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家族ロビンソン漂流記
ふしぎな島のフローネ  ストーリー詳細

第1話 一通の手紙
 1813年のスイス、ベルン市に先祖代々開業医を営むロビンソン一家が暮していました。ロビンソン一家はお父さんのエルンスト、お母さんのアンナ、長男のフランツ、長女のフローネ、次男のジャックの5人家族。そして家政婦のマリーの計6人で暮していました。お父さんは週に5日、自宅の診療所で働き、1日は下町の診療所に無料で診察しに行っていました。お兄さんのフランツは高校に通い、将来は音楽家を志望。フローネは小学校に通い、木に登ったり逆立ちしたりして毎日男の子のようにかけずり回っていました。
 ある日の事、お父さん宛にオーストラリアに住むお父さんの古い友人のエリオットさんから1通の手紙が来ました。手紙にはオーストラリアには医者が少ないのでオーストラリアに来てくれないかと書いてありました。お兄さんは生活に困っているわけでもないのだから、わざわざオーストラリアまで行く必要はないと考えていましたが、お父さんの考えは違いました。お父さんは医者というものは医者を必要としているところで働くのが一番の生き甲斐であると言うのです。お父さんはお母さんとお兄さんとフローネの3人がオーストラリアに行く事を賛成すればオーストラリアに行くつもりでした。フローネはオーストラリアに行けばカンガルーを見られると思って大賛成。お兄さんは保留、お母さんは子供たちしだいです。お父さんはもう少しオーストラリア行きの決定を先延ばしする事にしました。
第2話 旅立ち
 ところが翌日、フローネは学校でオーストラリア行きの事を言い回った為に、ロビンソン一家がオーストラリアに行ってしまうという噂は町中に広まってしまいました。しかしお兄さんは将来、作曲家かオーケストラの指揮者になる為、ウィーンの音楽学校に通う事を望んでいたのです。オーストリアとオーストラリア、1字違いですが芸術の国と未開の大陸、お兄さんにとっては大違いでした。そして音楽を勉強しようにもオーストラリアには音楽学校はもちろんの事、まともな学校すらほとんどないのです。
 お父さんは家族全員が賛成したらオーストラリアに行くと言っていましたが、フローネが言い回った事もあって、なしくずし的にオーストラリア行きが決まってしまいました。ロビンソン家の家は叔父さんのシュワルツさんに貸す事になり、シュワルツさんとシュワルツ夫人の2人を加えて家族会議が開かれました。そこでお兄さんは強硬に反対しましたが、お父さんはどうしてもオーストラリアに行く為、お兄さん1人残してオーストラリアに行く事にしたと言うのです。そしてお兄さんはシュワルツさんに面倒を見てもらって引き続きこの家に残る事になったのです。
 この家に残るのはお兄さんだけではありませんでした。家政婦のマリーも事情があってこのベルン市を離れる事ができず、シュワルツさんの下で働く事になったのです。それを知ったフローネはマリーに一緒にオーストラリアに行こうと泣いてお願いしました。お母さんは弟のジャックに取られていたので、フローネはマリーにしか甘える事ができなかったのです。しかしマリーにはベルン市に住むたった1人の身よりである叔母が病気がちで、時々面倒を見なければならず、どうしてもオーストラリアに行く事はできませんでした。
 そして出発の日。町のみんなが見送りに来てくれました。フランツは家族と離れてベルンに残ります。しかし船が出発しようとしたその時、フランツは突然駆け出すと船に飛び乗ってしまったのです。そして「僕も行く、オーストラリアへ」と言うのでした。
第3話 フローネの心変わり
 ロビンソン家の家族を乗せて船はアール川を下り、途中で船を乗り換えてライン川を通ってロッテルダムまで行きます。これで見納めになるかもしれないアルプスの美しい風景や、ライン川から見える景色を眺めながらフローネやお兄さんはマリー・アントワネットモーツァルトの話しをしていると、ゲルハルトという音楽家がロビンソン一家に近づいて来たのです。ゲルハルトはフローネに音楽の才能があると言ってロビンソン一家に親しげにします。フローネはすっかりと舞い上がってしまい、自分はオペラ歌手になると言いだす始末でした。ゲルハルトはあまり音楽には詳しくなく、お父さんに財布を落としたのでお金を貸してほしいと言います。ところが同じ船に有名なオペラ歌手のルイーゼコップが乗っていたのです。そしてルイーゼコップはゲルハルトが詐欺師だと言うのでした。
第4話 オーストラリアめざして
 オランダのロッテルダムからイギリスのリバプールまで渡ったロビンソン一家は、いよいよブラックバーンロック号に乗ってオーストラリアを目指します。ブラックバーンロック号はとても大きな外洋蒸気船で、乗客はロビンソン一家のような乗客だけでなく、上流階級や貴族も乗っていました。フローネやジャックは船の中を探検するうちに、ロバや牛、ニワトリや山羊、そして豚や猿までもが乗っている事を発見しました。みんなオーストラリアに行く乗客です。さらに船長の飼っているとても大きな犬のジョンと仲良くなります。そしてお兄さんはエミリーという同年代の女の子とお友達になるのでした。
 船にはエドワードというオーストラリア総督の秘書官と、その妻のキャサリンが乗っていました。キャサリンが帽子を外して、ふと目を離した隙にジャックが帽子を海に飛ばしてしまいます。その帽子はパリ仕立てのとても高価な帽子でした。すぐさまエドワードがやって来てジャックを捕まえると親を呼べと言うのです。お父さんが駆けつけるとエドワードはお父さんを責めました。そしてお父さんは何度も謝り、帽子の費用を弁償しようとするお父さんに、エドワードは妻がメルボルンに降り立つ時に、あのパリ仕立ての帽子をどうしても被らせたいから、お金ではなく泳いで取って来いと言うのです。しかしそれはできない相談なので、エドワードは妻の靴に口づけをすれば許してやると言います。お父さんはキャサリンの前にひざまづきましたが、キャサリンはお父さんを気の毒に思って許してくれるのでした。
 船の上で赤道祭が行われていた頃、キャサリンは子供が生まれそうになって苦しんでいます。ところが船医は赤道祭ですっかりと酔っぱらって診察どころではありません。船長は乗客の中にお医者さんがいないかどうか尋ねたので、お父さんが名乗り出てキャサリンの産婦を務めます。そしてようやく赤ちゃんが生まれました。ところがエドワードが赤ちゃんを見に部屋に入ると、そこにはお父さんがいたのです。あれほどお父さんをいじめたエドワードがお父さんに助けられる事になろうとは… エドワードは頭を抱えてうずくまってしまいました。そしてキャサリンは「あなた、人間はいつなんどきどんな事が起こるかわからないのです。ですからあなた、普段からどなたに対しても広い心を持ってお付き合いしなければなりません。これからは人様に対してもっと広い心を持って下さいね」と言うと、エドワードは「その通りだキャサリン、すまない。この間の無礼を許して下さい」とお父さんに言うのでした。
第5話 フローネ船長
 ブラックバーンロック号は順調に航海を続けます。しかし喜望峰をまわった頃から乗客は退屈し始め、何か変わった事が起きないかと期待します。それを知った船長はみんなの期待に応えるべくフローネに1日船長をしてもらえないかと頼みました。フローネは1日ではなく1週間船長をして、その後コック長にしてもらえるなら引き受けると言い、船長も了解したので、ブラックバーンロック号では今日から1週間フローネが船長をする事になりました。
 エミリーのお父さんおばあさんはエミリーがフランツと付き合っている事が気に入らず、エミリーに問いただします。しかしエミリーのお母さんはフランツはお医者さんの息子のしっかりした人だと言って弁護した為、エミリーのお父さんとお母さんの仲はこじれてしまい、離婚すると言いだしてしまいます。エミリーのお母さんはエミリーと一緒にダーバンで降りてイギリスに帰ると言いますが、エミリーのお父さんはエミリーと一緒にオーストラリアに行くのだと言います。エミリーは困ってしまいフランツに泣きながら相談するのでした。
 フローネが1週間船長になる事は乗客たちの前で大体的に発表されました。そしてフローネは明日の正午から1時間だけ禁酒をする事を命じました。もしこれを破った者は5日間、船倉に閉じ込めると言うのです。そして翌日の正午過ぎ、食堂に来ていたエミリーとエミリーのお母さんにフランツはジンジャーエールをプレゼントしました。エミリーもお母さんもジンジャーエールをおいしそうに飲んだ瞬間、フローネ船長がやって来てエミリーたちを逮捕し、5日間船倉に閉じ込めてしまいます。その間に船はダーバンに到着しましたが、エミリーのお母さんは船を降りる事ができません。お母さんはフランツやフローネが何を考えているのかと思いましたが、エミリーは悲しんでいた自分の事を思って、こんなお芝居をしてまでお母さんをダーバンで降ろさせなかったフランツとフローネの優しさに気付き、それを知ったお母さんもお父さんと再び仲直りしてよりを戻すのでした。
 1週間が経過してフローネは船長からコック長になると、とても大きなケーキを作らせて1人で食べましたが、たくさん食べ過ぎてお腹を壊し、お父さんにも見放されて船医に診てもらうのでした。
第6話 こわい嵐
 ブラックバーンロック号はインド洋を横断しオーストラリア大陸北東の珊瑚海まで到達しました。いよいよオーストラリアに到着を目前にした時、真夏のクリスマスがやって来ました。子供たちが甲板でイエス・キリストの誕生の演劇をしていた時、突然大嵐が襲ってきたのです。それはそれはひどい嵐でした。船は大揺れに揺れ、船員は次々と負傷して船医やお父さんは大忙しです。船はマストや煙突が倒れ船内は浸水してとうとう蒸気船の外輪のシャフトが折れて動けなくなってしまったのです。嵐はそれから5日間続きました。お父さんは寝ずの診察や治療を続けていましたが、とうとうダウンして病室に帰って来ました。その代わりにお兄さんが船員の手伝いに行く事になりました。船員やお兄さんが船の重心を低くする為に乗客たちの荷物を海へ投げ棄てていた時、船は海からほんのわずかに突き出た岩に座礁し、前を上に30度ほど傾いてとまりました。しかし荷物が荷崩れしてお兄さんと船長は荒れた海に投げ出されてしまったのです。船体に穴があいた為、船内には次々と浸水し、後部は完全に水の中に没してしまいました。乗客たちは次々と救命ボートで荒れた海へ逃げていきます。ところがロビンソン一家は船室が前部にあった為、浸水に気付かず、ロビンソン一家が甲板に出た時には乗客たちはすべて避難し終わり、救命ボートは一隻も残っていませんでした。
 ロビンソン一家は今にも沈みそうな船に取り残されてしまったのです。しかしそんな事よりも心配なのはお兄さんの事でした。お兄さんは家族を残して1人でボートで避難するような人ではありません。ロビンソン一家は船の中をくまなく探しましたが、呼べど叫べどお兄さんの姿は見つかりませんでした。
第7話 なんでもできるおとうさん
 その頃、お兄さんは荒れた海の上を船長と一緒に漂流していました。しかしお兄さんはいよいよ力尽きてしまった時、船長は丸太にお兄さんをロープで縛りつけて、力尽きても浮いていられるようにしましたが、その時に大波に襲われ、船長は波にのまれてしまったのです。ロープで丸太に縛られたお兄さんにはどうする事もできませんでした。
 お父さんは救命ボートもなく、おまけに泳げないお母さんとジャックを連れて避難するのは危険と判断し、船と運命を共にする覚悟を決めました。あわよくば船が沈まないでいてくれればと思っていたのです。お父さんは家族を連れて船室に戻ると腹ごしらえをして寝る事にしました。
 朝になると昨日までの嵐が嘘のように海は晴れ渡っていました。するとお兄さんが丸太にくくりつけられたまま甲板に打ち上げられていたのです。お母さんは嬉しくて泣き出してしまいます。そしてロビンソン一家は生きている事を実感するのでした。
 船から遠くの方に陸が見えます。救命ボートで避難した人たちもあそこに避難したに違いないと考え、ロビンソン一家も陸に避難する事にしました。食料や木材など避難するのに必要と思われる物資を船内から見つけ出し、お父さんとお兄さんは3メートル四方はある大きな筏を作り始めました。空き樽を浮きにして船の床や外壁をはがして床を作り、帆柱を立てて帆を張ると筏は風を受けて勢いよく進み始めました。ロビンソン一家は大喜びしましたが、筏に比べて帆が大きすぎた為、筏は転覆してしまい、家族はみんな海に投げ出されてしまうのでした。
第8話 島をめざして
 お父さんはがっかりしました。筏が大きすぎるので転覆した筏を元に戻す事ができないのです。しかし筏を回収してブラックバーンロック号の船首に持っていくと、帆柱をブラックバーンロック号の錨に縛りつけて錨を捲きあげ、転覆した筏を元に戻すのでした。お父さんは今度は筏を転覆させないようにする為、筏の両脇に浮きを付ける事にしました。フローネは浮きとして使うブランデーの空き樽を探しに船室へ行くと、そこにはブドウ酒の入った樽が転がっていたのです。フローネは1度ブドウ酒を飲んでみたかったので、樽を開けて一口飲んでみると予想以上においしかったので、フローネはブドウ酒を飲み続けてとうとう酔っぱらってしまうのでした。
 両脇に浮きを付けた筏はとうとう完成しました。そして船から何を持ち出すかで家族会議が開かれます。フローネは船の倉庫にいた動物たちすべてを乗せたかったのですが、そんなに多くは乗せられません。お兄さんはテントの用意、お母さんは食料などを積み込もうと言います。その時、船がいよいよ沈みそうになりました。お父さんたちは慌てて荷物を積み込まなければなりません。動物はロバ1頭とニワトリが5〜6羽。そしてお父さんはもしもの場合に備えて鉄砲を3丁と海に沈んだ船長室から双眼鏡を持ち出して筏に積み込みます。フローネは倉庫に残した動物たちにたくさん餌を与え、必ず迎えに来るからそれまで死なないでねと言います。そんなフローネを陰から見ていたお母さんはフローネを思わず抱きしめるのでした。
 そしていよいよ筏の出発です。お父さんとお兄さんは櫂を漕ぎ、お母さんは舵取り、フローネとジャックは見張りです。ところが筏が出発してすぐに再び船が沈みそうになると、船長の飼犬のジョンが甲板に現れたのです。ジョンは海に飛び込むと筏めざして泳いできました。こうして予想外の来客を迎えて筏は陸地を目指します。そこが豊かで平和な楽園のような所なのか、それとも恐い野獣や人喰い人種の住む所なのか、上陸してみるまではわかりませんでした。
第9話 あたらしい家族
 陸地に近づきましたが、動くものはまったく見えないばかりか、断崖と岩場が続いて、とても筏で上陸できそうな場所はありませんでした。珊瑚礁の内側に入り海岸に沿って筏を漕ぎ、お父さんもお兄さんもいよいよくたびれ果てた時、入江の奥に砂浜を見つけたのです。ロビンソン一家は大喜びで砂浜を目指して櫂を漕ぐと、とうとう陸地に上陸する事ができました。お父さんは真っ先に鉄砲を持って上陸し、危険がないか確認したうえで家族みんなが上陸です。フローネは2ヶ月ぶりに踏む事のできた大地が嬉しくてたまりません。でも、みんな疲れ切っていたので、荷物を筏から降ろすのもそこそこに、みんな砂浜で眠ってしまうのでした。
 日が暮れる前にジョンに起こされたロビンソン一家は、崖下の窪みにテントを張って休みます。お父さんとお兄さんはこの付近にどんな野獣が住んでいるかわからないので、鉄砲を持ったまま交代で見張りをする事にしました。お兄さんが見張りをしていた時、ロバが急に騒ぎだしました。お兄さんが鉄砲を持って駆けつけると、2つの目玉がこちらを睨んだ為、お兄さんはびっくりして鉄砲を撃ってしまいます。鉄砲の音にお父さんが駆けつけると、プチクスクスの母親が鉄砲で撃たれて死んでいました。ところが翌朝、テントの中にプチクスクスの赤ちゃんが迷い込んでいたのです。それを見つけたフローネはプチクスクスの赤ちゃんにメルクルと名前を付けて育てる事にしました。
第10話 かなしみの再会
 ジョンが浜辺で倒れている人を見つけました。お父さんやお兄さんが駆けつけると、それは船長だったのです。船長はもう息がありませんでした。お兄さんは船長が自分を助けようとして死んだのだと言って泣き崩れてしまいます。お父さんとお兄さんは丘の上にお墓を作って船長を埋葬しました。すると海の向こうでブラックバーンロック号が沈んでいくのが見えたのです。それはまるで船長が埋葬されるのを待っていたかのようなブラックバーン号の最期でした。フローネは牛や山羊やニワトリたちに必ず迎えに行くと約束したのに約束を果たせなかった事が悔しくてなりませんでした。
 お父さんは付近の探検に出かける事にしました。3日間で往復できるようにして、3日後に帰ってくると言うのです。しかしお母さんはお父さんの事が心配でなりません。1人で出かけたら事故が起きた時に助けてくれる人がいないからです。そこてお母さんはお兄さんにお父さんと一緒について行くように言います。こうしてお父さんとお兄さんは3日間かけて付近を探検して、人が住んでいないかどうか、あるいはここは島なのかどうかを調べに行く事になりました。
 お母さんは今度は自分たちが不安でたまりません。テントにはお母さんとフローネとジャックしかいないのです。野獣に襲われた時にはジョンと鉄砲だけが頼りでしたが、お母さんは鉄砲の使い方すら知りませんでした。お父さんとお兄さんが探検に出かけた1日目の夜の事、メルクルはお腹が空いたようでミルクを欲しがります。ここにはミルクなどなかったので、お母さんたちはヤシの実のミルクを取りに行き、ヤシガニの落としたヤシの実を失敬してメルクルにあげるのでした。一方お父さんとお兄さんは木の上で寝ているところを狼の群れに襲われますが、間一髪助かるのでした。
第11話 おばけの木
 2日目、お母さんたちは退屈をもてあましていたので、近くを探検に出かける事にしました。途中でメルクルはおいしい果物を見つけたので、みんなでお腹いっぱいに食べます。そしてフローネはとても大きなふしぎな木を見つけました。フローネは興味津々に登ってみるとその木の中ほどには大きな広いスペースがあったのです。フローネは嬉しくなってその上を走り回ろうとした時、足を踏み外して木の中に落ちてしまいました。フローネは無事だったのですが、木の中は足場がなくて外に出る事ができません。お母さんは意を決すると木登りを始め、フローネを助けだすのでした。
 お父さんとお兄さんは探検を続けていました。これまでの探検で陸地の南側と西側は海しかないという事が判明していました。そこでお父さんとお兄さんは山の頂上に登って周囲を見渡そうと考えたのです。山は険しく切り立っており登るのは容易ではありませんでした。しかしようやく2日目の夕方に頂上にたどり着いたのですが、そこから見える景色は周囲を海に囲まれた人の住んでいる気配のない無人島だったのです。お兄さんはそれを見るとガックリと肩を落とし泣き出してしまうのでした。
第12話 おかあさんの活躍
 いよいよお父さんたちが探検に出かけて3日目の朝を迎えました。お母さんは嬉しくてたまりません。お父さんたちが帰ってくるだけでなく、もしかしたら救命ボートで脱出したブラックバーンロック号の仲間を連れて帰ってくるかもしれないと考えたからです。お父さんたちは帰りにサトウキビが自然に生えているのを発見しました。砂糖があればお母さんが喜ぶだろうと考え、お父さんたちはサトウキビをたくさん刈り取って持って帰ろうとしましたが、お兄さんとお父さんは途中で底なし沼にはまってしまい、せっかく刈り取ったサトウキビを放棄して脱出せざるをえませんでした。
 お母さんはお父さんたちの帰りを待ち続けましたが、待てども待てどもお父さんたちは帰って来ません。そしてとうとう夜になってしまいました。夜中にジョンが突然吠えだしたのでお母さんはお父さんたちが帰って来たのだと思いましたが、ジョンの様子が変です。そしてフローネは犬のような鳴き声を聞いたと言うのです。狼が群をなして様子を伺いに来ているようでした。お母さんは鉄砲を持ち出して来ましたがお母さんもフローネも鉄砲の使い方など知らなかったので、ただただ震えているしかありませんでした。
 その夜は何事もなく無事に過ぎましたが、お母さんは心配になってテントの周りに柵を設けて狼が入ってこないようにしました。ところが4日目になってもお父さんたちは帰ってこず、再び夜が訪れました。そして夜中に再び狼が襲って来たのです。狼は群をなして柵の周りに集まって来ました。お母さんもフローネも震えていましたが、お母さんは意を決すると鉄砲を持って狼に立ち向かおうと決心しました。お母さんは震えながらも鉄砲の台尻で柵に取りつく狼を殴ったり、火のついた薪を投げたりしていましたが、とうとう柵は燃えて崩れ落ちてしまいます。狼は柵の崩れ落ちた部分から中に入り込み、お母さんに飛びかかろうとしたその時、お母さんは鉄砲をあてずっぽうに引き金を引くと、偶然にも狼の急所に命中し、一撃のもとに倒してしまったのです。それを見た他の狼たちは尻尾を巻いて退散していきます。それを見届けたお母さんは恐怖と安堵とで気を失って倒れてしまうのでした。
 翌朝、お父さんたちが帰って来ました。お父さんたちはテントの周りに柵があって、しかもその柵が一部燃えており、近くに狼の死体があるのを見て、夜中に狼が襲って来たのを知りました。お父さんは倒れていたお母さんを助け起こすと、お母さんは安心したかのようにお父さんにしがみついて泣き続けるのでした。
第13話 フランツの目
 お父さんはお母さんたちに探検の報告をしました。救命ボートで避難した人たちはもちろんの事、誰一人出会わなかった事。そしてここは周囲を海で囲まれた無人島だと聞いて、フローネは無邪気に大喜びしましたが、お母さんはがっかりでした。とくにお兄さんはここが無人島だと知って以来、すべてにやる気を失ってしまいます。それはあのエミリーが亡くなったと思われた為でもありました。そしてお兄さんが木陰で休む為、枝を折ろうとした時にカワスに触ってしまい、お兄さんは目をやられて見えなくなってしまいました。お父さんはお兄さんの目をどうしても治す為に、薬をあるだけ使って治療を試みましたが、お兄さんの目は良くなりません。お父さんは医者だったのでカワスの猛毒をくらって失明した人を治した例がない事を知っていました。そしてお父さんはお兄さんが毒を浴びたのがわずかである事を祈るばかりでした。
 お父さんとお母さんはお兄さんを必死で看病しました。しかし翌日になっても目は見えません。お兄さんは生きる希望をすっかり失ってしまい、もう治療もしなくていいと言いだしてしまいます。そしてそれから1週間が過ぎましたがお兄さんの目は相変わらず見えないままです。ところが10日目にお兄さんが目覚めた時、目が見えるようになったのです。お兄さんは「生き返ったんだ!」と言って大喜びで浜辺を走り回ります。それを見ていたお母さんも嬉しくて思わず泣いてしまうのでした。
第14話 貝殻の歌がきこえる
 ロビンソン一家は浜辺のテントで暮していては再び狼に襲われる危険性があったので、木の上に家を作ってそこで暮す事にしました。その木はフローネが落ちた木でしたが、木の上はとても広く、一家5人が暮すには十分な広さがありました。お父さんとお兄さんは木を切りだして木の上に床や屋根を作り始め、お母さんは木登りしないで済むようにロープを編んで縄梯子を作ります。フローネはジャックの見張り役で退屈な日々を過ごしていました。フローネは退屈のあまり夕食を作っておこうとマングローブに乗ってザリガニを捕りますが、フローネが気付かぬうちにマングローブは海に流されてしまい、フローネは帰れなくなってしまいます。ジョンがお父さんたちに知らせに行き、フローネはお父さんに助けられるのでした。
第15話 木の上の家
 1月27日はお母さんの誕生日です。4日後にお母さんの誕生日を前にしてフローネとジャックは貝殻のネックレスを、お父さんとお兄さんは縄梯子を恐がるお母さんの為に、木の中に倉庫を作ってそこに食料や家畜たちを入れ、そこからハシゴで登れるようにしてお母さんにプレゼントしようと考えました。お父さんとお母さんはどんなに衣食住が原始的になったとしても、心は常に文明人でいようと語り合います。そしてお父さんは家が完成したらフローネとジャックに勉強を教えようと決心するのでした。
 お母さんの誕生日の前日になりました。この分なら明日には引っ越しできそうです。お父さんとお兄さんの作ったハシゴは完成し明日を待つばかりです。フローネの作った貝殻のネックレスも完成したので、明日まで樽の中に隠しておく事にしました。ところがその夜、狼たちが襲って来たのです。お父さんはニワトリを樽の中に避難させると、家族とロバを連れて慌てて木の上の家に移動しました。家までたどり着きましたが、お母さんは縄梯子が恐くてなかなか登れません。するとお兄さんが木の中に入れる扉に案内し、そこからハシゴで家に登らせたのです。お母さんはいつの間にこんなものができたのかとびっくりしてしまうのでした。
 狼たちは木の上までは登る事ができず、あきらめて帰ってしまいました。朝になってロビンソン一家は浜辺のテントに戻り、あらためて引っ越しの準備を進めます。ところがフローネの作った貝殻のネックレスはニワトリがすべて食べてしまい、見る影もありません。お父さんたちもお母さんへのプレゼントは昨日のうちに見せてしまったので何もありません。しかしお母さんは家族全員が健康なのが何よりもプレゼントだと言って目に涙をためて喜ぶのでした。
第16話 我家の日課
 木の上の家に引っ越してから数日が過ぎました。無人島に上陸してから1ヵ月が経過し、ブラックバーンロック号から持ち出した食料もいよいよ底を尽き始め、自給自足しなければなりません。幸いな事にヤシの実や果物は豊富にあったので飢える事はありませんでしたが、動物性の食料を手に入れる為にお父さんとお兄さんは朝一番に狩りに出かける事になりました。そしてお母さんは畑を作って食べ物を栽培する事にします。そしてお兄さんとフローネとジャックは午後から丘の上の見張り台に立ち、船が通らないかを見張るのを日課とするのでした。
 お父さんとお母さんは海に面した丘の上の土地を開墾しました。お父さんは医者だったので畑の作り方などまったく知りませんでしたが、お母さんの実家は百姓だったのでお母さんはよく知っていたのです。お母さんは開墾した土地に火をつけて焼き、火が消えた後に種を植えました。そして10日が過ぎた時、ようやく畑に芽が出たのです。お母さんはとても嬉しそうでした。しかしそれから数日後、畑が野生の猪に荒らされ、せっかく出て来た芽をすべて食べられてしまい、お母さんは呆然としてしまうのでした。
第17話 おかあさんの畑
 畑を荒らされたショックでロビンソン一家は何もする気がなくなってしまいました。特にお母さんはその日一日寝込んでしまうほどでした。それから数日間、お母さんは荒らされた畑を見つめて過ごしていましたが、いつまでも落ち込んでいてはいけないと決意を新たに再び畑を作り始めます。今度はお母さんは畑に柵を作りました。種も、もしもの場合に備えて半分残してあったので、それを使って再び畑に種を植えるのでした。
 川まで水を汲みに行くのが大変なのでお父さんは家のそばに井戸を掘りました。これで木の上の家や井戸、そして畑と生活に必要なものは一通りそろいました。そこでお父さんとお兄さんは無人島から脱出する為の船を作る事になりました。しかしお父さんも筏程度ならともかく、一家5人が何日も航海できるような大きな船は作った事もなかったし、まして作り方も知らなかったので、とりあえず小さな船を作って作り方を研究する事にしました。
 お父さんはカヌーを作ろうと大きな木を切り倒します。しかしお父さんたちが何本、木を切り倒しても途中まで切ったら、木が途中から裂けて倒れてしまうのです。お父さんたちにはなぜ木が裂けるのか理解できませんでしたが、それを見ていたお母さんが切り方を教えてくれたので、上手に切れるようになったのでした。
 お母さんの畑は再び荒らされました。せっかく柵を作ったのに今度は空から鳥に種を食べられてしまったのです。再びお母さんはがっかりしてしまいます。そして時を同じくしてお父さんとお兄さんの作ったカヌーの進水式が行われましたが、カヌーはすぐに沈んでしまいました。生木でカヌーを作った為、カヌーが割れてしまったのです。ロビンソン一家は何をやってもうまくいきませんでしたが、それでもお母さんは再び気を取り直すと、フローネとジャックに浜辺で貝殻を拾ってきてもらい、それを紐で結んで鳥よけにして、再び畑作りにチャレンジします。今度は鳥たちも貝殻が光るのに恐れをなして近づく事ができません。お母さんの大勝利でした。
 そんなお母さんに触発されたお兄さんも再びカヌー作りにチャレンジします。今度は割れないように鉄の木と呼ばれる固い木をよく乾燥させ、そのままノミで削ると刃を痛めるので火で焼いて焦げた部分を削りますが、一度に5ミリ程度しか削れないので、焼いては削り焼いては削りの気の遠くなるような作業でした。
第18話 メルクルを助けて!
 ようやくカヌーが完成しました。今度は割れる事なく無事に進水式を済ませます。このカヌーは2人乗りの小さなカヌーで外海まで出るのは危険でしたが、珊瑚礁の中を魚釣りするだけなら十分でした。フローネとジャックも乗りたがったので、とりあえず今日はお兄さんがジャックを連れて魚取りに出かける事にしました。サンゴ礁に船をとめてお兄さんは潜って魚取り、ジャックは近くの貝を集めます。ところがメルクルがオールに乗ってサンゴ礁の外の外海に流されてしまったのです。双眼鏡でその様子を見ていたフローネとオールのない事に気づいたお兄さんは慌ててメルクルを救出しようとしますが間に合いそうにありません。すると一緒にいたジョンが崖から滑り降りると海に飛び込んでメルクルを助けるのでした。
第19話 フローネ、狩りに行く
 お父さんたちは毎日狩りに行きましたが、なかなか野生の動物を捕まえる事はできませんでした。フローネは毎日植物ばかりを食べているので、血の滴るようなお肉が食べたくて仕方がありません。そこでフローネはお父さんとお兄さんの狩りについて行く事にしました。手頃な鳥を見つけたのでフローネはお父さんに教わって鉄砲を撃ってみましたが、フローネは初めてだったのでびっくりしただけで鳥には当たりません。代わりにお兄さんが鳥を仕留めましたが、フローネは撃たれた鳥を見た途端、急に可哀想になって、あれほど意気込んで狩りに来たのに急に狩りが嫌になってしまいました。
 お父さんたちが狩りから帰る途中で山羊を見つけました。お父さんは鉄砲で撃とうとしますがフローネが邪魔してしまい、山羊は逃げてしまいます。フローネは山羊が可哀想だと思ったのです。ところが近くに子山羊もいたので、お父さんたちは子山羊を生け捕りにしようと考えました。子山羊は人間をまったく恐れず、簡単に捕まえる事ができましたが、その場を動こうとしません。しかし子山羊はフローネの事がとても好きになって、フローネの後をどこまでもついて行きます。子山羊の後を母親の山羊も心配そうについて来たので、とうとう2匹の親子の山羊は木の上の家までついてきてしまうのでした。母親の山羊も人間を恐がらなかったので、ロビンソン一家は山羊の親子を飼う事にしました。こうしてロビンソン一家は新鮮なミルクに不自由しなくなるのでした。
第20話 船がみえる
 ある日の事、フローネが見張り台で何気なく海を見ていると双眼鏡に船の姿が見えたのです。フローネは慌ててお父さんとお母さんに報告に行きました。そしてお母さんは見張り台に備えてある薪に火をつけてのろしを上げ、お父さんは鉄砲を持ってカヌーで珊瑚礁に向かい鉄砲を撃って音で知らせようとします。船はどんどん近づいて来ました。フローネもお兄さんも嬉しくてたまりません。ところが船は方向を変えるとどんどん遠ざかってしまいます。お父さんもお兄さんも鉄砲の弾が尽きるまで撃ち続け、フローネは裸になって服を振り続けましたが、船はとうとう見えなくなってしまいました。お父さんもお兄さんもみんなその日の晩はがっかりでした。せっかくのチャンスを取り逃がしてしまったのです。でも、お母さんはこれでこの近くを船が通る可能性があるのだと言ってみんなを励ますのでした。
第21話 亀の赤ちゃん
 熱帯夜で寝られないロビンソン一家は浜辺で涼む事にしました。すると沖からウミガメがやって来て浜辺に卵を生みだしたのです。フローネとジャックはウミガメの卵がかえるまで見守る事にしました。途中、ウミガメの卵はヘビに狙われ、追い払おうとしたフローネとジャックがヘビに追いかけられたりもしましたが、どうにかウミガメの卵を守る事ができました。その間、お父さんやお母さん、お兄さんは塩を作る事にしました。浜辺に海水を撒いて蒸発させます。それを何度も繰り返し、塩をたくさん含んだ砂を樽に詰めて上から海水を流し濾過します。濾過した濃度の高い塩水を煮沸して塩を結晶として取り出すのでした。そうして数日が経過した頃、ウミガメが卵からかえって一斉に海に向かって歩き始めたのです。フローネはその光景を見て小さなウミガメがこれから自分の力だけで生きていくと思うと感心しないわけにはいかないと思うのでした。
第22話 ジャックはコレクター
 船から持ち出した砂糖もずいぶん前に底を尽き、フローネは甘いものに飢えていました。お母さんは自分の畑にサトウキビの苗を植えてはと考えましたが、お父さんはサトウキビが育つまで待つより、探検に出かけた時に見つけたサトウキビを現地で砂糖にして持ち帰った方が早いと言い、木の家に山羊の親子とニワトリを残して、家族みんなで砂糖を作りに泊まりがけで出かける事になりました。フローネは甘いものが食べられると大喜びですが、ジャックはあまり嬉しそうではありません。というのもジャックはきれいな貝殻を集めるのに夢中になっていたので海岸を離れたくなかったのです。一家は夕方にサトウキビの生えている場所に到着すると、とりあえず一泊して翌日からサトウキビの取り入れに励みます。その間ジャックは昆虫や珍しい動物を探して歩き回っているうちに卵を見つけました。ジャックはそれが亀の卵だと思い、海岸まで持って帰ろうと思いましたが、その晩に卵から鳥のヒナがかえってしまったのです。さすがにヒナを育てる事はできないのでお父さんはジャックを説得したうえで鳥のヒナを巣に返し、たくさんの砂糖を作って木の上の家に帰るのでした。
第23話 無人島の休日
 お父さんは雨期が来た時に備えて薪を大量に準備し始め、フローネも薪運びを手伝わされます。お母さんの畑は順調に育ち、サヤエンドウやトウモロコシ、麦や瓜ももうすぐ食べられそうでしたが、雑草もたくさん生えていたのでフローネは草むしりを命じられてしまいます。フローネは働いてばかりいるのが嫌になり、たまには無人島の生活にもお休みも欲しいと言ったので、お父さんは明日一日を休みにする事にしました。フローネは一日中好きな事をしていられると大喜びです。休みが嬉しくて朝早くに起きたフローネは、お母さんが起きてこないので自分で朝御飯を作らなければなりません。しかも家族がいつまでたっても起きてこないのでジョンや山羊、ロバ、ニワトリの世話までフローネがしなければなりませんでした。
 お休みの1日をお兄さんは楽器作り、お父さんはハンモックの上で読書、ジャックは貝殻集め、お母さんはお風呂を沸かして久しぶりの入浴を楽しみます。フローネはジョンと一緒にたわむれて遊んでいました。しかしそのうちにジョンも遊び疲れて昼寝してしまい、フローネは1人になってしまいます。お兄さんもお父さんもお母さんもジャックも、みんな自分たちの好きな事に没頭しておりフローネを相手にしてくれません。フローネはとうとうする事がなくなって木陰で昼寝してしまいます。ところがフローネが目覚めると体の上に大きなトカゲが寝ていたのです。フローネはびっくりしてお父さんにトカゲを追い払ってもらいました。フローネは休日になればたくさんする事があると思っていましたが、いざ休日になってみると遊び相手もいなくて何もできず、無人島の休日はもうこりごりと思わずにはいられないのでした。
第24話 フローネの家出
 お兄さんとジャックがエミリーの事を想い出して話をしていた時、ジャックが「エミリーお姉ちゃん、きれいだったね」と言ったので、お兄さんは「ああ、美人だった。フローネみたいなブスとは違うよ」と言ったのをフローネが聞いてしまったのです。フローネは激怒し、それ以来お兄さんとは口も聞くのも顔を見るのも嫌になって、フローネは家出してしまいました。お父さんはフローネに「なあ、フローネ。人間に大事なのは姿形の美しさじゃない。気持ちが美しいかどうかなんだ。どんなに顔がまずくても気持ちが美しければ…」と言って説得しましたが、フローネはその言葉を聞いてお父さんも自分をブスだと思っているのだと考え、余計にフローネを怒らせてしまうのでした。
 フローネはその晩、近くの木の根で眠り、心配したお父さんは徹夜で見張ります。翌日フローネは新しい家を見つけようと森の中を歩き回り、今住んでいる木の上の家を小振りにしたような木を見つけたのです。フローネはそこでしばらく暮す事に決めました。お兄さんはフローネを怒らせた事を深く反省し、フローネの為にカキを取りに海に行きました。フローネが様子を見に行くとお兄さんが海に潜ったまま浮かんできません。フローネはお兄さんが心配でたまりません。お兄さんは海底の岩に足を挟まれて海面に上がれなくなっていたのですが、何とか自力で上がってきました。お兄さんを心配したフローネとフローネの為に危険を冒してカキを取ってきたお兄さんはすっかりと仲直りし、フローネに新鮮なカキを食べさせると、貝殻の中には黒真珠が入っていたのでした。
第25話 無人島の夜はまっくらやみ
 ロビンソン一家は無人島での生活を営むうちにマッチを使い果たしてしまいました。マッチがないので夜になってもランプに火をともす事ができません。そこでお父さんは翌日に火を起こす方法を考えました。まず虫めがねで太陽の光を集めようとしましたが、あいにく曇っており火はつきません。次に火打ち石を使いましたが、これもうまく火を起こす事はできませんでした。そして木を錐のように回して摩擦熱でようやく火を起こす事ができました。ところがお兄さんの不注意でランプを割ってしまったのです。ランプは船から1つしか持ってこなかったので、これから夜は真っ暗で過ごさなければなりません。仕方なくロビンソン一家は日没と同時に寝る事にしましたが、夜は12時間もあったのでみんな少しも眠くなりませんでした。
 お父さんとお兄さんはランプの代わりになるようなものを探しに出かける事にしました。そしてお父さんたちはワックスの木を見つけたのです。お父さんはワックスの木の実を潰して煮込み、浮いてきたワックスを集めてロウソクを作ります。こうして木の上の家には再び夜も明かりが灯るのでした。
第26話 おにいちゃんは弓の名手?
 先日、船が通りかかった時に鉄砲を撃ちすぎたので、弾があと13発しか残っていません。そこでお父さんは狩りをする時にも鉄砲を使わず、弓を作ってそれを使う事にしました。弓は完成しましたが、お兄さんはうまく弓を飛ばす事はできません。しかしお兄さんは矢尻に鳥の羽を付けてフィンの代わりにして飛ばしたところ、うまく飛ぶようになったのです。そしてお兄さんは弓を使って始めての獲物を仕留め、大満足で帰ってくるのでした。
 お父さんとお兄さんとフローネはロウソクを大量生産する為、再びワックスの木を探しに行った時、フローネはゴムの木を発見しました。そこはゴムの木の林だったのです。そこでお父さんはゴムの木の樹液を集めて靴を作る事にしました。ロビンソン一家の靴はみんな無人島生活で履き潰しており、家族全員裸足で生活していたのです。さっそくお父さんはお母さんのサンダルをゴムの木の樹液を使って作りあげました。サンダルを履いたお母さんはとても履き心地が良さそうに踊り出してしまうのでした。
第27話 無人島の音楽会
 今年はお父さんとお母さんの結婚20周年記念の年でした。それを知ったフローネはお父さんとお母さんに再び新婚時代を味わってもらおうと、別荘を用意してそこでお父さんとお母さんの2人っきりで一夜を過ごしてもらおうと計画します。フローネはお兄さんに相談し、2人でフローネが以前家出した時に使った木の上の家にヤシの葉で屋根を作り、さらに天井や柱に花をたくさん付けて、お父さんとお母さんの“愛の巣”を作り上げます。そうして子供たちはお父さんとお母さんを別荘に招待し、結婚20周年を祝って演奏会を開くのでした。
 ところがその夜、お父さんたちの泊まっている別荘に狼が襲って来たのです。いつもの木の上の家なら木が高いので狼は登ってこれませんが、別荘は木が低かったので狼に登れない高さではありません。お父さんたちは必死になって屋根を拭いてある藁に火をつけて狼に投げつけて防戦しましたが、狼はいっこうに引き下がりません。とうとう朝になって狼はようやく退散していきます。お父さんとお母さんは結局一睡もできないまま朝を迎えるのでした。
第28話 ジャックの病気
 ある日の事、ジャックは熱を出して寝込んでしまいました。夜には熱が下がったのでみんなは安心していましたが、翌日の昼頃に再び熱が出だしました。お父さんはジャックの病気がマラリアではないかと考えました。しかしお父さんはマラリアの薬を持っていません。このままほっておくと、すぐに死ぬ事はありませんが、熱の為にしだいに体力を消耗してやがては死んでしまいます。そこでお父さんとお兄さんは皮からマラリアに効く薬の取れるキナの木を探してくる事にしました。しかしそれがこの無人島にあるのかどうかすらわかりません。お父さんとお兄さんは無人島のジャングルを一生懸命探しましたが見つかりません。その晩ジャックはひどい熱を出しました。朝になってもお父さんたちは帰ってきません。そればかりかお母さんまでがマラリアにかかってしまい、ひどい熱を出してしまいました。フローネ1人でジャックとお母さんの看病を続けましたがフローネは不安でたまらず、とうとう泣き出してしまいます。
 お父さんたちは徹夜でキナの木を探し続け、とうとうお兄さんは力尽きて倒れてしまいました。ところがお兄さんが倒れた目の前にキナの葉が落ちていたのです。お父さんたちは大喜びでキナの木の皮を持ち帰ると、ジャックとお母さんに飲ませ、お母さんたちはやがて元気を取り戻すのでした。
第29話 フローネ、行方不明となる
 お母さんはマラリアにかかった事で無人島から脱出する決心をしました。これまでは危険を冒すよりも船が通りかかるまで気長に待つつもりだったのですが、もし別の風土病にかかった時、今回のように偶然薬が見つかるとも限らないのです。しかしお父さんには大きな船を作る技術もなければ、それを作る大工道具もありません。それでもカヌーをいくつか作ってつなげればいいというお兄さんのアイディアを採用する事になり、それからお父さんとお兄さんはカヌー作りに励みます。
 フローネはお兄さんに勉強を教えてもらえなくなったので、退屈して1人でこっそりと散歩に出かける事にしました。川をさかのぼって行くと滝が見えてきました。フローネは滝壷で泳いでいると、メルクルがやって来たのです。フローネはメルクルを追いかけましたがメルクルは逃げていき、代わりにプチクスクスの親がフローネを襲って来たのです。今までメルクルだと思い込んでいたプチクスクスの子供は、野生のプチクスクスだったのです。フローネは森の中を逃げ回った為に、帰り道がわからなくなり無人島で迷子になってしまうのでした。
 フローネが姿を消したのでお父さんとお兄さんは探しに出かけましたがフローネの姿は見当たりません。ジョンは匂いをかいでフローネの居場所を探しますが、雨が降って来たので匂いも消えてしまいます。フローネは泣きながら森の中をさまよっていると、崖から滑り落ちそうになって動けなくなってしまいます。お父さんは日が暮れる前にフローネを見つけ出さなければならないと考え、鉄砲を撃ってフローネを探します。フローネにははっきりと鉄砲の音が聞こえましたが、フローネは崖にしがみついているのに必死でかすれた声しか出ません。しかしお父さんは偶然フローネのそばを通りかかり、フローネは無事に救出されるのでした。
第30話 きついお仕置き
 翌日、フローネは憂鬱でした。フローネは勉強をサボってこっそりと抜け出し、迷子になってみんなに迷惑をかけたのです。どんなお仕置きを受けるのかと思うと憂鬱でたまりませんでした。お父さんはもしフローネが見つからなかったら今頃フローネは狼の餌食になっているところだと言い、1人の不注意が家族全員の命を危険にさらす事があると言ってフローネをたしなめました。お父さんは罰として今日一日家で留守番する事を命じ、フローネはお仕置きが軽くて助かったと思いましたが、お母さんはフローネにお尻を突き出すように命じると、鞭でフローネのお尻を何度もぶちはじめるのでした。
 お父さんたちはカヌーを作る為、大きな木を切り倒していましたが、木が倒れた時の大きな音に驚いた山羊の親子がどこかに走り去ってしまいました。フローネは家で留守番するように命じられていましたが、いつまでたっても山羊の親子が帰ってこないので、書き置きを残してジョンと一緒に山羊の親子を探しに出かけました。山羊の親子はジョンが見つけましたが、子山羊は崖下にいてフローネ1人では助け出せそうにありません。フローネはジョンにお父さんを呼んで来てもらい、自分は崖下に降りて子山羊を介抱し、お父さんに引き上げてもらいます。その晩、フローネはお母さんに鞭を差し出して「これでお仕置きして下さい」と言いますが、お母さんは山羊の親子を心配して抜け出したフローネの心を思ってお仕置きはしなかったのでした。
第31話 わたしはのけもの?
 今日は9月13日。それはフローネの誕生日でした。しかし無人島では日にちや曜日など関係ないのでフローネは自分の誕生日に気付きもしません。そこでお父さんやお母さんはフローネを喜ばせようとフローネに内緒で誕生日のプレゼントを用意する事にしました。ところがフローネに内緒でみんな何か隠し事をしている事に気付き、フローネは自分が仲間外れにされていると思い込んですっかりと気を悪くしてしまいます。仕方なくお兄さんはフローネの誕生日である事を説明し、フローネは豪華な料理の待つパーティーに招待され、家族みんなからプレゼントを受け取りました。フローネは嬉しくて泣き出してしまいます。フローネは今日から11歳になったのでした。
第32話 船ができた!
 お父さんとお兄さんは急ピッチで船の製作に励みました。船の製作を始めて2ヶ月たったある日、いよいよ船は完成間近になり、お母さんは船に積み込む保存食作りに励みます。お兄さんは段々と心配になってきました。こんな小さな船で航海に出たら、嵐に出会ったらひとたまりもないので、このまま無人島で暮らした方が良いのではないかと考えたのです。しかしお父さんは「確かにこの島は食料の宝庫だ。生命を維持するには差し支えない。しかしフランツ、人間が生きていくという事は単に生命を維持する事ではない。他人との交流を持って人類の歴史が築いてきた文化の恩恵を受け、そしてまた新たな文化を我々が付け加えていくという、それが本当に生きるという事だ。この無人島に留まっていてはそういう生き方はできない」と言ってフランツを説得し、フランツも同意するのでした。
 とうとう帆を張った双胴のカヌーは完成しました。家族みんなは無人島から脱出できると大喜びです。お父さんとお兄さんはカヌーの進水式を済ませると、試運転を始めました。お父さんたちは帆の扱い方を練習し、その間に家族みんなでカヌーを楽しむのでした。
 いよいよ無人島からの脱出が現実のものとなりました。お父さんたちは天候の良い日に出発する事にして、それまではじっくりと計画を練る事にします。ところがその夜、激しい嵐に襲われ、木の上の家は雨が吹き込んで水びたしになってしまいます。お父さんとお兄さんは船が心配になって海岸に行くと、船は波に洗われて危険な状態でした。お父さんたちは必死で船を陸にあげようとしましたが波の為にうまくいかず、とうとう船は大波にさらわれてしまい、家族全員の見ている目の前でバラバラになって沈んでしまいます。家族みんなはただ立ち尽くしているしかありませんでした。
第33話 雨、雨ふれふれ
 お父さんは神様が家族を守る為に船を壊してくれたのだと考えました。もし無人島から脱出する為の航海中にあのような嵐に襲われては船はひとたまりもなく家族全員死んでしまった事でしょう。そう考えるとお父さんは再びもっと頑丈な船を作ろうと決意を新たにするのでした。
 それから雨は何日も降り続きました。ロビンソン一家はひたすら雨が上がるのを家の中でじっと待つしかありませんが、家族みんなで家の中で一家団欒を楽しむのは嫌な事ではありませんでした。一番困ったのは外で炊事ができなくなった事です。そこでお父さんとお兄さんは家の中にかまどを作って家の中で食事が作れるようにします。雨は昼間は時々やみましたが、夜になると風を伴って激しく降り続きました。ようやく雨のあがったある日、お母さんが畑の様子を見に行くと、畑は水びたしで麦は倒れていました。お父さんとお兄さんはさっそく畑に排水路を作って水を引かせ、畑を元どおりにします。そしてお母さんはトウモロコシを潰してケーキを作り、家族全員で味わうのでした。
第34話 洞窟をさがせ!
 雨はそれからも毎日降り続きました。あまりに雨が続くので屋根が腐ってしまい、木の上の家はひどい雨もりです。雨があがった隙にとりあえず応急処置で屋根を直しましたが、雨もりは変わりません。お父さんが洞窟でもあればいいのにと言った時、フローネは洞窟を見つけた事を思いだしました。それはフローネが迷子になった時、洞窟で雨宿りしていたのです。ところが迷子になっていた時に見つけたのでフローネにはそれがどこにあるのかわかりません。そこでお父さんとお兄さんとフローネの3人でその洞窟を探しに行く事にしました。フローネの記憶を頼りに探し続けましたが洞窟は見つかりませんでした。
 その頃ジョンは毎日のようにどこかに出かけ、食事になると帰ってくるという生活を続けていました。不思議に思ったフローネはこっそりとジョンの後をついて行くとジョンは洞窟に入って行ったのです。フローネは嬉しくなってお父さんたちを連れて再び戻ってきました。洞窟はとても大きく、奥は真っ暗でまったく見えません。しかも奥の方からコウモリの大群が飛び出して来たので、すっかりと気味が悪くなってしまいました。
第35話 洞窟の秘密
 お父さんとお兄さんが洞窟の奥を調べに行く事になりました。洞窟の中はとても広く洞窟の中に洞窟があります。そのうちの1つからジョンが出てきました。しかもジョンはコーヒーカップのかけらをくわえているのです。無人島にコーヒーカップがあるのはおかしいと思い、お父さんたちはジョンが出てきた穴を調べると、その奥には白骨死体が横たわっていたのです。フローネもお兄さんもびっくりしてしまいました。落ちついてよく調べると白骨死体は若い男のようで、周りには男が使っていたと思われる生活用具が置かれており、日記までありました。
 日記はボロボロで読めない箇所もありましたが読める部分だけを読むと、この日記の持ち主はエリック・ベイスという名前で、ロビンソン一家と同じようにクリスマス近くにこの海域を船で通りかかって嵐で遭難し、救命ボートで避難したものの救命ボートも転覆して、気がついたらこの無人島に打ち上げられていたと書かれていました。そして山羊の夫婦と一緒に生活していたが、病気にかかって衰弱していった事が書かれていました。おそらく亡くなったのは2〜3年前の事だと思われます。お父さんたちはエリックさんの白骨を運び出すと、船長のお墓の隣にお墓を作って手厚く葬りました。そしてフローネは自分の飼っている母親の山羊にエリック、子山羊にベイスという名前を付けるのでした。
 雨のあがった隙を見て洞窟に引っ越しが始まりました。とりあえず雨期が終わったらまた戻ってくる予定だったので、当面必要なものだけを運びましたが、それでも荷物は大量にありました。お兄さんとフローネは洞窟の中の小部屋でそれぞれ眠る事になり、こうして洞窟での新しい生活が始まるのでした。
第36話 幽霊が出る!
 洞窟での生活は昼間でも暗い事以外は快適でしたが、近くに水がない事が悩みの種でした。フローネは洞窟の自分の部屋の壁の奥に、まだ洞窟の続きがある事を発見しました。フローネはみんなに黙って1人でロウソクを片手に洞窟の続きを探検します。洞窟の入口近くは狭かったのですが、中はとても広くフローネはびっくりしてしまいます。そして洞窟の先にはとても広い空間があって天井からは明かりが漏れ、洞窟の中に小川が流れていたのです。フローネはすっかりと嬉しくなってロウソクを置くと、洞窟の中を満喫しました。ところが天井から落ちてきた水滴の為、ロウソクは消えていたのです。フローネは真っ暗な洞窟を引き返しますが、手探りでは戻る事ができません。フローネはとうとう恐くなって泣き出してしまいました。すると大きな獣が襲ってきたのです。フローネは恐さのあまりに逃げだしましたが、よく見たらそれはジョンでした。
 それ以来、洞窟の家でも水は困らなくなりました。水汲み係はフローネになったのでフローネは1日に何度も洞窟の中の小川まで往復します。するとある日、フローネは小川の中で人のような陰を見かけました。フローネはお父さんやお母さんに相談しましたが、無人島で人がいるはずがないと言って誰も信じようとしません。フローネは反論しましたが、そのフローネ自身もあれは幻ではないかと思い始めるのでした。
 雨があがった時にフローネとジャックは木の上の家に鍋を取りに行きました。ところが木の上の家は明らかに誰かに荒らされた形跡があったのです。
第37話 あらたな漂流者
 その晩、家族で話し合いました。ロビンソン一家がこの無人島で暮らすようになって1年になりますが、この時期にはエリックさんやロビンソン一家が遭難したように、この海域で嵐が発生するので、今年も遭難した人がいたのではないかという結論に達し、ひとまず明日、付近を捜索する事にしました。
 翌日、畑を調べてみると若干残してあったはずの瓜がなくなっていました。しかも刃物で切り取ったような跡が残っていたのです。お父さんはこの無人島にロビンソン一家以外の人がいる事を確信しました。そこで木の上の家と畑に再び必ずやってくると考え、夜中に見張る事にしました。その晩は何も来ませんでしたが、次の日の朝にお母さんとフローネとジャックが畑を見に行くと、赤い髪をした黒人の少年が畑を荒らしていたのです。少年はナイフを持って脅えていましたが、フローネとお母さんが優しく諭したので、少年は少しづつ語り始めました。少年の名前はタムタムといい、先日の嵐で乗っていた船が沈没してしまった事や、もう1人モートンさんと一緒に遭難した事を語りました。
 タムタムはロビンソン一家を連れてモートンさんの住む洞穴にやって来ました。お父さんは久しぶりに見る家族以外の人間に喜びましたが、モートンさんはとても頑固で気難しい人で、お父さんもお母さんもとても手を焼いてしまいます。モートンさんは足を怪我して膿んでおり、このままでは足が腐ってしまうので、嫌がるモートンさんを無理矢理ロビンソン一家の住む洞窟まで運んで手術するのでした。
第38話 男の子と女の子
 モートンさんはとても気難しくて自分勝手な人で、お父さんもお母さんも困り果ててしまいます。タムタムだけはしだいにロビンソン一家に打ち解けてきましたが、ある朝お父さんが自分たちはオーストラリアに行く途中に遭難したと言うと、タムタムは突然家を飛び出してしまったのです。お父さんはモートンさんに事情を聞きました。タムタムはオーストラリアの原住民でしたが、オーストラリアに移住してきた白人によって両親を殺されてしまったのです。白人は原住民を捕らえるとタダ同然の安い賃金でこき使い、少しでも反抗すると殺してしまったのです。それ以来、タムタムはオーストラリアにやってくる白人にロクな人間はいないと思い込むようになり、モートンさんのもとで見習い水夫として働いていたのでした。
 タムタムはもうロビンソン一家のもとに戻るつもりはありませんでした。しかしフローネはお父さんはお医者さんでオーストラリアで病気で苦しむ人を助ける為にやって来たのだと言います。それでもタムタムの決心は変わりませんでしたが、フローネは足をくじいて歩けないふりをした為、タムタムは仕方なくフローネを洞窟の家まで送り、タムタムは再び洞窟の家で暮すようになるのでした。
第39話 ひねくれ者モートン
 それ以来タムタムはロビンソン一家とすっかり仲良しになりましたが、モートンさんは相変わらず聞き分けがなく、お父さんやお母さんを困らせてばかりでした。モートンさんはようやく歩けるようになったので外に散歩に出かけます。フローネとジャックはタムタムからブーメランを借りて遊んでいて、フローネはヤシの木に引っかかったブーメランを取ろうとしてヤシの木から下りられなくなってモートンさんに助けられます。モートンさんは子供たちには親切でした。しかしモートンさんは洞窟の家に戻るとお父さんの鞄を勝手に持ち出し、消毒用のアルコールを飲み始めたのです。モートンさんは完全に酔っぱらってしまい、様子を見に来たお父さんは呆れ返ってしまいます。
 モートンさんはタバコの葉を見つけると、自分で葉巻を作りました。それを自分が吸うだけなら誰もとがめませんが、なんとジャックに葉巻を薦めようとしたのです。すぐにお母さんが発見してモートンさんを怒り、やめさせましたが、それ以来お母さんはモートンさんが大嫌いになってしまいます。それを知ったお父さんは、せっかく増えたお隣さんとこのままケンカ別れするのは惜しいと言ってお母さんを説得し、モートンさんと再び一緒に暮すのでした。
第40話 少年タムタム
 雨期が終わったのでロビンソン一家は木の上の家に戻る事にしました。モートンさんも誘いましたが、モートンさんはどうしても洞窟の家に残ると言い張ったので、モートンさんとタムタムを洞窟に残してロビンソン一家は木の上の家に引っ越しました。
 明日はお兄さんの誕生日です。お兄さんはプレゼントはいらない代わりに1日、休みを欲しいと言います。お兄さんはどこかのんびりできる場所で作曲したいと考えていたのでした。翌日、お兄さんとフローネ、ジャックの3人はピクニックに出かけます。出かけた先で子供たちはダチョウを見つけました。お兄さんはダチョウを生け捕りにしようとしますがうまくいきません。そこへタムタムもやって来て、ダチョウを生け捕りにするばかりか、ダチョウを調教して乗りこなしてしまったのです。その日、ダチョウに乗って帰ったフローネとジャックを見てお父さんとお母さんはびっくりしてしまうのでした。
第41話 行ってしまったモートンさん
 洞窟の家に住むモートンさんとタムタムは洞窟の奥の小川の水が、いつもは冷たいはずなのに温泉のように温かくなっている事に気付きました。モートンさんはこの無人島が休火山で、噴火の兆候が出ているのではないかと考えました。モートンさんは木の上の家に誰もいない事を見届けると、鉄砲と虫めがねと保存食と畑のトウモロコシを勝手に持ち出し、その日の夜のうちにお父さんたちの作ったカヌーでタムタムを残したまま無人島を脱出してしまったのです。朝になってお父さんたちはモートンさんが1人で無人島を脱出した事を知りましたが、見張り台から見た時にはもうモートンさんの乗ったカヌーは小さくなってほとんど見えませんでした。
 お母さんはモートンさんが無断で鉄砲や食料を盗みだし、しかも自分たちが作ったカヌーまで無断で使われた事に腹を立てました。お父さんはモートンさんが船乗りだから海の様子を見に行っただけだと言います。しかしモートンさんに置いてきぼりをくらったタムタムはモートンさんが心配でたまらず、夕方になっても見張り台から離れようとしません。お父さんはモートンさんは必ず帰ってくると言ってタムタムを説得して木の上の家にタムタムを呼びましたが、お父さん自身モートンさんが帰ってくるという自信はありませんでした。
第42話 恐ろしい地震
 朝になってもモートンさんは帰って来ませんでした。タムタムも姿を消していたので、フローネは洞窟の家まで探しに行きましたが、そこでフローネは洞窟の奥の小川の水が温かくなっている事に気付きました。そして家畜たちだけでなく島中の動物たちが落ち着きをなくし始めたのです。お父さんはこの無人島に人間には気付かない何かが起き始めているのではないかと考えます。そしてフローネが報告した洞窟の奥の小川がお湯のようになっていたという言葉を聞いて、お父さんもこの無人島が実は火山島ではないかと考え始めました。
 その夜、夜中に突然動物たちが騒ぎ始め、その直後に地震が起きました。地震の被害自体はありませんでしたが、お母さんは不安でたまりません。さらにそれからしばらくしてもっと大きな地震が起きました。崖は崩れ大地は割れ、洞窟の家は崩れてしまいました。朝になって家族全員が無事だと知ったお母さんは思わず泣き出してしまうのでした。
 お父さんたちはモートンさんが帰って来ているのではないかと思って洞窟の家に行きましたが、洞窟の家は崩れており、中に入ろうとしたお父さんたちの目の前で跡形もなく崩落してしまいます。お母さんはもうこんな恐ろしい場所にはいたくないと言って無人島を脱出しようと言いだします。地震で山が崩れたり火山が噴火して溶岩が流れて来たりしたら、もうこの場所では生きていけないのです。お父さんもお母さんの意見を取り入れて、もう一度脱出の方法を検討する事にしたのでした。
第43話 戻ってきたモートンさん
 お父さんとお兄さんはさっそく船作りを研究し始めました。前回の失敗を教訓に、嵐にも耐えられる船を作らなければなりませんが、モートンさんがいるならともかく、お父さんたちだけではなかなか思い通りにはいきませんでした。無人島は雨期が去って以来、雨がほとんど降らなくなり、井戸の水は枯れ小川の水は水量が減り、いよいよ天変地異の始まりかと思われました。
 その日、沖にカヌーが見えてきました。モートンさんの乗ったカヌーが無人島に戻ってきた、正確には無人島に流されてきたのです。モートンさんは日焼けの為、全身火傷状態でしたが、すぐに元気を取り戻しました。モートンさんは船乗りだったので今の時期にオーストラリアからインドに向かう船が無人島の南100マイルのところを通る事を知っていたので、自分1人助けてもらおうと考えていたのです。しかし途中で水がなくなって帰ってきたのでした。
 洞窟の家は地震で崩れていたのでお父さんはモートンさんに木の上の家で一緒に住もうと言いますが、モートンさんは「あんたたちと一緒に住むのは御免こうむる」と言って断ってしまいます。そこでロビンソン一家の別荘に使ったもう一つの木の上の家をモートンさんに明け渡し、タムタムを始めとして子供たちは木の上に屋根を作るのでした。
 お母さんは自分勝手なモートンさんがどうしても好きになれません。モートンさんはお母さんの持ってきた食事に「スイス料理は口に合わない」と言ってケチをつけるので、お母さんはカンカンに怒ってしまいます。お父さんはタムタムがあれだけモートンさんを慕っているのだから、きっとモートンさんにもいいところがあるに違いないと考えました。お父さんがカヌーの所に行った時、カヌーの中にモートンさんの帽子が入っていました。お父さんは帽子を取りあげると、中に手紙が入っていたのです。その手紙にはこう書かれていました。
 「私が飢えと渇きで死んだ場合の事を考えこれを書き記しておく。これを読んだ人はただちに救助に向かってほしい。およそ東経155度、南緯10度あたりと思われる無人島にスイス人医師の一家5人とオーストラリア生まれの少年1人が漂流している。島の特徴は火山島で島の中央に岩がむき出しの山がそびえ、島の周りには環礁がある。そして島の四方少なくとも120マイルの範囲にはどんな陸地も見えない絶海の孤島である。家族の中には小さい子供もいる。重ねて言う、至急救助に向かってほしい」
 お父さんはお母さんにこの手紙を見せました。モートンさんは船の航路までなんとかカヌーを漕いでいき、例え自分が死ぬ事になっても、ロビンソン一家が無人島で暮している事を知らせようとしていたのです。お母さんはどうしてモートンさんが最初からそう言わないのか不思議に思いましたが、お父さんはそれがモートンさんの性格だと言うのです。そして、先程お母さんが持って行った食事も、お母さんの前ではケチをつけましたが、お母さんが帰ってから美味い美味いと言って自分の分ばかりかタムタムの分までペロリと平らげてしまった事をフローネから聞くと、お母さんもすっかりとモートンさんの事が嫌いではなくなります。そしてお母さんはいつかきっとモートンさんに本物のスイス料理を作ってあげようと決心するのでした。
第44話 もう一度船を!
 その夜モートンさんはお父さんを呼び出すと、この無人島が火山島である事を告げました。そしてモートンさんはお父さんがのんびり構えすぎていると言います。お父さんも一度は脱出しようと船を作ったが嵐で沈んでしまったと言うと、モートンさんは自分の脱出計画を話しました。それにお父さんも協力する事になり、翌日からモートンさんの指示でお父さんとお兄さんは前回と同じ船を作る事に、フローネとジャックはゴムの木から大量にゴムを取ってくる事に、そしてタムタムはヤシの実から大量の繊維を取る事になりました。お父さんたちは前に作った船と同じ船を作るので、時間さえあればそれほど難しい事ではありませんが、問題は帆布でした。帆布は船と一緒に沈んでしまったので、大きな布はもう残っていなかったのです。それを知ったモートンさんは何日もカヌーで海に出かけては沈んだ船を探し、とうとう海底に沈んだ船を探し出して帆布の回収に成功したのでした。
第45話 死なないでロバさん
 船の建造も急ピッチで進み、フローネとジャックのゴム集め、タムタムの繊維取りも精が出ます。あまりに暑いので子供たちは休憩を兼ねて池に水浴びに行きました。ところが池にはモートンさんが来ており、池に麻をたくさん浮かべていたのです。麻を水につけて腐らせ、残った繊維からロープを作るのです。子供たちはせっかく遊びに来たのにロープを作る作業を手伝わされてしまうのでした。
 ようやく船をくりぬく作業は終わりました。ここまでは前と同じですが、ここからはモートンさんの指示に従います。くりぬいた部分を板でふたをし、水が一滴も入らないようにして、2隻のカヌーを繋いでその上に甲板を作るのです。こうすれば例え波を被っても船は沈む事がありません。ただし、水を一滴も入れないようにする為に、板のすき間にヤシの実の繊維を詰めてゴムを流して防水処理します。すべてはモートンさんの発案でした。モートンさんは水夫なので、船の事なら何でも知っていたのです。この頃にはモートンさんもすっかりとロビンソン一家と親しくなり、一緒に食事を取るようになっていました。
 そしてようやく船も完成し、いよいよ進水式を迎える事になりました。船は見事に浮かび、無人島で生活する7人が乗ってもビクともしませんでした。ところが船を引くのにロバを使ったところ、ロバは倒れてしまったのです。お父さんが診察しましたがもう老衰だと言うのです。その夜、ロバはみんなに見とられながら天国に旅立って行きました。翌日、船長とエリックさんのお墓の横にロバのお墓を作り、ロバを葬るのでした。
 モートンさんはロバが今死んで良かったと言います。それを聞いたフローネやお兄さんは怒りますが、モートンさんは船にはロバは積めないから無人島に残していく事になる、そうなったら人の手で育てられたロバは野生では生きていけないから、あっという間に狼に食べられてしまうと言うのです。それよりは今死んでこうして手厚く葬られる方がロバにとっては幸せだと言って、ロバのお墓に線香代わりに火のついた煙草をさして祈りを捧げるのでした。
第46話 ヤギをすてないで
 いよいよ出発の準備は整いました。しかしモートンさんは出発しようとは言いません。潮の流れが悪かったのです。長い航海では帆に頼るだけではなく、潮の流れも利用しないと目的地にはたどり着けません。潮の流れが良くなるまで出発はおあずけでした。そしてモートンさんはその間に動物たちを何とかしろと言います。モートンさんは狭い甲板に7人の人間と食料と水を載せるのだから動物たちを載せるスペースはないと言うのです。フローネにとって家族同様に暮してきたジョンやメルクル、山羊の親子を置いてきぼりにする事は辛い事でした。
 お父さんとお母さんは話し合い、何とかジョンとメルクルはモートンさんにお願いして船に載せてもらおうとお願いする事にしましたが、山羊だけはどうしてもあきらめなければならないと言うのです。それを聞いたフローネは「山羊を連れていかないのならあたしも行かない」と言いだしてしまいます。お父さんは「フローネ、私たちの航海は必ず成功する保証はないんだ。モートンさんは無事にオーストラリアに着ける可能性は50%だと言っている。それでも私たちはその50%にあえて賭けるわけだ。失敗する可能性も50%あるわけだ。もしかしたら嵐で船が転覆してみんな溺れるかもしれない。あるいは航路を誤っていつまでも陸地に着かず、飢えと渇きで死ぬ事になるかもしれない。そうなるともし山羊も一緒に乗っていれば死ぬ事になる。しかし山羊をこの島に残しておけば山羊はそんな目に逢わずに済む。フローネやジャックと別れて寂しがるかもしれないが、この島にいる限り溺れたり飢えたりしないで済むわけだ。フローネ、山羊の身になって考えてあげなきゃいけないよ」と言うのでした。
 山羊の親子はお父さんとお兄さんが谷に帰す事になりました。フローネは山羊の親子に別れを告げて涙で見送ります。お父さんたちは山羊の親子を以前見つけた場所まで連れて行き、そこで放して帰ろうとしますが、山羊たちはどうしてもついて来ます。仕方なくお父さんとお兄さんは別々の方向に逃げて山羊を振り切ります。お兄さんにとって家への帰りは辛い道のりでした。
 次の日の朝、フローネが目覚めると山羊の親子は帰ってきていました。フローネは大喜びでしたが、お父さんとお兄さんは再び山羊の親子を連れて行きます。今度は山羊が道を覚えないように山羊を目隠しして連れて行ったので、次の日も、その次の日になっても山羊の親子は帰ってきませんでした。それでもフローネは山羊の好きな草を集めて待っています。お兄さんは山羊が帰ってきても船には乗せられないと言いますが、フローネはきっと山羊たちは帰ってくるから、帰ってきた時に私たちがいなくてもおいしい草をたくさん食べてもらえるようにと言って草を集め続けます。それを聞いたお兄さんもフローネと一緒に草を集めるのでした。
第47話 続・ヤギをすてないで
 それから5日経過しましたが山羊たちは帰ってきません。お兄さんは山羊たちを船に積み込ませてもらえるようにモートンさんにお願いしましたが、山羊ばかりでなくジョンやメルクルも積んではいけないと言うのです。お兄さんは意を決すると人に見つからない場所で大きな木箱を作り始めました。モートンさんには食料が入っていると言い張って、ジョンとメルクルを隠して船に積み込もうと考えたのです。しかしジョンもメルクルもいつの間にか姿を消し、夜になっても帰ってきませんでした。
 次の日にみんなでメルクルの行方を捜しますが、見つかりません。ところがその次の日にメルクルだけでなくジョンと山羊の親子まで帰ってきたのです。フローネやジャック、お兄さんは大喜びでした。モートンさんは潮の流れが良くなったので明日出発すると言います。しかし子供たちがあまりにモートンさんを説得するのでモートンさんも動物たちを一緒に連れて行くと言わざるをえませんでした。子供たちはモートンさんに飛びついて喜び、モートンさんと子供たちはすっかりと仲良くなってしまうのでした。
第48話 さようなら無人島
 いよいよ明日は出発です。フローネは無人島最後の夜の記念パーティーをやろうと提案しましたが、モートンさんにとめられてしまいます。モートンさんは明日の出発が死への旅路になるかもしれないから、今夜は早く寝るように言って家に帰ってしまいます。ロビンソン一家は船長とロバにお別れに行きました。そして無人島最後の夜、ロビンソン一家は無人島での生活を思い出し、眠れない夜を過ごします。しかし家族全員まったく眠れないので、無人島最後の想い出として思い残すことのないように朝まで各自で好きな事をする事にしました。お兄さんはハープの弾き納めを、フローネは山羊の親子においしい草を食べさせ、お母さんは畑の雑草取り、そしてお父さんは家の修理を始めるのでした。
 出発の朝がやってきました。ロビンソン一家は長年住み慣れた木の上の家に別れを告げると、お父さんは家の前に立て札を立てました。その立て札には「この家はスイス国籍の医師エルンスト・ロビンソンとその一家がオーストラリアへ出発するにあたり、その所有権を放棄するものなり。今後この島に漂流し来る者は何人も自由に利用さるべし」と書かれていました。こうしてロビンソン一家とモートンさんとタムタムの7人は帆にいっぱい風を受けた船に乗って無人島をあとにしたのです。ロビンソン一家が初めてこの無人島に着いてからおよぞ1年と4ヶ月が経過したある日の事でした。
第49話 陸が見える!
 フローネたちの乗った船は無人島を出発すると順風満帆、一路南へと快走。このままでは予定の2週間より早くオーストラリアに到着するように思われました。昼間は魚釣りにいそしみ、スコールが来たら帆布を広げて雨水を集めます。こうして平穏な航海が数日続きました。しかし5日目の夜に嵐に見舞われたのです。小さな船は大波の為、木の葉のように舞いましたがモートンさんの適切な指示のおかげで無事に乗り切る事ができました。ところが今度は風がまったくなくなり、船はぱったりと進まなくなってしまったのです。しかしフローネたちはどうする事もできません。風が凪いだまま無人島を出発して2週間が経過してしまいました。10日目から進路を南西に変更し、オーストラリア東岸を目指しましたが、3週間が経過してもオーストラリアはおろか、小島さえも見えません。そしてとうとう食料も水もなくなってしまいました。
 食べ物は数日食べなくても死ぬ事はありませんが、水がなければ生きていく事はできません。フローネたちは完全に干上がってしまい、照りつける日差しの中でただじっとしているしかありませんでした。フローネは苦しさに耐えかねて海水を飲もうとしますが、モートンさんにとめられてしまいます。そしてモートンさんからハチミツをもらったのです。モートンさんはこういう場合の為に、壷いっぱいのハチミツをこっそりと持ってきていたのです。これがあればみんなもあと数日は生き延びる事ができそうでした。
 無人島を出発して1ヵ月が経過したある夜、ヤシの葉が流れてきました。ヤシの葉はまだ青々としており、お父さんもモートンさんも陸が近いと手を取って喜び合います。そして朝靄の中に陸が見えてきました。みんな苦しい航海に耐えてようやく陸地に到達できた喜びで、目頭が熱くなってしまうのでした。
第50話 また会う日まで
 船が到着した場所はシドニーの少し北でした。シドニーの移民局で身なりを整えたロビンソン一家は汽車で、お父さんの古い友人のエリオットさんを訪ねます。時は5月、オーストラリアにはもうすぐ冬が訪れようとしていました。メルボルンの駅に着いたロビンソン一家とモートンさんとタムタムはエリオットさんに出会って、エリオットさんの用意してくれた家でしばらく暮す事になりました。ところがモートンさんは家に向かう途中で女友達のサリーに偶然出会い、モートンさんはサリーと一緒にどこかに行ってしまいます。ロビンソン一家が住む事になった家はとても大きくて庭の広い家でした。ここでロビンソン一家5人とタムタムが暮す事になったのです。
 ロビンソン一家が家に到着してすぐに、エリオットさんはお父さんが勤める事になる病院へ家族全員を案内します。エリオットさんは病院の看護婦にロビンソン一家の案内を任せますが、なんとその看護婦はブラックバーンロック号の中でお兄さんと親しくなったエミリーだったのです。お兄さんもエミリーもお互いが死んでしまったと思っていただけに、お互いびっくりでした。
 エミリーは嵐の時、救命ボートで脱出しました。救命ボートのオールを漕いでいた水夫がとても優秀だったので、なんとか嵐を脱出する事はできましたが、その後何日も漂流した為、お父さんもお母さんも亡くなり、エミリーはたった1人で救出されてオーストラリアに連れて来られたのです。しかしエミリーには行くあてもなく、フランツのお父さんが訪ねる予定だったエリオットさんを訪ね、それ以来エリオットさんの経営する病院で見習い看護婦として働いていたのでした。
 今日からお兄さんとフローネとジャックはメルボルンの学校に通う事になりました。ジャックは学校が始めてだったのですが、なぜかメルクルも一緒に学校に連れて行こうとしています。フローネはジャックを注意しますが、そういうフローネも裸足で学校に行こうとしていたのです。お兄さんは笑いましたが、お兄さんもネクタイを忘れていました。みんなまだまだ無人島生活が抜け切れないようでした。
 エミリーはエリオットさんの病院で見習い看護婦を続けていましたが、正式な看護婦になる為に3年間ロンドンの看護学校で勉強する事になりました。そして3日後にアトランティック号に乗ってイギリスに向かうのです。するとモートンさんもタムタムを引き取りにやってきて、同じアトランティック号の水夫として契約をしたと言うのです。すべては3日後でした。
 お兄さんはエミリーと別れる事を残念に思いましたが、エミリーは3年後には必ず戻ってくると言います。タムタムは半年に1回はオーストラリアに帰ってきます。タムタムは水夫を目指していたので陸でぼやぼやしているわけにはいかなかったのです。そして3日後、モートンさんとタムタム、エミリーはロビンソン一家に別れを告げ、イギリスへと旅立って行くのでした。再会を約束して…
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