夜に何度か目覚めたようだったが比較的眠れた方だろう。今朝は寒くもなく暑くもなくでちょうどいいくらいの温度だった。おそらく気温20℃弱といったところか。目覚めたのは4時20分だった。まだ早かったのでもう一度寝ようとするが、ここはカラスはいないもののウグイスの鳴き声がうるさくて寝ていられなくなり4時30分に起きることにした。テントから外を見ると不思議な光景が広がっていた。空は雲に覆われているのだが函館市街も雲で覆われている。つまり雲と雲の間の層にいた。これでは景色もよくないし朝日も見えないので朝から昨日と今日の旅の日記を書き始めた。 5時には旅の日記も書き終えてしまったので撤収と朝食の準備を始める。霧雨こそなかったが、夜露でテントは濡れており、洗濯物は乾いているどころか干す前よりも濡れていた。今日の天気予報は晴れとのことなので自転車で走りながら荷台で干すとしよう。
ところが2011年11月に発売されたマルちゃん正麺は「生麺うまいまま製法」という従来のインスタントラーメンとは異なる生の麺に近い味となめらかさコシのある食感により爆発的ブームとなった。私もブームに乗ろうとマルちゃん正麺を購入して食べてみたが、その味のおいしさよりも驚いたのが麺が丸型だった事だ。これなら再び麺を割る事なくコッヘルで炊く事ができ、かつ生の麺に近いおいしい味をキャンプ場でも食べる事ができると、価格は一般的なインスタントラーメンよりも2倍近く高いにもかかわらず今回の北海道自転車ツーリングから8食分も持参してきた。 昨夜はサントリーの山崎をシングルで2杯飲んだ。さすがにこの程度では二日酔いにはならなかったが、あまり食欲はなくラーメンをすべて食べるのに苦労する。朝食を作っている頃は青空が見えており日も射してきたが、次第に雲に覆われるようになり撤収を始める頃には霧まででてきた。昨夜は疲れていてこれから16日間のキャンプ生活に備えた荷物の積み替えをしなかったので朝に積み替え作業を行う。そしてテントを撤収して出発の準備をして6時20分にキャンプ場を出発した。 天気が良ければここからさらに坂を登ってパノラマ眺望台にでも行こうかと思ったが、この曇り空だったのとパノラマ眺望台への道は8時からしかゲートが開かないので断念する。くきじひき高原キャンプ場を出発すると昨日苦労して登った坂道を一気にかけ降りる。さすがに最近はノーブレーキで降りるのが怖くなったので30km/h以上出さないようにブレーキをかけ続けたが、ブレーキを握りすぎて麓に着く頃には手が痛くなってしまった。坂を下ると寒いかと思ったがウィンドブレーカーなしでもそれほど寒くはなかった。そして6時30分に麓まで降りてきた。登る時は1時間30分かかったが、下りはわずか10分だった。
国道5号線を標高で100mほど登ると全長670mの大沼トンネルがあった。この大沼トンネルは歩道が広かったので迷わず歩道を走る。こんな交通量の多いトンネルの車道を走っていたら生きた心地がしなかっただろう。大沼トンネルを抜けてすぐに大沼へ向かう交差点がある。私は普段こうした大きな交差点は二段階右折するのだが、この交差点は歩行者や自転車のことをまったく考慮しておらず、横断歩道がなかったので車と同じ右折レーンに入って7時ちょうどに国道5号線を外れて大沼への道道338号線に入った。
途中、東大沼キャンプ場が見えてきた。私が昨夜泊まったきじひき高原キャンプ場はほとんど人がいなかったが、このキャンプ場は家族連れだけでなくライダーらしきテントもかなりの数が張ってあり人気の高さを伺わせた。きじひき高原キャンプ場と何が違うのだろうか。東大沼キャンプ場は無料なのに対してきじひき高原キャンプ場は300円かかるがこの程度の差でこれだけ人気に差が出るとは思えない。眺めの良さでも決して負けていないと思うが。
大沼と小沼を分断する狭戸まで戻りこれでようやく大沼を一周した。私は大沼には初めて来たがまるで洞爺湖のスケールを小さくして温泉街をなくしたような雰囲気で気に入ってしまった。月見橋の南前の大沼側と月見橋の北側の小沼側に駐車場がありそこから大沼と小沼を見渡せるようになっていたので自転車を持ち込んで撮影する。
9時ちょうどに国道5号線に戻ってきた。2時間の寄り道だったが大沼散策はなかなか楽しめた。国道5号線に戻ってすぐにソロのチャリダー2組とすれ違った。北海道に来て初めて見るチャリダーに嬉しくなってしまう。さらに幟を背中に差して徒歩で歩いている人も見かけた。自転車でも北海道を回るのは大変だが徒歩だともっと大変だろう。 今日は北からの風が吹いているようでこの国道5号線の区間は向かい風となった。しかも大沼から森までは下りだけだろうと思っていたけど、実際には勾配はわずかだが登りもあった。そして長い下りを下りきると森の町に入った。キャンプ場で朝食を食べて以来、4時間以上も何も食べていないのでそろそろ何か食べたい。森でコンビニで弁当でも買おうかと考えたが、JR森駅に立ち寄っていかめしを食べることにした。
いかめしを食べて10時5分に森駅を出発。次はこの近くにある榎本武揚・土方歳三上陸の地だ。私は国道5号線には戻らず海沿いの道道1028号線を走る。さらに脇道に入ってチャリダーなど絶対に走らないと思えるような漁村の道を抜けるとJR桂川駅を少し過ぎたところに榎本武揚・土方歳三上陸の地があった。私は記念碑の前で写真撮影を済ませるとここで休憩しようと考えた。しかしここには東屋はもちろんのこと日陰がなく休憩できそうになかったのであきらめて先に進むことにした。この先休憩できそうな場所はヤクモ飲料くらいだろうか。
国道5号線を走っていると荷物満載のチャリダーとすれ違った。4サイドにバッグをつけてなおかつキャリアの上にまでバッグを付けた彼の自転車はとても重そうに見えた。あれだけ荷物があると荷物の重さだけで25kgはあるのではなだろうか。最近はネットにリアルタイムで書き込みしながら走る人も増えたのでスマホだけでなくタブレットやパソコンを持ち歩くとそれだけで重量が増えてしまうのだろう。 森を出発した頃から雲が晴れて日が射して暑くなってきた。噴火湾はきれいに見えるのだがこの付近は見るべきものも少なく、かつ交通量も多いので走りにくい。路肩が広いのが幸いだが、時々狭い場所もあったりしてそんな時に後方から大型トラックに接近されると恐怖を感じてしまう。 交通量の多い国道5号線をひたすら走り、11時30分にヤクモ飲料に到着した。ヤクモ飲料とはヤクモ飲料の会社の入り口に設けられた無料の自然湧水のことだ。昔このあたりは海だった事から地下には瀬棚層と呼ばれる第三紀層に生息していた二枚貝、姫貝、珊瑚の密集した貝殻層が分厚く堆積しており、地下80メートルから吹き上がった伏流地下水は、この貝化石層を通ることで貝殻からカルシウムを吸収し、天然風化カルシウムたっぷりのミネラルウォーターとなっているとのことだ。 私はキャンプ場で500ccほど給水しただけでここまで走っていたので、もうボトルの水は空だった。そこでボトルにこの湧水を詰め、さらに頭から水をかぶって涼んだ。するとそこへランナーのおじさんもやって来て同じことをし始めたので挨拶する。どこまで行くのかと聞かれたので熊石と言うと雲石峠は熊が出るから気をつけてと言われた。まあ大丈夫だとは思うが… いかめしは食べたものの、私は大沼から3時間ほど休憩なしで走っていたので、このヤクモ飲料の隣にある百万庭園という池や滝のある小さな庭園のベンチで休憩がてらに旅の日記を書くことにした。さすがに疲れも出てきたのでサイドバッグからマグカップを取りだすとアミノバイタルを自然湧水で溶かして飲んだ。それからも日陰のテーブルで30分ほど旅の日記を書き12時ちょうどに出発しようとした。 ところが出発の直前に再度アームカバーとタオルを濡らしておこうと湧水に行っている間にテーブルに立てかけていた自転車が倒れてしまった。自転車を倒してしまうのは毎日のようにしているので驚きもしなかったが、戻ってみるとサングラスが砕けていた。具体的にはフレームが真ん中からポッキリと折れていた。これではサングラスとして使えない。まだ北海道自転車ツーリングの2日目でサングラスを壊してしまうとはついていない。2010年の北海道自転車ツーリングでもサングラスをなくしてしまったが、よくなくしてしまうものだ。幸いなことにこの先の八雲の町なら薬局やホームセンターでサングラスは売っているだろうから寄り道してでも買っておこう。ここで買い逃すとこの先の私のルートでは札幌まで買えなくなってしまう。
国道5号線のバイパスを外れて八雲の町中へと続く道道42号線へと入り薬局かホームセンターを探していると、ツルハドラッグとサッポロドラッグが隣あって並んでいるのを発見した。私は手前側にあったツルハドラッグに入るとサングラスを探した。サングラスは確かに売っていた。しかも315円という激安で。しかしそのほとんどはファッション用のサングラスでスポーツ用の気に入ったのが少ないのと、唯一のデザインが気に入ったのは欧米人向けにフレームがかなり湾曲していて平面顔の私の顔にはフィットしなかった。しかしどうせ315円なんだし気に入らなければ捨てればいいやととりあえず購入することにした。 サングラスを入手したことで私の心は再び晴れやかになった。せっかく八雲の町の中心部に来たことだし木彫熊北海道発祥記念碑に行くことにした。場所はあまり定かではなかったが、JR八雲駅を過ぎたところの踏切を渡った先に公民館があり、その庭に木彫熊北海道発祥記念碑があった。公民館の駐車場横に石碑があるだけだが木彫りの熊は子供の頃実家に置いてあっただけに木彫りの熊には思い入れが深くてついつい訪れてしまう。 さて12時40分にようやく観光地巡りも終わり八雲の町を出発した。ここまで85kmほど走っているのでカメ作戦よりも少しばかりハイペースだ。しかしこれから雲石峠を越えるのできっとペースは落ちることだろう。キャンプ場まであと55kmほど。これをカメ作戦で走ると4時間ちょっとだが、途中で427mの雲石峠を越えることを考えるとプラス1時間ちょっと。するとキャンプ場着は18時頃か。私はもう少し早く着きたかったが、あまり焦って走るのは嫌だったのでマイペースで走ることにする。 道道42号線から国道277号線に入り雲石峠を目指す。この国道277号線をしばらく走ると私はこの雲石峠の素性を知ることとなった。まず雲石峠は標高427mの標高だけを見れば大したことのない峠だが、頂上まで一定に登るのではなく、ひたすら鉛川沿いにアップダウンを繰り返すのだ。おそらく標高200mまで登るのに積算上昇高度で500mは登ったことだろう。それほどまでにアップダウンを繰り返しながら登った。
トンネルを抜けたところからしばらく走るといよいよ雲石峠の本格的な登りが始まる。麓の標高は200m程度なので230mほど登ることになる。距離にして3kmなので平均勾配は7%といったところか。ところがこの坂が予想以上に急だった。勾配8%は当たり前。昨日のきじひき高原の登りでも一番軽い34Tのギアは残していたのにここではそれも投入することになった。おそらく一番きついところでは10%は越えていたことだろう。私は230mの登りであれば40分もあれば登れると思っていた。しかし直射日光による暑さと急勾配のためグロッキー状態となり、20分登った5合目の標識の前で自転車を止めて倒れるように14時20分から休憩モードに入った。 自転車を降りて路肩に座り込むが15分ほどは息を切らして身動きすることさえできないほどだった。それでも標高が高いこともあってしばらくすると自分の汗で涼しいというより寒さを感じるようになってきた。私はハンガーノックにもなりそうになっていたので八雲で買ったおにぎりを食べるが、固形物を食べるのには相当苦労した。この5合目の道ばたで旅の日記を書くでもなく15分は動くこともできず、さらに10分ほど休憩して14時45分に再び急坂を登り始めた。 この雲石峠ではあまりにも登るのに疲れた。今回の自転車ツーリングでも数多くの峠を走るコースに組み込んだが止めた方がいいのではないかという気がしてきた。休憩後の登りでも本調子では登れなかったし、峠に登るのが心配になってきた。しかし休憩から5分も登るとペース配分がわかったのか再び本調子になり、どうにか頂上まで登りきることができた。 15時5分に雲石峠の頂上に到着。頂上にはパーキングがあったが休憩することなく頂上で写真だけ撮って反対側に下り始めた。いつものように30km/h以上出さないようにブレーキをかけつつ下る。下りはペダルを回さなくていいので楽だが、ブレーキをかけ続ける手が痛くなってくる。
雲石峠の熊石側は多少のアップダウンはあるものの、ほとんどが下りメインで比較的楽に走ることができ15時40分に国道229号線に合流した。ここから大成野営場まであと20kmほどだから17時には到着するだろう。途中熊石にコンビニがあったので今夜の夕食の食材としてカップの野菜とヨーグルトのパックを購入。ヨーグルトのパックは3個入りだったので、その場で1つだけ食べる。
フライが濡れていたので乾かそうと日向にテントを張ったが、山間のキャンプ場ではあっという間に日は落ちて陰になってしまった。17時30分には設営完了。米を洗って水に浸すと、とりあえずお金を払いにあわび山荘に行き、テントに戻ると着ているものを全部脱いで洗濯し自転車に干しておく。
米を20分炊いて10分蒸らしてできあがり。今日の夕食は中華丼と男爵いものスープとカップサラダとヨーグルト。米はうまく炊けたが中華丼はあまりおいしくなかった。それよりも男爵いものスープはおいしかった。これは親がハウスの株主で株主優待の商品として送ってもらったものを分けてもらったものだが、これだけおいしいのなら身銭を払ってでも買っていいと思ってしまった。
明日の天気を聞こうとラジオを聞いていたら網走湖のシジミ漁が今年はできないというニュースをやっていた。どうも7月下旬に網走湖でシジミを捕ったり網走でシジミを買った人から異臭がするとの指摘を受けシジミ漁を中断して検査機関に臭いの原因の調査を要請しているらしい。網走湖のシジミ漁と言えば私が最終日に泊まる予定にしている女満別湖畔キャンプ場でも早朝に見られる光景だが、今年はそれができないとは漁師さんにとって災難だろう。
私が持参したのはソニー製のSRF−R431というFM/AMラジオだ。このラジオはポケットサイズでありながらわずか単四電池1本でAMが19時間、ヘッドホン使用時は52時間も聞けてしまうという省エネで、しかもヘッドホン巻き取り式とあってとても使い勝手が良い。ラジオであればどこででも聞けるし、天気予報も携帯のiモードサイトとは大違いで雨に備えた対処が可能になるだろう。なぜ10年間もラジオを持って来なかったのか不思議に思えるくらいだ。 明日の天気予報は晴れ時々曇りでしばらくは晴れが続きそうな雰囲気だ。ありがたいことだ。今日の旅の日記はまだ2/3ほどしか書き終えていなかったが、そろそろ眠くなってきたので22時には寝ることにした。今回の北海道自転車ツーリングでは例え旅の日記を書き終わっていなくても22時には寝るようにしている。今日はとても暖かく、と言うより暑くてジャージーも着ずに寝る。朝寒くて風邪を引かないだろうか。
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