第1話 一通の手紙 |
1813年のスイス、ベルン市に先祖代々開業医を営むロビンソン一家が暮していました。ロビンソン一家はお父さんのエルンスト、お母さんのアンナ、長男のフランツ、長女のフローネ、次男のジャックの5人家族。そして家政婦のマリーの計6人で暮していました。お父さんは週に5日、自宅の診療所で働き、1日は下町の診療所に無料で診察しに行っていました。お兄さんのフランツは高校に通い、将来は音楽家を志望。フローネは小学校に通い、木に登ったり逆立ちしたりして毎日男の子のようにかけずり回っていました。 |
第2話 旅立ち |
ところが翌日、フローネは学校でオーストラリア行きの事を言い回った為に、ロビンソン一家がオーストラリアに行ってしまうという噂は町中に広まってしまいました。しかしお兄さんは将来、作曲家かオーケストラの指揮者になる為、ウィーンの音楽学校に通う事を望んでいたのです。オーストリアとオーストラリア、1字違いですが芸術の国と未開の大陸、お兄さんにとっては大違いでした。そして音楽を勉強しようにもオーストラリアには音楽学校はもちろんの事、まともな学校すらほとんどないのです。 |
第3話 フローネの心変わり |
ロビンソン家の家族を乗せて船はアール川を下り、途中で船を乗り換えてライン川を通ってロッテルダムまで行きます。これで見納めになるかもしれないアルプスの美しい風景や、ライン川から見える景色を眺めながらフローネやお兄さんはマリー・アントワネットやモーツァルトの話しをしていると、ゲルハルトという音楽家がロビンソン一家に近づいて来たのです。ゲルハルトはフローネに音楽の才能があると言ってロビンソン一家に親しげにします。フローネはすっかりと舞い上がってしまい、自分はオペラ歌手になると言いだす始末でした。ゲルハルトはあまり音楽には詳しくなく、お父さんに財布を落としたのでお金を貸してほしいと言います。ところが同じ船に有名なオペラ歌手のルイーゼコップが乗っていたのです。そしてルイーゼコップはゲルハルトが詐欺師だと言うのでした。 |
第4話 オーストラリアめざして |
オランダのロッテルダムからイギリスのリバプールまで渡ったロビンソン一家は、いよいよブラックバーンロック号に乗ってオーストラリアを目指します。ブラックバーンロック号はとても大きな外洋蒸気船で、乗客はロビンソン一家のような乗客だけでなく、上流階級や貴族も乗っていました。フローネやジャックは船の中を探検するうちに、ロバや牛、ニワトリや山羊、そして豚や猿までもが乗っている事を発見しました。みんなオーストラリアに行く乗客です。さらに船長の飼っているとても大きな犬のジョンと仲良くなります。そしてお兄さんはエミリーという同年代の女の子とお友達になるのでした。 |
第5話 フローネ船長 |
ブラックバーンロック号は順調に航海を続けます。しかし喜望峰をまわった頃から乗客は退屈し始め、何か変わった事が起きないかと期待します。それを知った船長はみんなの期待に応えるべくフローネに1日船長をしてもらえないかと頼みました。フローネは1日ではなく1週間船長をして、その後コック長にしてもらえるなら引き受けると言い、船長も了解したので、ブラックバーンロック号では今日から1週間フローネが船長をする事になりました。 |
第6話 こわい嵐 |
ブラックバーンロック号はインド洋を横断しオーストラリア大陸北東の珊瑚海まで到達しました。いよいよオーストラリアに到着を目前にした時、真夏のクリスマスがやって来ました。子供たちが甲板でイエス・キリストの誕生の演劇をしていた時、突然大嵐が襲ってきたのです。それはそれはひどい嵐でした。船は大揺れに揺れ、船員は次々と負傷して船医やお父さんは大忙しです。船はマストや煙突が倒れ船内は浸水してとうとう蒸気船の外輪のシャフトが折れて動けなくなってしまったのです。嵐はそれから5日間続きました。お父さんは寝ずの診察や治療を続けていましたが、とうとうダウンして病室に帰って来ました。その代わりにお兄さんが船員の手伝いに行く事になりました。船員やお兄さんが船の重心を低くする為に乗客たちの荷物を海へ投げ棄てていた時、船は海からほんのわずかに突き出た岩に座礁し、前を上に30度ほど傾いてとまりました。しかし荷物が荷崩れしてお兄さんと船長は荒れた海に投げ出されてしまったのです。船体に穴があいた為、船内には次々と浸水し、後部は完全に水の中に没してしまいました。乗客たちは次々と救命ボートで荒れた海へ逃げていきます。ところがロビンソン一家は船室が前部にあった為、浸水に気付かず、ロビンソン一家が甲板に出た時には乗客たちはすべて避難し終わり、救命ボートは一隻も残っていませんでした。 |
第7話 なんでもできるおとうさん |
その頃、お兄さんは荒れた海の上を船長と一緒に漂流していました。しかしお兄さんはいよいよ力尽きてしまった時、船長は丸太にお兄さんをロープで縛りつけて、力尽きても浮いていられるようにしましたが、その時に大波に襲われ、船長は波にのまれてしまったのです。ロープで丸太に縛られたお兄さんにはどうする事もできませんでした。 |
第8話 島をめざして |
お父さんはがっかりしました。筏が大きすぎるので転覆した筏を元に戻す事ができないのです。しかし筏を回収してブラックバーンロック号の船首に持っていくと、帆柱をブラックバーンロック号の錨に縛りつけて錨を捲きあげ、転覆した筏を元に戻すのでした。お父さんは今度は筏を転覆させないようにする為、筏の両脇に浮きを付ける事にしました。フローネは浮きとして使うブランデーの空き樽を探しに船室へ行くと、そこにはブドウ酒の入った樽が転がっていたのです。フローネは1度ブドウ酒を飲んでみたかったので、樽を開けて一口飲んでみると予想以上においしかったので、フローネはブドウ酒を飲み続けてとうとう酔っぱらってしまうのでした。 |
第9話 あたらしい家族 |
陸地に近づきましたが、動くものはまったく見えないばかりか、断崖と岩場が続いて、とても筏で上陸できそうな場所はありませんでした。珊瑚礁の内側に入り海岸に沿って筏を漕ぎ、お父さんもお兄さんもいよいよくたびれ果てた時、入江の奥に砂浜を見つけたのです。ロビンソン一家は大喜びで砂浜を目指して櫂を漕ぐと、とうとう陸地に上陸する事ができました。お父さんは真っ先に鉄砲を持って上陸し、危険がないか確認したうえで家族みんなが上陸です。フローネは2ヶ月ぶりに踏む事のできた大地が嬉しくてたまりません。でも、みんな疲れ切っていたので、荷物を筏から降ろすのもそこそこに、みんな砂浜で眠ってしまうのでした。 |
第10話 かなしみの再会 |
ジョンが浜辺で倒れている人を見つけました。お父さんやお兄さんが駆けつけると、それは船長だったのです。船長はもう息がありませんでした。お兄さんは船長が自分を助けようとして死んだのだと言って泣き崩れてしまいます。お父さんとお兄さんは丘の上にお墓を作って船長を埋葬しました。すると海の向こうでブラックバーンロック号が沈んでいくのが見えたのです。それはまるで船長が埋葬されるのを待っていたかのようなブラックバーン号の最期でした。フローネは牛や山羊やニワトリたちに必ず迎えに行くと約束したのに約束を果たせなかった事が悔しくてなりませんでした。 |
第11話 おばけの木 |
2日目、お母さんたちは退屈をもてあましていたので、近くを探検に出かける事にしました。途中でメルクルはおいしい果物を見つけたので、みんなでお腹いっぱいに食べます。そしてフローネはとても大きなふしぎな木を見つけました。フローネは興味津々に登ってみるとその木の中ほどには大きな広いスペースがあったのです。フローネは嬉しくなってその上を走り回ろうとした時、足を踏み外して木の中に落ちてしまいました。フローネは無事だったのですが、木の中は足場がなくて外に出る事ができません。お母さんは意を決すると木登りを始め、フローネを助けだすのでした。 |
第12話 おかあさんの活躍 |
いよいよお父さんたちが探検に出かけて3日目の朝を迎えました。お母さんは嬉しくてたまりません。お父さんたちが帰ってくるだけでなく、もしかしたら救命ボートで脱出したブラックバーンロック号の仲間を連れて帰ってくるかもしれないと考えたからです。お父さんたちは帰りにサトウキビが自然に生えているのを発見しました。砂糖があればお母さんが喜ぶだろうと考え、お父さんたちはサトウキビをたくさん刈り取って持って帰ろうとしましたが、お兄さんとお父さんは途中で底なし沼にはまってしまい、せっかく刈り取ったサトウキビを放棄して脱出せざるをえませんでした。 |
第13話 フランツの目 |
お父さんはお母さんたちに探検の報告をしました。救命ボートで避難した人たちはもちろんの事、誰一人出会わなかった事。そしてここは周囲を海で囲まれた無人島だと聞いて、フローネは無邪気に大喜びしましたが、お母さんはがっかりでした。とくにお兄さんはここが無人島だと知って以来、すべてにやる気を失ってしまいます。それはあのエミリーが亡くなったと思われた為でもありました。そしてお兄さんが木陰で休む為、枝を折ろうとした時にカワスに触ってしまい、お兄さんは目をやられて見えなくなってしまいました。お父さんはお兄さんの目をどうしても治す為に、薬をあるだけ使って治療を試みましたが、お兄さんの目は良くなりません。お父さんは医者だったのでカワスの猛毒をくらって失明した人を治した例がない事を知っていました。そしてお父さんはお兄さんが毒を浴びたのがわずかである事を祈るばかりでした。 |
第14話 貝殻の歌がきこえる |
ロビンソン一家は浜辺のテントで暮していては再び狼に襲われる危険性があったので、木の上に家を作ってそこで暮す事にしました。その木はフローネが落ちた木でしたが、木の上はとても広く、一家5人が暮すには十分な広さがありました。お父さんとお兄さんは木を切りだして木の上に床や屋根を作り始め、お母さんは木登りしないで済むようにロープを編んで縄梯子を作ります。フローネはジャックの見張り役で退屈な日々を過ごしていました。フローネは退屈のあまり夕食を作っておこうとマングローブに乗ってザリガニを捕りますが、フローネが気付かぬうちにマングローブは海に流されてしまい、フローネは帰れなくなってしまいます。ジョンがお父さんたちに知らせに行き、フローネはお父さんに助けられるのでした。 |
第15話 木の上の家 |
1月27日はお母さんの誕生日です。4日後にお母さんの誕生日を前にしてフローネとジャックは貝殻のネックレスを、お父さんとお兄さんは縄梯子を恐がるお母さんの為に、木の中に倉庫を作ってそこに食料や家畜たちを入れ、そこからハシゴで登れるようにしてお母さんにプレゼントしようと考えました。お父さんとお母さんはどんなに衣食住が原始的になったとしても、心は常に文明人でいようと語り合います。そしてお父さんは家が完成したらフローネとジャックに勉強を教えようと決心するのでした。 |
第16話 我家の日課 |
木の上の家に引っ越してから数日が過ぎました。無人島に上陸してから1ヵ月が経過し、ブラックバーンロック号から持ち出した食料もいよいよ底を尽き始め、自給自足しなければなりません。幸いな事にヤシの実や果物は豊富にあったので飢える事はありませんでしたが、動物性の食料を手に入れる為にお父さんとお兄さんは朝一番に狩りに出かける事になりました。そしてお母さんは畑を作って食べ物を栽培する事にします。そしてお兄さんとフローネとジャックは午後から丘の上の見張り台に立ち、船が通らないかを見張るのを日課とするのでした。 |
第17話 おかあさんの畑 |
畑を荒らされたショックでロビンソン一家は何もする気がなくなってしまいました。特にお母さんはその日一日寝込んでしまうほどでした。それから数日間、お母さんは荒らされた畑を見つめて過ごしていましたが、いつまでも落ち込んでいてはいけないと決意を新たに再び畑を作り始めます。今度はお母さんは畑に柵を作りました。種も、もしもの場合に備えて半分残してあったので、それを使って再び畑に種を植えるのでした。 |
第18話 メルクルを助けて! |
ようやくカヌーが完成しました。今度は割れる事なく無事に進水式を済ませます。このカヌーは2人乗りの小さなカヌーで外海まで出るのは危険でしたが、珊瑚礁の中を魚釣りするだけなら十分でした。フローネとジャックも乗りたがったので、とりあえず今日はお兄さんがジャックを連れて魚取りに出かける事にしました。サンゴ礁に船をとめてお兄さんは潜って魚取り、ジャックは近くの貝を集めます。ところがメルクルがオールに乗ってサンゴ礁の外の外海に流されてしまったのです。双眼鏡でその様子を見ていたフローネとオールのない事に気づいたお兄さんは慌ててメルクルを救出しようとしますが間に合いそうにありません。すると一緒にいたジョンが崖から滑り降りると海に飛び込んでメルクルを助けるのでした。 |
第19話 フローネ、狩りに行く |
お父さんたちは毎日狩りに行きましたが、なかなか野生の動物を捕まえる事はできませんでした。フローネは毎日植物ばかりを食べているので、血の滴るようなお肉が食べたくて仕方がありません。そこでフローネはお父さんとお兄さんの狩りについて行く事にしました。手頃な鳥を見つけたのでフローネはお父さんに教わって鉄砲を撃ってみましたが、フローネは初めてだったのでびっくりしただけで鳥には当たりません。代わりにお兄さんが鳥を仕留めましたが、フローネは撃たれた鳥を見た途端、急に可哀想になって、あれほど意気込んで狩りに来たのに急に狩りが嫌になってしまいました。 |
第20話 船がみえる |
ある日の事、フローネが見張り台で何気なく海を見ていると双眼鏡に船の姿が見えたのです。フローネは慌ててお父さんとお母さんに報告に行きました。そしてお母さんは見張り台に備えてある薪に火をつけてのろしを上げ、お父さんは鉄砲を持ってカヌーで珊瑚礁に向かい鉄砲を撃って音で知らせようとします。船はどんどん近づいて来ました。フローネもお兄さんも嬉しくてたまりません。ところが船は方向を変えるとどんどん遠ざかってしまいます。お父さんもお兄さんも鉄砲の弾が尽きるまで撃ち続け、フローネは裸になって服を振り続けましたが、船はとうとう見えなくなってしまいました。お父さんもお兄さんもみんなその日の晩はがっかりでした。せっかくのチャンスを取り逃がしてしまったのです。でも、お母さんはこれでこの近くを船が通る可能性があるのだと言ってみんなを励ますのでした。 |
第21話 亀の赤ちゃん |
熱帯夜で寝られないロビンソン一家は浜辺で涼む事にしました。すると沖からウミガメがやって来て浜辺に卵を生みだしたのです。フローネとジャックはウミガメの卵がかえるまで見守る事にしました。途中、ウミガメの卵はヘビに狙われ、追い払おうとしたフローネとジャックがヘビに追いかけられたりもしましたが、どうにかウミガメの卵を守る事ができました。その間、お父さんやお母さん、お兄さんは塩を作る事にしました。浜辺に海水を撒いて蒸発させます。それを何度も繰り返し、塩をたくさん含んだ砂を樽に詰めて上から海水を流し濾過します。濾過した濃度の高い塩水を煮沸して塩を結晶として取り出すのでした。そうして数日が経過した頃、ウミガメが卵からかえって一斉に海に向かって歩き始めたのです。フローネはその光景を見て小さなウミガメがこれから自分の力だけで生きていくと思うと感心しないわけにはいかないと思うのでした。 |
第22話 ジャックはコレクター |
船から持ち出した砂糖もずいぶん前に底を尽き、フローネは甘いものに飢えていました。お母さんは自分の畑にサトウキビの苗を植えてはと考えましたが、お父さんはサトウキビが育つまで待つより、探検に出かけた時に見つけたサトウキビを現地で砂糖にして持ち帰った方が早いと言い、木の家に山羊の親子とニワトリを残して、家族みんなで砂糖を作りに泊まりがけで出かける事になりました。フローネは甘いものが食べられると大喜びですが、ジャックはあまり嬉しそうではありません。というのもジャックはきれいな貝殻を集めるのに夢中になっていたので海岸を離れたくなかったのです。一家は夕方にサトウキビの生えている場所に到着すると、とりあえず一泊して翌日からサトウキビの取り入れに励みます。その間ジャックは昆虫や珍しい動物を探して歩き回っているうちに卵を見つけました。ジャックはそれが亀の卵だと思い、海岸まで持って帰ろうと思いましたが、その晩に卵から鳥のヒナがかえってしまったのです。さすがにヒナを育てる事はできないのでお父さんはジャックを説得したうえで鳥のヒナを巣に返し、たくさんの砂糖を作って木の上の家に帰るのでした。 |
第23話 無人島の休日 |
お父さんは雨期が来た時に備えて薪を大量に準備し始め、フローネも薪運びを手伝わされます。お母さんの畑は順調に育ち、サヤエンドウやトウモロコシ、麦や瓜ももうすぐ食べられそうでしたが、雑草もたくさん生えていたのでフローネは草むしりを命じられてしまいます。フローネは働いてばかりいるのが嫌になり、たまには無人島の生活にもお休みも欲しいと言ったので、お父さんは明日一日を休みにする事にしました。フローネは一日中好きな事をしていられると大喜びです。休みが嬉しくて朝早くに起きたフローネは、お母さんが起きてこないので自分で朝御飯を作らなければなりません。しかも家族がいつまでたっても起きてこないのでジョンや山羊、ロバ、ニワトリの世話までフローネがしなければなりませんでした。 |
第24話 フローネの家出 |
お兄さんとジャックがエミリーの事を想い出して話をしていた時、ジャックが「エミリーお姉ちゃん、きれいだったね」と言ったので、お兄さんは「ああ、美人だった。フローネみたいなブスとは違うよ」と言ったのをフローネが聞いてしまったのです。フローネは激怒し、それ以来お兄さんとは口も聞くのも顔を見るのも嫌になって、フローネは家出してしまいました。お父さんはフローネに「なあ、フローネ。人間に大事なのは姿形の美しさじゃない。気持ちが美しいかどうかなんだ。どんなに顔がまずくても気持ちが美しければ…」と言って説得しましたが、フローネはその言葉を聞いてお父さんも自分をブスだと思っているのだと考え、余計にフローネを怒らせてしまうのでした。 |
第25話 無人島の夜はまっくらやみ |
ロビンソン一家は無人島での生活を営むうちにマッチを使い果たしてしまいました。マッチがないので夜になってもランプに火をともす事ができません。そこでお父さんは翌日に火を起こす方法を考えました。まず虫めがねで太陽の光を集めようとしましたが、あいにく曇っており火はつきません。次に火打ち石を使いましたが、これもうまく火を起こす事はできませんでした。そして木を錐のように回して摩擦熱でようやく火を起こす事ができました。ところがお兄さんの不注意でランプを割ってしまったのです。ランプは船から1つしか持ってこなかったので、これから夜は真っ暗で過ごさなければなりません。仕方なくロビンソン一家は日没と同時に寝る事にしましたが、夜は12時間もあったのでみんな少しも眠くなりませんでした。 |
第26話 おにいちゃんは弓の名手? |
先日、船が通りかかった時に鉄砲を撃ちすぎたので、弾があと13発しか残っていません。そこでお父さんは狩りをする時にも鉄砲を使わず、弓を作ってそれを使う事にしました。弓は完成しましたが、お兄さんはうまく弓を飛ばす事はできません。しかしお兄さんは矢尻に鳥の羽を付けてフィンの代わりにして飛ばしたところ、うまく飛ぶようになったのです。そしてお兄さんは弓を使って始めての獲物を仕留め、大満足で帰ってくるのでした。 |
第27話 無人島の音楽会 |
今年はお父さんとお母さんの結婚20周年記念の年でした。それを知ったフローネはお父さんとお母さんに再び新婚時代を味わってもらおうと、別荘を用意してそこでお父さんとお母さんの2人っきりで一夜を過ごしてもらおうと計画します。フローネはお兄さんに相談し、2人でフローネが以前家出した時に使った木の上の家にヤシの葉で屋根を作り、さらに天井や柱に花をたくさん付けて、お父さんとお母さんの“愛の巣”を作り上げます。そうして子供たちはお父さんとお母さんを別荘に招待し、結婚20周年を祝って演奏会を開くのでした。 |
第28話 ジャックの病気 |
ある日の事、ジャックは熱を出して寝込んでしまいました。夜には熱が下がったのでみんなは安心していましたが、翌日の昼頃に再び熱が出だしました。お父さんはジャックの病気がマラリアではないかと考えました。しかしお父さんはマラリアの薬を持っていません。このままほっておくと、すぐに死ぬ事はありませんが、熱の為にしだいに体力を消耗してやがては死んでしまいます。そこでお父さんとお兄さんは皮からマラリアに効く薬の取れるキナの木を探してくる事にしました。しかしそれがこの無人島にあるのかどうかすらわかりません。お父さんとお兄さんは無人島のジャングルを一生懸命探しましたが見つかりません。その晩ジャックはひどい熱を出しました。朝になってもお父さんたちは帰ってきません。そればかりかお母さんまでがマラリアにかかってしまい、ひどい熱を出してしまいました。フローネ1人でジャックとお母さんの看病を続けましたがフローネは不安でたまらず、とうとう泣き出してしまいます。 |
第29話 フローネ、行方不明となる |
お母さんはマラリアにかかった事で無人島から脱出する決心をしました。これまでは危険を冒すよりも船が通りかかるまで気長に待つつもりだったのですが、もし別の風土病にかかった時、今回のように偶然薬が見つかるとも限らないのです。しかしお父さんには大きな船を作る技術もなければ、それを作る大工道具もありません。それでもカヌーをいくつか作ってつなげればいいというお兄さんのアイディアを採用する事になり、それからお父さんとお兄さんはカヌー作りに励みます。 |
第30話 きついお仕置き |
翌日、フローネは憂鬱でした。フローネは勉強をサボってこっそりと抜け出し、迷子になってみんなに迷惑をかけたのです。どんなお仕置きを受けるのかと思うと憂鬱でたまりませんでした。お父さんはもしフローネが見つからなかったら今頃フローネは狼の餌食になっているところだと言い、1人の不注意が家族全員の命を危険にさらす事があると言ってフローネをたしなめました。お父さんは罰として今日一日家で留守番する事を命じ、フローネはお仕置きが軽くて助かったと思いましたが、お母さんはフローネにお尻を突き出すように命じると、鞭でフローネのお尻を何度もぶちはじめるのでした。 |
第31話 わたしはのけもの? |
今日は9月13日。それはフローネの誕生日でした。しかし無人島では日にちや曜日など関係ないのでフローネは自分の誕生日に気付きもしません。そこでお父さんやお母さんはフローネを喜ばせようとフローネに内緒で誕生日のプレゼントを用意する事にしました。ところがフローネに内緒でみんな何か隠し事をしている事に気付き、フローネは自分が仲間外れにされていると思い込んですっかりと気を悪くしてしまいます。仕方なくお兄さんはフローネの誕生日である事を説明し、フローネは豪華な料理の待つパーティーに招待され、家族みんなからプレゼントを受け取りました。フローネは嬉しくて泣き出してしまいます。フローネは今日から11歳になったのでした。 |
第32話 船ができた! |
お父さんとお兄さんは急ピッチで船の製作に励みました。船の製作を始めて2ヶ月たったある日、いよいよ船は完成間近になり、お母さんは船に積み込む保存食作りに励みます。お兄さんは段々と心配になってきました。こんな小さな船で航海に出たら、嵐に出会ったらひとたまりもないので、このまま無人島で暮らした方が良いのではないかと考えたのです。しかしお父さんは「確かにこの島は食料の宝庫だ。生命を維持するには差し支えない。しかしフランツ、人間が生きていくという事は単に生命を維持する事ではない。他人との交流を持って人類の歴史が築いてきた文化の恩恵を受け、そしてまた新たな文化を我々が付け加えていくという、それが本当に生きるという事だ。この無人島に留まっていてはそういう生き方はできない」と言ってフランツを説得し、フランツも同意するのでした。 |
第33話 雨、雨ふれふれ |
お父さんは神様が家族を守る為に船を壊してくれたのだと考えました。もし無人島から脱出する為の航海中にあのような嵐に襲われては船はひとたまりもなく家族全員死んでしまった事でしょう。そう考えるとお父さんは再びもっと頑丈な船を作ろうと決意を新たにするのでした。 |
第34話 洞窟をさがせ! |
雨はそれからも毎日降り続きました。あまりに雨が続くので屋根が腐ってしまい、木の上の家はひどい雨もりです。雨があがった隙にとりあえず応急処置で屋根を直しましたが、雨もりは変わりません。お父さんが洞窟でもあればいいのにと言った時、フローネは洞窟を見つけた事を思いだしました。それはフローネが迷子になった時、洞窟で雨宿りしていたのです。ところが迷子になっていた時に見つけたのでフローネにはそれがどこにあるのかわかりません。そこでお父さんとお兄さんとフローネの3人でその洞窟を探しに行く事にしました。フローネの記憶を頼りに探し続けましたが洞窟は見つかりませんでした。 |
第35話 洞窟の秘密 |
お父さんとお兄さんが洞窟の奥を調べに行く事になりました。洞窟の中はとても広く洞窟の中に洞窟があります。そのうちの1つからジョンが出てきました。しかもジョンはコーヒーカップのかけらをくわえているのです。無人島にコーヒーカップがあるのはおかしいと思い、お父さんたちはジョンが出てきた穴を調べると、その奥には白骨死体が横たわっていたのです。フローネもお兄さんもびっくりしてしまいました。落ちついてよく調べると白骨死体は若い男のようで、周りには男が使っていたと思われる生活用具が置かれており、日記までありました。 |
第36話 幽霊が出る! |
洞窟での生活は昼間でも暗い事以外は快適でしたが、近くに水がない事が悩みの種でした。フローネは洞窟の自分の部屋の壁の奥に、まだ洞窟の続きがある事を発見しました。フローネはみんなに黙って1人でロウソクを片手に洞窟の続きを探検します。洞窟の入口近くは狭かったのですが、中はとても広くフローネはびっくりしてしまいます。そして洞窟の先にはとても広い空間があって天井からは明かりが漏れ、洞窟の中に小川が流れていたのです。フローネはすっかりと嬉しくなってロウソクを置くと、洞窟の中を満喫しました。ところが天井から落ちてきた水滴の為、ロウソクは消えていたのです。フローネは真っ暗な洞窟を引き返しますが、手探りでは戻る事ができません。フローネはとうとう恐くなって泣き出してしまいました。すると大きな獣が襲ってきたのです。フローネは恐さのあまりに逃げだしましたが、よく見たらそれはジョンでした。 |
第37話 あらたな漂流者 |
その晩、家族で話し合いました。ロビンソン一家がこの無人島で暮らすようになって1年になりますが、この時期にはエリックさんやロビンソン一家が遭難したように、この海域で嵐が発生するので、今年も遭難した人がいたのではないかという結論に達し、ひとまず明日、付近を捜索する事にしました。 |
第38話 男の子と女の子 |
モートンさんはとても気難しくて自分勝手な人で、お父さんもお母さんも困り果ててしまいます。タムタムだけはしだいにロビンソン一家に打ち解けてきましたが、ある朝お父さんが自分たちはオーストラリアに行く途中に遭難したと言うと、タムタムは突然家を飛び出してしまったのです。お父さんはモートンさんに事情を聞きました。タムタムはオーストラリアの原住民でしたが、オーストラリアに移住してきた白人によって両親を殺されてしまったのです。白人は原住民を捕らえるとタダ同然の安い賃金でこき使い、少しでも反抗すると殺してしまったのです。それ以来、タムタムはオーストラリアにやってくる白人にロクな人間はいないと思い込むようになり、モートンさんのもとで見習い水夫として働いていたのでした。 |
第39話 ひねくれ者モートン |
それ以来タムタムはロビンソン一家とすっかり仲良しになりましたが、モートンさんは相変わらず聞き分けがなく、お父さんやお母さんを困らせてばかりでした。モートンさんはようやく歩けるようになったので外に散歩に出かけます。フローネとジャックはタムタムからブーメランを借りて遊んでいて、フローネはヤシの木に引っかかったブーメランを取ろうとしてヤシの木から下りられなくなってモートンさんに助けられます。モートンさんは子供たちには親切でした。しかしモートンさんは洞窟の家に戻るとお父さんの鞄を勝手に持ち出し、消毒用のアルコールを飲み始めたのです。モートンさんは完全に酔っぱらってしまい、様子を見に来たお父さんは呆れ返ってしまいます。 |
第40話 少年タムタム |
雨期が終わったのでロビンソン一家は木の上の家に戻る事にしました。モートンさんも誘いましたが、モートンさんはどうしても洞窟の家に残ると言い張ったので、モートンさんとタムタムを洞窟に残してロビンソン一家は木の上の家に引っ越しました。 |
第41話 行ってしまったモートンさん |
洞窟の家に住むモートンさんとタムタムは洞窟の奥の小川の水が、いつもは冷たいはずなのに温泉のように温かくなっている事に気付きました。モートンさんはこの無人島が休火山で、噴火の兆候が出ているのではないかと考えました。モートンさんは木の上の家に誰もいない事を見届けると、鉄砲と虫めがねと保存食と畑のトウモロコシを勝手に持ち出し、その日の夜のうちにお父さんたちの作ったカヌーでタムタムを残したまま無人島を脱出してしまったのです。朝になってお父さんたちはモートンさんが1人で無人島を脱出した事を知りましたが、見張り台から見た時にはもうモートンさんの乗ったカヌーは小さくなってほとんど見えませんでした。 |
第42話 恐ろしい地震 |
朝になってもモートンさんは帰って来ませんでした。タムタムも姿を消していたので、フローネは洞窟の家まで探しに行きましたが、そこでフローネは洞窟の奥の小川の水が温かくなっている事に気付きました。そして家畜たちだけでなく島中の動物たちが落ち着きをなくし始めたのです。お父さんはこの無人島に人間には気付かない何かが起き始めているのではないかと考えます。そしてフローネが報告した洞窟の奥の小川がお湯のようになっていたという言葉を聞いて、お父さんもこの無人島が実は火山島ではないかと考え始めました。 |
第43話 戻ってきたモートンさん |
お父さんとお兄さんはさっそく船作りを研究し始めました。前回の失敗を教訓に、嵐にも耐えられる船を作らなければなりませんが、モートンさんがいるならともかく、お父さんたちだけではなかなか思い通りにはいきませんでした。無人島は雨期が去って以来、雨がほとんど降らなくなり、井戸の水は枯れ小川の水は水量が減り、いよいよ天変地異の始まりかと思われました。 |
第44話 もう一度船を! |
その夜モートンさんはお父さんを呼び出すと、この無人島が火山島である事を告げました。そしてモートンさんはお父さんがのんびり構えすぎていると言います。お父さんも一度は脱出しようと船を作ったが嵐で沈んでしまったと言うと、モートンさんは自分の脱出計画を話しました。それにお父さんも協力する事になり、翌日からモートンさんの指示でお父さんとお兄さんは前回と同じ船を作る事に、フローネとジャックはゴムの木から大量にゴムを取ってくる事に、そしてタムタムはヤシの実から大量の繊維を取る事になりました。お父さんたちは前に作った船と同じ船を作るので、時間さえあればそれほど難しい事ではありませんが、問題は帆布でした。帆布は船と一緒に沈んでしまったので、大きな布はもう残っていなかったのです。それを知ったモートンさんは何日もカヌーで海に出かけては沈んだ船を探し、とうとう海底に沈んだ船を探し出して帆布の回収に成功したのでした。 |
第45話 死なないでロバさん |
船の建造も急ピッチで進み、フローネとジャックのゴム集め、タムタムの繊維取りも精が出ます。あまりに暑いので子供たちは休憩を兼ねて池に水浴びに行きました。ところが池にはモートンさんが来ており、池に麻をたくさん浮かべていたのです。麻を水につけて腐らせ、残った繊維からロープを作るのです。子供たちはせっかく遊びに来たのにロープを作る作業を手伝わされてしまうのでした。 |
第46話 ヤギをすてないで |
いよいよ出発の準備は整いました。しかしモートンさんは出発しようとは言いません。潮の流れが悪かったのです。長い航海では帆に頼るだけではなく、潮の流れも利用しないと目的地にはたどり着けません。潮の流れが良くなるまで出発はおあずけでした。そしてモートンさんはその間に動物たちを何とかしろと言います。モートンさんは狭い甲板に7人の人間と食料と水を載せるのだから動物たちを載せるスペースはないと言うのです。フローネにとって家族同様に暮してきたジョンやメルクル、山羊の親子を置いてきぼりにする事は辛い事でした。 |
第47話 続・ヤギをすてないで |
それから5日経過しましたが山羊たちは帰ってきません。お兄さんは山羊たちを船に積み込ませてもらえるようにモートンさんにお願いしましたが、山羊ばかりでなくジョンやメルクルも積んではいけないと言うのです。お兄さんは意を決すると人に見つからない場所で大きな木箱を作り始めました。モートンさんには食料が入っていると言い張って、ジョンとメルクルを隠して船に積み込もうと考えたのです。しかしジョンもメルクルもいつの間にか姿を消し、夜になっても帰ってきませんでした。 |
第48話 さようなら無人島 |
いよいよ明日は出発です。フローネは無人島最後の夜の記念パーティーをやろうと提案しましたが、モートンさんにとめられてしまいます。モートンさんは明日の出発が死への旅路になるかもしれないから、今夜は早く寝るように言って家に帰ってしまいます。ロビンソン一家は船長とロバにお別れに行きました。そして無人島最後の夜、ロビンソン一家は無人島での生活を思い出し、眠れない夜を過ごします。しかし家族全員まったく眠れないので、無人島最後の想い出として思い残すことのないように朝まで各自で好きな事をする事にしました。お兄さんはハープの弾き納めを、フローネは山羊の親子においしい草を食べさせ、お母さんは畑の雑草取り、そしてお父さんは家の修理を始めるのでした。 |
第49話 陸が見える! |
フローネたちの乗った船は無人島を出発すると順風満帆、一路南へと快走。このままでは予定の2週間より早くオーストラリアに到着するように思われました。昼間は魚釣りにいそしみ、スコールが来たら帆布を広げて雨水を集めます。こうして平穏な航海が数日続きました。しかし5日目の夜に嵐に見舞われたのです。小さな船は大波の為、木の葉のように舞いましたがモートンさんの適切な指示のおかげで無事に乗り切る事ができました。ところが今度は風がまったくなくなり、船はぱったりと進まなくなってしまったのです。しかしフローネたちはどうする事もできません。風が凪いだまま無人島を出発して2週間が経過してしまいました。10日目から進路を南西に変更し、オーストラリア東岸を目指しましたが、3週間が経過してもオーストラリアはおろか、小島さえも見えません。そしてとうとう食料も水もなくなってしまいました。 |
第50話 また会う日まで |
船が到着した場所はシドニーの少し北でした。シドニーの移民局で身なりを整えたロビンソン一家は汽車で、お父さんの古い友人のエリオットさんを訪ねます。時は5月、オーストラリアにはもうすぐ冬が訪れようとしていました。メルボルンの駅に着いたロビンソン一家とモートンさんとタムタムはエリオットさんに出会って、エリオットさんの用意してくれた家でしばらく暮す事になりました。ところがモートンさんは家に向かう途中で女友達のサリーに偶然出会い、モートンさんはサリーと一緒にどこかに行ってしまいます。ロビンソン一家が住む事になった家はとても大きくて庭の広い家でした。ここでロビンソン一家5人とタムタムが暮す事になったのです。 |