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名犬ラッシー  ストーリー詳細

第1話 ひとりじゃない
 1930年代半ば頃のイギリス、ヨークシャー州のグリノールブリッジ村に、ジョン・キャラクローという名の9歳になる少年が、お父さんのサムとお母さんのメリッサと一緒に暮していました。お父さんはウェリントン炭坑の事務長として朝早くから夜遅くまで働き、お母さんも診療所の看護婦としてホッパー先生のもとで毎日働いていたので、ジョンはいつも1人で寂しく過ごしていました。
 ある日の事、お母さんはハミルトンさんの奥さんが赤ちゃんを産むというので徹夜で付き添って、朝になっても帰ってきません。お父さんは今日も朝早くから仕事に出かけたので、ジョンは今日も1人で朝食をとると学校に出かけます。家を出る時、ジョンは「いってきます」と言うのですが、誰も返事をしてくれる人がいないので、自分で「いってらっしゃい、ジョン」と言って出かけるのでした。
 ジョンは学校の帰りにクラスメイトのコリンに運河に行こうと誘いますが、コリンは家の手伝いがあったのでジョンの誘いを断ってしまいます。ジョンは残念に思いました。昼にはお母さんが帰ってきているだろうと思い、家に帰りましたがお母さんはまた出かけようとしています。盲腸をこじらせて腹膜炎になったモートンさんの手術の看病で今夜も徹夜になると言うのです。ジョンは1人で寂しく過ごしていましたが、あまりにも退屈なのでコリンの家に行きました。コリンはちょうど家の手伝いで配達に行くところでした。ジョンはコリンと一緒に配達を手伝おうとしますが、配達先は村の両端だったので、またまたジョンは1人で自転車に乗って配達を手伝うことになってしまいます。配達の途中でジョンは飛行機が飛んでいるのを見かけました。すると飛行機は近くの草原に着陸したのです。ジョンは飛行機を見るのが大好きだったので、さっそく飛行機の着陸した場所に行きました。飛行機からは1人の女の子が降りてきて迎えの車に乗って走り去ってしまいました。
 ジョンが自転車に戻ると道端に仔犬を見かけます。しかしジョンは配達の手伝いがあったので仔犬をその場に置いて走り去ってしまいました。配達からの帰り、ジョンは今日の晩御飯も1人で食べるのかと思うと寂しさでいっぱいでした。すると先程見かけた仔犬が同じ場所でじっとしていたのです。ジョンは仔犬が迷子になってしまったのではないのかと思い、仔犬を家に連れて帰りました。仔犬を暖炉の火で暖め、友人のサンディの家でミルクを分けてもらってそれをお皿に入れて飲ませようとしますが、仔犬はミルクを飲もうとはしませんでした。仔犬はまだ生まれたばかりだったのでお皿のミルクは飲めなかったのです。それに気付いたジョンはコリンの家に行き哺乳瓶を分けてもらいます。哺乳瓶を使ってミルクを与えると仔犬はミルクを飲み干し、すっかりと元気になりました。夜遅くにお父さんが帰ってくるとジョンは居間で仔犬を抱いたまま寝ていました。お父さんはジョンが1人寂しく過ごしているのではないかと心配していたのですが、仔犬といっしょで1人ではなかった事を知り少し安心するのでした。
第2話 大さわぎの留守番
 次の日、ジョンは仔犬にチビという名前を付けようとしました。しかしお父さんは仔犬がコリー犬で、大人になったら今のジョンより大きくなるという事を知っていたので、そんな大きな犬にチビという名前はおかしいのではないかと言います。そしてお父さんはまた朝早くから会社に出かけるのでした。ジョンは小さな木箱を用意すると、そこに古着を敷いて仔犬の家にしました。そしてジョンは仔犬をそこに残したまま学校に出かけるのでした。
 学校ではコリンやサンディが仔犬の事をとても気にしていたので、学校の帰りに見せてあげる事にしました。ところがジョンが学校に行っている間に仔犬は木箱を抜け出すと、暖炉の灰の中に入って体中真っ黒になった状態で毛布の上を歩き、階段を転げ落ちると台所を荒らし続けたのです。そこへお母さんが2日続きの徹夜でフラフラになりながら帰って来ました。お母さんは家に入るなりソファーに横になりますが、その時、台所の方からゴソゴソと音が聞こえたのです。お母さんが台所に行くと仔犬が台所を荒らしていたのです。お母さんは眠いのを我慢して仔犬を洗うと、今度は台所の掃除と汚れた毛布の洗濯を始めました。そこへジョンが帰って来たのです。ジョンは仔犬が台所を荒らした事を知ると、徹夜明けのお母さんに休んでもらって、仔犬が汚した毛布を自分で洗濯するのでした。
 ジョンはお母さんが眠ってしまったので、自分で晩御飯を作る事にしました。ところがジョンが料理している間に仔犬は外に出てしまったのです。ジョンは慌てて仔犬を探しに行きましたがどこにも見当たりません。そればかりかサンディまでもが羊の番犬であるビンゴを探していたのです。すると木陰で仔犬はビンゴを枕に寝ていたのです。ジョンは仔犬がお母さんが恋しくておじいさん犬であるビンゴに甘えたのではないかと思い、できるだけ早く仔犬を飼い主の、お母さん犬のもとに帰してあげようと考えるのでした。
 翌日の朝早くにジョンは仔犬を連れて仔犬を拾った場所に手がかりがないかを探しに行きました。するとそばの小川にボートが繋がれており、ボートの中に仔犬の首輪が落ちていたのです。首輪には“Lassie”と書かれていました。そこでジョンは仔犬をラッシーと名付けるのでした。
第3話 さよならラッシー
 ボートはロープが切れており、明らかに上流から流されて来たものでした。そこでジョンはコリンと一緒にラッシーの飼い主を探す為、ボードに乗って上流に向かいます。ずいぶんと上流までさかのぼると、船着き場が見えてきました。ジョンはその船着き場にボートを横付けすると、そこにはボートのロープと同じロープが切れた状態で垂れ下がっていたのです。ジョンたちはここからボートが流れて来たに違いないと考えた時、船着き場のそばの家からグッドマンという名前の男が出て来ました。グッドマンは恐そうなおじさんでボートを見るやいなや、ジョンたちはボートを盗んだものだと疑われてしまいます。グッドマンはとても気が荒く、ラッシーの事も乱暴に扱うのを見たジョンは心配になってきました。グッドマンはラッシーの事を大切に育ててくれるのだろうかと…
 ラッシーのお母さん犬はどこにも見えません。数日前の事、近くを通りかかった車がパンクし、修理している間にラッシーが迷子になりました。しかし飼い主は船の出港の時間が迫っていたので、ラッシーを見つけたら大切に育ててくれと言い残して去って行ったので、グッドマンが手荒に育てていたのです。ジョンはグッドマンが一人暮らしなのを知ると、ラッシーはグッドマンのそばにいるべきだと考えました。そしてグッドマンがラッシーを大切に育てるように頼みますが、グッドマンは聞き入れようとしないので、ケンカになってしまいました。子供のジョンには勝ち目はありませんでしたが、とうとうグッドマンもラッシーを大切に育てると言わざるをえませんでした。ジョンはグッドマンにボートで家の近くまで送ってもらいます。そして別れ際にラッシーを大切にしてくれと頼むジョンに、グッドマンはラッシーはお前が育てろと言ってラッシーを譲ってくれたのでした。
第4話 父さんの給料日
 それからラッシーはスクスクと成長し、ジョンの体と同じくらいまでに大きくなりました。そして今日は給料日で明日はお母さんの誕生日です。ジョンの家でもお祝いに豪華な食事を作ろうとお母さんは張り切っていました。ジョンはお母さんに誕生日プレゼントとして何をあげればよいのか悩んでいました。サンディに相談したところ、ブローチがいいと言われて宝石の露天商まで連れて行かれますが、ジョンにはブローチを買うお金がありません。そこでお父さんと一緒にブローチをお母さんにプレゼントしようと考えるのでした。
 お父さんは給料日だというのに坑道に水が出たので、新人のブロックさんと一緒に遅くまで残って残業していました。ようやく仕事を終え事務所に戻ってくると、みんなは既に帰っており、手さげ金庫にはお父さんの分の給料だけが残されていました。お父さんのアシスタントであるベルロイさんがブロックさんの分の給料を伝票に載せ忘れていたのです。お父さんは気付かれないように自分の給料をブロックさんに渡してブロックさんを帰すと、机にもたれかかって悩んでしまいました。自分の給料がなくなってしまったのでお母さんの誕生日どころではないのです。
 お父さんは家に帰るとジョンに給料を落としたと言います。ジョンはお父さんを責めるとラッシーと一緒に落とした給料を探しに出かけました。ジョンはラッシーにお父さんの帽子の匂いをかがせると、ラッシーにお父さんの通ってきた道を案内させます。ラッシーは宝石の露天商の前で止まりました。お父さんもお母さんにブローチをプレゼントしようとしていたのだと悟ると、ジョンはお父さんを責める気持ちはなくなってしまいました。するとその時ジョンは市場の人込みの中でスリの現場を目撃したのです。ジョンはラッシーの力を借りてスリの犯人を捕まえ、露天商のおじさんにお礼としてお父さんが買おうとしていたブローチをもらいます。ジョンは家に帰るとお父さんに「お父さんからお母さんにプレゼントして」と言ってブローチを渡すのでした。
第5話 ごちそう求めて6マイル
 翌日の日曜日、ジョンは買えなくなったご馳走を自分で調達する為に、朝早くからラッシーと一緒にザリガニを取りに出かけます。途中でサンディも加わり2人と1匹で6マイル離れたディアフォード沼に出かける事にしました。途中まで鉱山の石炭を運ぶ汽車を運転しているバーンセンじいさんに乗せてもらおうとしますが、汽車はバーンセンじいさんではなく、ウォルマンという新しい人が運転しており、そっけなく断られてしまいます。それでもサンディとラッシーは貨車に潜り込んでおり、ジョンも貨車に潜り込むのでした。しかしラッシーが吠えた為にウォルマンに気付かれてしまい、途中でおろされてしまいます。
 ジョンとサンディは、そこからディアフォード沼目指して歩き続けますが、2人ともくたくたで、足が棒のようになってしまいました。そこへ乾し草を積んだ荷馬車が通りかかり、御者のおばさんにこころよく乗せてもらいます。ところが橋の上で馬車がバランスを崩し、川に落ちそうになってしまいます。ジョンとラッシーは無事に降りる事ができましたが、おばさんとサンディはどちらかが降りると馬車はバランスを崩して川に落ちてしまうので降りる事ができません。ジョンはおばさんに言われるまま1マイル離れた近くの家まで走って助けを求めに行きますが、家を目前にしてジョンは力尽きてしまい、ラッシーが家の人を呼んで来て、無事に馬車を助けあげるのでした。
 ジョンとサンディはようやくディアフォード沼に到着しましたが、もう足は棒のようになっており、ザリガニを取る元気は残っていませんでした。ところが馬車のおばさんとその仲間たちがトラックに乗ってやってきて、ジョンたちがザリガニを取るのを手伝ってくれたのです。ジョンの家のその日の晩の夕食は大量のザリガニが食卓に並ひ、お父さんもお母さんも目を丸くするのでした。
第6話 嵐の中をかけぬけろ
 ジョンはグリノールムーアに大きな石の塔があるという噂を聞いていましたが、それを見た事もなかったし、どこにあるのかも知りませんでした。ところがコリンのお父さんが村の南のヒースの荒野にあると教えてくれたので、ジョンはコリンと一緒に石の塔を目指して探検に出かけました。そして野原にそびえる石の絶壁を登り切った時、その石の塔が見えたのです。ジョンたちはここを岩の城と呼ぶ事にしました。岩の城は中が空洞になっており、上の方には天窓までありました。ジョンはラッシーを連れて天窓まで登ると岩の城の頂上まで登る事ができました。ところが頂上から見た空は、遠くの方に真っ黒な雲が迫って来ていたのです。
 ジョンが家に帰ると嵐が近づいていました。お父さんは縦坑のやぐらが倒れそうだったので、様子を見に出かけました。そしていよいよ大粒の雨が降り始めました。ところがジョンがお母さんといっしょに留守番をしているとホッパー先生がやって来ました。ホッパー先生はモートンさんの心臓の具合が悪くなったのでこれから様子を見に行く為に、看護婦であるお母さんを呼びに来たのです。大雨の中をホッパー先生とお母さんは橋の向こうのモートンさんの家に出かけて行きました。
 しばらくするとサンディのお兄さんのビリーがやって来ました。ビリーは逃げた羊を探しに来て嵐に遭遇してしまい、ジョンの家に逃げ込んだのです。嵐はそれほどまでにひどくなっていたのですが、ビリーは一休みすると家に帰ってしまいます。ラッシーはソファーの下にホッパー先生の注射器を見つけました。注射器がないとホッパー先生は困っているはずです。ジョンは注射器を雨ガッパのポケットに入れると、勇気を振り絞ってラッシーと一緒に嵐の中をモートンさんの家まで出かけました。ところが道は川のように水が溢れており風が強くてジョンは思うように前に進めません。しばらく進んだところで猫のスマーティーが嵐の中をたたずんでいるのを発見しました。ジョンはスマーティーを自分の家に避難させると、再び嵐の中を歩き始めます。そしていよいよモートンさんの家の近くの橋までたどり着きましたが、川は溢れていて今にも橋は流されてしまいそうでした。そこでジョンはビリーの家の羊を見つけたのです。その頃ホッパー先生は困っていました。モートンさんが苦しんでいるのに注射器がないので鎮静剤が注射できないのです。モートンさんは心臓の発作を起こしかけていたのでホッパー先生は嵐の中をジョンの家まで注射器を取りに行こうとしますが、その時ジョンがラッシーと羊と一緒に注射器を持ってモートンさんの家にやって来たのです。朝になって嵐はすっかりと収まりました。ジョンはコリンとサンディと一緒に再び岩の城を訪れるのでした。
第7話 マフラー泥棒を捕まえろ
 冬が近づきグリノールブリッジ村に初雪が降りました。初雪だというのに10センチほど積もっていました。お父さんとお母さんは仕事に出かけ、ジョンは学校です。いつもならラッシーは裏庭に放しているのですが、今日は雪が積もっていたのでラッシーは家の中に閉じ込めていました。ラッシーは家の中でボール遊びをして時間を潰していましたが、退屈になったので外に出かけます。ラッシーは町の中を歩いているとコリンから声をかけられました。コリンは風邪を引いて学校を休んでいたのです。ラッシーはコリンの部屋でしばらく暖を取りましたが、コリンからマフラーを首に巻いてもらうと再び歩き始め、学校に行きました。その頃、学校では廊下に掛けてあった生徒のコートを汚されていてスピナーが自分のマフラーがないと言いだしたので生徒たちは大騒ぎになります。その時ラッシーがマフラーを巻いて学校に顔を出したので、ラッシーがマフラー泥棒と間違われて生徒たちに追いかけられてしまいます。しかしスピナーのマフラーはラッシーが首に巻いていたマフラーとは色が違っていました。ラッシーは学校の物置小屋の前まで逃げました。ジョンたちが追いつくと物置小屋の中には穴熊がスピナーのマフラーを使って巣を作って子供を育てていたのです。生徒たちは物置小屋で穴熊を育てる事にしました。そしてみんなはラッシーがマフラー泥棒の真犯人を見つけた賢い犬だと口々に言いあうのでした。
第8話 ラッシーなんか大嫌い
 ラッシーはジョンが朝学校に行くのに一緒について行き、それから家に戻って2時55分になると学校に向かい、3時きっかりに学校の門に到着するとジョンと一緒に学校から帰るのを日課にしていました。その日は学校で些細な事からジョンとサンディはケンカをしてしまいます。その日の帰り、ジョンは肉屋のネルソンさんからラッシーは毛並みが良くて賢い犬だと誉められました。しかしそれはジョンがいつもラッシーの世話をしているからで、ジョンなしではラッシーもここまで毛並みが良くなる事はありません。でもジョンはサンディとケンカした事もあって、ラッシーがいつも自分のそばにまとわりついている事に嫌気がさしてきたのです。朝ジョンが目覚めるとベッドにラッシーが潜り込んで来ていました。ジョンはラッシーにベッドに入って来るなとラッシーに冷たく当たります。ラッシーの毛並みはひどい寝癖で見る影もなかったので、ジョンはブラシをかけてやりますが、ラッシーの体には蚤がいたのでジョンはますますラッシーを怒ってしまいました。
 ジョンは朝学校に行く時、ラッシーについて来るなと言い、学校からの帰りもラッシーを無視していましたが、ラッシーはそれでも健気にジョンの後をついて来ます。ジョンはラッシーに意地悪する為に炭坑の横穴に宝探しに行く事にしました。ラッシーは恐がりだったので炭坑の横穴を恐れていたのです。ジョンは長く掘られた炭坑の横穴に入って行きました。ラッシーも恐る恐るついて行きますが、迷路のような横穴をジョンが走り続けたのでラッシーも離されまいと必死に走ります。そして外に出た瞬間、ラッシーは深く掘られた縦穴に落ちてしまいました。ジョンはびっくりしてラッシーを助けようとしますが、ジョンもすぐ隣に掘られた縦穴に落ちてしまいます。ラッシーもジョンも縦穴から出られなくなってしまいました。ジョンは穴の中でラッシーに意地悪した事を後悔しました。するとラッシーは縦穴を横に掘り続け、ジョンの落ちた穴まで掘り進めてきたのです。ジョンはラッシーを抱きしめると、これまで意地悪した事を謝りました。そしてラッシーは穴の中で遠吠えを繰り返し、その泣き声を聞きつけたビンゴはサンディのおじいさんのモナハンと一緒にやって来てジョンとラッシーを助けてくれました。その翌日、ジョンは学校を2日も休んでいたサンディを見舞いに行き、めでたく2人は仲直りするのでした。
第9話 空から来たおてんばお嬢様
 ジョンがラッシーと出会って1年が経過したある日の夜、突然ウェリントン炭坑のドーハン所長がお父さんを訪ねてジョンの家にやって来ました。ドーハン所長は明日、鉱山主が鉱山にやって来るという事で大慌てでした。翌日、鉱山は掃除したりで大騒ぎです。そしていよいよ鉱山主が飛行機でやって来たのです。飛行機が草原に着陸した時、ジョンは羊を追いかけていたので見る事ができませんでした。でもラッシーはジョンと知り合った時に飛行機に乗っていた女の子と同じ女の子が乗っている事を確認します。女の子はプリシラという名前の鉱山主の孫娘でした。プリシラはラッシーに話しかけると、そのまま車で走り去ってしまいました。
 プリシラは屋敷で退屈していたので白馬のビューティーに乗ってグリノールブリッジ村まで遊びに出かけます。プリシラは草原で出会ったラッシーにもう一度会いたいと思っていました。その頃ジョンは着陸した飛行機の操縦席に乗せてくれるように操縦士にお願いしますが、そっけなく断られてしまった為に、ふてくされて木陰の垣根のそばでラッシーと昼寝をしていました。すると突然雨が降って来たのでプリシラは同じ木陰の垣根の反対側で雨宿りします。2人はふとした事から垣根越しにばったりと顔を合わせてしまいます。ジョンとプリシラはあっという間に仲良しになりました。ジョンとプリシラが話をしていると庭師のハインズがプリシラを迎えに来たのでプリシラは帰ってしまいます。2人は別れてからお互いの名前を聞き忘れていた事に気付くのでした。
第10話 はじめてのケーキ作り
 翌日、プリシラはどうしてもジョンに会いたくなったのですが、プリシラはおじいさんのラドリング公爵の許可なく屋敷の外に出る事ができません。そこでプリシラはコック長のピーターの車の荷物台に潜り込み、グリノールブリッジ村に行きました。プリシラは途中で出会ったコリンに案内してもらってジョンの家を訪れます。ジョンは家の窓枠のペンキ塗りをしていましたが、突然プリシラが訪れて来たので、びっくりしてペンキを頭からかぶってしまうのでした。
 ジョンがペンキを落としているとサンディが卵とクリームを持ってやって来ました。サンディはプリシラと初めて出会ったのですが、すぐに仲良しになってしまいました。サンディはジョンのお母さんに頼まれてケーキの材料を持って来たのですが、お母さんはジョンのペンキで汚れた服を洗濯する為、サンディとプリシラとジョンの3人でケーキを作る事になったのです。サンディはケーキを作るのが得意だったのですが、プリシラはお嬢様育ちだった為、ケーキを作るどころか卵を割ったことすらなかったのです。しかしサンディに教えてもらいながらプリシラは楽しくケーキ作りに励み、とうとうケーキは完成しました。そこへお父さんとドーハン所長が来ました。ところがドーハン所長は家に入るなり「まいったよ、公爵閣下がやっぱり孫娘を連れてもう一回視察に来るんだとさ。嫌だねぇ〜、うちは子供相手の見世物小屋じゃないんだからさぁ〜」と言います。それを聞いたプリシラは少し顔をしかめました。公爵閣下の孫娘とはプリシラの事だったからです。そこへプリシラの居場所を突き止めたピーターがプリシラを迎えに来ました。そしてプリシラはみんなに別れを告げると、自分で作ったケーキを食べる事なく帰ってしまいます。ドーハン所長はプリシラが帰った後、プリシラが鉱山主であるラドリング公爵閣下の孫娘である事を思い出し、自分がとんでもない事を言ってしまった事に気付くのでした。
第11話 プリシラ・最後のわがまま
 翌日、ジョンとコリンとサンディはプリシラの作ったケーキをプリシラに届けにラドリング公爵家に行きます。ところが門番のハインズはケーキを叩き落としてジョンたちを追い返してしまいます。プリシラは今夜、飛行機でスコットランドに帰らなければならなくなってしまいました。しかもハインズからは外出を禁じられていたので、プリシラはこっそりと塀を乗り越えて外に出たところでジョンたちに合流するのでした。
 ジョンたちとプリシラの4人はプリシアの提案でムーアの岩の城に遊びに行く事にしました。ムーアの岩の城は遠かったので、岩の城に着いた時にはもう夕方になっていました。ジョンたちは岩の城の中に入ったところで、残りはまた明日と言って引き返そうとしますが、プリシラには明日がありませんでした。プリシラは意を決すると頂上まで登りたいと言います。岩の城のふもとはもう陽が落ちていましたが、頂上にはまだ日が当たっていました。プリシラにとって岩の城の頂上にはまだ今日が残っていると思えたのです。事情を察したジョンたちはお日様と競争して頂上まで登ると、4人で日没の美しい光景を眺めるのでした。
 プリシラはジョンたちと、またここに登る事を約束して村に戻りました。村に帰った時にはとっくに夜になっていたので、サンディのおじいさんのモナハンに4人とも叱られてしまいます。プリシラは岩の城から見た美しい光景を胸に秘め、飛行機でスコットランドへ向かうのでした。
第12話 火事をおこしたのは誰だ
 ある日、ジョンとサンディは村のはずれで犬を連れたローリーという男の人に出会いました。ローリーの本職は金物屋でしたが、犬のトゥーツを使って楽しい芸を見せてくれる旅芸人でもあったのです。村の広場でテューツが芸を見せ、金物屋は大盛況でした。ジョンはローリーから晩御飯を買ってきてくれと頼まれた為、ライスさん家のパン屋さんに買いに行きますが、娘のメアリーはパンはすべて売り切れだと言うのです。ローリーさんは残念がりましたが、明日もこの村で商売をする為に焚き火をして今夜はここで野宿する事にしました。ジョンたちは夜になってもローリーさんの旅の話を聞いていましたが、夜遅くなったのでジョンたちは帰ってしまいました。
 次の日の朝早く、トゥーツの泣き声で目覚めたローリーは馬車の屋根が燃えているのに気付きました。村中大騒ぎになって何とか火は消し止めましたが、村の中で火を出した責任を問われてローリーはライスさんに村を追い出されてしまいます。ところがコリンは昨日の夜11時にローリーさんが焚き火の火の始末をしていたのを目撃しており、明け方の火事はライスさんのパン屋さんの煙突から出た火の粉が馬車の屋根に降りかかった為だという事がわかったのです。ライスさんはローリーに謝る為に荷台にジョンたちとメアリーを乗せるとトラックでローリーを追いかけました。トラックは途中でエンジンが故障し、ジョンたちは走ってローリーを追いかけ、村の出口でようやくローリーの馬車に追いつくと、ライスさんはローリーに謝るのでした。
第13話 サンディは牛どろぼう?
 ある日、サンディの家のムーという名前の乳牛のミルクが出なくなってしまいました。サンディのお父さんのフィリップはムーのミルクが出るように手を尽くしましたが、ミルクはいっこうに出ず、とうとうムーを売る事にしました。しかしサンディはムーを一番大切にしていたので悲しくてたまりませんでした。翌日、ムーとムーの子供のベビームーが牛小屋からいなくなってしまいます。サンディのお父さんは牛が2頭も盗まれたと言って村中は大騒ぎになりました。ジョンやコリンはサンディがしょんぼりしていたので力になってあげると言ったところ、サンディはジョンたちを林の中に連れて行きました。そしてサンディはジョンたちに秘密を守る事を約束させた後、ムーの居場所へ案内したのです。実は牛泥棒はサンディだったのです。サンディはムーが売られてしまうのが悲しくてムーを黙って連れ出したのでした。ジョンたちは何かいい手が見つかるまでは、しばらくの間、隠れてムーを飼う事にしました。
 ジョンたちはムーのミルクが出るように色々と手を尽くしていましたが、その声を非番で酔っぱらったバーンセンが聞いてしまったのです。バーンセンはサンディのお父さんにその事を報告すると、村人たちが総出で牛探しに出動します。それを見ていたジョンたちは困ってしまいました。バーンセンは酔っぱらっていたので、どこで声を聞いていたのか定かではありません。そこでサンディのお父さんはラッシーにバーンセンの通って来た道のりを匂いで案内させようと言うのです。ジョンは仕方なくラッシーに匂いを嗅がせて案内させますが、その間にサンディとコリンはムーの居場所を移動させようと試みます。ジョンは途中から無理矢理ラッシーに匂いとは逆の方向に案内させ、その間にムーを移動させようとしますが、ムーは花を食べてばかりで、なかなか動こうとはしませんでした。ジョンがラッシーを引っ張って行った先は行き止まりだったので、また元に戻ってしまい、今度はラッシーが自らムーの方向へみんなを案内します。ジョンは気が気ではありませんでしたが、ラッシーは途中から道をそれると山ぶどうの大量になっている場所へみんなを案内します。村人たちは牛の事など忘れておいしいワインが作れると大喜びでした。サンディのお父さんは1人ふてくされて帰ろうとしますが、その時ムーの大きな鳴き声が聞こえたのです。サンディとムーはサンディのお父さんに見つかってしまいました。
 家に帰ってサンディはお父さんにひどく叱られました。サンディにとっては怒られた事よりもムーが売られてしまう事が悲しくて泣いてしまいます。しかしお父さんのムーを売る気持ちは変わりませんでした。ところがその時、牛小屋でムーがミルクを出すようになったのです。サンディがムーを連れて行った先でムーが食べていた花はミルクが出るようになる薬草だったのです。ムーはミルクが出るようになった事で売られずにこれまで通りサンディの家で暮す事になったのでした。
第14話 怪しい大男を追跡しろ!
 ある日の夕暮れ、アイアンという名の大男が村の外れで倒れていました。ジョンのお父さんのサムはアイアンを家まで運ぶと手当てします。アイアンは行くあてがなかったので、サムは鉱山横の小屋にアイアンを住まわせ、鉱山で働いてもらう事にしました。アイアンは働き者で力が強かったので鉱山の労働者たちからは大歓迎されました。そんな時、先週起きたロンドン金塊強盗の犯人を探して町からブルック警部とウォルターがグリノールブリッジ村に来ていたのです。ブルック警部はアイアンが金塊強盗の犯人だと勝手に決めつけ、村中にアイアンの悪い噂を流し続けます。村人たちはブルック警部の流した噂を信じてアイアンが金塊強盗だと信じてしまいました。しかしアイアンは無口な男だったので反論しようとはせず、ただ黙って働き続けて自分の無実をわかってもらおうとするのでした。
 そんな時、ドーハン所長の金時計が鉱山の事務所から紛失したのです。それを知ったブルック警部とウォルターは事務所に入り込むと机をあさり始め、引き出しの中から金時計を発見しました。ドーハン所長は金時計を机の中にしまい込んだのを忘れて盗まれたと騒いでいたのです。それを知ったブルック警部は悪知恵を働かせるのでした。
第15話 アイアンの無実をはらせ!
 ブルック警部は金時計を見つけたのにドーハン所長には報告せず、金時計を事務所から持ち出してしまいます。そしてアイアンが金時計を盗んだ犯人に仕立て上げる為に、それをアイアンの住んでいる小屋に置いてきました。しかしその時、小屋にはアイアンにお弁当を届けに行ったジョンがベッドの下に隠れていたのです。ジョンはベッドの下に隠れていたので誰が何をしに来たのかわかりませんでしたが、ブルック警部は小屋を出る時にドアに袖を挟んでしまい、コートのボタンを落としてしまうのでした。
 サムがアイアンと一緒に小屋に戻って来た時、棚の奥にドーハン所長の金時計を見つけてしまいます。その時ブルック警部とウォルターが入って来て、アイアンを金時計の窃盗容疑で捕まえてしまったのです。その時ジョンが学校を終えて駆けつけて来ました。事情を察したジョンはボタンを落とした人が真犯人に違いないと考え、ボタンの匂いをラッシーに嗅がせると、ラッシーは車の屋根のブルック警部の荷物の中からボタンの取れたコートを探し出したのです。真犯人がブルック警部自身であることは誰の目にも明白となりましたが、ブルック警部はそれでもアイアンを警察に連行しようとします。しかしとうとう部下のウォルターが汚い手を使う事はやめようと言いだし、ブルック警部は渋々アイアンを解放すると毒づいて帰ってしまいました。それから数日後、金塊強盗は全員逮捕されるのでした。
第16話 急げ!ホッパー先生を助けろ
 ある日の事、ホッパー先生は仕事が一段落ついたので、森の中の誰も知らない湖に釣りに出かけました。ジョンは学校に行っているので、暇なラッシーもついて行きます。ところが湖からの帰りにホッパー先生は谷にかかる丸木橋を渡ろうとして丸木橋が崩れ、大きな岩に足を挟まれて動けなくなってしまいました。ラッシーは助けを求めに村へ走り、ジョンを連れてホッパー先生のもとにやって来ました。ジョンは岩を取り除こうとしますが、逆に岩が崩れそうになってしまい、ジョンは岩を支え続けなければならなくなってしまいました。ジョンはポケットからハンカチを取り出すと、助けを求める内容をハンカチに書いてラッシーに咥えさせたのです。ラッシーは再び一目散に村に戻りました。そしてラッシーはサムにハンカチを渡したのです。サムは鉱山の仕事仲間を連れてラッシーに案内してもらい、ホッパー先生を助けだすのでした。
第17話 カリー先生の結婚
 ジョンたちの学校の担任の先生であるカリー先生がパン屋さんの娘のメアリーと結婚する事になりました。結婚式の前日の別れ際に、メアリーはカリー先生に一番大切な事を何か言い忘れていないか尋ねます。しかしカリー先生には心当たりがなく、何を言い忘れているのかまったくわかりません。メアリーはカリー先生が思い出さなければ結婚しないと言い残して帰ってしまいました。それを見ていたジョンたちはメアリーから事情を聞きだし、メアリーに協力する事にしました。
 翌日の結婚式に新婦のメアリーは教会にやって来ません。カリー先生は心配でたまりませんでした。その頃メアリーはジョンたちにそそのかされて学校の教室でカリー先生へ手紙を書いていたのです。その手紙をラッシーがカリー先生に届けました。手紙には想い出の場所で待っていますと書かれていました。カリー先生は慌ててメアリーを探して走り出しますが、カリー先生には想い出の場所というのがわからず、全然違う方向に走り続けます。仕方なくラッシーはカリー先生の婚約指輪を奪うと、それを咥えたまま学校にやって来ました。カリー先生も教室に入って来ると、そこにメアリーがいたのです。カリー先生は言い忘れていたことを思い出したと言って「新居の居間の壁紙はグリーンのストライプで構わない」と言いました。さらにそれが違うとわかると「だらしがない生活態度をあらため、脱いだ服はきちんとたたむし、歯も毎食後必ず磨く事にする。それに食事の時ぽろぽろこぼさないように気をつけるし、爪ものびたらきちんと切る」と言いました。隠れて聞いていたジョンたちは、まるで子供みたいだと言って笑いますが、メアリーはそんな事で怒っているのではないのです。メアリーはどうしてカリー先生が自分と結婚するのかを尋ねました。カリー先生は「気立てがいいし料理もうまい、本や絵の趣味も良ければ壁紙のセンスは抜群」と言ったところでメアリーは「私が望んでいるのはそんな言葉ではないの」と言って遮ってしまいました。
 メアリーはどうして自分と結婚するのかをもう一度カリー先生に問います。カリー先生は答えます。「それは君が私の音楽だからだ。君の白い指がオルガンの上に奏でるメロディーの律動、それが私の打…」「それは本の中のセリフでしょ、私はあなた自身の言葉で聞きたいのよ、飾られた言葉なんかでなくてかまわない、ただ、あなたの本当の気持ちをあなたの口からちゃんと言ってほしいの」「愛してる」「今、何って?」「愛してる」「聞こえないわ!」「愛しているんだメアリー、だから君と結婚したい」メアリー先生は安心したかのようにカリー先生のそばにより「やっと言ってくれたわね、あなた一度もそんな風に言ってくれなかったんですもの。愛しているわロバート、あなたと結婚します」それを聞いた途端、隠れて聞いていたジョンたちはカリー先生とメアリーを取り囲んで祝福するのでした。そして結婚式が無事に行われました。花嫁が投げるブーケをサンディは必死になって取ろうとしましたが、ブーケはラッシーが取ってしまったのでした。
第18話 大騒動!サーカスの象が逃げた
 グリノールブリッジ村にサーカスがやって来ました。ジョンたちもサーカスを見て楽しみます。しかし象のロザリンロは芸をしくじってしまい団長のベンジャミンから食事抜きにされてしまいました。ロザリンロは翌日の朝早くに牢屋の鍵を壊してしまい、サーカスから脱走して村を通り抜けると、森に入ってしまいました。それをラッシーが目撃しロザリンロを追いかけて森に入っていきます。ラッシーは家に戻るとジョンを起こして再び森に入っていくと、象がいたのです。ジョンとロザリンロはすっかりと仲良しになりました。ジョンはロザリンロが鞭で打たれて傷だらけになっていたので、ロザリンロを森に残したまま家から薬を持って来る事にしました。
 その頃サーカスではロザリンロがいなくなった事に気が付き探し回りますが、どこにもいませんでした。ロザリンロはジョンがいなくなったので寂しくなり、鉱山にやって来たのです。鉱山では象が出たと言って大騒ぎでした。サーカスの人や警察が駆けつけロザリンロをサーカスに戻そうとしますが、ロザリンロは言う事を聞きません。危うくロザリンロは駆けつけた警察に銃で撃たれそうになりますが、ジョンがリンゴを持って来てロザリンロをなだめ、ロザリンロはお礼に樽を使って玉転がしの芸を見せるのでした。
第19話 コリンの初恋とたからもの
 ジョンたちのクラスは遠足で海を見にスカル岬に行く事になりました。ラッシーも一緒に行きたがったので、カリー先生には黙って一緒に馬車に乗せてしまいます。川を下る船に乗ったところでコリンはラッシーを隠そうとしてクリスという少女に出会いました。クリスはスカル岬からオーストラリアに向かう途中だったのです。コリンはクリスと仲良しになりました。スカル岬に着いたところでラッシーはカリー先生に見つかってしまいますが、クリスはラッシーが自分の飼犬のセバスチャンだと言い張ったので、ジョンたちは何とかカリー先生に企みを見抜かれずにすむのでした。クリスはスカル岬の宝の地図を持っていたのでジョンたちも一緒に宝探しを手伝おうとします。しかしコリンがクリスを好きになってしまった事を悟ったサンディはジョンを呼び止め、クリスとコリンとラッシーだけで宝探しに出かけるのでした。地図に書かれた場所を掘ってみると貝殻の詰まった小箱が出てきます。貝殻にはクリスのお母さんからのメッセージが書かれていました。クリスは小さい時にお母さんと一緒にここに来て小箱を埋めていたのです。しかしそのお母さんも先月亡くなってしまい、お母さんとの想い出を掘り出す為にクリスはここへやって来たのです。クリスはお母さんを想い出し小箱を抱えて思わず泣いてしまうのでした。クリスはお母さんとの想い出を胸にオーストラリアへ旅立っていきます。クリスは別れ際にコリンにキスするとオーストラリア行きの船に乗り込むのでした。
第20話 大変だ!母さんが倒れた
 グリノールブリッジ村で風邪が流行り、お父さんは風邪で寝込んでしまいました。お母さんは看護婦をしていたので診療所の患者の診察で大忙しになり、休む時間もありません。お母さんは往診に出かけた先でとうとう過労で倒れてしまいました。お母さんは家に運ばれますが、解熱剤の注射を拒んでしまいます。お母さんは解熱剤の残りが少なくなっているのを知っており、解熱剤を今自分の為に使うと、熱で苦しんでいる他の患者さんの分がなくなってしまうと考えたからです。しかし村人たちが大挙してお母さんの見舞いに駆けつけ、村で唯一の看護婦に倒れられたら困ると言われた為、お母さんは解熱剤を注射してもらうのでした。その頃、パン屋のライスさんがトラックで町まで解熱剤を取りに行っていたのですが、トラックは渋滞に巻き込まれてなかなか前に進みませんでした。
 お母さんが倒れ、ホッパー先生が1人で往診する事になったので、ジョンがお母さんの代わりにホッパー先生を手伝う事にしました。ジョンはホッパー先生の横に張りつき、一生懸命手伝いをします。ジョンが薬の配達に出かけガーベイさんの家に行くと、ガーベイさんから食事を作るように言われてしまいます。ジョンは食後に薬を飲むように言ったのですが1人暮らしのガーベイさんは、ベッドで寝込んでいるので食事が作れないのです。ジョンは他の患者が待っているので断ろうとしましたが、メリッサならちゃんと作ってくれると言われた為、作らざるをえなくなってしまうのでした。
 パーキンスさんの息子のジェイクが高い熱を出したというのでホッパー先生とジョンは往診に行きました。パーキンスさんの家族は全員熱を出してしまったので、ジョンが徹夜でジェイクの看病をすることにしました。ライスさんのトラックは途中の道でエンジンが故障し立ち往生していたので、ホッパー先生の手元に解熱剤はありません。しかもまた急患が入りホッパー先生は別の家に往診に行ってしまいました。ジョンは1人で一生懸命看病を続けましたが、ふとした事からジョンは居眠りしてしまい目覚めた時にはジェイクは高い熱を出していたのです。ジョンが慌てていたその時、様態の良くなったお母さんが駆けつけてくれたのです。ジョンは安心しましたが、肝心の解熱剤がありません。するとラッシーはパーキンスさんの家を飛び出すとライスさんのトラックの所まで走り、故障の直ったトラックをパーキンスさんの家まで道案内したのです。ホッパー先生も戻って来たのでもう安心でした。ジョンはお母さんの代わりとしてホッパー先生の手伝いをした事で、お母さんの仕事の大変さを知るのでした。
第21話 おばあちゃんに会いたい
 ある日の事、斜め向かいに住むフォレストばあさんの息子と名乗るアルバートという男がフォレストばあさんを尋ねて来ました。フォレストばあさんは2階からバケツで水をかけてアルバートを追い返します。アルバートは20年前に両親と大ゲンカして家を飛び出して以来、一度も連絡すら入れませんでした。さらにアルバートは家を飛び出した時に高価な金貨を持ち出していたのでフォレストばあさんはアルバートと親子の縁を切っていたのです。しかしアルバートはおばあさんにロンドンで家族と一緒に暮してほしかったので、それからというものアルバートは毎日のようにフォレストばあさんを訪ねますが、フォレストばあさんは一度たりともアルバートを家の中に入れようとはしませんでした。サムが様子を伺いにフォレストばあさんの家を訪ねますが、アルバートの話をするとフォレストばあさんは興奮して血圧が上がり倒れてしまいました。
 アルバートの息子のロイはおばあさんに会える日を楽しみにしていました。ロイは写真に写るフォレストばあさんが優しそうに見えてならなかったのです。そこでロイは1人でフォレストばあさんを訪ねる事にしました。ロイは村へ向かう途中でジョンたちに出会い、事情を説明するとジョンたちも一緒に案内する事になりました。しかしフォレストばあさんの家に着いてみると、すでにアルバートが来ておりフォレストばあさんに追い返されるところだったのです。ロイは自分も同じように追い返されるのではないかと思って心配になりました。でも、ジョンたちの説得によりロイはジョンのいとこという事にしてフォレストばあさんに会いに行きます。フォレストばあさんはロイを見た瞬間、自分の孫だという事を悟りましたが、気付かないふりをしてロイと話をします。ロイはお父さんの話をしましたが、フォレストばあさんはアルバートの話しなど聞きたがりません。ロイは帰ろうとした時、ラッシーに引っ張られて金貨を落としてしまいました。その金貨はフォレスト家から20年前に持ち出された金貨だったのです。フォレストばあさんはアルバートが金貨を金に変えて使ってしまったと思い込んでいたのですが、お父さんはどんなに貧乏しても絶対にお金に変えず、辛い時にはその金貨を握り締めて頑張ってきたんだとロイは説明しました。それを聞いたフォレストばあさんはとうとうロイを孫と認めて2人で抱き合って喜ぶのでした。そしてその話しを隠れて聞いていたアルバートとも仲直りし、フォレスト家では20年ぶりに親子の絆を取り戻すのでした。
第22話 ジョンの決意・鉱山を救え!
 ジョンのクラスメイトのスピナーはグリノールブリッジ村から引っ越す事になりました。スピナーのお父さんはウェリントン炭坑で働いていたのですが、最近ウェリントン炭坑から石炭の出が悪くなったので他の鉱山に移ると言うのです。それを聞いたジョンは心配になってお父さんに尋ねました。お父さんは心配ないと言いますが、お父さんは石炭の出る方法を必死になって調べているらしく、ジョンは心配になってしまいます。そしてとうとう石炭が出ないので来週から操業が中止される事になったのです。鉱山主のラドリング公爵閣下は大学の地質学の教授を呼んで調べてもらいましたが、はっきりした事はわかりませんでした。そしてとうとうスピナーはお父さんの新しい仕事が見つかったので、みんなにさよならも言わずに引っ越してしまいました。そればかりか大学教授が簡単な調査をしただけでウェリントン炭坑は閉山すべきだという報告書をラドリング公爵閣下に出してしまったのです。サムは慌ててラドリング公爵閣下に引き続きウェリントン鉱山を操業させてほしいと直訴しましたが無駄でした。
 ラドリング公爵閣下はラッシーに一目惚れしていました。ラドリング公爵閣下は犬のコレクターとして名が通っていたのですが、それゆえにサムにラッシーを譲ってくれないかと持ちかけます。しかしサムはラッシーが息子の親友だから譲る事はできないと言うのでした。
 サムは家で悩んでいました。ウェリントン炭坑を閉山する事は耐えられなかったのですが、石炭の出ない鉱山に金をつぎ込むよりも、そのお金を鉱山で働く労働者の未払いの賃金にまわした方がいいような気がしていたのです。メリッサは「あなた、きちんと時間をかけて調べれば石炭は必ず出てくるって、そう考えていたんじゃなかったの。この村へやって来て、それから15年働いて、大恐慌でめちゃめちゃだったウェリントン炭坑を一事務員ながら頑張ってあそこまで盛り返して来たのは誰、サム・キャラクロー」「いえ、それはみんなで頑張ったから…」「ならなおさらじゃない、一緒に働いて来たみんなの為にもとことんやってみなさいよ」「ああ、そうだな。もう一度資料を整えてぶつかってみるか」「うん、その意気よ」そう言って励ますのでした。
 それからというもの、お父さんは炭坑の仲間と共に炭坑に潜って地質調査を始めました。大学教授が調査した結果を自分たちの手でくつがえそうとみんな必死です。そしてサムは自分たちの調査結果を持ってもう一度ラドリング公爵閣下に説明に行きましたが、素人の言う事は信用してくれませんでした。そんな時、スピナーに続いてハミルトン一家が村を去ったのです。村人たちは次に村を出ていくのは誰になるかと噂し、そしてラドリング公爵閣下がサムの言う事を聞いてくれればすぐにでも石炭が出るようになるのにと話し合います。それを見ていたジョンはじっとしていられなくなり、自らラドリング公爵閣下にお願いに行きました。ラドリング公爵閣下はジョンがラッシーを見せに来てくれたと思って大喜びしました。しかし、ウェリントン炭坑を再度調査してほしいというジョンの願いは聞き入れられません。そればかりかラドリング公爵閣下はウェリントン炭坑を続けてほしいというジョンの言葉にどれほどの責任と覚悟があるのか、そしてジョンの一番大切にしているラッシーを賭ける覚悟があるのか問いただします。ジョンはラッシーを手放す事はためらわれたのですが、石炭は出るようになるというお父さんの言葉を信じていたので、ラッシーをラドリング公爵閣下の家に預け、ウェリントン炭坑の再調査を行ってもらう事にしました。ジョンはラッシーとの別れ際「ラッシー、必ず、必ず石炭は出るんだ。そしたらすぐに迎えに来るから、それまでの辛抱だから」そう言い残して帰って行っくのでした。
第23話 頑張れジョン・ラッシーを守れ!
 翌日、お父さんは鉱山から帰らず、お母さんも朝早くから看護婦の仕事で出かけて行きます。ジョンはいつも自分のそばにいるはずのラッシーがいないので、とても寂しく感じてしまいます。そしてジョンは学校が終わったら自分も鉱山へ手伝いに行こうと考えました。その頃、ウェリントン鉱山の事務所では大騒ぎになっていました。閉山の準備をしていたところ、ラドリング公爵閣下が閉山は延期して石炭鉱脈の再調査と、それにかかる費用をすべて出すという連絡が入ったのです。ドーハン所長とサムはラドリング公爵閣下にお礼を言いにラドリング公爵のお屋敷を訪れました。ところがお屋敷には何とラッシーがいたのです。サムはラッシーと引き換えに鉱山の再調査をしようとしたラドリング公爵閣下を卑怯だと罵りましたが、ラドリング公爵閣下はジョンがラッシーを預けたのは石炭は絶対に出るようになるというお父さんの言葉を信じているからだと言うのです。それを聞いたサムは何も言い返せませんでした。
 学校が終わった時、ラッシーはいつものように学校の門の所でジョンを待っていました。ジョンはラッシーをラドリング公爵閣下に預けたはずなのにと不思議に思っているとハインズがラッシーを迎えに来ました。ラッシーは地面を掘って逃げ出していたのです。ジョンはラッシーに必ず迎えに行くからとなだめてラッシーを見送ります。そしてその足で鉱山に行き「手伝わせてお父さん、僕にだって何かできる事があると思うんだ」と心の中でつぶやくのでした。鉱山に入ったジョンは坑道奥深くのお父さんの所まで行きます。そして何か手伝わせてくれと言うジョンにお父さんは「穴を掘ってもらうのは無理だが1つできる事がある。岩石のサンプルを取ってほしい。頑張って石炭のありかを見つけようジョン」と言ってくれたのでした。
 それからというもの、ジョンやサム、そして鉱山の労働者たちは必死になって働きました。何としても石炭の鉱脈を探し出しラドリング公爵閣下の鼻をあかしてやるのだと息巻くのです。しかし、ラドリング公爵閣下は石炭が出そうにないので、ひとまずスコットランドにラッシーを連れて帰る事になったのです。それを知ったサンディやコリンはラドリング公爵閣下にラッシーを帰してもらうようにお願いするようジョンに薦めますが、ジョンは石炭を見つけて正々堂々とラッシーを帰してもらうんだと言い張り、鉱山に向かってしまうのでした。
 鉱山でジョンは地層ごとの岩石のサンプルを集め、岩石を専門家に調べてもらう事によって石炭の出る地層が断層でどれくらいずれているのかを調べてもらおうと考えました。ジョンはさっそく集めた岩石のサンプルを小包にして送ろうとしますが、その時ラドリング公爵閣下の乗った飛行機が飛び立って行くのを目撃します。その頃ラッシーは貨物車に乗せられヨークシャーからスコットランドへ貨物車で2日間の旅へと出発するのでした。
 数日後、岩石のサンプルを送った専門家から回答が来ました。それには岩石のサンプルの地層は新しすぎて石炭が出る地層にはほど遠いと書かれていたのです。ジョンはもうラッシーが帰って来ないと思うとムーアの岩の城まで1人で駆けて行き、そこで泣き崩れてしまうのでした。
 その頃スコットランドではプリシラがラッシーのもとにいました。プリシラはラドリング公爵閣下からジョンがラッシーを預かってくれと言ってきたから預かったのだと聞かされていたのですが、ラッシーの必死になって檻を抜け出しジョンのもとに戻ろうとする姿を見ていたプリシラはラドリング公爵の言っていた言葉が嘘だったと悟り、ラッシーの檻の扉を開けてラッシーを逃がしてしまいます。プリシラは「行きなさい、ジョンの所へ」と言うと、ラッシーはラドリング公爵の屋敷の門を飛び越えると一目散に南を目指して走り始めるのでした。
第24話 消息不明・ラッシーを探せ!
 プリシラはラドリング公爵に呼び出されて叱られてしまいます。スコットランドからヨークシャーまで600マイル(1マイル垂P.6キロ)以上の道のりを、ラッシーが旅できるはずがない。せっかく手に入れた名犬をみすみす無駄にしてと、ラドリング公爵は言うのです。しかし、プリシラは石炭が出ないと決まったわけでもないのにラッシーを自分のものにしてしまったおじいさんが許せず、おじいさんは石炭の出ないウェリントン炭坑をダシにジョンからラッシーを奪おうとしているのだと責めました。ラドリング公爵もプリシラの言う事は正しいと考えましたが、今となってはどうする事もできません。ラドリング公爵は「プリシラ、ラッシーの道のりは険しいぞ。途中で出会う人間のすべてがお前たちのように、あの犬の心を理解し慈しんでやろうとする者ばかりとは限らんのだ。せいぜいラッシーの幸運を祈ってやりなさい」と言うのでした。
 ラッシーはヨークシャーへ向かう旅の途中で、犬を売り飛ばそうとする人に追いかけられたりしながらネス湖に到着しました。ネス湖の畔で画家の先生が絵を描いていたのですが、その時ラッシーがネス湖を見下ろす崖の上からじっと対岸を見つめているのに気付き、それを絵に描きとめます。そこへ船長がやって来て、あの犬にとって大切な何かが湖の向こうにあるのではないかと話し合っていると、ラッシーは湖に入り泳いで対岸を目指したのです。2人はびっくりしながらも、あの犬にとって自分たちには思いもよらぬ大切なものがあるに違いないと話し合うのでした。
 ジョンのもとにプリシラから手紙が届きました。手紙にはラッシーがお屋敷を飛び出し、まっすぐ南へ向かったと書かれていました。ジョンはラッシーが自分のもとに帰って来ようとしている事に気付き、俄然勇気が出て来ました。ラッシーが帰って来るまでに石炭の鉱脈を見つければ、もうラッシーを手放す必要はなくなるのです。ジョンは再び鉱山目指して駆け出すのでした。
 ラッシーは何時間もかけてようやくネス湖を泳ぎ切り、対岸に到着した時には疲れ切っていました。そして夜になって楽しそうな笑い声の聞こえる民家で足を止めると、窓から見える一家団欒を見つめながら眠りにつくのでした。翌日もラッシーは歩き続けました。2日間も何も食べていないのでラッシーは疲れ切っていました。そして夜になって肉屋のそばを通りかかった時に、親切な肉屋の主人がソーセージを分けてくれたのでした。
 プリシラは金色の立派なコリー犬を見かけたら連絡下さいと新聞広告を出しました。すると何件もの連絡が入り、そのラッシーの通った足取りを見るとまっすぐ南に、いや正確には南南東、すなわちまっすぐにヨークシャーを目指していたのです。プリシラはそれをジョンに手紙で知らせました。そして手紙にはネス湖の畔で描かれたラッシーの絵も同封されていたのです。ジョンはその絵を見ると嬉しさが込み上げて来るのでした。
 次の日は雨でした。ラッシーはそれでも雨の中を歩き続けますが、泥道を歩き続けた為、体は泥だらけになり金色の見事なコリー犬だったラッシーも、今では見る影もありませんでした。そしてラッシーが町を通りかかった時、野良犬と間違えられて保健所の職員に捕らえられてしまいます。ラッシーはこんな所で捕まってなるものかと職員のすきを見て脱走し町の中を逃げ回り、裁判所の2階から飛び降りてようやく逃げ切る事ができたのでした。
 ラッシーは飛び降りた時に足にケガをしてしまい、びっこを引きながら歩き続けていましたが、夜になってとうとう疲れ切ってその場に倒れてしまいました。すると羊を狙ってやって来た野犬に襲われそうになります。ラッシーと野犬がうなり声をあげながらにらみ合っていると、農家のおじさんが羊を狙って野犬がやって来たと思い、銃を撃ち始めたのです。野犬もラッシーも逃げだしましたが、運の悪い事に銃弾がラッシーの左の後ろ足に当たってしまったのです。ラッシーは撃たれた左足をかばいながらも夜中に歩き続けましたが、とうとう1軒の農家の前で力尽きて倒れてしまいました。物音に気付いた農家のおじいさんのダンとおばあさんのダリーはラッシーに気付き、すぐにラッシーを家の中に運ぶと傷の手当てをしました。朝になってダンとダリーは自分たちが飲む為に残しておいたミルクをラッシーにすべて分け与え、自分たちはミルクなしの朝食を済ませます。ラッシーは傷ついた体を横たえながら、まるでジョンの家にいるような気分にひたるのでした。
 ラッシーが農家にやって来て4日が経過しました。ダンとダリーはラッシーにハーセルフという名前を付けてとても可愛がりました。そしてケガの具合もすっかり良くなりました。ラッシーは毎日2時55分になるとドアの方を見つめて落ち着きがなくなります。ラッシーはジョンの家にいた頃、2時55分になると家を抜けだして3時きっかりに学校の門に到着し、ジョンと一緒に帰っていたからでした。ダンとダリーは2人暮らしでしたが、ハーセルフが来た事ですっかりと明るくなったと喜び合いました。しかしハーセルフのケガの具合が良くなったというのに、ダンとダリーも決してハーセルフを外に出そうとはしませんでした。それはハーセルフを外に出したらもう二度とこの家には戻って来ない事を肌で知っていたのです。ラッシーも一刻も早くジョンのもとに戻りたかったのですが、ダンとダリーに助けられた恩がある為、抜け出そうと思えば抜け出せたにもかかわらず、ダンとダリーが自分を解放してくれるまでは、この家にいようと考えていたのです。しかしダンとダリーもハーセルフはこの家にいるべきではない、ハーセルフには行くべき所があるはずだと悟り、ハーセルフを解放してやる事にしました。ラッシーはダンとダリーに飛びついて顔を舐めて喜びをあらわすと、そのまま再び南を目指して走り始めるのでした。
第25話 お帰りラッシー
 その頃、プリシラやジョンたちは心配していました。1週間前に裁判所で写真に写って以来、何の手がかりもなくなったのです。ジョンは心配のあまり、ラッシーが川を渡ろうとして溺れてしまう夢を見ました。でも、ジョンはラッシーがこの家を目指して元気に歩き続けていると信じる事にしました。そして今日もサムとジョンはラッシーの為に石炭を探して一生懸命掘り続けます。それを見ていた鉱山の仲間たちも2人を見ていると本当に石炭が出て来そうな気がして、本職の自分たちが負けるわけにはいかないと一生懸命働くのでした。
 サンディとコリンはジョンの為に何かできる事はないかと考えていました。ジョンは今すぐにでもラッシーを探しに行きたいのですが、それを我慢してラッシーと一緒に暮せるようになる為に石炭を探しているのです。それに比べるとコリンは熱を出して倒れてしまい、サンディはお茶を入れるくらいしかできませんでした。それでもサンディは自分のできる仕事をちゃんとやり遂げようと鉱山へ行くと、そこで働く人たちにミートパイを差し入れします。炭坑の縦穴に下りたサンディは、そこで不思議な模様の入った石を見つけて持ち帰り、それを珍しい石だと言ってコリンに見せたのです。コリンはすぐにそれがアンモナイトの化石だとわかりました。アンモナイトは古生代石炭紀に生息していた動物であり、アンモナイトの化石がある地層には石炭もある可能性が高いのです。
 その頃、ドーハン所長のもとにラドリング公爵閣下から連絡が入り、あと1週間で石炭が出て来なければ、今度こそウェリントン炭坑を閉山すると言うのです。ドーハン所長は石炭は出て来ないと判断し、労働者たちを集めて閉山を知らせようとしていました。その時サンディが飛び込んで来てアンモナイトの化石が出たと報告しました。ドーハン所長やサム、ジョン、その他の炭坑夫たちもこぞってコリンの家に駆けつけてアンモナイトの化石を見ました。アンモナイトの化石の発見された縦坑から石炭が出るに違いない、そう考えてみんなは一斉に炭坑に戻ると、以前にも増して頑張って石炭を探し始めます。すると今度はもっと大きな化石が発見されました。それはエリオプスの全身化石でした。
 化石は一週間かけて発掘され、閉山を薦めた地質学の大学教授が再びやって来て記者会見が開かれました。そして大学教授は閉山すべきだと言ったのは間違いで、この鉱山には石炭が再び出る可能性がある事をラドリング公爵閣下に報告してくれたのです。その時、炭坑夫のベアがそばで働いていたジョンを呼び、黒い石を持たせたのです。それはまぎれもない石炭でした。ジョンは喜びのあまりに大声で「やったぁ〜」と叫びます。その声を聞いてみんなが駆け寄って来ました。そしてみんなは石炭を見ると坑道ははちきれんばかりの喜びの声に沸き返るのでした。ジョンは石炭が発掘された事でラッシーとこれからもずっと一緒に暮せる、そう考えるとこれまでの疲れがどっと出て来ました。ジョンは「お父さんの事、信じて良かったよ。僕なんだか眠くて…」そう言ってその場で寝てしまうのでした。
 ジョンはラッシーの夢を見ながら、まる2日間眠り続けました。これからはラッシーと一緒に暮せる。しかしラッシーはまだジョンのもとにはたどり着いておらず、相変わらず行方不明なのです。ジョンはラッシーが歩き疲れて倒れてしまう夢を見て、うなされているところを起こされました。ジョンが目覚めた時、枕元にはお父さんとお母さんの他に、プリシラとラドリング公爵閣下が立っていました。プリシラとラドリング公爵閣下はラッシーの事が心配で、わざわざスコットランドから飛んで来たのです。ラドリング公爵閣下は石炭が出て来た事でジョンの勝ちを認めました。そしてラドリング公爵閣下はラッシーを帰す事ができなくなってしまった事を詫びました。ところがジョンは怒るどころか、ラッシーを迎えに行かなきゃと言って家を飛び出してしまいます。ラドリング公爵閣下にとってラッシーがジョンのもとに帰って来るのは奇跡でしかないと思っていたのですが、ジョンはラッシーが必ず帰って来ると何の疑いも持っていなかったのです。
 ジョンはラッシーの帰って来る方向、すなわち北北西を目指して歩き続けました。道に沿って進むのではなく、ひたすらラッシーのやって来る北北西を目指して川を渡り、森を突き抜けると開けた草原に出て来ました。するとジョンは遠くに1匹の犬がこちらに向かって歩いて来るのが見えたのです。ジョンはラッシーの名を叫びながら走り続けました。ラッシーもジョンの姿を見つけると走り始めます。ところが2人の間には大きな川が立ちふさがっていました。あたりを見渡しても橋はありません。ジョンとラッシーは迷わず川に飛び込みました。しかしラッシーは疲れ切っていた事もあり、途中で溺れてしまいます。ジョンは必死になってラッシーを助けると岸までラッシーを引っ張って行きました。ジョンとラッシーは寄り添って疲れた体をしばらく休めると、グリノールブリッジ村までの残された道のりを歩き始めました。するとサンディやコリン、プリシラが駆けつけて来たのです。みんなラッシーが帰って来た事を喜びました。そして村が一望できる丘の上まで来た時、鉱山は今まで通り操業して、やぐらの滑車は元気良くまわっているのが見えたのです。すると村の人たちみんなが走ってラッシーを出迎えてくれたのです。ジョンは「ほらラッシー、みんないるよ」そう語りかけるのでした。
第26話 夢に向かって走れ!
 みんなが駆けつけたところでラッシーは倒れてしまいました。ラッシーは疲れ切っており、もう立てる状態ではなかったのです。メリッサはラッシーがスコットランドから気力だけでここまで帰って来たんだと言いました。ジョンはラッシーが心配でしたが、メリッサはゆっくり休ませれば元気になるだろうと言ってくれました。力持ちのアイアンに抱きかかえられてラッシーはジョンの家に運ばれます。ラッシーはジョンの家でジョンたちに見守られながら安心したかのように眠り続けました。ジョンは夜寝る時に、ベッドから毛布を持ち出すと、居間で寝ているラッシーに毛布をかけ、自分もその横でラッシーと一緒に眠るのでした。
 朝になってもラッシーは動く元気を取り戻せず、ジョンにスープを飲ませてもらって再び眠りにつきました。それからジョンはラッシーの汚れた体を拭いてブラシをかけました。ラッシーの左の耳は旅の過酷さを語るかのように、もうボロボロになっていました。夕方になってラッシーは何とか自分の力で立ち上がろうとしましたが、まだ無理でした。ジョンは今夜もラッシーと一緒に居間で眠ります。翌日、ジョンが歯を磨いていると、ラッシーが立ち上がってよろけながらも自分の餌入れを咥えて餌を催促したのです。ジョンは大喜びでラッシーに餌を与えるのでした。
 ラドリング公爵は新聞記者のマクニースに呼び止められると、ウェリントン炭坑を閉山の危機から救った英雄としてインタビューされました。ラドリング公爵はすぐさま否定し、今回の英雄は1人の少年と1匹のコリー犬によってなされたものだと言いました。新聞記者はその話しを聞いて何か素晴らしい物語がありそうだと思い、ラドリング公爵から詳しく話を聞きました。
 ジョンは学校の授業が終わった時に外を見ると、何とラッシーがいつもと同じように門の所で待っていたのです。ラッシーはもう学校まで歩けるようになっていたのでした。ジョンは嬉しくなってラッシーの所に駆けつけてラッシーを抱きしめると、マクニースが写真を撮り始めてジョンにインタビューしたのです。マクニースはラドリング公爵閣下からすべてを聞いていたのでした。鉱山を立て直した少年とその飼犬の奇跡の旅をぜひとも新聞で取り上げてほしいとラドリング公爵閣下からお願いがあったのです。
 数日後、ジョンが新聞を手に取ると、自分とラッシーがロンドン新報のトップ記事として取り上げられていたのです。新聞には「600マイルもの道のりを旅した名犬ラッシーは、こうしてジョン少年との再会を果たした」と書かれていました。こうしてジョンとラッシーの名前はイギリス中に知れ渡り、翌日から山のようなラッシー宛のファンレターが届くようになり、配達するコリンはあまりのたくさんのファンレターに目を回してしまいます。そしてお父さんもロンドン新報に負けまいとイギリス中の新聞社がインタビューに駆けつけ、家に逃げ帰ってしまうありさまです。お母さんの所でも診療所に新聞記者が駆けつけ同じようなありさまでした。肝心のジョンはプリシラが遊びに来たので、ラッシーと一緒に新聞記者を避けて村から離れてムーアの岩の城まで遊びに行きました。
 プリシラは再び岩の城に来るという約束を果たせて大喜びでした。ところが岩の城からマクニースさんが出て来たのです。新聞記者がジョンの行き先を調べる事など朝飯前の事だったのです。マクニースさんはラドリング公爵閣下がラッシーの為にパーティーを開きたがっている事を知らせました。村の人たちへのお詫びの意味も込めてラドリング公爵閣下の屋敷でパーティーが開かれると言うのです。ジョンたちは岩の城の中でラッシー宛のファンレターを読みました。するとその中の1通はラッシーの看病をしてくれたダリーさんからのものだったのです。手紙にはこう書かれていました。「愛するハーセルフ、いえ、本当はラッシーという名前だったのね。やっぱり帰りを信じて大切に待っていた家族があったのね。私たちがお前を送り出した事は間違っていなかった。お前が幸せをつかむお手伝いができた事をとても嬉しく思っています。お前の大切なご家族によろしく」と…
 ラドリング公爵閣下の屋敷で盛大なパーティーが開かれました。村人たちはみんなこぞって参加します。ジョンもラッシーも偉い人達にお披露目するという事で、ジョンはタキシードを着せられ、ラッシーも着飾されます。お互いこんな恰好をするのは嫌だったので、ジョンとラッシーは屋敷を抜け出してしまいました。その頃パーティー会場ではマクニースさんがジョンとラッシーを呼ぶ為、紹介を始めていました。「さて、そうして長い旅路の果てにとうとう倒れてしまったラッシーの頭をよぎったのは、離れ離れになったジョン君の事でありました。でもジョン君はグリノールブリッジ村の為に是が非でも石炭を見つけ出さなければと心に誓い、ラッシー、迎えに行けなくてごめん、そう涙を流しつつ懸命に掘り続けていたのです。その村を思うジョン君の気持ちを遠くから思いやってラッシーは再び立ち上がり歩き続けたのです。では御紹介しましょう、奇跡の旅をなしとげた名犬ラッシーとそのご主人のジョン君です」しかしジョンとラッシーは会場にあらわれず、紙だけが残されていました。紙にはこう書かれていたのです。「ラドリング公爵、僕たちはまだ大人にさせてもらわなくても結構です。僕はただ、ラッシーと一緒に野原を息が切れるまで駆け回りたかった、それだけなんです。わざわざ来て下さったみなさんごめんなさい。ジョン・キャラクロー」それを聞いたパーティー会場は大爆笑に包まれるのでした。
 パーティー会場を抜け出したジョンとラッシーはコリンやサンディ、プリシラと一緒に野原を走り回ります。ジョンとラッシーは川に飛び込み、サンディやプリシラは木登りをして遊び、コリンは野原ででんぐり返りをしてみんなから笑われます。そうしていつまでも子供たちとラッシーは野原で遊び続けるのでした。
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