第1話 私、修道女志願です |
1936年のオーストリア。2才にして母親を肺炎で亡くしたマリア・クッチャラは父親がエンジニアで外国を点々とする為、親類に預けられて過ごしていました。5年後に父親は帰国し、それから2年間は父親と一緒に暮していましたが、2年後のマリアが9才の時に父親も亡くなってしまい、マリアはそれから15才まで親類の家に預けられ不幸な境遇を過ごしていました。マリアは中学校を卒業すると自分一人で生きていく為、家出同然でセンメリンクの観光地に行き、ホテルで掃除係をしたり、お金持ちのテニスの審判をしたりしてお金を稼ぎます。そしてマリアは先生になりたくて奨学金でウィーンの国立高等師範学校に入りました。18才で師範学校を卒業すると、寮の仲間と卒業旅行でアルプスの尾根でキャンプに出かけますが、アルプスの夕陽は燃えるような美しさで、その光景を見たマリアは、突然シスターになろうと決意するのでした。 |
第2話 シスターとしての未来 |
マリアがノンベルク修道院を後にしようとしたその時、ラファエラがマリアを迎えに来ました。マリアには行くあてがない事を知った院長はマリアを再びノンベルク修道院にとどまらせる事にしてくれたのです。マリアは大喜びでした。 毎日の務めやしきたりに従う事も神との約束を守るのだと思うとマリアは辛いというよりむしろ楽しみます。修道院の家族に見守られマリアはまもなく実習の機会を与えられたのでした。ノンベルク小学校の先生として教壇に立ったマリアは聖書の時間だというのにギターを持ちだし、生徒たちを集めてみんなで歌を歌い始めます。しかしその光景をシスターローラに見つかってしまいマリアは怒られてしまいます。でもマリアは子供たちと仲良くなる事ができ、とても嬉しい気持ちになるのでした。 |
第3話 艦長と7人の子供たち |
バスの窓からノンベルク修道院がだんだん小さくなるのを見続けながら、マリアは「9ヶ月なんってあっという間よ」とつぶやきます。トラップ男爵は潜水艦の艦長でオーストリアの英雄でした。しかしマリアはトラップ男爵の家に雇われる家庭教師はマリアが26人目で、誰一人として2ヶ月と続かなかったという話を聞いて不安になります。マリアはトラップ男爵がどんな人なのかとても気になりました。潜水艦の艦長で英雄、きっと毛深くて髭モジャで年もとっているに違いないと思い込みます。 |
第4話 26人目の家庭教師 |
食べたくなければ食べなくてもいいという言葉をマチルダ夫人に聞かれてしまい、マリアは厳しく怒られてしまいます。マリアは「人を裁く前になぜそうしたのか訳を知る事が大切だと思います」と言って反論するのでした。それを聞いていたメイドのミミーやコックのローズィはマリアの勇気に感激してしまうのでした。マチルダ夫人はマリアをやめさせるようにトラップ男爵に提案します。しかしトラップ男爵はマリアなら子供たちの閉じた心を開いてくれるのではないかと密かに期待していたのでした。その夜、マリアの事をすっかりと気に入ったローズィに夕食をご馳走になりながら、マリアは小さいマリアが毎日ほとんど何も食べていないと聞かされます。マリアは小さいマリアがなぜ食べたくないのか、この世に生きていたくないのではないかと不安に思うのでした。 |
第5話 マリアは騒ぎの張本人 |
しかしその言葉を聞いてヘートヴィッヒは「マリアのいないところで決めるなんっておかしいわ」と言って反論します。ヘートヴィッヒは家庭教師が大嫌いなのでした。でも子供たちが学校に行っている間に、マリアは小さいマリアの為に色々と面倒を見、そして小さいマリアはマリアが両親を小さい時に亡くした事を知るとマリアと小さいマリアはとても仲良しになります。小さいマリアは亡くなったお母さんの事がとても恋しくていつも沈み込んでいましたが、マリアも自分と同じように小さい時にお母さんを亡くしたと知って共感を覚えたのでした。 |
第6話 迷子とはらぺこ騒動 |
小さいマリアを庭に連れだしたマリアはマチルダ夫人から再び怒られてしまいます。マチルダ夫人は小さいマリアの心臓が悪いので外に出さないように言っておいたのですが、食事にも降りて来ないような小さいマリアが庭を散歩したいと言いだしたので、マリアが連れて行ったのです。しかしマチルダ夫人はマリアは小さいマリアの勉強だけを見ればいい、それ以外の事は自分の許可を得るようにと厳しく言って小さいマリアを家の中に連れ戻し、さらに小さいマリア以外の子供とは挨拶以外の言葉を交わしてはならないと言うのでした。 |
第7話 大人は信じられない |
マリアはミミーとローズィに、これまで来た25人の家庭教師について尋ねました。それは2年前にお母さんが亡くなってから7人の子供に、それぞれ1人づつの家庭教師を付けたのが始まりでした。ところがその7人の家庭教師は競争を始めたのです。自分が一番よく思われたくて、トラップ男爵やマチルダ夫人の見ている前で自分の教え子に自分を誉めさせたのです。それを聞いたマリアは子供たちが家庭教師の争いの道具に使われたと知って、とても不憫に思うのでした。 |
第8話 礼儀作法が大事です!? |
日曜日の礼拝の帰りにマリアは7人の子供たちと一緒にトラップ家の広い庭を散歩します。あまりの広さにマリアは「こんなに広いと色んな事して遊べるわね」と言うと、子供たちは庭で遊んではいけないとマチルダ夫人が言っていたと言います。庭で遊ぶと服が汚れてしまいますが、子供たちは上等でない服を持っていなかったのです。マチルダ夫人にとってこの庭は静かに散歩する為にあるのでした。さっそくマリアはマチルダ夫人に子供たちに汚れてもいい服を買ってあげて庭で遊んでもいいようにと交渉しますが、聞き入れられませんでした。マリアは仕方なく部屋に子供たちを集めるとギターを弾いて子供たちと一緒に歌を歌うのでした。 |
第9話 トラップ男爵の婚約者? |
トラップ男爵には再婚を考えている女の人がいました。ベルベデーレ伯爵の御令嬢イヴォンヌ姫です。ベルベデーレ伯爵は自分の娘をトラップ男爵と結婚させようと、明日イヴォンヌ姫をトラップ家に送り込んで来る事になりました。その当時トラップ男爵は経営するベガ船舶会社の経営に行き詰まり、銀行からの融資も断られてお金に困っていました。それを知っていたマチルダ夫人はイヴォンヌ姫と結婚すればベルベデーレ伯爵からの援助が期待できると結婚を薦めますが、トラップ男爵はそんな理由で結婚する事には反対でした。そして何よりイヴォンヌ姫の事は子供たちにはまだ何も話していなかったのです。 |
第10話 ミシンとヴァイオリン |
マリアがトラップ家に家庭教師として来てから半月が過ぎました。半月で100シリングものお給金をもらったマリアはミシンを借りて自分で服を作ろうと考えます。ミミーに案内してもらってミシンを取りに物置に行ったマリアは、そこでホコリをかぶっていたヴァイオリンを見つけます。しかしヴァイオリンは弦が傷んでいてそのままでは弾けませんでした。マリアは小さいマリアにヴァイオリンを教えようと考え、町に出かけて服の材料を買い、ヴァイオリンの弦を直してきました。ところがヴァイオリンを見たトラップ男爵は、そのヴァイオリンは妻が子供のころ愛用していた物で、妻の想い出が多すぎると言ってマリアからヴァイオリンを取り上げてしまうのです。マリアはいつもお母さんの事を思い出して沈み込んでいる小さいマリアが少しでも打ち込めるものが見つかればと思ってヴァイオリンを習わせようと考えたと言って抗議しますが聞き入れられませんでした。 |
第11話 どろんこ遊びは最高! |
子供たちが庭で遊べないのを不憫に思ったマリアはトラップ男爵に子供たちが庭で遊べるように遊び着を買ってあげるように提案します。しかしトラップ男爵は無言で部屋を出て行ってしまいます。トラップ男爵はマリアの考えに半分は賛成でした。男の子たちはもっと外で思いっきり遊ぶべきだと考えていたのです。しかし残りの半分は小さいマリアの事が気になっていたのです。小さいマリアは体が弱いので外で遊ぶ事ができません。他の子供たちが外で遊んでいるのに自分だけ遊べないのでは小さいマリアがかわいそうだと言うのです。それを察した小さいマリアは牧場で運動会を開き、自分は競技しない代わりに実行委員長になって競技を考えると言います。トラップ男爵もこの考えには賛成でした。そしてトラップ男爵は店に買物に出かけると子供たちの為に運動靴を買ってプレゼントするのでした。 |
第12話 マリア風チョコレートケーキ |
トラップ男爵が旅行で不在の時、マチルダ夫人の妹のアグネスが急病で倒れてしまいマチルダ夫人はお見舞いでウィーンまで泊まりがけで出かける事になりました。マチルダ夫人が出かけると、ハンスやミミー、ローズィまでもが鬼のいぬ間に遊びに出かけてしまい、屋敷には子供たちとマリアとメイドのクラリーネだけが残されました。マリアは子供たちと庭で昼食を取ると、子供たちと一緒にケーキを焼いてみんなで食べるのでした。 |
第13話 ドン・キホーテの初恋 |
学校でフェンシングの対抗試合が近づいてきたのでトラップ男爵はルーペルトにフェンシングを教えますが、なかなか上達しません。そんな時、ヘートヴィッヒの知り合いのナスターシャがおじいさまのいるロシアに来週帰ってしまう事になりました。オーストリアではドイツの勢力がしだいに拡大し、ロシア人が居辛くなったのです。ヘートヴィッヒはナスターシャの為に送別会を開く事にしました。ルーペルトはナスターシャの事が好きだったのですが、ナスターシャにはアントンという恋人がおり、送別会にはアントンも参加する事になりました。 |
第14話 オルゴールの秘密 |
ルーペルトの必死の弁明にナスターシャはルーペルトが壊したのではないと信じてくれますが、アントンは信じようとせず、2人は言い争いになってフェンシングで決着をつける事になりました。アントンはフェンシングがとてもうまく、ルーペルトは散々に打ち負かされてしまいますがルーペルトはアントンから何とか1本取り、アントンは怒って帰ってしまいます。とても気まずい送別会になってしまいましたがナスターシャのお別れの日、アントンは駅まで来るとナスターシャにバレリーナの腕を折ったのは自分だと正直に告白するのでした。 |
第15話 マルティナと熊のニコラ |
マルティナは熊のぬいぐるみのニコラにココアを飲ませようとしてニコラを汚してしまいます。クラリーネやマリアがニコラを洗おうとしますが、マルティナはニコラを手放そうとはしません。マチルダ夫人の誕生日が明日だと知ったマリアは、マチルダ夫人を驚かせようとみんなで合唱する事にし、その練習の為に子供たちみんなでマチルダ夫人に気付かれないように林の中で練習します。ところがマルティナは練習を抜け出すと小川に行ってニコラを洗いますが、誤ってニコラを小川に流してしまい、それを取ろうとして自分も小川に落ちてしまいます。マルティナは小川で溺れていたところをマリアに助けられますが、家に戻ってからマリアはマチルダ夫人に、なぜマルティナやアガーテまで連れ出したのかと厳しくとがめられます。そしてマルティナは熱を出し、医者のボルトマン先生は翌朝までに熱が下がらなければ肺炎だと言います。それを聞いたトラップ男爵はマリアに「あなたを信頼しすぎたようだ」と言うのでした。 |
第16話 マリア先生がいない家 |
自分に一言も話さずに出ていってしまうなんって… マリア先生はそんな人ではないと信じているのですが、いつ帰ってくるかもわかりません。小さいマリアにとってマリアは今ではお母さん以上の存在になっていたのです。小さいマリアはノンベルク修道院に電話しようとしますが、ノンベルク修道院には電話はありません。そこで小さいマリアはヨハンナと一緒に内緒でノンベルク修道院まで出かけるのでした。小さいマリアとヨハンナはようやくノンベルク修道院にたどり着きましたが、そこでも会う事は認められず、2人はドローレンス修練長にマリアに渡してとニコラを預けると帰ってしまいます。そしてノンベルク修道院の門を出たところでトラップ男爵に出会うのでした。 |
第17話 傷ついた子鹿 |
ヴェルナーがキツツキの穴を見ようと木登りしてズボンを破ってしまいました。トラップ男爵は子供が木登りする事に理解を示しますが、マチルダ夫人は男爵の子供にあるまじき行為だと決め付けてしまいます。そしてマチルダ夫人はトラップ男爵に貴族の家庭のしつけを知らないと注意するのでした。ヴェルナーは男爵の子供なんかやめたいと言って泣きながら家を飛び出してしまいます。ところがヴェルナーは森の中で足をケガした子鹿を見つけました。ヴェルナーとそれを知ったマリアはトラップ家の離れの小屋の中で子鹿のケガが治るまでトラップ男爵には内緒で世話をする事にしました。ところが世話しているところをマチルダ夫人に見つかってしまいマリアはマチルダ夫人からひどく怒られてしまうのでした。 |
第18話 生きとし生けるもの |
しかしトラップ男爵は理解を示し小さいマリアやヨハンナにも子鹿を見せるように提案するのです。トラップ男爵は子鹿のケガが治ったら野生に帰すように言いますがヴェルナーは手放そうとしません。しかしトラップ男爵は野生の子鹿を人間が育てては野生に帰す事はできなくなる、野生で生まれた子鹿は野生で暮すのがもっとも幸せだと説得し、ヴェルナーは子鹿を鹿の仲間たちのいる所で放すのでした。 |
第19話 イヴォンヌ姫のお土産 |
ベルベデーレ伯爵と娘のイヴォンヌ姫がトラップ男爵の家に来る事になりました。いっこうにトラップ男爵とイヴォンヌ姫との進展が進まないのに業を煮やしたベルベデーレ伯爵はトラップ男爵とイヴォンヌ姫の婚約式を行いにやって来るのです。本来、男爵であるトラップ男爵の方が伯爵家にうかがうものですが、イヴォンヌ姫はもちろんの事、ベルベデーレ伯爵もトラップ男爵の事を気に入っており、伯爵自らが男爵家におもむく事になったのです。それを聞いたマリアはマチルダ夫人に説得されトラップ男爵とイヴォンヌ姫の婚約がうまくいくようにと考えるのでした。しかし子供たちは相変わらずイヴォンヌ姫がお母さんになる事には反対でした。伯爵がやって来る当日、伯爵は風邪をひきイヴォンヌ姫1人でやってきました。そしてトラップ男爵をウィーンに連れて帰るまで帰れないと言うのです。 |
第20話 それぞれの人生 |
イヴォンヌ姫は足を捻挫しただけだったのですが、マリアは頭を打っており脳震とうで立ち上がる事すらできません。2人は病院に運び込まれ、しばらく入院する事になりました。その夜、トラップ男爵は自分がイヴォンヌ姫と結婚する事が子供たちにとって本当に幸せかどうかを自分自身に尋ねるのでした。 |
第21話 トラップ男爵の決断 |
マリアはマチルダ夫人からイヴォンヌ姫が子供たちとなつけないのはマリアが子供たちと親しくしすぎるからだと言って、マリアと子供たちの距離を遠ざけようとします。この頃にはマリアは子供たちとすっかり仲良しになり、あれだけ家庭教師嫌いだったヘートヴィッヒですらマリアの事が好きになっていたのです。マリアは何とかしてトラップ男爵とイヴォンヌ姫を婚約させる為、どんな協力も惜しまないと誓い、あれだけ親切で子供たちの事を思っていたマリアもイヴォンヌ姫の為に子供たちに冷たく当たるようになります。小さいマリアはあれだけ大好きだったマリアに冷たくされた事がショックで泣き出してしまいます。ところがその光景を見ていたイヴォンヌ姫は自分が子供たちと仲良くなる為にあなたが子供たちに冷たくする必要はないと言って部屋を出て行ってしまいます。マリアは小さいマリアに冷たくした事を謝ると、2人で抱き合って喜ぶのでした。 |
第22話 一人で生きてゆけるの? |
トラップ男爵は婚約を申し込む為、ベルベデーレ伯爵の屋敷に向かいました。ヘートヴィッヒと小さいマリアは何とか婚約をやめさせようとしますが、いい手が見つかりません。とうとうヘートヴィッヒは家出してしまいました。ところがおじいさまのホワイトヘッド男爵の家に行こうと駅に行きますが、ハンドバックを奪われてしまいヘートヴィッヒは無一文になってしまいます。ヘートヴィッヒは行くあてもなく町をさまよっているとトーマスという少年に出会いました。トーマスはヘートヴィッヒを家に招くと食事を提供します。しかしマリアは突然体調を崩してしまいました。トーマスがノンベルク小学校に通っていた事を知ったヘートヴィッヒはトーマスにマリアを呼んできてくれるようにお願いします。トーマスはノンベルク小学校に行くとラファエラを連れて駅に向かいマリアを探し出します。そしてマリアはトーマスの家にヘートヴィッヒを迎えに行きます。ヘートヴィッヒの体調が悪くなったのは大人の女性になったからでした。そしてヘートヴィッヒはマリアに説得され家に帰るのでした。 |
第23話 天使への願い事 |
クリスマスが近づきマリアと子供たちは小さいマリアの部屋で月桂冠を作ります。月桂冠が完成したところで、どの部屋に飾ろうかとみんなで悩んでいました。マリアはトラップ男爵に「これは本来居間に吊るすものですが、この家には居間がないような気がするので…」と言います。トラップ男爵は「あるでしょう、居間なら」と言いますが、ヘートヴィッヒは「一緒に過ごせる家族のいない居間なんって名前だけじゃない」と言って部屋を出て行ってしまいます。ルーペルトの提案でみんなで集まって月桂冠を作った小さいマリアの部屋に吊るす事にしました。そしてトラップ男爵はマリアに「この家でみんなが集まる場所というのは、結局あなたのいる場所です」と言うのでした。月桂冠は小さいマリアの部屋に吊るされ、クリスマスまでの4回の日曜日ごとにロウソクに1本ずつ火を灯し月桂冠の下でクリスマス・キャロルを歌います。そして子供たちはイエス様に秘密の願い事を書き、窓際に置いて眠るのでした。トラップ男爵はマリアのおかげで子供たちがこれほどまでに明るくなった事を嬉しく思い、マリアと巡り合わせて下さった事を神に感謝するのでした。 |
第24話 クリスマス・キャロル |
イヴォンヌ姫がトラップ男爵をベルベデーレ伯爵の別荘に鹿狩りに招待しました。しかし別荘はハンガリーにあり、1日や2日では帰って来られません。マチルダ夫人はトラップ男爵にぜひとも別荘に行ってイヴォンヌ姫との仲を深めてもらおうとしますが、トラップ男爵は子供たちの事を考えると決断できませんでした。そしてトラップ男爵はマリアにどうすればいいのかを尋ねたのです。マリアは来年のクリスマスには新しい家族が1人増える事になるのだから、今の家族で過ごすクリスマスは今年が最後になる。だからトラップ男爵はこの家でクリスマスを過ごすべきだと言います。トラップ男爵もその考えに同意し、イヴォンヌ姫のお誘いを断る事にしました。マチルダ夫人はマリアの存在がイヴォンヌ姫と子供たちの仲良くなれない理由ではないかと考え始め、トラップ男爵にマリアをやめさせるように提言します。しかしトラップ男爵は妻のアガタが亡くなって以来、子供たちには辛いクリスマスを過ごさせてきたが、今年はマリアがいるおかげで楽しいクリスマスが過ごせそうだと言うのでした。 |
第25話 白銀のアルプスにて |
年が明け、再びイヴォンヌ姫からベルベデーレ伯爵の別荘にお誘いがありました。今度はアルプスの別荘に子供たちやマリアも一緒に招待されたのです。子供たちはマリアと一緒に行けるのと、アルプスの山でスキーができるので大喜びでした。別荘に着いてもイヴォンヌ姫はまだ来ていません。イヴォンヌ姫は別荘に来る途中のクラーゲンフルトの叔母の家で風邪をひいて寝込んでしまっていたのでした。子供たちはアルプスの山でスキーをして楽しみます。ところがルーペルトはなぜか元気がありませんでした。ルーペルトは学校で冬休みの間に自分の進路を決めてくるように言われていたのです。ルーペルトはマリアに相談しましたが、マリアはそういった大切な事はまずお父さんに相談するべきだと言います。ルーペルトはお父さんに相談しますがトラップ男爵は人の役に立つ仕事をしなさいと言います。トラップ男爵はその夜ルーペルトの進路についてマリアに意見を求めるのでした。 |
第26話 オレンジと花の苗 |
トラップ男爵はイヴォンヌ姫のお見舞いに子供たちの誰か1人を連れて行こうとしますがヘートヴィッヒや小さいマリアは反対でした。お見舞いに行くと婚約を認めるような気がしたからです。マリアはイヴォンヌ姫が子供たちのお母さんになるのだと子供たちを説得しますが、小さいマリアはマリアがノンベルク修道院に帰りたいから自分たちにイヴォンヌ姫を押しつけたがっているのだと言って泣き出してしまいます。結局トラップ男爵1人がお見舞いに行く事になりました。イヴォンヌ姫はトラップ男爵の見舞いをたいそう喜び、そして結婚して子供たちは学校の寄宿舎に預けて2人だけで生活したいと言います。しかしトラップ男爵はきっぱりと子供たちを手放す気はないと言うのでした。 |
第27話 昨日・今日・明日 |
マリアは復活祭までの40日間、肉を食べない事にしました。そして余った時間を利用して刺繍を作り、ノンベルク修道院に寄付すると言うのです。それを聞いた子供たちもマリアを見習って何かを始めようと考えました。小さいマリアとヨハンナはいつもより30分早起きしてアイゲンの教会にお祈りに行く事にしました。そしてマリアの子供の頃の苦労話を聞いたトラップ男爵も、自分も何かやってみようという気持ちになり40日間禁煙する事にしたのでした。 |
第28話 いたずらアガーテ |
イヴォンヌ姫が突然トラップ家にやってきました。トラップ男爵を驚かせようと靴を脱いで忍び足で屋敷に入りトラップ男爵を驚かせたのですが、脱いだ靴をアガーテがいたずらしてしまい、靴はボロボロになってしまいます。イヴォンヌ姫はトラップ男爵に結婚したら子供たちのお母さんになれるように努力してみると言います。そして乳母を雇って叱り役をしてもらい、自分は叱らないで慰め役にまわると言うのです。それを聞いてトラップ男爵やマリアも顔をしかめてしまいました。アガーテはハサミを取り出すと食堂のテーブルクロスやカーテンを切っていたずらします。マリアはアガーテのお尻をぶって叱りますが、イヴォンヌ姫はアガーテをかばい、アガーテはすっかりとイヴォンヌ姫になついてしまいました。ところが食事の時、イヴォンヌ姫の隣に座ったアガーテは肉を手でつかむとイヴォンヌ姫に食べさせようとするのです。顔をそむけるイヴォンヌ姫に、なおも肉を差し出し、アガーテはイヴォンヌ姫のドレスの上に肉を落としてしまいます。イヴォンヌ姫は怒って車に飛び乗ると帰ってしまいました。 |
第29話 妻になる人、母になる人 |
アガーテがイヴォンヌ姫を怒らせたので子供たちは大喜びでした。子供たちはマリアがずっといてくれたら新しいお母さんなんかいらないと言います。でもマリアは6月になったらノンベルク修道院に帰ってしまいます。その6月まであとわずかに迫っていたのでした。 |
第30話 結婚してくれますね!? |
イヴォンヌ姫はトラップ男爵との婚約を破棄すると、3才年下の英国貴族の男性とすかさず婚約してしまいました。マチルダ夫人はその新聞記事を見てはため息をつくのでした。 |
第31話 神様の思し召し |
トラップ男爵がマリアに求婚した事を知ったマチルダ夫人は断固反対します。マチルダ夫人はトラップ男爵とマリアは身分や年齢が違いすぎると言います。さらに貴族の結婚は好きかどうかではなく貴族として相応しいかどうかだと言うと、トラップ男爵はマリアと結婚する為に貴族をやめると言いだしたのです。トラップ男爵は自分にとっても子供たちにとってもマリアはなくてはならない人になっていたのです。そしてトラップ男爵は子供たちに「お前たちは決して身分だの階級だので人を見てはいけない」と言って、マチルダ夫人に「子供たちに間違った事を教えないでほしい」と言うのでした。マチルダ夫人はマリアに求婚を断るように詰め寄りますが、子供たちはマリアにお母さんになってほしいとせがみます。マリアは自分がこんなに必要とされているのだと思うと、嬉しくて泣いてしまいます。しかしマリアは神に預けた身だから自分の一存では決められないと言ってノンベルク修道院に一度戻って院長に相談する事にしました。 |
第32話 七月の花嫁 |
マチルダ夫人はトラップ男爵とマリアとの結婚には断固反対でした。トラップ男爵は世間の悪評を吹き飛ばす為、亡くなったアガタの両親にマリアとの再婚を認めてもらうようにお願いに出かけ、しばらく屋敷には戻らず地中海でヨットに乗って暮す事にしました。その間、トラップ家をマチルダ夫人とマリアの2人で支えます。ルーペルトは高校への進学の為、入学試験を受けに行きます。数日後アガタの両親はマリアとの再婚を認めてくれたばかりか、マリアにウェディングドレスをプレゼントしてくれたのです。20日ほどしてトラップ男爵は屋敷に戻り、今度はマリアがノンベルク修道院に10日間、黙想に行きます。マチルダ夫人とクラリーネはマリアの結婚にあわせてトラップ家をやめてウィーンに帰る事にしたのでした。 |
第33話 本当の家族 |
結婚式の翌日、トラップ男爵とマリアと子供たちは新婚旅行で近くの湖に日帰りで出かけます。トラップ男爵とマリアは今までお違いの事を“トラップ艦長”“フロイライン・マリア”と呼びあっていましたが、結婚してからはおかしいという事になり、これからは“ゲオルク”“マリア”と呼ぶ事にし、子供たちもマリアの事を“マリアお母さん”と呼ぶ事にしました。 |
第34話 ファミリー合唱団誕生 |
下宿屋として新しい生活が始まりました。子供たちも下宿屋の掃除や洗濯などを手伝います。トラップ家にはお金がなく、今雇っている4人の使用人も数を減らす必要があります。トラップ男爵は行くあてのある人は遠慮なくやめてもらいたいと言いますが、不景気な世の中でどこも就職先は見つからず、誰も名乗りを上げませんでした。しかしメイドのミミーは毎朝牛乳を運んでくるカールという青年から結婚を申し込まれていました。ミミーはトラップ家に自分がいなくても子供たちだけで掃除や洗濯ができると考えトラップ家をやめてチロルの村にお嫁に行く事にするのでした。 |
第35話 歌声は風にのって |
トラップ一家の歌はとても評判がよく、ザルツブルグのラジオ局から出演依頼が来ました。トラップ男爵は子供たちに歌を歌わせて出演料を取る事には反対でした。ところがマチルダ夫人から手紙が来て、子供たちのおばあさんであるホワイトヘッド夫人の具合が悪いと知らせてきたのです。トラップ男爵は子供たちを連れてウィーンまでお見舞いに行こうとしますが、そのお金がありません。そこでラジオに出演しておばあさんに歌声を聞いてもらおうと考えたのです。トラップ男爵もこの考えには賛成でした。トラップ一家の歌はオーストリア中に流れ、オーストリア共和国大統領のクルト・フォン・シュスヒニッヒもまたラジオから流れてくる子供たちの歌声をとても気に入り、大統領主催のパーティーで歌ってほしいと電話をかけて来たのです。子供たちは大統領が直接電話するはずがないと言って信じませんでしたが、それから1週間後に大統領主催のウィーン・フィル・ハーモニー管弦楽団のパーティーの正式な招待状がトラップ家に届いたのです。 |
第36話 ナチス侵攻 |
大統領の推薦でクライネンホールでトラップ一家の演奏会が開かれる事になりました。トラップ一家の前にアメリカの有名な歌手マリアン・アンダーソンのコンサートが開かれておりホールは観客でいっぱいです。子供たちはとても緊張しましたが、演奏会は何とか無事に終える事ができ、観客たちもとても喜びました。演奏会が終わった後、トラップ一家は楽屋で新聞記者に写真を写してもらいます。そしてアメリカの新聞記者ワグナー氏がトラップ一家合唱団にアメリカ演奏旅行をしてもらいと言いますが、トラップ男爵は音楽を生活の手段にするつもりはなく、音楽は生活の楽しみにとっておきたいと言って断ります。ワグナー氏はもし気が変わったらここへ連絡してくれと言って名刺を渡して帰っていきました。 |
第37話 あたらしいご挨拶 |
ハンスはトラップ男爵に玄関に飾ってあるオーストリア国旗を目立たない場所にしまった方がいいのではないかと提案しますが、トラップ男爵は断固として拒否します。トラップ男爵はこの地球が続く限りオーストリアはなくなる事はないと言い切りますが、ヒトラーはオーストリアをドイツに併合すると、オーストリア国歌を歌っただけで死刑にする法律を作ったのです。トラップ男爵はナチスが嫌いでヒトラーの悪口を言いますが、それを聞いたハンスはそれを他人に聞かれたら家族がどうなるかわかりませんよと脅かすのでした。 |
第38話 ハンスの秘密 |
突然ドイツの秘密国家警察がトラップ家を訪ねて来ました。近いうちにヒトラーがザルツブルグに来るから全住民は鍵十字の旗を掲げなければならないと言うのです。トラップ男爵は旗を買うお金がないと言って追い返しますが、すぐに戻ってくると大きな鍵十字の旗を渡すのでした。 |
第39話 誇りと信念 |
トラップ男爵はハンスを首にしようとしますが、ハンスは自分がいるおかげでトラップ一家が無事に過ごせているのだと言って出て行こうとはしません。トラップ男爵は懐からナイフを取り出すとハンスの持っていた鍵十字の旗を真っ二つに裂いてしまうのでした。 |
第40話 さようならわが祖国 |
亡命の計画は、まず汽車で寄宿舎に入っているルーペルトと合流し、チロルの村のミミーを訪ねる。そしてアルプス越えでイタリアに入り、そこからスイスに行くというものでした。トラップ一家はハンスに気付かれないようにハイキングに出かけると偽って必要最小限の荷物をまとめると朝早くに家を出ていきます。バスナー牧師も亡命に参加しますが、ハイキングに一緒に行くと怪しまれる為、あらかじめ教会に泊まり込んでもらい駅で合流する事にしました。フランツにはルーペルトに伝える伝令役を頼みましたが、ローズィにはナチスに見つかった時に計画を知っていると捕まってしまうので内緒にしたままでした。しかし見送りに玄関まで来てくれたローズィに子供たちは泣きながら別れを告げ、ローズィも事態を悟るのでした。トラップ一家はバス停で偶然ハンスに出会ってしまいます。ハンスはトラップ一家がハイキングに行く事は聞いていましたが、小さいマリアがお母さんの形見であるヴァイオリンを持っている事を不審に思います。そこへフランツがやって来ますが、ハンスがいる手前、ルーペルトに伝えた事を報告する事ができません。とうとうバスがやって来ました。バスに乗り込むトラップ男爵に対しフランツは「艦長殿、出港準備完了!」と報告するのでした。 |