ必要があるとの答えだった。どうせ私は席など取らずにデッキでずっと写真を撮っているのだから、9時50分に行けば十分だろう。
 まだ乗船開始までに1時間以上あったので、キャンプ場に行ってテントを張ってくる事にした。ホテル街への急坂を登り、知床野営場に向かった。9時ちょうどに知床野営場に到着。受け付けをしようとしてびっくりした。今までの知床野営場の管理棟はぼろい建物だったが、そのぼろい建物のあったはずの場所に、きれいで立派な真新しい管理棟が建っていたのだ。どうも今年に管理棟を新築したらしい。これもやはり知床が世界遺産に登録された効果だろうか。その割にはそれ以外の施設は貧弱で、汲み取り式のトイレは廃止されたが、サイト側のトイレは簡易トイレだった。きっと何年かかけて改修していくのだろう。個人的には多少ぼろくても静かなキャンプ場を望みたいので、あまり設備を新しくしすぎて、家族連れで埋まってしまわない事を祈る限りだ。
撮影日時:2008/08/15 08:57:38 シャッター速度:1/100 絞り:F5.6 焦点距離:29mm
管理棟が新しくなっていた知床野営場
撮影日時:2008/08/15 09:28:11 シャッター速度:1/250 絞り:F5.6 焦点距離:29mm
夕陽台からの眺め
 受け付けを済ませてどこにテントを張ろうかフリーサイトを歩き回る。このキャンプ場は周囲の通路沿いはすぐにテントで埋まってしまうが、中央部分は比較的空いている。チャリダーはこの中央部分にも乗り入れできるので、私はいつも中央付近にテントを張る。特に今夜は雨が降りそうだったので、テントを張る場所選びは慎重になる。そんな事でどこにテントを張ろうかとフリーサイトを歩いていたら、近くのテントから人が出てきて、いきなりズボンを履き替え始めた。後ろ姿だったが若い女の人のように見える。でもまさか女の人がテントの外でパンツを見せながらズボンを履き替えないだろうと思っていたが、やはりどう見ても女の人だった。若い女の人が人前でよく着替えができるものだと感心してしまった。
 とりあえず雨が流れ込まないような少し高台になった場所を選ぶとテントを張った。そして近くにテントを張っていたライダーらしき人と話をする。彼はこの時間からキャンプ用の椅子に座って本を読んでいた。きっと昨日羅臼温泉野営場で話をしたライダーと同じように、この知床野営場に常駐しているライダーなのかもしれない。そのライダーの話によると、つい先ほどまでこの付近には北海道大学のサイクリング部の学生たちが大挙してテントを張っていたそうだ。おそらく40〜50人はいたと思われるが、さぞかし賑やかだった事だろう。ついでに夕陽台に行ってウトロの町を見下ろすが、あいにくの曇り空で眺めはあまりよくなかった。私はこのキャンプ場に3回来ているが、私が来る時はいつも曇りだ。
 9時30分に知床野営場を出発し、急坂を下ってウトロの町に出た。先程、知床観光船の乗船券6000円を払って財布の中身が心細くなった事もあり、ウトロの郵便局で1万円だけお金をおろす。そして隣のコンビニで、観光船の中で食べる為の弁当とジュースを購入する。そして9時45分にウトロ港に行くと、港はもう人でいっぱいだった。自転車置き場に自転車を止めるとカメラと弁当とジュース、そして雨に備えてレインスーツを持って列に並び、10時前におーろら号に乗船した。
撮影日時:2008/08/15 09:45:30 シャッター速度:1/250 絞り:F8.0 焦点距離:230mm
知床観光船おーろら号
撮影日時:2008/08/15 10:10:35 シャッター速度:1/100 絞り:F7.1 焦点距離:94mm
プユニ岬
 並んだのが遅かった事もあり、他の観光客は我先に座席を確保するので、船内の座席はどこもいっぱいだった。しかしそれに対してデッキはガラガラだったので、私は一番上のデッキの右舷側、つまり知床岬へ向かう際に一番眺めのよい場所を確保した。この知床観光船は利尻島や礼文島に行くフェリーのように移動目的で乗る船ではなく、観光目的で乗る船なのだから、席なんか確保するよりも、できるだけ眺めのいい場所を確保する方が重要だと思うのだが、なかなか一般の観光客には理解されないようだ。
 やがておーろら号はウトロ港を出港し、滑るように港を離れていった。そして船がプユニ岬を通り過ぎ、放送による観光案内が始まる頃には、席に座っていた一般の観光客もぞろぞろとデッキに出てきた。しかしその時には既にデッキの眺めのいい場所は確保していたので時既に遅く、座席を確保していた人たちは人垣の間からしか眺める事はできなかったようだ。
 さてここで網走流氷観光砕氷船おーろら号について説明しよう。おーろら号は観光を目的として建造された砕氷船である。砕氷船本来の目的は氷海にて一般船舶の航路を切り開きながら旅客や物資等を運搬する事にある。その中で港から港への定期航路ではなく遊覧を目的とした砕氷船はおーろら号が世界初となる。おーろら号は1990年に完成し、冬は流氷観光船として網走沿岸を遊覧し、夏は知床観光船としてウトロから知床岬を往復している。
 おーろら号は全長45m、全幅10m、総重量491トン、最大速力14.3ノット、定員450名の流氷観光砕氷船だ。紋別で運行されているガリンコ号Uは砕氷方式がおーろら号とは異なり、船体の最前部にあるドリル状のアルキメディアンスクリューを回転しながら砕氷して進む方式に対して、おーろら号は南極観測船しらせと同様、氷海を船の重さで砕氷してゆく方式である。個人的にはドリル状のアルキメディアンスクリューの方が見た目が派手で観光客受けしやすいような気がする。
撮影日時:2008/08/15 10:18:52 シャッター速度:1/80 絞り:F5.6 焦点距離:34mm
不思議な洞窟のクンネポール
撮影日時:2008/08/15 10:19:21 シャッター速度:1/100 絞り:F8.0 焦点距離:53mm
岩尾別と後ろにそびえるのが羅臼岳
 最上段のデッキの一番眺めのよい場所に陣取った私は、流れゆく知床半島の断崖絶壁を何枚もカメラに収めた。しかし船外の騒音の大きい場所にいたので、観光案内の放送がよく聞こえず、フレペの滝や湯の華の滝、そして象岩を撮り逃してしまった。不思議な洞窟をしていたクンネポールだけは珍しかったので写真を撮っておく。ちなみにクンネポールとはアイヌ語で「黒い穴」を意味する語で、波が岩を浸食してできた直径20mの巨大な洞窟である。
 このクンネポールあたりはカヤックで海にこぎ出ている人が見られた。おそらくウトロの浜辺からカヤックでこいでクンネポールの洞窟の浜辺まで探索しているのだろう。とてもおもしろそうだったが、おーろら号のような大型船に比べるとカヤックはあまりにも小型で、横をおーろら号が通り過ぎただけで、その波で翻弄されて大変そうだった。
 知床半島は断崖絶壁の地で、とてもこんな岩山を開拓できるようには思えない。しかしクンネポールを過ぎると所々に浜辺があって、その浜辺にしがみつくように人が生活している痕跡があったが、きっとこんな場所には宅急便も郵便物も届かないだろう。
 この知床岬への航路には、大型観光船であるおーろら号の他にKAZU、ドルフィン、FOX、MAKO、カムイワッカなどの、いずれも全長10mちょっと、定員50名程度の小型クルーザーが多数走っている。これらの小型クルーザーは知床岬まで行くと、いずれも8000円とおーろら号より高いが、おーろら号と違って陸に近いところを走るので、滝などにより近くまで接近できるという特徴がある。私は今回無難におーろら号に乗船したが、おーろら号から見ていると小型クルーザーにも色々タイプがあるようだ。私はどうせ小型クルーザーに乗るのだったら、船内からしか見られないクルーザーではなく、デッキの上から見る事のできるクルーザーに乗りたいと思ってしまった。そういう意味ではカムイワッカ号が一番良さそうに思えた。それでも小型クルーザーは揺れが激しいし、撮影に適したベストポジションに陣取るのも難しいかもしれない。
撮影日時:2008/08/15 13:31:02 シャッター速度:1/250 絞り:F7.1 焦点距離:259mm
小型クルーザー カムイワッカ号
撮影日時:2008/08/15 10:45:07 シャッター速度:1/200 絞り:F10 焦点距離:64mm
カムイワッカの滝とバックに硫黄山
 岩尾別の次はオーバーハングだ。ここは岩が垂直に切り立っていて、下の方が波で削られているのでオーバーハングと呼ばれているらしい。しかしこの付近は船はあまり海岸沿いに近付いてくれなかったので、よくわからなかった。そして水晶岬も気付かぬまま通り過ぎてしまった。
 この知床観光船おーろら号は知床半島の海岸沿いを知床岬まで航行するが、この付近は海岸沿いに定置網が多く、その度に船は定置網を避ける為に海岸線沿いから離れて、定置網がなくなるとまた海岸に近づくのを繰り返す。かなりジグザクに航行するが、定置網を避けながらできる限り海岸沿いを航行しようとするとこうなってしまうのだろう。
 さらに進むと今度はカムイワッカの滝が見えてきた。このカムイワッカの滝は、私も昨年入ったカムイワッカ湯の滝のあるカムイワッカ川の下流にある滝で、オホーツク海に直接流れ込む珍しい滝だ。このカムイワッカ川は硫黄山から流れ出す温泉成分が強酸性で強い硫黄成分を含むため、有毒であり生物が生息できない。このカムイワッカの滝が雄大な硫黄山をバックに映えていたので写真を撮る。
 ここまで標高1661mの羅臼岳や標高1563mの硫黄山など、低い場所でも標高1300mを越える壁のような知床山脈が続いていたが、カムイワッカの滝を過ぎると標高1254mの知床岳までの間、知床半島は壁が途切れて標高300m程度のなだらかな地形となる。この区間はルシャ乗越しからルシャ川に吹き出す「ルシャだし」と呼ばれる風が通り抜けるので、カムイワッカの滝を過ぎると急に風と波がひどくなった。
撮影日時:2008/08/15 11:05:45 シャッター速度:1/320 絞り:F8.0 焦点距離:320mm
チャラセナイの滝
撮影日時:2008/08/15 11:12:33 シャッター速度:1/100 絞り:F6.3 焦点距離:29mm
知床半島を進むと日が差してきた
 風の強いルシャ湾を越えるとチャラセナイの滝だ。知床半島には古い海底火山と新しい陸上の火山活動の間に、最終氷河期の段丘堆積物があり、基底に不整合面が有る。このチャラセナイの滝では不整合面が高さ60mの段丘崖となっていて遠くからもよくわかる。タキノ川の水はその不整合面からオホーツク海に流れ落ちていく。滝の下には番屋があるが、ここに来るには船しか交通手段がないだろう。
 今日は雨が降るかと思ってレインスーツまで持ってきたが、ウトロから先の知床半島は薄日の差す曇り空で、しかもチャラッセナイの滝あたりからは時々太陽まで顔を出し、雨の心配どころか日焼けの心配をしなければならないほどだった。おかげで真っ青な空と言うほどではないが、それでもそれなりの写真を撮る事ができた。
 気付かないままたこ岩を通過し、やがてカシュニの滝に到着した。カシュニの滝はチュラセイ、つまり滝が落ちている所という意味で、知床岳から流れてきたチャラセナイ川の清流が、巨大な洞窟を背景にオホーツク海に直接流れ落ちる豪快な滝だ。ゆえに知床観光船のスポット的な存在となっている。おーろら号のような大型観光船ではあまり近くまでは近付けないが、小型クルーザーはカシュニの滝のギリギリまで接近していた。写真を撮るなら近くまで行ければいいというものではないが、次に知床観光船に乗る時には小型クルーザーでもいいかなと思ってしまう。
撮影日時:2008/08/15 12:30:19 シャッター速度:1/200 絞り:F7.1 焦点距離:230mm
カシュニの滝
撮影日時:2008/08/15 12:28:12 シャッター速度:1/250 絞り:F10 焦点距離:29mm
レタラワタラと観音岩
 さらに進むと観音岩とレタラワタラだ。レタラワタラとは観音岩のある白い岩壁で、観音岩は岸壁の右側に見える観音像の様な白い岩峰だ。私は最初この観音岩は、アイヌの人々が岩に彫刻を施してこのようになったのだと思っていたが、どうやら自然の造形美でこのような観音像ができたらしい。
 観音岩を過ぎると知床山脈は険しさがなくなってなだらかになり、やがてメガネ岩が見えてきた。このメガネ岩は北海道の名付け親である松浦武四郎の知床日誌では、昔弁慶が蝮退治した時、その妹がこの穴から見ていたという伝説の岩だ。 でもこういった観光地の岩で、尖っていたらみんなローソク岩という名前になるし、穴が開いていたらみんなメガネ岩という名前になるような気がする。
 メガネ岩、獅子岩と続くと、ようやく知床岬だ。知床岬は海面から30〜40m崖を登った台地の上に比較的広い草原があり、何となくこの断崖絶壁の中のオアシスというか楽園というかシャングリラのように見えてしまう。そしてその草原の後ろの山の中腹に知床岬灯台が建っていた。ここは一般の人の立ち入りが禁じられており、まさに地の果てのような場所だった。
撮影日時:2008/08/15 11:38:39 シャッター速度:1/100 絞り:F5.6 焦点距離:170mm
メガネ岩
撮影日時:2008/08/15 11:46:37 シャッター速度:1/200 絞り:F8.0 焦点距離:29mm
知床岬
 おーろら号は11時45分に知床岬に到着すると、左に大きくUターンして元来た海を引き返し始めた。そして船は180度進路を変え、航跡の彼方に知床岬が見えるようになると、何となくもの悲しくなってしまった。ああ、ここが人跡未踏の知床岬なんだと。
 往路は最上階のデッキで右舷側の一番いい場所を独占していたが、復路は逆となってしまう。しかしほとんど観光地は行きに撮影していたので、私はデッキの上の煙突の日陰にあったベンチに座るとコンビニで買った弁当を食べる事にした。往路はみんなデッキの上に出ていたが、復路は船内に戻ったりベンチで弁当を食べたりデッキで写真を撮ったりと、みんなバラバラで、何をするにも余裕があった。
 食事を終えた後もベンチに座って旅の日記を書いた。デッキの上のベンチは日陰で太陽の直射日光が当たらないだけでなく、往路にはうるさくて聞こえなかった観光案内の放送が聞こえるので、放送を聞きながら写真を撮り逃した場所の写真を何枚か追加で撮影する。往路と違って復路はデッキもガラガラなので写真を撮るのも楽だった。
撮影日時:2008/08/15 12:11:10 シャッター速度:1/200 絞り:F9.0 焦点距離:29mm
航跡を引きながら知床岬から離れゆく
撮影日時:2008/08/15 13:37:20 シャッター速度:1/320 絞り:F8.0 焦点距離:320mm
ウミウのデコイ
 復路はベンチで弁当食べて旅の日記を書いていたらあっという間に戻ってきた。さすがに片道2時間の航路をずっとベンチに座っていたらもったいないので、カムイワッカの滝を過ぎたあたりからデッキの左舷側に陣取って再び写真を撮る。往路でも見かけたが、このあたりの岩場にはウミウがたくさん営巣していた。しかしよく見ると何かおかしい。ウミウがまったく動かない。これはきっとウミウをこの場所におびき寄せる為のデコイに違いない。するとほとんどが偽物で、一部に本物がいるかもしれないと動くウミウを探したが、どうやらすべてデコイのようだった。
 オーバーハングあたりで船から知床連山のパノラマ写真を撮影する。さすがに動いている船からパノラマ写真を撮るのは難しいが、それでもどうにかそれらしく撮る事ができた。ただ、知床岬付近では晴れていたが、ウトロに近付くにつれ再び曇り始め、知床連山は頂上まで見渡す事はできなかった。
撮影日時:2008/08/15 10:25:58 シャッター速度:1/250 絞り:F9.0 焦点距離:29mm
知床観光船から見たオーバーハングと知床連山
 おーろら号は13時45分頃にウトロの港に戻ってきた。プユニ岬を過ぎるとオロンコ岩が近づいてくる。遠くから見ていると小さな岩だが近くから見るととても大きい。そして13時55分にウトロ港の岸壁に着岸。そして4時間近く乗ったおーろら号を下船する。ウトロに戻ってきても雨は降っていなかった。今日は一日雨との天気予報だったが、ここまでまだ雨は降っていない。気象庁の天気予報もいい加減なものだ。
 おーろら号を下船すると自転車を回収し、ウトロの町のコンビニに立ち寄る。本当なら今日も自炊といきたいところだが、ガスの残りが少なかったのと、夕方になって雨が降り出したら自炊できなくなってしまいそうだったので、コンビニ弁当とカップ野菜、寝酒、ヨーグルト、そして明日の朝食にパンとおにぎりを購入する。バナナヨーグルトは今回の北海道自転車ツーリングではまさにマイブームとなってしまったようだ。
撮影日時:2008/08/15 13:45:52 シャッター速度:1/100 絞り:F8.0 焦点距離:45mm
プユニ岬
撮影日時:2008/08/15 13:49:43 シャッター速度:1/100 絞り:F7.1 焦点距離:45mm
船から見たオロンコ岩
 コンビニで買い出しを済ませて再びホテル街への急坂を登る。今回は重い荷物をテントに下ろしてきたので急坂を登るのも楽だ。14時20分にテントに戻ると、朝、隣のテントで椅子に座って本を読んでいたライダーが、朝見た姿のまま本を読んでいた。きっと今日一日、どこにも動かず本を読んでいるのだろう。優雅なものだ。
 テントに戻ると着替えを済ませ、ズボンも含めて着ていた服をすべて洗濯する。ズボンを乾かしている間はジャージー姿だ。14時40分に洗濯が完了すると洗濯物を自転車に干す。自転車に干したところでこの天気では乾くはずもないが、少しでも水分を垂らしておかないと乾燥機にかけても乾かないのだ。30分ほど自転車に干していたが、これ以上遅くなると夕陽台の湯が混雑しそうだったので、15時10分から洗濯物を抱えて歩いて夕陽台の湯に向かう。
 夕陽台の湯に行くと、温泉に入る前にコインランドリーに行く。今日は昨日羅臼温泉野営場で洗濯してまだ乾いていない洗濯物と、先程洗濯したばかりの洗濯物を乾燥させなければならない。これだけ大量の洗濯物があると乾燥機に入れてもなかなか乾かない。また大量のお金を乾燥機に取られるのかと覚悟していたら、驚いた事にこの夕陽台の湯の乾燥機は100円で40分という格安価格だった。これは一般的な乾燥機の値段の半分から1/3程度だろう。今日はこれまで履き続けたズボンとシャツ1枚、サイクリングジャージー1枚、サイクルパンツ2枚、靴下2枚を乾燥させる必要があったので、40分では乾かないと考え、80分間の200円を投入する。
 洗濯物を乾燥機に投入すると、今度は温泉に向かう。まだ時間が早かったせいか温泉は誰も入っていなかったので、露天風呂の写真を撮る。夕陽台の湯の露天風呂は夕陽が見られる事で有名だが、私に言わせれば木が多くて見晴らしは悪い。もう少しまわりの木を伐採して見晴らしをよくしてくれた方が開放感があっていいと思う。
撮影日時:2008/08/15 14:19:48 シャッター速度:1/80 絞り:F4.5 焦点距離:29mm
知床野営場でのキャンプ風景
撮影日時:2008/08/15 15:11:01 シャッター速度:1/30 絞り:F3.5 焦点距離:29mm
夕陽台の湯の露天風呂
木立の向こうにウトロの町並みが見える
 15時30分に温泉からあがると500ccのコーラを買って休憩室で飲みながら旅の日記を書く。この夕陽台の湯の休憩室はこじんまりとしていて、まるでどこかの家庭の居間にでもいるような雰囲気だ。旅の日記は早々に書き終えてしまったが、乾燥機が終了するのが16時30分なので、それまでのんびりと高校野球を見ながらジュースを飲んでゆっくりする。
 今朝の天気予報では今日はウトロは一日雨だったはずなのに、朝は曇ってこそいたが視界はよく、知床岬は晴れてさえいた。さすがに夕方になってから視界も悪くなってきたが、それでも今日は一日雨と言われて覚悟していただけに、撤収も設営も雨に遭わずに済んで助かった。よく考えたら私の北海道自転車ツーリングの設営と撤収で雨だったのは、2003年の羅臼、2006年の阿寒町と浜小清水くらいではないだろうか。そう考えるとどうにか雨を避けながら設営撤収しているような気がする。
 16時30分になったので乾燥機から洗濯物を回収すると、あれだけ濡れていた大量の洗濯物が、ものの見事に乾いていた。この夕陽台の湯の乾燥機は値段も安くて性能もいいので、私のお気に入りとなってしまった。1台しかないのが欠点ではあるが、これからも活用させてもらおう。
 夕陽台の湯を出ると、外は雨が降っていた。温泉まで歩いてきたのでレインスーツは持っていないが、帰れないほどではなかったので雨に打たれながら歩いて帰る。天気予報では雨だったのだから仕方ないだろう。テントまで戻ると洗濯物を片付け、やる事もなくなったので16時50分から足にアンメルツを塗って至福の時を過ごす。昨日も早い時間に塗ったのに夜中に足が痛くなったのはなぜだろう。就寝する6時間以上前に塗らないといけないのだろうか。
撮影日時:2008/08/15 20:16:23 シャッター速度:1/8 絞り:F3.5 焦点距離:29mm
テントから見た知床野営場の夜景
 天気予報を確認すると、今夜は雨だが16日は曇り、17日は曇り時々晴れ、18日は晴れ時々曇りになっている。2日間は雨を覚悟していただけに助かった。雨も降り始めた事だし17時40分から少し早いが明るいうちに夕食を食べる事にする。今日の夕食はコンビニ弁当とカップ野菜、そしてバナナヨーグルトだ。昨日はさすがに自炊したいと思っていたが、今日のように雨降りだとコンビニ弁当でよかったと思ってしまう。今日は温泉の休憩室で500ccのコーラを買い、飲み切れずにテントまで持って帰ってきたので、今夜は寝酒は飲まずに明日の夜に飲む事にして、今日はコーラを飲む事にしよう。
 ウトロではワンセグが入るので18時からNHKのニュースを見る。旅の日記は温泉の休憩室で書き終わってしまったので、30分ほどニュースを見るとやる事もなくなってしまった。ワンセグはバッテリーの消耗が激しいのであまり長時間見る事もできない。18時を過ぎると雨が激しくなってきて、いつもなら遅くにやって来るライダーもあまり姿を見かけない。おそらく雨の中の設営を嫌がってライダーハウスに逃げたのだろう。
 時間も余ったので明日以降の予定を考える事にした。明日はキムアネップ岬まで135km程走るか浜小清水まで80km程走るか、天候次第だ。明日は斜里の知床博物館に行きたいが、知床博物館は9時スタートなので、ここを6時30分頃に出発といったところか。いや、峰浜にある天まで続く道にも行きたいので、ここを6時出発とし、9時に知床博物館、11時30分に喫茶停車場にすれば、17時にはキムアネップに到着するだろう。
 19時からオリンピック柔道の試合を見る。20時30分にはやる事もなくなってしまい、今日は少し早いが寝る事にした。根室釧路を抜けて以来、夜が寒くなくなり、今日もそれほど着込む事なく寝る。明日の朝、雨が降っていない事を祈る限りだ。

走行データ
走行距離   33.3km
走行時間   2時間51分
ペダリング数   6820回
平均時速   12.4km/h
最大速度   58.5km/h
平均ペダリング数   40rpm
総走行距離   1649.1km
天候   曇り
最高気温/最低気温   27℃/16℃

食事
朝食   おにぎり、パン
昼食   コンビニ弁当
夕食   コンビニ弁当、カップ野菜、ヨーグルト

出費
キャンプ場   知床野営場   300円
朝(コンビニ)   弁当、ジュース   503円
知床観光船   おーろら号   6000円
夕(コンビニ)   弁当、カップ野菜、寝酒、ヨーグルト、パン、おにぎり   1010円
温泉   夕陽台の湯   500円
温泉   ジュース   150円
合計   8463円

キャンプ場
名称   国設知床野営場
場所   ウトロホテル街の北の端
  北緯44度04分25秒、東経145度00分06秒
費用   300円
設備   トイレ、炊事場
風呂   500mほど離れたところにウトロ温泉夕陽台の湯あり
ゴミ   ゴミ箱あり
行きやすさ   ホテル街にある事を知らなければ気付かない
乗り入れ   テントまで車、バイクの乗り入れ可
特徴   ウトロのホテル街にあるキャンプ場
  国道334号線を走っていたら気付かない
  キャンプ場に夕陽台展望台があり夕陽が見れる
  2008年に改修され管理棟はとてもきれいになった
  トイレはまだ簡易便所だが、そのうちに改修されるだろう
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