恒例となった毎夏の北海道自転車ツーリング、2003年は北海道の海岸線ばかりを一周、2004年は大雪山や道東など北海道の山の中を走り倒し、2005年は2003年に北海道一週で走り残した追分ソーランラインと、観光地にもほとんど寄らずに駆け抜けた道北、利尻礼文島を走り、2006年はまだ走っていない奥尻島、ニセコ、洞爺湖、支笏湖、日高、十勝平野を走り、2007年はニセコを駆け抜け、焼尻島・天売島に上陸し、道北を回った後、道東でうろうろし、2008年は富良野から襟裳岬にかけて走った後、十勝平野を経由して道東でうろうろしていた。今年はどこを走ろうかと考えたが、そろそろ行った事のない場所や走った事のない道が減ってきた。特にいつも帰りは女満別空港と決めていたので道東周辺はほとんど行き尽くしていた。そこで今回は行き帰りとも千歳空港とし、久しぶりに訪れる美瑛から北見峠を通って遠軽に抜け、チミッケップ湖、津別峠を越えて屈斜路湖に行き、阿寒湖を経由して然別峡温泉に行き、かなやま湖を通って十勝岳を登り、再び美瑛を回って戻ってくる案と、もう一つ、支笏湖を経由して小樽、積丹半島へ抜け、ニセコ、洞爺湖と回って登別温泉に行き、日高、富良野、美瑛と抜けて十勝岳に登って帰って来る案を考えた。
前者で初めて訪れるのは北見峠、遠軽、留辺蘂、チミケップ湖、津別峠、然別峡温泉、かなやま湖、十勝岳。後者で初めて訪れるのは朝霧川温泉、ニセコパノラマライン、オロフレ峠、登別温泉、倶多楽湖、かなやま湖、十勝岳だ。コース的にも魅力がありそうなのは前者だったが、前者の場合、1〜2日目のコースは昨年とほとんど同じになってしまうので、そういう意味では後者にしたい気もする。まあどちらになるかは天候次第だ。そこで私の中ではあてにしていない天気予報によると、今日から1週間ほどはどこも晴れ時々曇りになっており、しかも今年の夏の北海道は冷夏のようで、涼しくて晴れた北海道を自転車で走れるのではないかと期待された。 今日は北海道自転車ツーリングの第一日目。5時10分に起床し出発の準備を開始する。札幌の天気予報を確認すると、今朝の天気予報では今日は晴れ時々曇りになっている。これなら初日からいい写真が撮れるかもしれない。しかも札幌は11日までずっと晴れ時々曇り、12日は曇り時々晴れ、13日は曇りと当分晴れが続いたので、今年は天候に恵まれそうだった。 しかし私には朝から気にしている事があった。昨日の夜に車で実家まで戻ってくる時に水分補給にと水筒にジュースを入れたが、その水筒を持ってくるのを忘れて12日間もジュースを水筒に入れたまま放置する事になってしまい、戻ってから水筒を開けるのが怖い… そんな事はどうでもいいのだ。私が気にしているのは今回レインスーツを持ってくるのをすっかりと忘れていたのだ。準備はしていたのだが、準備した後で自転車通勤した時に使ったまま戻すのを忘れてしまい、持って来るのを忘れてしまったというわけだ。いくら天気予報で1週間ばかり晴れだからといっても、11日間も晴れが続くとは思えない。私はどうしようかと悩んだが、親がゴルフ用のレインスーツを持っていたのでそれを借りる事にした。8000円もした高価なレインスーツだと言われたが、レインスーツで高価というのは、私に言わせれば3万円以上ではないだろうか。いずれにせよレインスーツは確保できたものの、ゴアテックスほどの快適さはないだろうし、シューズカバーもないので、雨にならない事を祈る限りだ。 支度を済ませて5時30分には朝食を食べる。6時前には車で駅まで送ってもらい、そこからはリムジンバスで関西空港まで行く。昨年と同様、関空8時発、千歳空港行きのANA1711便に乗るつもりだ。関西空港には少し遅れて7時20分に到着。さすがに夏休みシーズン中という事もあってチェックインカウンターは早朝だというのにかなり込んでいて長蛇の行列になっていた。しかしスターアライアンスゴールドメンバー用の優先カウンターはガラガラだったのでそちらに行き、荷物検査を受ける。係りのお姉さんは、ここはあんたのような人の来る場所ではないと言わんばかりに、「ここはスターアライアンスゴールドメンバーのカウンターですが」と言われたが、私はそのゴールドメンバーなので何の問題もない。自転車を入れた輪行袋はX線検査機に入らないのはわかっていたので、いつものようにその旨を検査員に説明し、目視による検査をしてもらう。いつもだったら輪行袋の上だけ開けて中をのぞき込んでそれで終わりだったが、今日は輪行袋を全部開けさせられて、空のボトルまでX線検査機に入れさせられた。どうやら同じ空港でも人によって対応がまったく異なるようだ。 チェックは無事に終了し、チェックインカウンターに向かう。昨年、飛行機に乗り倒した事もあり、アップグレードポイントが28ポイントもたまっていたので、カウンターに行くと真っ先にアップグレードできるかどうか確認する。するとプレミアムシートに空きがあるとの事だったので、迷わずプレミアムシートにアップグレードする。ANAはプラチナサービスまでいくと、アップグレードポイントがたくさんたまるので、こういう機会にでも使っておかないと、せっかくのアップグレードポイントを無駄に捨てる事になりかねないのだ。カウンターに自転車を預け、自転車が壊れても文句を言いませんといういつもの署名を済ませて身軽になる。 身軽になったら今度は国内線北ゲートに向かうが、ここも列ができるほど並んでおり、セキュリティゲートを抜けた時には出発の20分前になっていた。もうラウンジに行っている時間はないように思われたが、せっかくだからSignetへ向かう。SignetとはANAの運営するラウンジだ。これまで北海道自転車ツーリングの空港での待ち時間といえばロビーのベンチで座って待つしかなかったが、今ではANAのラウンジに入る事ができるので、早速ラウンジに入ってソファに座り、ウィスキーをロックで飲む。しかしあまり時間もないので一杯だけウィスキーを飲んで慌ただしく席を立ち、ゲートに向かう。 8時ちょうどの出発のはずだったが、準備に少し時間がかかっているようで10分遅れとなり、8時前から搭乗が始まった。私は迷わず優先搭乗し、プレミアムシートに着席する。プレミアムシートとは国際線のビジネスクラスに相当するシートなので2時間の旅ではあるが、食事も出るし酒も飲み放題なので重宝している。もちろんまともにお金を払うと、このサービスで7000円は高いと思うが、アップグレードポイントがあるならサービスを教授しても損はない。 飛行機は8時15分に離陸。北向きに離陸後、大阪湾を大きく左に旋回し、神戸空港までは見えていたが、その後雲の中に突入し、その後、北海道まで地上が見える事はなかった。シートベルト着用のサインが消えるとすぐに食事のサービスが始まった。プレミアムシートでは時間帯によって食事が提供され、今の時間では朝食があるのだ。朝食の内容はサンドイッチとサラダとフルーツとケーキ。ここでしっかり食べておかないと、後でハンガーノックになってしまうので、しっかり食べる。ついでに飲み物は白ワインを頼み、お代わりまでして朝から酔っぱらってしまう。
空港の外に出ると、すぐにタクシー乗り場の横に陣取って10時15分から自転車の組み立てを開始。基本的にはフレームをつないでサドルとペダルを付けるだけなので、15分もあれば終わってしまうのだが、ブレーキの調整や泥除けの取り付けに手こずり、トイレで水を汲んで出発準備が完了した時には11時になっていた。それから空港内のローソンでおにぎりとパンを購入し、エディをチャージしようとしたが、この店ではチャージはできないと言われてしまい、エディで支払いだけ済ませる。エディがチャージできないローソンがあったとは初めて知った。
いつもならここで自転車の調子が悪いのに気付くところだが、今回は問題なく走れそうだ。自転車を走らせていると飛行機の大きな爆音が聞こえてきた。これは旅客機ではなく明らかに軍用機だ。音の方を見るとF15イーグルが4機立て続けに離陸していった。そう言えば明後日はここ千歳空港で航空祭があるから、その練習でもしに行くのだろう。航空祭にはブルーインパルスも展示飛行するので、私は北海道自転車ツーリングに航空祭見学も組み込もうかと考えたが、旅の途中では望遠レンズなど持てるはずもないし、どうせ毎年のように浜松基地のエアフェスタに行っているのだから、ここで見なくても問題あるまい。私は国道36号線に出て北にひた走り、千歳市街に入ってヤマト運輸の千歳北斗営業所を目指した。
サドルはさすがに初めての北海道自転車ツーリングからずっと使い続けていた為、サドルが破れかかっていたので交換を決意。何かいいサドルはないものかと物色していたらタイオガからスパイダーツインテールという蜘蛛の巣のようなメッシュ状のサドルに一目惚れ。このサドルはクッションがほとんどなくて、軽量化されたレース用のサドルだが、どうせ近年の北海道自転車ツーリングは自転車用のパッド入りのパンツをはくことが多かったので、レース用のサドルでも大丈夫だろうと考えて今年から導入を決意。ついでにサドルの白色にあわせてバーテープも白色に変更した。2年前からヘルメットやボトルも白色のものに買い換えていたが、これらはいずれもデジカメの写真を現像する際のホワイトバランスをとる時に活用していたが、サドルやバーテープも白色に変えた事でより正確なホワイトバランスがとれるようになる事だろう。 それから細かい点ではチェーンを交換した。チェーンはおよそ2年おき、つまり7000〜8000km程度で交換しているが、2007年から2008年にかけてチェーンを交換しなかったので、さすがに今年は交換した。しかしチェーンだけでなくチェーンリングもそろそろすり減っていた。チェーンリングはほとんどセンターの42Tばかりを使っていたが、このチェーンリングを使い初めてから既にチェーンを3本交換、つまりこのチェーンリングで20000km以上走っており、そろそろチェーンリングの歯がすり減っていてチェーンを新しくしてもチェーンリングの歯との噛み合わせが悪く、クランクの回転を勢いよく止めるとチェーンから異音がするようになっていた。今回、センターのチェーンリングも新品に交換しようかと思ったが、今回だけは古いチェーンリングを使い、北海道自転車ツーリングから帰ったら新品に交換するつもりだ。 さらにヘッドライトも今回から変更した。これまではトピークのムーンシャインHIDという高価なHIDライトを使用していた。これは高価なだけあってとても明るくトンネルの中でも安心して走る事ができた。しかしバッテリーも含めると北海道自転車ツーリングに持っていくには少し重いという問題があった。そこで今回からは単三電池2本で使用できるバッテリーライトを導入したのだ。FENIX社製のL2Dというライトで、最近流行のLEDライトなのだが、恐ろしく明るいのだ。一昔前まではLEDライトと言えば玉切れしないのと電池が長持ちするのだけが取り柄で明るさなど二の次だったが、今ではこんなに明るいLEDライトが登場したのかと時代の移り変わりを感じる事ができる。 また装備の点で大きな革新があった。これまで旅の日記はすべて小さなノートにシャープペンシル、もしくはボールペンで書いていた。しかしこの方法だと帰宅後にノートに書いた日記をすべてパソコンで打ち直さなければならない。この作業は予想以上に大変で、旅の日記そのものは現地で一日2〜3時間で書いてしまうが、それをパソコンに打ち込むのに、旅の日記に書ききれなかった話を追加していくと、その2〜3倍程度の時間がかかり、さらに写真を加工したりしていると、1日分の話を書くのに1週間ほどかかってしまうのだ。それだったら紙のノートに書くのではなく最初から現地でテキストで書いてしまえばいいと常に考えていたのだが、それには色々と問題があった。UMPCやネットブックなどのパソコンを持ち込めば一番楽なのだが、それには電源という問題があった。UMPCやネットブックなどのパソコンはいずれも2〜4時間しかバッテリーが持たず、しかも乾電池が使えない。これはほとんど毎日のようにどこかでコンセントから充電する必要があるが、キャンプをしながら自転車ツーリングする身では充電などできるはずもない。次に考えたのはキーボードを装備した携帯電話やスマートフォンだ。これらは非常に軽くて小さい。しかし小さい故に肝心のテキストを入力しにくいのと、そのほとんどはローマ字入力で、仮名入力はサポートしていない。それにやはりバッテリーの持ちが悪いという問題があった。そんな時に登場したのがキングジム製のポメラだった。これは電子メモ帳という新しいジャンルの商品で、テキストを書くという機能しかないが、ノートPC並のフルキーボードを装備しているのでテキストは入力しやすいし、仮名入力も可能でおまけにATOKまで装備している。そして何よりバッテリーが単四電地2本で20時間も使えるというのがありがたい。これなら一日2〜3時間使ったとしても一週間以上使えるし、電池が切れたらコンビニで買えば済む。電源の問題もすべて解決というわけだ。それに電源を入れて2秒で起動するからパソコンのように待たされなくてもいいし、まして私の場合、ノートにペンで文字を書くよりもキーボードで打った方が早いのだ。それを知った私はすぐにポメラを購入し、今回の北海道自転車ツーリングから実戦投入したというわけだ。ノートに比べると重さも体積も増えているので取り扱いは悪くなったが、きっと家に帰ってからの作業の楽さは格別の事だろう。 あと細かいところでは、GPSロガーを今回からソニー製のGPS−CS1Kから台湾のロイヤルテック製RGM−3800に変えた事が挙げられるだろう。これまでのソニー製はバッテリーが単三電池一本で一日持つという経済的なところがよかったので愛用していたが、肝心のアンテナ性能がいまいちで、そこが不満点だった。しかしRGM−3800はアンテナにSiRFVを使用しており感度は抜群だし、何よりメモリーサイズも桁外れに多いのだ。欠点はバッテリーが単四電地二本で一日しか持たないので、ソニー製に比べるとランニングコストが悪い。何せ10日の旅行で20本も必要としてしまうのだ。これではちょっと大食いなので、単三電池のバッテリーケースを接続し、単三電池二本で動くように改造して、今回持参している。 国道36号線を北西に走り、出発から30分ほどでヤマト運輸の千歳北斗営業所に到着。ここであらかじめ営業所留めで送っていたサイドバッグを回収し自転車に取り付ける。そう言えば昨夜から気になっていたのだが、どうもサイドバッグを梱包した時、いつもよりバッグが小さく梱包できた事が気になっていた。いつもだったらもうパンパンになるまでサイドバッグが膨らんでいたのだが、今回はなぜかスカスカだったのだ。その時は気にもしてなかったのだが、レインスーツを忘れたことに気付いた今となっては、もっと他にも忘れ物をしたのではないかと気にしていた。どうもテントかマットかシュラフかジャージーのどれかを忘れたような気がする。テントを忘れていたら旅は終わりだろう。シュラフでも厳しそうだ。マットならそこらで銀のロールマットを買えばどうにかなる。一番被害の少ないのはジャージーだと思っていたが、サイドバッグを回収して中身を確かめたら、ジャージーが入っていなかった。ジャージーは寝る時に寒ければ着るのと、蚊を避けるのにも使っていたが、まあなくても困るほどのことはないだろう。
地平線付近の空は曇っているので青空は見えないが、天丁付近の雲は薄くて太陽は出ていたので日焼け止めをもう一度塗る。そう言えば7回目の北海道自転車ツーリングで雨が降らなかったのは、2005年に続いてこれでやっと2回目だ。それ以外はずっと初日は雨ばかりだったので、今回はさい先がよい。12時ちょうどにヤマト運輸の営業所を出発。重くなった自転車を操って道道16号線に入る。ここも2年前に走った道なので慣れたものだ。途中から支笏湖公園自転車道に入る。ここは入り口がわかりにくいが、二回目なので迷うことはなかった。 支笏湖公園自転車道は最初、鬱蒼とした森の中のクネクネ道を走る。するとすぐに蘭越レストコーナーが見えてきた。私はここで今日初めての休憩をとるつもりでいたが、いざ蘭越レストコーナーに到着すると大型観光バス3台から降りてきたと思われる高校生か大学生らしき集団100人くらいが蘭越レストコーナーを占拠しており、私は休憩することなくその場を素通りした。 昨年の北海道自転車ツーリングで初めてゴリラポッドという三脚を持参し、自分撮りの楽しさを覚えていたので、今年はさらにパワーアップして、三脚だけでなく赤外線のレリーズも持ってきていた。なぜなら三脚があれば自分撮りは可能だが、セルフタイマーだと10秒後にシャッターが切れてしまうので、自分の思い通りの写真をなかなか撮ることができず、試行錯誤の繰り返しだった。そこで今回は赤外線のレリーズを用意したことで、あらかじめ撮影場所に自転車を立てておいて、三脚を使ってじっくりと構図を決め、そして自転車に戻って少しバックしてから自転車を走らせ、先ほど自転車を立てていた場所に来た瞬間にシャッターを切れば思い通りの写真が撮れるというわけだ。早速私はこれを支笏湖公園自転車道で実践した。確かに思い通りの写真は撮れるが、1枚写真を撮るのに三脚をセットして構図を決めたりと、ずいぶん時間がかかるようになってしまった。あまりこれを多用すると撮影にばかり時間を取られて自転車で走る距離が短くなってしまいそうだ。
今日は支笏湖の湖畔にテントを張るつもりだが、晴れていればモラップキャンプ場に、曇っていればポロピナイキャンプ場にテントを張るつもりでいた。モラップは初めて訪れるキャンプ場だからどんな場所か見てみたいというのもあるし、何より晴れていれば夕陽が見れるのだ。ポロピナイは明日の行程を10km短縮できるので、明日楽ができる。ポロピナイも捨てがたかったが、今回は晴れていて夕陽が見れそうだったのでモラップキャンプ場に向かうことにした。 モラップキャンプ場へは国道276号線の緩やかな登りを登ると、右手に自転車道が見えてくる。キャンプ場の案内は出ていなかったが、これに入ればキャンプ場にたどり着けると考え、自転車道に入っていった。自転車道というのは、通常の車の走る二車線の道路の前後をポールで通行止めにしただけの道だったので、自転車道の割には道幅がとても広い。しかし道路を整備した様子もなく、森の中の道だったのでアスファルトの上に落ち葉や枯れ枝が積もっていて少し走りにくい自転車道だった。 やがて自転車道は終わりを迎え、着いた先はちょうどモラップキャンプ場だった。14時ちょうどにキャンプ場に到着し、受け付けを済ませるとすぐにテントを張った。まだ時間が早かったので広いキャンプ場に家族連れのテントが10ほどあるだけだったが、私は入り口近くでかつ湖岸近くの芝生の上にテントを張った。ここで私は再度荷物の中にジャージーとレインスーツが入っていないかを確かめたが、やはり入ってはいなかった。そして重量物をすべてテントに入れると、温泉の準備をして14時40分から軽くなった自転車で再び出発した。
温泉はモラップキャンプ場から5kmほど離れたところにある支笏湖湖畔温泉に行くつもりだった。しかし私は温泉の前に行きたい場所があった。それは丸山遠見望楼だ。3年前、モラップキャンプ場に泊まろうとして、結局足を延ばして追分まで走った事があった。あの時、足を延ばさずにモラップキャンプ場に泊まっていたら丸山遠見望楼に行っていたはずだったが、モラップキャンプ場には泊まらなかったので丸山遠見望楼には行かなかった。今回せっかくモラップキャンプ場に泊まるのだから3年越しの悲願達成とばかりに丸山遠見望楼に行くことにした。 国道276号線と国道453号線の分岐から国道276号線を苫小牧方面に4kmほど走ると丸山遠見望楼への入り口があった。私はそこから林道に入るが、一歩入って引き返そうかと考えた。林道だからダートは覚悟していたが、とてつもなく大きな砂利がゴロゴロと転がっており、とてもロードの自転車で走れそうにないのだ。私は何度となく自転車をUターンさせ断念しようと考えたが、とにかく行けるところまで行ってみようと考え、10cmくらいの砂利がゴロゴロと転がる林道へと入っていった。
国道276号線に戻った私は、今度は支笏湖湖畔温泉を目指して走った。この頃になると手を振って挨拶してくれるライダーの数も多くなり、励まされるようでうれしい限りだ。国道453号線との分岐の信号で止まっていると、フロントバッグの上に置いた地図を止める洗濯バサミにトンボが止まった。私はそのまま自転車を走らせたが、時速20km/hの風圧や振動にもびくともしないで、トンボは健気に洗濯バサミにしがみついているではないか。私は突如現れた同伴者に嬉しくなって写真を撮り再び自転車を走らせた。トンボは1kmほど洗濯バサミにしがみついていたが、道道16号線との分岐の信号で止まった時、どこかへ飛んでいってしまった。
仕方なく今日の温泉は断念し、キャンプ場へ引き返すことにした。途中、国道453号線に休暇村支笏湖温泉の標識があったが、国道から1kmもアップダウンを走らないと行けない場所にあったのでこれも断念する。国道453号線にはキャンプ場へショートカットできるダートがあった。走りやすそうな道だったので試しに走ってみたが、なかなかいい道だった。これなら明日も走ってみよう。 温泉街からモラップキャンプ場に戻る頃にはお尻が痛くなり始めた。レース用のクッションのないサドルにパッドのない普通のパンツで65kmも走ったのだから仕方がない。20kmくらいならパッドなしのパンツでも問題ないのだが、さすがに65kmはきつかったようだ。しかし明日以降は毎日パッド付きのサイクリング用のパンツを履くつもりなので、この問題は解決することだろう。
よく考えたら今日は寝酒を買っていなかったので、今日の夜はアルコールなしかとあきらめていたが、このモラップキャンプ場の横にはなぜか酒屋があったので、渡りに船とばかりに酒を買いに行く。ところがいざ酒を買おうとしたものの、その店ではお釣りの100円玉を切らしており、驚くべき事にお釣りがないことを理由に私は酒を買うことができなかった。 18時から炊飯を開始。雲間から太陽が顔を出していたので、その間に湖岸に自転車を持ち出して写真を撮った。ここモラップキャンプ場は洞爺湖の滝之上キャンプ場やクッチャロ湖湖畔キャンプ場のように夕陽の名所に匹敵すると思う。地平線近くに雲があったので夕陽は途中で雲に隠れてしまったが、それでも夕焼け空もなかなかのものだった。 18時30分から食事。今日は近くにコンビニがなかったので牛丼とワカメの味噌汁だけの質素なもの。機内での朝食が豪勢だったのでまあいいだろう。食事の後、コッヘルを洗い、自転車の荷物を11日間の旅に都合がいいように積み替える。もう一度酒屋に行くと、今度はお釣りができたようで、無事に寝酒を売ってもらうことができた。
テントに入ってショックなことがあった。携帯用の蚊取りが電池切れになっていたのだ。新品の電池を入れたはずだが、どうやら宅急便で送っている間にスイッチが入ってしまい、電池切れとなってしまったようだ。さすがに電池切れでは使えないので新品の電池に交換する。 20時から今日着ていた服を洗濯する。長袖の服は今日着ていた一着しかないのだが、ジャージーを忘れていたので、これを寝る時に着る服にしようと考えたのだ。しかし今日の丸山遠見望楼への登りで汗だくになってしまったので、今夜洗って明日走りながら乾かし、明日から寝間着代わりにしようと考えたのだ。いつものようにスーパーの袋に入れて炊事場でジャブジャブと洗い、よく絞って自転車にかけて完了。 20時30分から旅の日記の続きを書く。しかし今までだったらどうせパソコンで清書するのだからと、紙のノートにいい加減に書いていたが、ポメラを使うようになるとほとんど完成に近いくらい詳細に書くので、なかなか書き進まず、ようやく書き終わった時には22時になっていた。北海道自転車ツーリングにポメラを持ち込めばホームページ作成が楽になるだろうと思っていたが、旅をしながら書くというのもなかなか大変なものだという事を実感する。 22時からワンセグを見ようとするが、ここは札幌の電波の入りが悪いようで、満足に見ることができなかった。酒井法子さんに逮捕状が出たとか興味あるニュースを放送していただけに残念だった。まあ、連日のようにワンセグを見ていたら電池がいくらあっても足りなくなるので、ちょうどいいかもしれない。 今年の北海道は冷夏だそうで、昼間は25度くらいまで上がって少し暑く感じるが、夜になると20度を下回り、半袖だと肌寒く感じる。ジャージーを忘れてしまっただけに、風邪を引かないように注意する必要がありそうだ。明日は国道453号線を北上して札幌に抜け、そこから定山渓に行って道道1号線、通称定山渓レークラインを走って小樽へ抜け、そこから余市まで合計130km走るつもりだ。しばらくは天気も良さそうなので、天気予報も見ずに22時30分には就寝する。
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