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北海道自転車ツーリング 3日目
京極〜岩内〜ニセコ −ニセコパノラマライン−
2009年08月09日

3日目の走行地図

3日目の速度グラフ
速度
3日目の高度グラフ
高度

 昨夜もよく眠れず、1時間おきに目が覚めていたような気がする。気がついたら5時10分だった。少し寝坊したので慌てて起き出す。テントを開けると昨日に続いて今朝も深い霧で、太陽が幻想的に出ていたので写真を撮る。今朝は昨日以上に露付きがひどく、自転車はびしょびしょに濡れており、せっかく干していた洗濯物も干した時以上に濡れていた。朝食にラーメンを自炊して食べる。太陽が顔を出していたので露付きで濡れたテントを干している間に、昨夜のチャリダーと話をする。彼は今日札幌の自宅に帰るそうだが、まだどの道を通るかは決めかねているようだった。おそらく中山峠を越えるか、支笏湖経由になることだろう。
撮影日時:2009/08/09 05:17:33 シャッター速度:1/200 絞り:F6.3 焦点距離:45mm
朝は霧が出ていてキャンプ場は
幻想的な雰囲気に包まれていた
撮影日時:2009/08/09 05:26:53 シャッター速度:1/100 絞り:F5.6 焦点距離:230mm
朝からラーメンを自炊する
 今日着る服は新しいパナソニックのサイクリングジャージーを着ようかと思ったが、どうせ濡れた服を着ても自転車で走ればすぐに乾くだろうと考え、昨夜自転車に干して乾かなかったデュラエースのサイクリングジャージを濡れたまま着る。冷たくていい気持ちだ。さすがに乾いていないパンツまで履くのは気が引けたので、これは新しいのを出して着る。乾いていないパンツは、今日走りながら干すことにしよう。
 しばらくテントを日光に当てて乾かしていたが、もう乾きそうになかったのでテントを撤収する。朝早いうちは霧が出ていたが出発する頃には晴れていたので、日焼け止めをしっかり塗り、6時30分にキャンプ場を出発する。キャンプ場のすぐ近くに道の駅「名水の郷きょうごく」があり、ここの羊蹄ふきだし湧水が有名だったので行ってみることにした。駐車場に自転車を止めて200mほど歩くと羊蹄ふきだし湧水に到着。何とまあ雰囲気の良い場所で、朝早いこともあって観光客は誰もおらず、静かな木立の中の小川のせせらぎといった場所で、私のお気に入りの場所となってしまった。
撮影日時:2009/08/09 06:40:50 シャッター速度:1/80 絞り:F5.0 焦点距離:29mm
名水の郷きょうごくも霧で幻想的だった
撮影日時:2009/08/09 06:41:50 シャッター速度:1/50 絞り:F4.0 焦点距離:29mm
羊蹄ふきだし湧水でボトルに給水する
 溶岩からなる羊蹄山は透水性がよく、降水のほとんどが地下に浸透し、数十年の歳月をかけて地下水が標高240mから270m付近で突如として噴出するそうだ。水量は一日53万トンにも達し、その中でも最大の湧水量を誇るのが羊蹄のふきだし湧水だ。その湧水は環境省制定の名水百選にも選ばれており、まろやかで甘みがあるような感触でおいしかった。ボトルいっぱいに湧き水を積めて6時50分に道の駅を出発。そこからは道道478号線を走る。
 道道478号線は最初のうちアップダウンが激しい。そこを乗り切れば、あとは左手に羊蹄山を見ながら緩やかな下りが続くようになる。羊蹄山は頂上まできれいに見えていたので自転車を交えて羊蹄山の写真を撮った。せっかく赤外線レリーズを持ってきていたので、ここでも羊蹄山をバックに自分撮りに挑戦する。なかなかいい感じだ。しかし真横から撮った写真を見ると、自分のポジションはかなりの前傾姿勢で、ツーリングと言うよりはロードのポジションに近い。シートとハンドルの落差が10cmもあるのだから当然と言えば当然だ。もう少し上体を起こしてのんびり走った方が景色もよく見えるのだが、普段の走行スタイルがこれなので、そう簡単には変えられない。
撮影日時:2009/08/09 06:59:02 シャッター速度:1/125 絞り:F7.1 焦点距離:29mm
左手に羊蹄山を見ながら走る
撮影日時:2009/08/09 07:10:47 シャッター速度:1/125 絞り:F9.0 焦点距離:53mm
羊蹄山をバックに自分撮りに挑戦
 ところが少し走ると急に霧が深くなり、あっという間に羊蹄山は霧で隠れてしまった。せっかく羊蹄山を眺めながら快適な自転車ツーリングができると思っていたが残念だった。霧の中を走り続け、7時30分に倶知安の国道5号線との交差点に到着する。
 私はここで悩んだ。今日は積丹半島を回るべきか、それとも蘭越と岩内経由でニセコ五色温泉に行くべきか。しかし積丹半島を回ると、ここからあと130kmも走らなければならないが、神威岬での観光時間などを考えていたら、キャンプ場到着は19時頃になりそうだ。さすがにそんなに走ってられないので、今日は計画を変更して、ニセコ、蘭越、岩内を経由してニセコパノラマラインを走り、五色温泉まで行く事にした。
撮影日時:2009/08/09 07:21:32 シャッター速度:1/160 絞り:F8.0 焦点距離:29mm
突然羊蹄山は霧で包まれた
撮影日時:2009/08/09 07:50:21 シャッター速度:1/200 絞り:F8.0 焦点距離:29mm
霧の国道5号線を走る
 ここからの国道5号線は昆布までの20kmほどだけ走ったことがなかった。私は少し楽しみだったが視界300〜500mの霧で何も見えず、おまけに緩やかなアップダウンが多かった。国道5号線を走っていると、前方30mほどのところに突然蝦夷リスが飛び出してきた。そして道の真ん中のセンターライン上で立ち止まると私の方を注視した。私は路肩を走っていたのでセンターラインまでは少し距離があったが、さすがに私が近づけば蝦夷リスは逃げるだろうと思っていたら、意外にも私が横を通過しても蝦夷リスは逃げなかった。人間慣れした蝦夷リスだと考え、私は自転車を止めて写真を撮ろうとしたが、その時向かいから対向車が来たので、蝦夷リスはそのまま国道から走り去ってしまった。
 倶知安からニセコまでの国道5号線は行程の2/3までがアップダウンの多い登り基調で、残りの1/3はニセコに向かって下る感じだった。それでも涼しいしまだ朝早いこともあって元気に走り、8時10分にニセコに到着。道の駅「ニセコビュープラザ」があったが、特に用はなかったのでそのまま通過する。
 出発から25km走ったところにニセコ町宮田ビューポイントパーキングがあったので8時20分から休憩する。せっかくだからここで2回目の食事とばかりに、昨日の中山峠で買ったあげいもの残りとヨーグルトを食べる。ここは羊蹄山のビュースポットらしかったが、残念ながら羊蹄山は雲に隠れてほとんど見えなかった。
 少し休憩して8時30分にパーキングを出発。カメ作戦としては2時間で25kmの、ちょうどのタイミングだ。それからも国道5号線を蘭越に向かって走るが、ニセコから昆布までは川を3つ横切る。そのたびに丘越えとなるのでアップダウンが多く、走るのに苦労する。このあたりを走る頃から所々雲の切れ間からニセコアンヌプリが見えるようになり、自転車を止めて写真を撮影する。
撮影日時:2009/08/09 09:51:08 シャッター速度:1/100 絞り:F8.0 焦点距離:53mm
ニセコの山々を見ながら道道267号線を走る
撮影日時:2009/08/09 09:59:31 シャッター速度:1/200 絞り:F10 焦点距離:115mm
道道267号線でも自分撮り
 昆布の町を通過し、9時20分に蘭越の町に到着。キャンプ場からゴミをずっと自転車に積んだままだったので、コンビニに立ち寄ってゴミを捨てる。蘭越から少し国道5号線を走って道道267号線に入り尻別川沿いに日本海を目指す。この道道267号線は交通量の少ない気持ちのいい場所かと思っていたが、予想以上に交通量は多く、しかも道沿いに民家が続いていた。地図にも載っていない集落がこんなところにもあるのだと感心してしまう。道道267号線は尻別川沿いのフラットな道で、右手にニセコアンヌヌプリを見ながら強い追い風の中、快適に走ることができた。ここでも私は三脚を取り出して自分撮りにチャレンジしたが、逆光だったのであまりいい写真は撮れなかったようだ。
 道道267号線を走り続けてようやく日本海に出た。今回始めて見る海で、しかもこれが最後となるだろう。私はしっかりと海を目に焼き付け、潮の香りをかいでおく。磯谷橋で尻別川を越えると10時30分に道の駅「シェルプラザ・港」に到着。この道の駅の隣には貝の館があった。この貝の館は4年前にここに来た時にも、貝とお話しがしたくて入ろうと考えたが、あいにく開館時間まで1時間もあったので断念していた。しかし今日は既に開館しているし貝とお話ししてみたかったので、4年来の念願かなって貝の館に入ることにした。
撮影日時:2009/08/09 10:25:36 シャッター速度:1/100 絞り:F8.0 焦点距離:45mm
貝とお話ししてみませんか…
撮影日時:2009/08/09 10:26:27 シャッター速度:1/160 絞り:F9.0 焦点距離:38mm
これが貝の館だ
 貝の館は、入館料が普段350円なのだが、今は三次元映像の設備が故障中との事で300円に値下げしていた。貝の館は建物自体が貝の形をしている。中に入るといきなり約5億年前海にいたとされる全長5メートルものチョッカクガイ(直角貝)の巨大復元模型が出迎えてくれ、驚かされる。私はこれが大王イカのようにも思えたが、正真正銘の貝だそうだ。動きの鈍い貝が何を食べればここまで大きく育つのだろうと思ってしまった。
 貝の館には他にも普段見慣れている貝から世界の珍しい貝まで約1500種5000点の標本があり、貝の分類や進化の歴史などがパネルで説明していて楽しめる。貝は地球上で10〜12万種類もいるそうで、その種別をなかま分けする事はなかなか難しいそうだ。その中でも私の興味を引いたのは、巻き貝の巻き方だ。巻き貝は右巻きが多いそうだが左巻きの種類もいたり、まれに逆巻きの貝もいるそうだ。この巻き貝の巻き方は卵が細胞分裂する時にずれる方向で決まるそうだ。他にも囲碁の白石はハマグリの貝殻から作られるそうだが、これも知らなかった。
 この貝の館には珍しい貝も数多く展示されており、収集家憧れの日本三名宝と呼ばれているオトメダカラ、ニッポンダカラ、テラマチダカラ、日本三美螺と呼ばれているバンザイラ、ジュセイラ、ショウジョウラ、強い真珠光沢を持つギンタカハマガイ、ヘリトリアワビ、リュウオウスガイなど、見ていてうっとりするような美しい貝が数多く展示されていた。私はそんな貝の館で30分ほど貝とお話ししていた。
撮影日時:2009/08/09 シャッター速度:1/6 絞り:F5.6 焦点距離:27mm
全長5mのチョッカクガイの復元模型が出迎えてくれる
撮影日時:2009/08/09 シャッター速度:1/13 絞り:F5.6 焦点距離:27mm
珍しい貝の入ったショーケースがたくさん並ぶ
 貝の館を出て道の駅でパンを食べてボトルに給水し、タオルとアームカバーを濡らして11時10分に道の駅を出発。ここまで60kmを走破しているので、カメ作戦はちょうどくらいだろう。ここからは国道229号線の日本海沿いの道だ。私は久しぶりに走る海沿いの道にうれしくなってしまった。逆風で少し走りにくいが、まあそんなことはどうでもいい。とにかく気持ちよく走れた。
 国道229号線の日本海沿いはトンネルが続く。私が走るわずか18kmの区間も例外ではなく、全長640mの磯谷トンネルに始まり、全長2754mの刀掛トンネル、全長638mのカスペトンネル、全長3570mの雷電トンネル、全長146mの敷島内トンネル、全長273mの鳴神トンネルと、全走行距離の4割ほどがトンネルだった。私はこの時の為にLEDライトを用意していたので迷わず点灯。十分な明るさがあり、従来までのHIDライトはもう必要ないことを実感する。
撮影日時:2009/08/09 11:16:23 シャッター速度:1/125 絞り:F8.0 焦点距離:38mm
日本海沿いのトンネルの多い国道229号線を走る
撮影日時:2009/08/09 11:37:52 シャッター速度:1/100 絞り:F6.3 焦点距離:29mm
これは断崖絶壁の迫る雷電トンネルの入り口
 短かった海沿いの道を堪能し12時10分に岩内の町に到着。出発からここまで80kmを走ったが、今日は昨日と違って平地が多かったので80km走っても疲れはあまりない。と言うよりこれから登りが続くから力をセーブしていたのが功をそうしたようだ。岩内の町でコンビニに飛び込む。今日はこの先コンビニはないだろうから、今日の夕食と明日の朝の分まで買っておかなければならない。そして店の前で牛乳を飲みながらパンを食べる。
 コンビニを出ると、町中の信号ばかりの国道を抜けて道の駅「いわない」に行く。この道の駅はトイレが駐車場から離れた場所にあるので何だか変だ。道の駅から離れたトイレでボトルに水を給水し、これからの山越えに備える。ついでに10分ばかり休憩して旅の日記を書き、12時40分に道の駅を出発する。
 どの道を走れば道道66号線、通称ニセコパノラマラインに出られるのかわからなかったが、道の駅の前の道をまっすぐに南下すれば無事に道道66号線に出ることができた。ここからはひたすら登りだ。晴れてきたこともあって坂を登ると汗が噴き出してくる。それでもパノラマラインというだけあって眺めは良いので、写真を撮りながら自転車を走らせる。ここでも自分撮りに挑戦したが、もう暑くてへばりそうだった。
撮影日時:2009/08/09 13:17:03 シャッター速度:1/250 絞り:F9.0 焦点距離:141mm
ニセコパノラマラインでも自分撮り
撮影日時:2009/08/09 13:21:27 シャッター速度:1/200 絞り:F7.1 焦点距離:170mm
五色温泉まであと24km
 道の駅から休憩なしで標高250mまで一気に登り13時20分から休憩する。このニセコパノラマラインは周りに木は多いが、今の時間帯は日陰が少なく、休憩できる場所を探すのも大変だった。休憩しながらふとツーリングマップルを見ると、ニセコパノラマラインの最高到達点であるチセヌプリ峠は832mになっていた。私はてっきり600mくらいかとたかをくくっていたが、832mもあると計算が狂ってしまう。100m登るのに20分かかるとして、832m登るには3時間。しかもそこから220m下って、さらに五色温泉まで190m登らなければならない。これだとどう考えても出発から4時間以上かかることになる。五色温泉到着は17時を過ぎることだろう。
 私は少し焦りだした。もう自分撮りなどしている余裕はない。汗だくになりながらも必死になって自転車を走らせ続けた。太陽は雲に隠れたり顔を出したりと気まぐれだったが、太陽が顔を出している間は、暑くて汗が噴き出し、水をガブガブ飲み続けて、このままではとても頂上まで水が持たないような気がした。しかしいったん太陽が雲に隠れると気温が下がって走りやすくなり、汗もほとんどかかずに登ることができた。
 14時10分に標高500m登ったところで休憩。ここでおなかが空いてきたので岩内のコンビニで買ったおにぎりを食べる。少し力が付いた感じだ。水はまだ半分は残っているし、この調子ならあと1時間30分程度で頂上に到着することだろう。
 こんな苦しい時に励みになるのはライダーとの挨拶だ。私はバイクが近づいてくると、ここぞとばかりに手を挙げて挨拶すると、ほとんどのライダーは手を挙げて返してくれるのでうれしい。このニセコパノラマラインは猛スピードで駆け抜けていくライダーが時々いるが、そんな人達はあまり挨拶を返してくれないし、ましてスピードを出しすぎているのでハンドルから手を離すこともできないのだろう。
 昨日もそうだったが、どうも私の腕時計の高度計は調子が悪いらしく、標高300mくらいまでは正しい標高を表示するのだが、標高500mを越えると、どうも高度が低く表示されるようなのだ。どんなにがんばって登っても高度計の表示では登ったことになっておらず、あてにならないのでそのうちに見るのもやめてしまった。しかしあとどれだけ登らなければならないかいつでも把握できるように、地図上で現在地を見失わないように気をつけながら走った。
 さらに登り続けて15時10分頃、標高700m付近に滝のような水の湧き出ている場所があった。さすがにエキノコックスが怖いのでこの水を飲むことはできないが、せめて乾いてしまったタオルとアームカバーを濡らして涼しむ。しかし自然の滝の割にはあまり冷たくなかった。
撮影日時:2009/08/09 14:33:43 シャッター速度:1/100 絞り:F7.1 焦点距離:77mm
ニセコパノラマラインは上まで登ると
しだいに景色が良くなる
撮影日時:2009/08/09 15:15:06 シャッター速度:1/125 絞り:F7.1 焦点距離:34mm
入り口で断念した神仙沼
 この滝を出発し、少し走ると神仙沼があった。神仙沼はニセコの高原地帯に点在する湖沼のなかでも、ひときわ美しい沼と言われているので、ぜひとも立ち寄りたかったのだが、時間があまりなかったのと駐車場から700mも歩かないと行けないので見学は断念するしかなく、入り口で写真だけ撮って退散する。ここでマイカーで来ていた観光客のおばさんが、「えぇ〜、自転車で来てる!」と驚きの声を上げていたが、これぞ私の一番鼻の高い時だ。この神仙沼の駐車場にはレストハウスがありトイレもあったのでボトルに給水しようかと考えたが、予備も含めてまだあと500cc近く残っていたので給水もパスする。
 神仙沼を過ぎると傾斜が緩やかになって走りやすくなった。それと同時に視界が開けて景色が急に良くなってきた。きっと森林限界を越えて木がなくなった為だろう。私は疲れきっていたが、さすがにこれだけの景色を見ては写真を撮らないわけにはいかず、カメラを取り出して写真を撮った。そしてようやく15時35分にチセヌプリ峠の頂上、標高832m地点に到着した。頂上を示す標識は何もなく少し寂しかったが、少し下ったところからの景色は最高だった。
撮影日時:2009/08/09 15:20:11 シャッター速度:1/100 絞り:F6.3 焦点距離:29mm
神仙沼から頂上までは比較的開けた場所を走る
撮影日時:2009/08/09 15:37:04 シャッター速度:1/100 絞り:F7.1 焦点距離:38mm
チセヌプリ峠の頂上から撮影
これからこの先に見える下りを下る
 チセヌプリ峠の頂上からはクネクネと曲がりくねった道を上から見下ろしながら、そこを今から駆け抜けていくのだ。私はブレーキを駆使しつつ、あっちこっちで自転車を止めて写真を撮りながら下ってきた。途中、車で来ている観光客などはどこかで車を止めて景色を楽しみたいようなそぶりをしていたが、このニセコパノラマラインにはそういったパーキングがまったくなく、途中で写真を撮れるのは自転車だけの特権と言えるだろう。
 頂上からずいぶん下って標高610m地点まで下ったところで道道58号線、通称倶知安ニセコ線に入る。ここからは今日の宿泊先であるニセコ野営場まで190mの登りだ。道道58号線に入ったのが15時50分なので、到着は16時30分といったところだろう。道道58号線に入るといきなり急な登りが続く。ここからの景色も素晴らしいのだが、すでに陽は傾いて逆光だったのと、少し霞んでいて写真に撮っても何も写らないだろうと考え、写真を撮ることはしなかった。
撮影日時:2009/08/09 15:41:21 シャッター速度:1/160 絞り:F8.0 焦点距離:29mm
これがニセコパノラマラインのパノラマ写真だ
 道道58号線は最初急な傾斜の登りを一気に登ると、あとは傾斜が次第に緩やかになり、長いトンネルの中ではほとんど傾斜はなくなり、トンネルを抜けるとニセコ野営場に到着した。17時頃到着かと思っていたが、予想以上に早く16時10分に到着した。このお盆の時期の日曜日だから、さぞかし家族連れで込んでいるだろうと思っていたが、家族連れは3組だけ、しかも子供なし。あとは大人に引率された高校生くらいの6人くらいのパーティーが一組とライダーが一人だけの寂しいものだった。
 私は受付を済ませるとキャンプサイトの上段まで自転車を押して登り、すぐにテントを設営。今日はキャンプ場への到着が遅くなったのと、温泉は21時まで営業していたので、先に食事にして後からゆっくり温泉に浸かって休憩室で旅の日記を書こうと思っていたので、先に炊事にするべく米を水に浸す。キャンプ場に到着してショックなことに気付いた。GPSの電源が切れていたのだ。今朝電池を入れ替えたばかりなので2日は持つはずだったのに1日さえ持たないとは、さすが100均で買った電池は違う。もう100均で電池を買うのはやめよう。ちゃんとした電池なら確実に2日は持ちこたえてくれるはずなのに…
 このキャンプ場はまわりにイワオヌプリが見えたりするので景色が美しく、自転車とテントを交えて写真を撮ったりしながら、17時10分から炊飯を開始する。明日の朝はおじやにしようと思っていたので、ご飯を1.5号炊き、半分残して明日の朝食べるつもりだ。今日の夕食は牛丼とわかめの味噌汁とカップサラダ。まだ沈まない太陽の光を浴びながら夕食を食べ、食べ終わった頃に夕陽がニトヌプリの山間に沈みそうだったので写真を撮る。
撮影日時:2009/08/09 16:50:22 シャッター速度:1/100 絞り:F5.6 焦点距離:29mm
ニセコ野営場でのキャンプ風景
撮影日時:2009/08/09 17:39:53 シャッター速度:1/250 絞り:F16 焦点距離:38mm
夕陽の沈むニセコ野営場
 食事を終えると自炊道具を片づけ、今度は温泉の支度をする。ニセコ野営場の隣にはニセコ山の家という温泉宿と、道を挟んだ向かいに五色温泉旅館がある。3年前は五色温泉旅館に入ったが、この五色温泉旅館の露天風呂から見る景色がよかったので、今年も五色温泉旅館に行く事にした。温泉に行く前に五色温泉橋展望台に行こうかと思ったが、カメラを構えていたらのぞきと思われそうだったので断念して18時から温泉に行く。3年前にこの五色温泉旅館に来た時は知らなかったのだが、その後この五色温泉旅館には風呂がいくつかある事に気付いていた。今回来た時も手前側に展望風呂と奥にからまつの湯、そして混浴露天風呂の案内があったが、私はいつものように展望風呂に行く。
 この五色温泉展望風呂の露天風呂は展望台から丸見えだが、その分だけ露天風呂からの景色もよく私のお気に入りの温泉なのだ。欠点はカランのお湯が水になることくらいだが、そんな事はどうでもよい。私は露天風呂に長時間浸かって、夕陽に染まりゆくイワオヌプリを眺め続けた。時間があればからまつの湯にも行こうかと思ったが、結局展望風呂からの眺めだけ堪能して、他の風呂に行く事はなかった。
 展望風呂を出ると、今度は休憩室で旅の日記を書く事にした。しかし休憩室の案内がなく、どこが休憩室なのかわからない。3年前に来た時には確かに休憩室があったはずだと考え、従業員に休憩室の場所を尋ねると、案内してくれた。そこはロビーから風呂に行く途中の廊下に面した部屋なので、他の日帰り入浴客が頻繁に横を通るのだが、休憩室の案内がなかったので、誰もここが休憩室だとは気付かず、ずっと私一人で旅の日記を書き続けた。
 今日もツーリングの合間の休憩時間中にあまり旅の日記は書けていなかったが、今日は既に食事も済ませていたし、あとはテントに入って寝るだけだったので、18時30分からジュースを飲みながらのんびりと休憩室で旅の日記を書き続けた。1時間30分ほど旅の日記を書き続け、ようやく書き終わったので20時にテントに戻る。
 テントに戻るとそれまで着ていた服を炊事場で洗濯し、自転車に干しておく。既に露付きで自転車やテントは濡れていたので、きっと朝までには乾かないだろう。しかしこれだけ汗をかくと洗濯せずに同じ服を着るわけにもいかず、朝、服が乾いていなくても着れないわけではないし、どうせ自転車で10分も走れば乾いてしまうのだから、毎日洗濯するに越したことはない。
撮影日時:2009/08/09 17:51:27 シャッター速度:1/80 絞り:F5.6 焦点距離:29mm
五色温泉
撮影日時:2009/08/09 20:04:29 シャッター速度:1/5 絞り:F4.0 焦点距離:34mm
夜のニセコ野営場
 洗濯を終えるとキタキツネを発見した。どうやらこのキャンプ場で餌を探しているようだ。写真を撮ろうかと考えたが、さすがにこの暗さでは写真が撮れるはずもなく、断念する。そういえばキャンプ場の管理人さんはゴミや食べ物だけでなく、靴もテントの前室に置いておくとキタキツネに持ち去られてしまうとのことだったので、靴はしっかりとテントの中に持ち込んでおく。
 テントに入って旅の日記を書いていたら、ポメラの電池も切れてきた。カタログスペックでは単四電地2本で20時間持つはずだったが、まだ10時間ほどしか使っていない。さすが100均で買った電池は違う。この調子だと旅の後半はGPSとポメラの電池を毎日のようにコンビニで買わないといけなくなるだろう。
 明日以降の天気予報を確かめると、10〜12日は曇り時々晴れだが、13日だけ曇り時々雨になっていた。13日と言えば富良野から美瑛に行くあたりだが、雨だと美瑛に行っても仕方がないので、コースを変更してどこかで時間をつぶすか。まあどうせこんな先の天気予報など当たるはずもないが。
 そう言えば、自転車で旅をしているとマイカーの観光客から時々話しかけられるのだが、決まって先週までは雨ばっかりだったけど、今週は晴れてよかったねと言われる。確かに天気予報を見ていると北海道は先週まで雨ばかりだったが、今週から晴ればかりになっている。これが先週北海道に来ていたら目も当てられないところだが、今週でよかった。それほど気温が高いわけでもないし、この夏はとても走りやすい気候と言えるだろう。
 今日も昨日に続いてニセコパノラマラインを830mと、ニセコ野営場まで190mの合わせて1020mも登ってしまった。前半の倶知安や蘭越あたりのアップダウンも含めると、おそらく1300mは登ったことだろう。昨日に続いてよくまあこれだけ登坂できるものだと感心してしまう。それに今日は80km走破した後で13時から1020mの登りに挑戦したのだからたいしたものだ。それにしても岩内から五色温泉までの30kmはハードだった。30km走るのに3時間20分もかかってしまった。もう二度とこんな強行スケジュールは実行したくない。もう少し余裕を持って行動したいものだ。
 一つ嬉しかったのは、昨日に続いて今日もこれだけ登ったのに、今日はお尻が痛くならなかったことだ。早くもお尻がサドルに慣れてしまったようで一安心だ。しかしこのサドルを使って地元で3000km以上走っているはずなのだが…
 ニセコパノラマラインは景色も素晴らしく、走りがいのある道だ。チャリダーにもお勧めできる道なので、どうせだったら岩内に比較的近い盃野営場あたりに宿泊し、そこから朝一番にニセコパノラマラインを登ることをお勧めする。そうすれば晴れてさえいれば涼しい時間帯に眺めのいい景色を見ながら元気よく走れるはずだ。
 今日は水をよく飲んだ。京極の羊蹄吹き出し湧水がおいしかったのもあって、岩内までに1リットルほど飲み、さらにニセコパノラマラインでも岩内で給水した水を1リットルほど飲んでいる。この他にコンビニで飲む牛乳や温泉の休憩室で飲むジュースを含めると3リットルは飲んでいることになる。その割にはあまりトイレに行かなかったので、そのほとんどは汗となって流れたのだろう。
 このキャンプ場も21時を過ぎると急に静かになり、世界中で生きているのが自分一人ではないかという錯覚に陥る。今日は晴れているので天体観測でもしようかと思ったが、残念なことにこのキャンプ場では明かりが煌々と照らされているので晴れているのだが星はあまり見えなかった。このキャンプ場も昨日に続いてワンセグの電波は入らなかったし、旅の日記は温泉の休憩室で書き終えていたので21時を過ぎるとやることもなくなってしまった。しばらく明日の予定を考えていたが、明日は3年前と同じく洞爺湖まで行くだけなので深く考える必要もなく、22時にはシュラフに潜り込んで就寝することにした。このキャンプ場は標高が高いのでとても寒く、着れるものはすべて着込んで寝ないと風邪を引いてしまいそうだ。

走行データ
走行距離   110.0km
走行時間   6時間57分
ペダリング数   16800回
平均時速   15.8km/h
最大速度   50.9km/h
平均ペダリング数   40rpm
総走行距離   292.8km
天候   晴れ時々曇り
最高気温/最低気温   29℃/15℃

食事
朝食   ラーメン
昼食   おにぎり、パン
夕食   牛丼、ワカメの味噌汁、カップ野菜

出費
貝の館   入館料   300円
昼(コンビニ)   おにぎり、パン、カップ野菜、牛乳、寝酒   607円
キャンプ場   ニセコ野営場   300円
温泉   五色温泉   600円
温泉   ジュース   150円
合計   1957円

キャンプ場
名称   ニセコ野営場
場所   五色温泉すぐそば
  北緯42度52分23秒、東経140度38分23秒
費用   300円
設備   トイレ、炊事場
風呂   向かいに五色温泉旅館あり
ゴミ   持ち帰り
行きやすさ   標識が小さくてわかりにくいが五色温泉の向かい
乗り入れ   テントまでバイク、車の乗り入れ不可
特徴   ニセコ五色温泉の向かいにあるキャンプ場
  ニセコの山に登るベースキャンプとして
  またファミリーキャンプ、ライダーなど多彩
  標高が高いのでチャリダーは少ない
  温泉は近いし景色も良いので隠れた穴場か
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