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大草原の小さな天使
ブッシュベイビー  ストーリー詳細

第1話 草原で拾った赤ちゃん
 1965年のケニアに12才になるジャックリーヌ・ローズ、通称ジャッキーという名の少女が、お父さんのアーサーとお母さんのペニー、お兄さんのアンドルー、そして家政婦のハワと一緒に暮していました。ジャッキーは学校に通っていましたが、お兄さんは学校を卒業し、4日前からお父さんと同じく野生動物保護官として働き始めていました。でもお父さんと一緒とはいえ、アフリカに生きる動物たちを密猟者の手から守るという慣れない仕事で大変でした。
 ジャッキーが学校に行くと、クラスメイトのドリスがイギリスに帰る事になったとの知らせを聞きました。ケニアは2年前にイギリスから独立して以来、イギリス人がしていた仕事をケニアの人々が代わるようになり、徐々にイギリス人は仕事を失ってイギリスに帰っていたのです。ドリスのお父さんのマックギルも例外ではなく、お父さんはドリスとともにイギリスのマンチェスターに帰っていくのでした。
 アンドルーがお父さんとその部下のテンボと一緒に密猟者がいないか保護地域のパトロールをしていた時、銃声を聞きました。お父さんたちは密猟者がいるに違いないとすぐさま駆けつけましたが、密猟者は既に姿を消しており、撃たれたサイもどこかに逃げ去っていました。手負いになったサイはとても危険なので捕獲の準備をしようとしたその時、突然ブッシュベイビーの大群が通り過ぎて行ったのです。こんな大群が走り去るのはおかしいと言った途端に手負いのサイが襲って来ました。お父さんとお兄さんは木にのぼってサイを避けますが、サイは木をなぎ倒して車に体当たりして去って行きました。ところが倒れた木の下に逃げ遅れたブッシュベイビーの親子がいたのです。ブッシュベイビーのお母さんは木の下敷きになって死んでいましたが、赤ちゃんは無事でした。
 お父さんはブッシュベイビーの赤ちゃんを持ち帰りましたが、ミルクをあげても飲もうとはせず、みるみるうちに弱ってしまいました。お父さんとお兄さんはブッシュベイビーはお母さんのミルク以外は飲まないのだと判断し、このまま弱って死なせるよりも薬で殺そうかと相談します。ところがそれを知ったジャッキーは猛反対し、自分で育てると言ってブッシュベイビーの赤ちゃんを自分で引き取ってしまいます。ジャッキーも、この時ばかりはブッシュベイビーの赤ちゃんを育てるのがどれだけ大変か想像もできませんでした。
第2話 死なないでマーフィ
 次の日からジャッキーの子育てが始まりました。ブッシュベイビーの赤ちゃんにミルクや蜂蜜を舐めさせようとしますが、何をやっても舐めようとはしません。それでもジャッキーはブッシュベイビーの赤ちゃんにマーフィという名前を付けて、とてもかわいがりました。ところがお兄さんは名前を付けるのはまだ早いのではないかと言います。そればかりかお父さんはジャッキーにブッシュベイビーの赤ちゃんを任せたのを後悔しているとさえ言うのです。お父さんもお兄さんもブッシュベイビーの赤ちゃんの命が長くないと考えていたからでした。
 ジャッキーはそれにもめげずに一生懸命マーフィの世話をしました。そして学校に行っている間だけお母さんにマーフィの世話を任せると、学校の図書室で友達のケイトと一緒にブッシュベイビーについて調べました。ブッシュベイビーについての記述はありましたが、ブッシュベイビーの赤ちゃんの育て方までは書いていませんでした。さらに農園を管理しているガヌジアに頼んで、農園で働いている人にブッシュベイビーの赤ちゃんの育て方を知っている人がいないか尋ねてもらいましたが、誰も知っている人はいませんでした。
 ジャッキーはテンボにブッシュベイビーの赤ちゃんの育て方を尋ねました。テンボはアフリカに住む動物について良く知っていたのですが、母親と引き離された赤ちゃんはすぐに死んでしまうと言うのです。しかしテンボはブッシュベイビーの赤ちゃんは母親にしがみついて母親のお乳を飲むと教えてくれました。ジャッキーはさっそく家に帰ると自分の持っていた人形をマーフィの母親代わりにしがみつかせてミルクを与えたのです。ジャッキーの試みは大成功でした。マーフィはおいしそうにミルクを舐めたのです。お母さんはマーフィの為にスポイトを用意し、スポイトでミルクを吸い上げてマーフィに与えるのでした。
第3話 しかけやローズ
 その日の夜、ジャッキーの家に警官がやって来ました。警官の話では溝にタイヤを落としたトラックがいたので近づくと、運転手たちは一目散に逃げてしまい、トラックの荷台から象牙が出てきたと言うのです。翌朝お父さんは象牙を見に警察署まで行きました。象牙はお父さんの管理する保護区で捕られたものではありませんでしたが、お金儲けの為に動物を殺す密猟者をお父さんは許しておく事ができませんでした。
 ジャッキーのクラスメイトのミッキーはジャッキーの気を引こうとジャッキーに意地悪ばかりしており、この日もジャッキーの飼っていたブッシュベイビーがもう死んでしまったと考えて、代わりのペットとしてネズミ取りヘビを持ってきました。ところが学校でヘビがカバンから教室に出てしまいます。担任のノルダム先生はびっくりしてしまい、ミッキーは罰として居残りさせられてしまうのでした。
 お父さんとお兄さんとテンボ、そして村人たちは足をケガしているサイを治療する為、頑丈な檻を作りました。そしてようやくサイを見つけ、テンボがサイをおびき寄せて檻に閉じ込める事に成功しました。しかし獣医のジョーンズ先生はやめてしまい、代わりの先生もなかなか到着しません。待ちくたびれた末にボロ車でやって来たのは女医の獣医であるハンナでした。お兄さんはハンナにすっかり憧れてしまうのでした。
第4話 哺乳ビンをさがせ
 マーフィはすっかり元気になりました。スポイトではミルクを飲ませる量に限界があるのでジャッキーは哺乳瓶でミルクをあげようと考えますが、あいにくジャッキーの家には哺乳瓶がありません。ミッキーの家には哺乳瓶がありそうでしたが、ジャッキーはミッキーに頼みたくなかったので、クラス中の女の子に声をかけますが、誰も持っていません。ジャッキーは下級生のクラスにも声をかけると、1人の少女が哺乳瓶なら家にあると言いますが、その少女はミッキーの妹のサリーでした。ジャッキーは結局ミッキーの家から哺乳瓶を借りる事になりました。
 ハンナは銃で撃たれて傷ついたサイを見事な腕前で手術しました。その仕事ぶりにお父さんは感心し、アンドルーは野生動物保護管になる仕事を捨てて、獣医になろうと考えるほどでした。ちょうどその頃、お父さんとお兄さん、ハンナ、テンボの4人は母親とはぐれて弱っている子像を見つけます。このまま放置していたら子像は死んでしまうので、子像を保護しようと相談しました。
 ミッキーとサリーの持ってきた哺乳瓶で、さっそくマーフィにミルクを飲ませようとするのですが、マーフィは手のひらよりも小さかったので、哺乳瓶の口が大きすぎてマーフィはうまくミルクを飲む事ができません。ジャッキーががっかりしているとお兄さんがやって来て小さなサイズの哺乳瓶を手渡してくれました。お兄さんはハンナから動物用の哺乳瓶をもらったのです。ジャッキーは大喜びでお兄さんからもらった哺乳瓶でジャッキーにミルクを飲ませるのでした。
第5話 傷ついた象
 マーフィはそれからすくすくと育ちます。ブッシュベイビーは夜行性の為、昼間は寝てばかりで夜になると動き回るので、ジャッキーはハンナに相談して昼間起こして夜寝るようにしようと考えます。また動物図鑑にブッシュベイビーは昆虫を食べると書かれていたのでジャッキーはマーフィにバッタを与えますが、マーフィは食べようとはしません。ところがその時ジャッキーが食べていたクッキーを試しに与えると、マーフィはおいしそうにクッキーを食べるのでした。
 母親とはぐれた子象がお父さんとお兄さんに保護され、子像にサンティと名前を付けてかわいがりました。ところがサンティの母親は密猟者に追われて手負いの状態で人里に降り、村人たちにケガをさせてしまったのです。母親の象は見つけしだい殺すしかないとお父さんは言います。お兄さんはサンティがかわいそうでなりませんでした。お父さんたちは母親の象を見つける為にパトロールしていた時、不審なトラックを発見しました。お父さんたちは密猟者たちに違いないと考え、トラックを追跡しますが、それに気付いたトラックはスピードを上げて逃げ出します。お父さんたちの車も追いかけますが、エンジンがオーバーヒートして、これ以上の追跡は不可能となってしまいます。
 ジャッキーはなぜ密猟者が存在するのか不思議でした。お父さんは世の中にはお金の為に象を殺して象牙を取ったり豹を殺して豹の毛皮を取ったりする人がいると説明します。ジャッキーやお兄さんはそういう密猟者が許せないと考えずにはいられませんでした。
 その夜、再び手負いとなった母親の象は村を襲い、家を2〜3件壊して子供と老人を2人死なせてしまいました。お父さんとテンボは銃を持ってすぐに現場に駆けつけ、象の足取りを追っていると、突然象が目の前に現れたのです。象は2人の乗った車に襲いかかりますが、お父さんはとっさに車をバックさせ、何とか逃げ出す事に成功しました。お父さんたちは夜に象を追うのは危険なので、朝まで待つ事にするのでした。
 翌朝、お父さんたちは手に手に銃を持って昨日の現場に向かいました。ところがアリスの家では昨日の夜からお父さんが帰って来ないのです。ちょっと出かけてくると言ったまま朝になっても帰らず、ケイトやケイトのお母さんのライサはとても心配でした。そして授業中、ライサが血相を変えて教室に飛び込んで来て、ケイトを車で連れて行ったのです。ケイトのお父さんは前の晩に手負いとなった母親の象に襲われ瀕死の重傷を負い、ナイロビの病院に運び込まれていたのです。ちょうどその頃、お父さんの銃で母親の象は射殺されました。そしてその夜、ケイトのお父さんも亡くなったとの知らせが入ったのでした。
第6話 マーフィの病気
 ケイトのお父さんのお葬式が行われました。ケイトのお父さんはこのケニアの土の下で永遠の眠りにつきました。ジャッキーはケイトに一言慰めの言葉をかけようとしましたが、その時は何も言えませんでした。ケイトの家はコーヒー園を経営しており、ケイトのお母さん1人では経営が難しいと思われ、ケイト一家はイギリスに帰ってしまうのではないかと噂されました。ジャッキーはケイトと大の親友だったので、ケイトがイギリスに帰る事には反対でした。ケイトはずっと学校を休んでおりジャッキーは心配しますが、翌週にケイトは学校に元気な姿でやって来ました。そしてイギリスからケイトのお母さんの弟にあたるヘンリーおじさんが来てくれる事になったので、イギリスに帰る必要がなくなったと聞きジャッキーは大喜びするのでした。
 その日の朝、マーフィーがミルクを飲みたがりませんでした。学校から帰ってきたジャッキーはマーフィーの様子がおかしい事を知り、獣医のハンナを呼びに行きます。ジャッキーの乗る馬のマンダリンとミッキーの乗るフランス製の自転車と競争しながら事務所まで行きましたが、あいにくハンナはパトロールに同行しており不在でした。お父さんに連絡しておいたおかげで夜になってハンナはジャッキーの家にやって来てマーフィーを診察してくれました。ハンナはマーフィーが肺炎にかかっていると言います。しかもマーフィーはまだ赤ちゃんなので、予断を許さないと言うのです。ジャッキーはマーフィーの事がとても心配になり、その日は早くからマーフィーを抱いて眠りにつきました。そしてハンナは明日の朝もマーフィーを診察する為にジャッキーの家に泊まっていってくれたのでした。
第7話 女性獣医ハンナ
 翌日になってもマーフィーはミルクを飲もうとはしません。マーフィーを診察したハンナは砂糖水を飲ませてみてはと提案しました。砂糖水ならミルクと違って匂いがないからマーフィーも飲むだろうと言うのです。ハンナの提案通りマーフィーは砂糖水をおいしそうに飲みジャッキーも大喜びでした。
 その日、お父さんの事務所に東洋の動物園がダチョウを欲しがっているからつがいで生け捕りにしてほしいとの依頼があり、テンボがそれを引き受けたのをアンドルーとハンナが見に行く事にしました。ハンナはダチョウのように足の早い動物をいったいどうやって捕まえるのか不思議に思っていましたが、車でダチョウを追いかけながらダチョウの首に縄をかけて見事生け捕りに成功するのでした。
 ジャッキーが学校から帰るとマーフィーはミルクを飲むようになっており、ナイロビに帰る途中に立ち寄ってくれたハンナにマーフィーはすっかり良くなったと言われ、ジャッキーはマーフィーの病気を治してくれたハンナにお礼を言って別れるのでした。
第8話 博士の飛行機
 テンボがダチョウを捕まえてから1ヶ月ほど経過しましたが、ダチョウの引き取り手は現れず、事務所の狭い囲いの中に飽きたダチョウは外に逃げ出して大騒ぎになりますが、外を走り回って疲れ切ったダチョウは自分から囲いの中に戻ってしまいます。ダチョウはケニアの大臣が東洋の国の偉いさんと会った時にダチョウを送る約束をしたので生け捕りにしたのですが、ケニア側は東洋の動物園が引き取りに来てくれると思っているのに対し、動物園側はダチョウを送ってくれるものだと思っているので、いつまでたっても事務所に飼われたままだったのです。
 ブッシュベイビーは夜行性の為、夜になると動き回るので、ジャッキーはハンナに言われた通り、マーフィーを昼間寝かさないように外に連れ出す事にしました。ジャッキーがマーフィーを連れてマンダリンに乗って走っていた時、見覚えのある飛行機が飛んで来るのを見ました。そけはクランクショウ博士の飛行機でした。クランクショウ博士は世界的に有名な考古学者で、久しぶりにケニアに戻って来たのです。ジャッキーは嬉しくなってクランクショウ博士の家まで駆けて行きました。クランクショウ博士はジャッキーがブッシュベイビーを飼っているのを見て感心しました。ジャッキーはどうしても博士の乗る飛行機のマザーグース号に乗りたかったのですがマザーグース号は1人乗りだったので、博士に2人乗りに改造してもらうよう頼み、今度マザーグース号に乗せてもらうばかりか、操縦までさせてもらうよう約束を取りつけるのでした。
 ジャッキーは飛行機の操縦をする前に自転車に乗れるようになろうと考え、ミッキーから自転車を借りると自転車に乗る練習を始めました。最初こそ転んでいましたが、ジャッキーは何とか今日1日で自転車に乗れるようになったのです。自転車に乗る練習中にマザーグース号が飛び去って行きました。発掘中のナジャム遺跡で古い人骨や武器が大量に発掘され、クランクショウ博士は慌ただしく出かけて行ったのでした。
第9話 真夜中のお散歩
 マーフィを飼い始めたジャッキーは、悩み事が1つありました。それはブッシュベイビーが夜行性の為、夜中になるとはしゃぎ回り、ジャッキーを寝不足にさせた事でした。ある夜、マーフィに起こされたジャッキーは窓の外が明るいのに気付きます。パジャマのままジャッキーが窓から外に出ると外は満月でとても明るかったのです。外はとても寒かったのでジャッキーはすぐに部屋に戻ってしまいました。ところがジャッキーは窓をしっかり閉めていなかったのです。
 朝になりジャッキーは目覚めますが、マーフィはどこにもいませんでした。窓が開いていた事に気付き、すぐに外を探しに出かけますがマーフィは見当たりません。ジャッキーが髪を振り乱してマーフィを探していると、ヘンリーという名のおじさんがマーフィを見つけてくれました。ヘンリーはケイトの叔父にあたり、昨日ここに来たばかりで、この土地に慣れようと散歩していた時にマーフィーを見つけたのでした。
 お父さんは1週間泊まりで野生動物保護区の東側をパトロールに出かける事になりました。お兄さんは今回連れて行ってもらえなかったので、お父さんがいない間に事務所で飼われているダチョウに乗ろうと考え、ジャッキーとケイトとミッキーはヘンリーの車で事務所までその様子を見に行く事にしました。途中ヘンリーは寄り道して野生動物保護区を見に行きます。大自然の雄大さにヘンリーたちが感動していると、ジャッキーは茂みの中に光る何かを発見しました。それは修理屋のムーアという男が双眼鏡で野生動物保護区を見ていたのでした。
第10話 修理屋ダン・ムーア
 アンドルーはダチョウに乗りましたが途中で振り落とされ背中を強く打ってしまい、翌日になっても痛みは消えず、保護管の仕事をお休みする事にしました。その日、修理屋のムーアがジャッキーの家の井戸のポンプを修理に来ました。そしてムーアはお父さんが野生動物保護区のどこをパトロールに行ったのか何気ないように聞こうとしますが、お兄さんもそれは知りませんでした。学校から帰ってきたジャッキーはムーアを見かけると、昨日、保護区の外れで見たと言いますが、ムーアは焦ったように人違いだと言います。そのうちにヘンリーもやって来て同じ事を言いますが、ムーアは人違いだと言い張り慌てて帰っていくのでした。野生動物保護区のサバンナを走る自動車は珍しいものではありません。しかしジャッキーはなぜか心に引っかかるものを感じていました。
 1週間後、ダチョウは引き取られ、代わりにお父さんが帰って来ました。しかし帰って来た直後に保護区の西側で象が密猟者に襲われ、何頭もの象が殺されたと野生動物保護管の助手のアワンから連絡が入ったのです。お父さんとお兄さん、テンボ、アワの4人でさっそく調べに行くのでした。
第11話 探偵団結成!
 お父さんたちが調べに行くと象は7頭も殺されていました。野生動物保護官だけでなく警察まで捜査に加わりましたが密猟者の手がかりさえありませんでした。お父さんは心の底から密猟者を憎みました。しかも今回の密猟者は1人や2人ではなく組織的で、事前にお父さんの行動まで知っていたのです。ジャッキーには思い当たる節がありました。確かに保護区の外れでムーアを見たのに、ムーアは知らないと言い張るのです。ミッキーやケイトもそれを見ましたが、ムーアに間違いなと言います。ジャッキーは、もしやましい事がないなら嘘をつく必要性がなく、ムーアが密猟者の仲間だからこそ嘘をついたのだと考えました。そこでジャッキーはムーアが怪しいとお父さんに相談しますが、お父さんはジャッキーの思い違いだと言い、確かな証拠もなし人を疑ってはいけないと怒りだしてしまうのでした。ジャッキーはお父さんに厳しく叱られたので、ムーアを疑うのをやめようと思いました。でもジャッキーの心の中にあるムーアへの疑いはなかなか消えませんでした。お兄さんもまだムーアへの疑いを解いていないようでした。
 密猟者のパトロールを強化しようとしていた矢先に、お父さんのもとに警察官がやって来ました。ボンダ警部はテンボがお父さんの行動を密猟者に報告していると匿名の電話があったと言ってテンボを取り調べすると言うのです。しかしお父さんはテンボがそんな事をする男ではないと言いますが、ボンダ警部はテンボを銃で脅して警察署に連行して行きました。ジャッキーとケイト、ミッキーの3人は探偵団を結成しました。ムーアの行動を監視し、密猟者とつながりがある事を証明しようと考えたのです。
第12話 ハッカアメと密猟者
 ジャッキーたちの探偵団は活動を開始しました。まずモーリスさんの店に行って聞き込みをしますが、ジャッキーたちはハッカアメを買うだけでモーリスさんからうまく聞き出す事ができず、ジャッキーたちは探偵の難しさを実感します。そこでジャッキーたちはヘンリーを探偵団に誘い、さらに修理を装おってムーアにミッキーの家に来てもらおうと考えたのです。
 テンボが警察署から帰って来ないので、お父さんは警察署まで迎えに行く事にしました。ところが警察署ではテンボに会わせないばかりか、テンボにひどい仕打ちをして自白させようとしていたのです。
 その日、ローズ家に遺跡から戻って来たクランクショウ博士が食事に招かれていました。マーフィーがあまりに飛び跳ねるのでジャッキーがマーフィーをポケットに押し込んでおいたところ、マーフィーはポケットに入れていたハッカアメを食べて酔っぱらったようになって、とうとう眠ってしまうのでした。クランクショウ博士とローズ家の家族は楽しそうに食事をしていると、そこへお父さんとテンボが帰って来ました。テンボは警察署で手荒く扱われたらしく体中ケガをしています。クランクショウ博士はケガの治療も心得ていたので、テンボの傷を治療しました。みんな警察への不信感を抱かずにはいられませんでした。
 翌日、テンボは体中にケガをしているのに仕事に出ようとするので、みんなでテンボに休みなさいと言いますが、テンボは絶対に休まないと言い張ったので、誰もテンボをとめる事はできず、結局テンボは仕事に出てしまうのでした。
第13話 探偵団プラス1
 ジャッキーたちの探偵団はムーアを誘き寄せる作戦をとります。それはミッキーの家の電化製品をムーアに修理に来てもらうというものでした。しかし、あいにくミッキーの家には壊れた電化製品がなく、ミッキーは正常に動いている扇風機をわざと壊してムーアに修理してもらおうとしますが、壊そうとしているところをミッキーのお母さんに見つかりそうになってしまい、作戦は失敗してしまいました。ジャッキーたちの探偵団は、今度はヘンリーを仲間に加えようと考えました。ヘンリーはケニアに来たばかりでムーアの事をよく知りませんでしたが、ムーアがあまりにムキになって否定するので怪しいと感じていたのです。ヘンリーはジャッキーたちに熱心に口説かれ、とうとう探偵団に加わる事にしました。しかしヘンリーは自分がいない時に子供たちだけで探偵の活動をする事を禁じ、その代わりに今度の日曜日にリフトバレーに出かける事にしました。以前、ジャッキーが保護区でヘンリーを見かけた時、ヘンリーの車はクランクショウ博士の家の方に向かっていましたが、その先にある人家といえばクランクショウ博士の家しかなく、ジャッキーは怪しいと感じていたのです。そしてヘンリーの向かっていた先にリフトバレーがあったので、リフトバレーに何かあるかも知れないと思ったのでした。
 クランクショウ博士は飛行機で上空から密猟者らしきトラックとステーションワゴンを発見しました。密猟者たちはすぐにリフトバレーへと続く森に入ってしまったので見失いますが、普通のトラックがそんな道を走るはずがなく、お父さんたちは森に密猟者たちのアジトがあるに違いないと思うのでした。
 昨日マーフィーはハッカアメを食べて寝てしまったので、マーフィーの夜行性を直す為に、ハッカアメを食べさせる事を思いつき、実践してみると今日もマーフィーは酔っぱらったように眠ってしまいました。ブッシュベイビーはハッカアメが睡眠薬のような作用をする。ジャッキーはマーフィーについて、また1つ発見をしたのです。
第14話 ヒヒの襲撃
 テンボはケガをしているのに無理して働いた為、途中で熱を出してしまい、翌日から高熱を出して苦しみました。3日間仕事を休みましたがハワの看病の甲斐あってテンボは元気になりました。ハワはテンボの事が好きだったので、一生懸命看病したのです。それを知ったジャッキーは2人が仲良くなればいいのにと思います。そしてテンボはハーモニカを取り出すと“聖者が町へやって来る”を演奏するのでした。
 警察は密猟者たちがお父さんの行動を事前に知っていた事に関心を示しました。内通者がいるのではないかと考えてテンボを取り調べましたが、どうやらテンボは無実だとわかり、今度は保護管の無線機を盗聴しているのではないかと言います。お兄さんはムーアの車に大きな無線機を積んでいると言いますが、お父さんは相手にしませんでした。しかし、子供たちがいない時、お父さんは状況証拠から、もしかしたらムーアが密猟者の仲間ではないかと考えはじめます。でも、お父さんはムーアがそんな事をする男ではない事をよく知っており、何かの間違いであってほしいと思わずにはいられないのでした。
 日曜日の礼拝が終わった後、ジャッキーはミッキーとケイトとケイトの叔父であるヘンリーさんの4人でリフトバレーにピクニックに出かける事にしました。しかしピクニックというのは表向きで、本当は密猟者を探しに出かけるのです。それを知ったお兄さんはリフトバレーの手前の森には密猟者が隠れているらしいと教えてくれました。クランクショウ博士の飛行機から密猟者のトラックがリフトバレーにいるのを発見しており、警察もそのあたりを探していると言うのでした。
 4人はクランクショウ博士から情報を得ようと、クランクショウ博士の家を訪ねて事情を説明すると、クランクショウ博士も探偵団に参加してくれる事になりました。5人でヘンリーの車に乗ってリフトバレーへ続く森に入りますが、クランクショウ博士は上空から見たトラックの場所が、どこだかわからなくなり、車を降りて確認しようとしました。その時ヒヒの群れが襲って来たのです。ヒヒはマーフィーを狙っていました。しかしジャッキーたちは素早く車に乗り込むと、車に取りついたヒヒを振り落とし、何とか森を抜け出るのでした。
 ジャッキーはアフリカの大自然にはマーフィーにとって天敵がたくさん存在する事を改めて知りました。マーフィーはジャッキーにかわいがられて育てられているので、天敵から逃れるすべを知らないのです。ジャッキーは自分がマーフィーを守らなければならないと思うのでした。
第15話 ふしぎな木バオバブ
 探偵団の5人でリフトバレーに行きますが、密猟者のトラックを目撃したクランクショウ博士は上空から見ただけで、しかもサバンナの景色はどこも似たようなものだったので、トラックがどのあたりを走っていたのか、なかなかわかりません。クランクショウ博士は目印となる岩場を見つけますが、その先には何もなく、何も収穫がないままあきらめて帰る途中、大きなバオバブの木をみつけました。バオバブの木は中が空洞になっており、マーフィがそこに迷い込んでしまいます。マーフィを呼び戻す為にジャッキーも中に入って行ってマーフィを捕まえるのでした。
 結局、密猟者は見つからないままジャッキーは家に帰って来ました。ところがお父さんはお兄さんから探偵団の事を聞いており、しかもジャッキーは無断でお父さんの双眼鏡を持ち出していた事から、ジャッキーはお父さんから叱られ、探偵団などやめなさいと言われてしまいます。しかしジャッキーは探偵団をやめるつもりなどまったくありませんでした。
 ジャッキーはピクニックに行った時に方位磁石を落とした事に気付きました。落としたとすればバオバブの木の中で落としたに違いないと思ったのです。明日探しに行こう。恐ろしい事が待ち受けているとは知らずに、ジャッキーはそう決心したのでした。
第16話 秘密のほらあな
 ジャッキーたちはムーアが密猟団の仲間だと思っていました。翌日、ジャッキーとケイトとミッキーの3人は学校の帰りに教会でムーアの車を見つけます。ムーアは教会の扇風機が壊れたので修理に来ていたのです。ムーアの車には大きな無線機が積まれており、いかにも怪しそうな雰囲気でした。ジャッキーたちは牧師さんにムーアが何をしている人なのか尋ねようとしましたが、いきなりムーアの事を聞くと怪しまれるので、どうしようかと悩んでいるうちに聞きそびれてしまうのでした。
 ジャッキーは昨日落とした方位磁石を拾いに1人で馬のマンダリンに乗って再びリフトバレーまで出かける事にしました。途中でクランクショウ博士に出会いますが、クランクショウ博士は昨日のバオバブの木の中に密猟者が象牙を隠しているのではないかと考え、自分も一緒について行くと言います。しかしクランクショウ博士の車は助手のタマラが食料の買い出しに使っており、クランクショウ博士のとめるのも聞かずにジャッキーは1人でバオバブの木まで行ってしまいます。
 リフトバレーに着いたジャッキーはさっそくバオバブの中を調べ始めました。方位磁石は入り口に落ちていましたが、ジャッキーはバオバブの木の奥を調べてみると、そこには象牙が隠されていたのです。その時、外で車の止まる音がしました。何とムーアがやって来たのです。ジャッキーは慌てて隠れようとしましたが、外にはマンダリンが繋いであったのでジャッキーが来ている事は一目瞭然です。すぐにジャッキーは見つかってしまい、銃で脅されてバオバブの木から引きずり出されてしまいました。
 ジャッキーは以前からムーアが密猟者の仲間ではないかと疑っていたと言います。ムーアはジャッキーの首根っこをつかむと、お父さんも自分の事を疑っているのかどうか問い詰めました。お父さんはジャッキーの忠告にもかかわらず、ムーアさんはとってもいい人で、むやみに人を疑ってはいけないと言っていたとジャッキーが答えると、ムーアは急に自分のやっていた事が間違っていた事に気づきました。お父さんの行動を密猟者に報告し罪もない象を何頭も殺していた事が愚かな事に思えたのです。ムーアはジャッキーを解放して自分も密猟者とかかわるのをやめようと決心しました。するとそこへ密猟者の仲間がトラックでやって来るのが見えたのです。ムーアはジャッキーをマンダリンに乗せると慌てて逃がしました。他の密猟者たちにジャッキーが見つかると、ジャッキーが何をされるかわからなかったからです。
第17話 密猟団現わる
 ジャッキーはマンダリンを必死に操って逃げましたが密猟者たちに見つかってしまい、すぐにバオバブの木まで連れ戻されてしまいました。密猟者たちはジャッキーが象牙の事を知っているのに、なぜムーアがジャッキーを逃がそうとしたのかをムーアに問い詰めます。そして密猟者たちはムーアが密猟から足を洗い、警察か保護官に連絡するつもりだったと結論付けました。密猟者たちはムーアだけでなくジャッキーまで監禁しようとしますが、ムーアは逆に、銃を密猟者たちに向けるとジャッキーと一緒に逃げようと試みます。しかしムーアの乗ってきたトラックは、なぜかエンジンがかかりませんでした。
 そこへクランクショウ博士がようやく車をタマラから奪い返してやって来ました。クランクショウ博士には事態が理解できませんでしたが、ジャッキーに説得されクランクショウ博士は乗って来た車にジャッキーとムーアを乗せると、慌てて車を発進させました。しかし密猟者たちもトラックで追いかけて来たのです。密猟者たちのトラックの方が大型でスピードも速く、ジャッキーたちはすぐに追いつかれてしまいました。ムーアの銃には弾が入っていなかったので、ジャッキーたちは晩のおかずの野菜を投げて応戦しますが、密猟者たちはクランクショウ博士の車に発砲し、とうとうクランクショウ博士の車はスピンして止まってしまいました。
 ジャッキーたち3人は密猟者たちの正体を知ってしまった為、銃で殺されそうになります。しかしその時、お父さんたちとボンダ警部がトラックに乗ってやって来たのです。警察もバオバブの木に象牙を隠してあるという情報を得ていたので、これからお父さんと一緒にリフトバレーに向かうところでした。密猟者たちは慌てて逃げ出し、事態を知ったお父さんたちと警部は密猟者たちを追いかけました。しかし密猟者たちのトラックは大変スピードが早く、密猟者たちに逃げられてしまいました。そしてその日、ムーアは警察に自首するのでした。
第18話 チョッキ騒動
 ジャッキーが宿題をしているとマーフィーが邪魔をするので、ジャッキーは気晴らしにマーフィーを連れてモーリスさんのお店にハッカアメを買いに行きました。ところがお店の中でマーフィーは飛び跳ね回り、店の売り物をめちゃめちゃにしてしまいます。お父さんとお母さんはすぐにモーリスさんに謝りに行き、ジャッキーは事の重大さに落ち込んでしまいました。そしてお父さんは二度とこのような事が起こらないように、マーフィーを外に出す時はマーフィーに紐を付けるように言いつけます。ジャッキーはマーフィーに紐を付ける事には反対でしたが、お父さんに説得され紐を付ける事に同意せざるを得ませんでした。しかし犬のように首に紐を付けると首を締める恐れがあったので、マーフィーにチョッキを着せ、そのチョッキに紐を付ける事にしました。
 翌日からジャッキーはマーフィーの寸法を計り、型紙を作って山羊の一枚革を使って、とうとう1週間後にマーフィーのチョッキを作り上げたのです。ジャッキーはマーフィーにチョッキを慣れさせる為、どこに行くにもマーフィーにチョッキを着せました。ジャッキーがマーフィーを連れてマンダリンを走らせていた時、クランクショウ博士の飛行機マザーグース号が飛び立とうとしているのが見えました。ジャッキーはマーフィーをマンダリンにつないだままクランクショウ博士と話をしますが、その隙にマーフィーはチョッキが脱げてしまいマザーグース号に乗り込んでしまいました。そうとは知らないクランクショウ博士はマザーグース号に乗って飛び立ちますが、離陸直後にマーフィーが操縦席の中を飛び跳ね、驚いたクランクショウ博士はマザーグース号をふらつかせながら戻ってくるのでした。ジャッキーはマーフィーがすぐに大きくなると考え、チョッキを大きめに作っていたので、チョッキが脱げてしまったのです。でもジャッキーは自分よりも先にマーフィーがマザーグース号に乗った事を悔しく思うのでした。
第19話 運命の始まり
 サバンナは雨期に入り、1ヶ月も雨が降り続きました。お父さんは野生動物保護局の部長に呼び出されてナイロビに向かいました。部長は最近、白人の保護官を2人ばかりやめさせており、今回の密猟の事態を重く見た部長がお父さんもやめさせるのではないかと噂が立っていたのです。テンボはお父さんが保護管の仕事をやめるのではないかと心配しますが、お父さんは保護管の仕事をやめるつもりなど、これっぽっちもありませんでした。
 その日、ようやく雨があがりジャッキーはお兄さんと一緒にマーフィーの食べるバッタを探しに出かけますが、川が増水して地盤が柔らかくなっておりジャッキーは濁流に飲み込まれてしまったのです。そのジャッキーを助けてくれたのは、お父さんに逢いに来ていたロバート少佐でした。ロバート少佐はお父さんの家に来る途中、ナイロビに行くお父さんの車とすれ違いますが、どうせ夜になれば帰ってくると考えて、そのままお父さんの家に来ていたのです。ロバート少佐はロイヤルアフリカライフル部隊の隊長で、テンボの元上官でもありました。
 夜遅くお父さんが帰って来ました。お父さんは3ヶ月後に野生動物保護官の仕事をやめなければならなくなりました。ケニアでは重要な仕事をすべてイギリス人が引き受けていましたが、独立後、徐々に現地の人々に重要な仕事を譲り渡していたのです。お父さんはケニアを離れてイギリスに帰ろうと決心しました。しかしジャッキーはケニアを離れる事には反対でした。ジャッキーはケニアが大好きだったし、何よりジャッキーにとってケニアは故郷だったからです。
第20話 霧のキリマンジャロ
 ジャッキーはイギリスに行ってしまう事をケイトたちになかなか言い出せませんでした。そしてイギリスに帰るのが1ヵ月後に迫ったある日、ジャッキーは意を決してイギリスに帰る事をケイトとミッキーに話したのです。ケイトは泣きながらジャッキーに抱きついて別れを悲しみました。ミッキーもジャッキーの事が好きだったので、とても悲しく思うのでした。ジャッキーはマーフィも一緒にイギリスに連れて帰ろうと考えました。しかしブッシュベイビーを国外に持ち出すには国外持出許可証が必要になります。ジャッキーはお父さんに頼んで国外持出許可証を取ってもらう事にしました。
 ローズ家ではアフリカを離れる記念にアフリカで一番高いキリマンジャロに登る事にしました。頂上まで行く事はできませんが、普段は雲の上に隠れて見えない頂上の見える所まで登るのです。ジャッキーはこれがアフリカでの最後の想い出になるのかと思うと複雑な心境でしたが、気を取り直して楽しい想い出にしようと決心しました。キリマンジャロへの旅の間、マーフィをミッキーに預け、ローズ家の家族とテンボの5人でキリマンジャロへ出かけます。キリマンジャロに行くには国境を越えてタンザニアに行かなければなりません。しかし、国が変わっても景色は全然変わりませんでした。
 明るいうちに登山口のホテルに到着し、登山は明日にして今日は買い物です。ジャッキーが市場を歩いていると、なんと密猟者たちを見つけてしまったのです。ジャッキーは物陰に隠れてやり過ごすと、テンボとお父さんに連絡して密猟者たちを尾行しました。ジャッキーは途中で密猟者たちに見つかってしまいますが、密猟者たちは逃げようとはしません。なぜならここはタンザニアであり、ケニアでの密猟の罪で捕まえる事ができないのです。お父さんとテンボは初めて見る密猟者たちの顔をしっかりと目に焼きつけるだけで、それ以上は何もできませんでした。
 翌日、ジャッキーとお兄さんとテンボは先に登山を開始しました。登山口は標高2000メートルにあり、今日泊まる予定の山小屋は標高3000メートルにあるので、今日1日で1000メートル登ればいいのです。山を甘く見ていたジャッキーは1000メートルくらい簡単だと考えて先に一人でどんどん歩きますが途中でバテてしまい、結局みんなから遅れて取り残されてしまいます。ジャッキーにはテンボが付き添いましたが、もう少しで山小屋というところで霧が出てきてしまい、まわりはまったく見えなくなってしまいました。それでもジャッキーとテンボは山小屋目指して歩き続けますが、いくら登っても山小屋は見つかりません。ソのうちに霧が晴れると、目指す山小屋は遥か下にあり、キリマンジャロの頂上が目の前に見えたのです。ジャッキーたちは登りすぎていました。ジャッキーたちは無駄足を踏んでしまいましたが、ジャッキーにとってそれは嬉しい事でした。そしてジャッキーたちは山小屋へと下っていくのでした。
第21話 さようならケイト
 イギリス行きが目前に迫っているのにマーフィの国外持出許可証はなかなか発行されません。ジャッキーは国外持出許可証が発行されなければマーフィを野生に帰そうと考えていたのですが、マーフィは大好きな昆虫も自分で取る事すらできないのです。しかし出発の5日前になって、ようやく国外持出許可証が発行されジャッキーは大喜びするのでした。
 ロバート少佐はリピンゴに住んでおり、お父さんもロバート少佐の家の近所に別荘を持っていたので、ロバート少佐を時々食事に招いたりして、家族的な付き合いをしていました。お父さんはイギリスに帰ったらリピンゴの別荘は必要なくなるので、別荘をクランクショウ博士に使ってもらう事にしました。クランクショウ博士は大喜びでお父さんの提案を受けるのでした。ジャッキーは馬のマンダリンをケイトに譲る事にしました。ケイトの叔父のヘンリーが乗馬の練習をしますがうまく乗れません。それでもジャッキーはマンダリンとの別れを悲しみ、涙を浮かべなからもマンダリンを置いたままケイトの家をあとにするのでした。
 ジャッキーはマーフィーを寒いイギリスに連れていく事がマーフィーにとって幸せな事なのか考えました。本当はマーフィーを野生に帰したかったのですが、自分で餌を取る事すらできないマーフィーを野生に帰すなどできない事でした。もしマーフィーの国外持出許可証が発行されなければマーフィーをミッキーに預けるつもりでおり、ミッキーもマーフィーが自分のものになると思い込んでいました。イギリスに旅立つ2日前にミッキーがやって来ました。ミッキーはこれから別荘に行く事になったので最後のお別れを言いに来たのです。ミッキーはマーフィがたいそう気に入っており、できる事ならマーフィをイギリスに持って帰らずに自分で世話したいと考えていました。しかしジャッキーが国外持出許可証を見せた事により、その夢ははかなく消えてしまいました。ところがミッキーはマーフィを自分のものにする為にジャッキーが少し席を外した隙に国外持出許可証を隠してしまったのです。しかしその事にジャッキーは少しも気付きませんでした。
 ジャッキーはアフリカでの生活のすべてを胸の中にきざみ込んでおこうと考えました。そしていよいよ旅立ちの日、ローズ家の家族は車でナイロビに向かいますが、車は荷物でいっぱいだったのでジャッキーだけはクランクショウ博士の飛行機マザーグース号でナイロビに向かう事になりました。クランクショウ博士はジャッキーを飛行機に乗せる事を約束しており、この日の為にクランクショウ博士はマザーグース号を2人乗りに改造していたのです。ジャッキーは初めて乗る飛行機に大喜びでした。空から眺めるアフリカの大地は感動的でジャッキーは空から見えるアフリカの景色を楽しみました。クランクショウ博士は自然を満喫する為にエンジンをとめ、グライダーのように飛行したり鉄橋の下を潜り抜けたりして楽しみます。飛行機がナイロビの空港に着いた時にはジャッキーは感激でいっぱいでした。
 空港にはタマラが迎えに来ており、ジャッキーとクランクショウ博士は車でナイロビの駅に向かいました。ナイロビの駅で家族と合流し、夕方5時発の汽車で500キロ離れた港町モンバサに向かうのです。ナイロビの駅にはケイトの家族やハンナが見送りに来ていました。ジャッキーたちはみんなに別れを告げ、汽車はナイロビの駅を出発しました。汽車は明日の朝にモンバサに到着し明日の夕方には船でアフリカをたつのです。モンバサまではテンボが送っていってくれる事になりました。
第22話 無くなった許可証
 お兄さんはカメレオンのベンを飼っていましたが、ケニアから持ち出すのをあきらめ、途中のどこかで放してやる事にしました。お兄さんはベンをイギリスに持って帰るよりケニアの自然に返してやった方がベンの為になると考えたのです。汽車がヌディの給水所で石炭と水を補給する為に停止した時にジャッキーとお兄さんは汽車を降り、近くの茂みにベンを放してやりました。ベンはさっそくにもハエを捕食します。ベンは自分で餌を取る事ができたので、ここでも生きていけそうでした。お兄さんはベンに別れを告げると汽車に乗り込むのでした。
 汽車がモンバサの駅に着きました。ところがそこで偶然にもムーアに出会ったのです。ムーアは警察に自首した後、国外追放処分を受け、これから南アフリカに旅立つところだったのです。ムーアはお父さんに密猟者たちがこのモンバサの港から偽の輸出許可証を使って象牙やサイの角を輸出していると言うのです。ムーアは警察ではその事を喋りませんでしたが、お父さんの顔を見た途端に喋る気になったのです。
 お父さんは困ってしまいました。このまま警察に駆け込むと、警察はお父さんの予定など気にせずに事情を聞きたがります。しかしお父さんたちは今夜にはイギリスに向かう船の上にいるのです。そこでお父さんは警察に手紙を書き、その手紙をテンボにポストに入れてもらう事にしたのでした。
 船の出港時間までにはまだまだ時間がありましたが、ローズ一家は先に船に乗り込む事にしました。ジャッキーは涙を流してテンボに別れを告げます。そうしてローズ一家はソロ号に乗り込みました。受付でブッシュベイビーを持ち込んでいる事を言いましたが、受付の人はお父さんが野生動物保護官という事を知っていたので、国外持出許可証を見せる事なく顔パスで通してくれました。
 船室に入ったジャッキーはボーイの少年から船長が大の動物嫌いで、その昔、船員の飼っていたブッシュベイビーをマダガスカル島に捨てさせたという話を聞いてびっくりしました。ボーイは国外持出許可証があれば問題ないと言ってくれたので、ジャッキーは一安心しましたが、急に国外持出許可証があるかどうか不安になり、慌ててカバンの中を調べてみました。ところが肝心の国外持出許可証はどこにもなかったのです。
第23話 防止場の大事件
 ジャッキーは焦りました。このまま国外持出許可証を持っているふりをし続けるべきか、お父さんに相談しようと考えました。ところがお父さんは船長と話をしており、船長は明日、国外持出許可証を見せてもらうと言うのです。ジャッキーは国外持出許可証がなければマーフィを国外に持ち出せないと考え、マーフィとはこのモンバサで別れる決心をしました。
 ジャッキーは誰にも気付かれないようにこっそりと船室を出ると、船員からソロ号は出港が遅れていて、あと2時間はかかると聞いてソロ号を降りました。ジャッキーはテンボにマーフィを預けるのが一番いいと考えていたのですが、港を探してもテンボの姿はありませんでした。そこでジャッキーは公園にマーフィを放す事にしました。ジャッキーはマーフィにさよならを言ってその場を離れますが、マーフィはいつまでもジャッキーの後をついて来ます。ジャッキーは悲しみを振りほどくように走り続けました。そして、だいぶ走った頃、とうとうマーフィの姿も見えなくなります。ジャッキーは走るのをやめると、歩きながらマーフィの名を叫び、泣き続けました。するとマーフィがジャッキーのもとに戻って来たのです。ジャッキーは泣きながらマーフィを抱きしめるのでした。
 ジャッキーは困ってしまいました。出港まであと1時間に迫っているのにマーフィはジャッキーのもとを離れないのです。ジャッキーは船長にお願いしてマーフィを船に乗せてもらうようにお願いしようと考えました。するとそこへテンボが慌てた様子で走って来たのです。テンボは密猟者たちに追われていました。ジャッキーとテンボは密猟者から逃げる為に走り続け、密猟者たちは拳銃を発砲しますが、ジャッキーたちはようやく逃げ切る事ができました。ジャッキーたちは追いかけて来た密猟者たちを知っていました。それはジャッキーを殺そうとし、キリマンジャロの麓で出合ったあの密猟者たちだったのです。
 テンボが密猟者たちに追われていた経緯は、テンボがローズ一家と別れた後、町に手紙を出しに行きましたが、そこでキリマンジャロの麓で見た密猟者たちを見かけたのです。テンボは密猟者たちに気付かれないように尾行し、密猟者たちは港の倉庫に入っていきました。テンボはムーアの言っていたように、この港から象牙が密輸されているに違いないと考え、倉庫を張り込む事にしました。2時間ほど張り込むと、密猟者たちは食事にでも出かけるのか倉庫から外に出て行きました。テンボはどうしても倉庫の中が見たくなり、倉庫の扉を開けようとしましたが、扉には鍵がかかっておりどうしても開ける事はできませんでした。そこで扉を蹴破ろうと試みたところ、扉が開いて中から密猟者の仲間が出て来たのです。テンボはその男と格闘になりましたが、なんとかテンボが勝利しました。テンボは仲間の男をロープで縛ると倉庫の中を調べ始めました。倉庫の中はテンボが予想した通り密猟者たちの秘密の倉庫となっており、中には象牙や国外持出を禁じられている保護動物がたくさんいたのです。そればかりか、その倉庫で偽の輸出許可証が作られていたのです。テンボが証拠品として偽の輸出許可証を押収したその時、倉庫に密猟者たちが戻って来ました。テンボは密猟者たちに一撃を加えると、倉庫から外に逃げだしたのですが、追いかけられてこの公園に逃げ込んだというわけだったのです。
 テンボの説明を一通り聞いたところで、今度はテンボがなぜジャッキーがここにいるのかを尋ねました。その時、初めてジャッキーは船の出港が30分後に迫っていた事に気付いたのです。ジャッキーとテンボは慌てて港に戻ろうとしました。港まではここから走って15分もあれば着くはずだからと、ジャッキーは少し安心していたのですが、その時船の汽笛が聞こえてきたのです。それはソロ号の出港を合図する汽笛でした。ソロ号の出港は30分ばかり早まり、ジャッキーとテンボが港に着いた時にはソロ号は出港した後でした。ジャッキーは家族に何も知らせないまま1人、アフリカの大地に取り残されてしまったのです。これからいったいどうすればいいのか、ジャッキーはしばらく呆然と立ち尽くしていました。
第24話 アフリカひとりぼっち
 ジャッキーは船に乗り遅れた事を両親に伝える為、電報を打とうと郵便局に向かいましたが、もう郵便局は閉まっていました。モンバサの町には密猟者がいるので、ジャッキーとテンボは、ここからそれほど離れていないヴィピンゴーの別荘に泊まる事にしました。ヴィピンゴーの別荘はクランクショウ博士に使ってもらう事にしていたのですが、ヴィピンゴーの別荘の隣にはロバート少佐が住んでいたので、相談に乗ってもらおうと考えたのです。バスに乗ってヴィピンゴーの別荘に向かったジャッキーとテンボはロバート少佐の家を訪れました。しかし夜遅かったせいもあって電気がすべて消えており、もう寝てしまったと考えてジャッキーたちもロバート少佐には声をかけずにそのまま別荘に向いました。
 ジャッキーはテンボがせっかく密猟者たちから偽の輸出許可証を押さえたのに警察に届けないのか不思議に思って尋ねました。テンボは過去に自分が密猟者と警察に勘違いされてひどい目にあっていたので、警察をまったく信用していなかったのです。テンボは密猟者の情報をヌディに住んでいる知り合いの野生動物保護官に知らせて、そこからナイロビのそばのテンボの故郷に帰ろうと考えていました。それを聞いたジャッキーは自分も一緒に連れて行ってほしいとお願いします。ジャッキーはマーフィを野生に帰そうと考えており、テンボとの旅の間にマーフィを野生に帰す訓練をしようと考えたのです。しかしテンボはヌディまで、密猟者に見つからないように普通の道を通らず、サバンナを3日歩いて行くつもりでおり、そんな厳しい過酷な環境にジャッキーを連れ出す事には反対でした。
 一方ソロ号では出港してかなりの時間が経過してからジャッキーがいない事に気付きました。お父さんやお兄さんは船の中を探し回りましたがジャッキーの姿はどこにも見えません。お父さんはジャッキーが船を降りてモンバサに取り残されているのではないかと考え、税関に連絡を取るように船長にお願いしましたが夜遅かった為、税関には連絡がとれませんでした。
第25話 テンボに逮捕状!?
 ヴィピンゴーの別荘で一夜を明かしたジャッキーとテンボは、朝一番にロバート少佐の家を訪ねました。しかしロバート少佐はどこにもいません。サンゴ礁に船が見えたので、海に釣りに出かけたのではないかと思い、ジャッキーは水着に着替えるとサンゴ礁まで泳いでいきましたが、船は朽ち果てておりロバート少佐はどこにもいませんでした。ロバート少佐の家に戻ったジャッキーは玄関の所に手紙を見つけます。その手紙には2〜3週間ナイロビへ行くと書かれていました。
 その頃、ソロ号ではようやく港の港湾事務所と連絡が取れました。港湾事務所から入った連絡によると、白人の少女がアフリカ人の男と港から出ていくのが目撃されており誘拐の可能性があるというのです。お父さんやお兄さんはアフリカ人というのがテンボではないかと考えましたが、もしテンボなら、とっくに船に連絡を入れているはずだと考えずにはいられませんでした。そして天候が悪化していたこともありソロ号はモンバサに戻る事になりました。
 テンボは船に連絡を取ろうと、ジャッキーと一緒にヴィピンゴーの郵便局へ向かいました。ところが郵便局の前には大勢の人が集まっており、アフリカ人の男が金髪の白人少女を誘拐したので見つけしだい捕まえてほしいと警察官が演説していたのです。ジャッキーもテンボもびっくりしてしまいました。ジャッキーは自分が名乗り出て誘拐されたのではない事を説明しようとしますが、テンボにとめられてしまいます。テンボは警察が信じられず、ジャッキーがいくら説明しても無駄だと考えていたのです。そして演説している警察官の前に1台の車が止まりました。そして中から密猟者たちが降りてきたのです。密猟者たちは警察をたぶらかし、テンボを捕まえようと企んでいたのです。それを知った2人は電報を打つ事ができなかったばかりか、密猟者たちだけでなく、警察からも逃げなければならなくなった事を悟るのでした。
 ジャッキーとテンボは逃げる途中で偶然にもミッキーに出会いました。ミッキーはヴィピンゴーの別荘に来ていたのです。しかしミッキーの別荘にも電話はなく、両親も2〜3日留守にしており、船に連絡する事はできませんでした。意を決してテンボはジャッキーを連れてヌディまでサバンナを旅する事にしました。ジャッキーの足では5〜6日はかかるでしょう。でも密猟者や警察の目から逃れる為にはそれしか方法がなかったのです。ところがそれを知ったミッキーも自分も一緒にサバンナを旅すると言ってピクニック気分で一緒についてくるのです。こうしてジャッキーとテンボ、ミッキーの3人のサバンナの旅が始まるのでした。
第26話 マーフィの災難
 別荘にはケニアの古い地図があり、ジャッキーはそれを持っていく事にしました。地図を見たテンボは、昔アラビアの商人たちが使った道が川沿いにヌディ近くまであったので、少し遠まわりになりますが安全の為にその道を使おうと考えます。そして川の河口にお父さんのカヌーがあると聞いてカヌーで川をさかのぼる事にしました。
 ジャッキーとテンボとミッキーはサバンナへの旅を前に別荘で一晩明かしました。ところが朝起きるとマーフィーがいません。マーフィーは屋根に開いていた穴から外に逃げ出してしまったのです。ジャッキーたちはマーフィーを探しましたが、どこを探してもマーフィーは見つかりません。しかしテンボがハーモニカを吹くと音楽好きなマーフィーはすぐに戻ってくるのでした。
 ジャッキーたちは川をさかのぼる為に河口のカヌーの所に行きました。ところがジャッキーがカヌーを探していた時、沿岸警備隊の船が近づいて来たのです。テンボは素早く隠れましたが、ジャッキーとミッキーは隠れるのが間に合わず、2人は観光客のふりをして船をやり過ごします。ジャッキーたちは沿岸警備隊までもが自分たちを探している事を知って、事態の重大さを知るのでした。
 ジャッキーは銛で川魚を捕ろうとカヌーをとめて川に潜りました。ところがその間にマーフィが川に落ちてしまい、マーフィを助けようとして川に飛び込んだテンボも溺れてしまったのです。テンボは泳げないのに夢中で飛び込んでしまい、マーフィーの所まではたどり着きますが、カヌーに戻れず川に沈んでしまいました。ジャッキーは泳ぎが得意だったので、すぐにマーフィとテンボをカヌーに助けあげるのでした。
第27話 追う人、追われる人
 ジャッキーたちはパドルを漕ぎ続け、カヌーで川をさかのぼります。ワニの大群の横を通り抜けた時、マーフィが騒いだ為、ワニが2匹追いかけてきました。ジャッキーたちはカヌーを漕いで逃げようとしますが追いつかれてしまい、ジャッキーの発案で釣ったばかりの魚をワニに投げ与えて、その間に逃げるのでした。
 その頃、密猟者たちはヴィピンゴーでジャッキーたちを見たという情報をもとに、別荘に来ていました。密猟者たちはテンボにアジトの場所を知られ、偽の輸出許可証の証拠を奪われていたので、どうしてもテンボを捕まえる必要があったのです。別荘には誰かが使った形跡があり、しかも地面にジャッキーたちのこれから行動予定の地図が書かれていました。地図には川をさかのぼる事が記されており、密猟者たちもジャッキーたちの後を追いかけるのでした。
 お父さんたちはようやくモンバサに戻ると、警察に行きこれまでの状況を聞きます。警部はジャッキーがアフリカ人の男に誘拐されたと言いますが、お父さんたちには信じられませんでした。しかしこの事件を知った大臣が独立したばかりのケニアのイメージダウンにつながるからと、警察ばかりか沿岸警備隊や軍隊まで動員して犯人逮捕に乗り出したのです。お父さんたちは犯人がジャッキーを連れてヴィピンゴーまでバスに乗ったという情報をもとに、ヴィピンゴーの別荘を訪れました。別荘は誰かが使った形跡があり、そればかりかジャッキーが船に乗った時の服が置かれていたのです。ジャッキーがここに来たことは明らかでした。そしてお母さんは東アフリカの地図がなくなっている事に気付きました。ジャッキーが持ち出したのです。しかし何の為にジャッキーが地図を持ち出したのかまったく見当がつきませんでした。
 ジャッキーたちが川をさかのぼっているとヘリコプターの音が近づいて来ました。ジャッキーたちはカヌーを茂みに隠してヘリコプターをやり過ごしますが、なぜ軍隊までもが自分たちを探しているのか理解できません。しかしテンボは見つかったらただでは済まないと思わずにはいられませんでした。それからジャッキーたちはカヌーに帆をあげて快調に進みます。やがて風がやみ、再びパドルを漕いでいると、カバの群れの中に飛び込んでしまったのです。ジャッキーたちは何とかカバの群れから抜け出す事ができましたが、これから先どんな予期せぬ事が待っているのだろうと思うと、ちょっぴり不安になるのでした。
第28話 密林の象たち
 密猟者たちはモーターボートに乗ってジャッキーたちを追って川の上流へ進みます。お父さんたちもジャッキーを探して河口までやって来ました。ところがお父さんのカヌーがなくなっているのです。警部はジャッキーを誘拐した犯人がカヌーを盗んで逃げたのではないかと言いますが、お父さんの考えは違いました。もしジャッキーが本当に誘拐されたとしたら、お父さんのカヌーを盗まなくても、周りにもっと立派なカヌーがいくつもあったので、それを盗むはずだと考えていました。だからお父さんはジャッキーが進んで男について行ったのだと言います。その男がテンボだという事もお父さんにはわかっていましたが、テンボがなぜお父さんに連絡も入れずにジャッキーを連れているのかは、お父さんにもまったくわかりませんでした。その時、密猟者たちの乗ったモーターボートがお父さんの前を通り過ぎていきました。お父さんはモーターボートに乗っていた人が、見た事のある人だと気付きますが今はそれどころではなく、そのまま立ち去ってしまうのでした。
 ジャッキーたちは川の上流にやってきました。川底が浅くなってきたのでそろそろカヌーでの旅もおしまいです。でも、ヌディはまだまだ先でした。その時ジャッキーたちは象の大群に遭遇しました。野生の象は狂暴である事をテンボは知っていたので、ジャッキーたちはカヌー置いて川岸に上がり、象をやり過ごす事にしました。ジャッキーたちは走って木の上に逃げ、象も追いかけてきましたが、何とか逃げ切る事に成功しました。しかし象の大群が去った後カヌーに戻ると、カヌーは象たちに襲われめちゃめちゃに壊され、カヌーに積んであった食料も象に踏まれてほとんどダメになってしまいました。カヌーのそばにワランガ族の水袋が置いてありました。ワランガ族は象を狩る為にこの近くまで来ていたのです。テンボは水袋を失敬すると歩いて旅を再開しはじめました。しかし水袋が持ち去られるのをワランガ族が見ていたのです。
 ロバート少佐がナイロビから戻ってきました。ところが家の周りは警官がいっぱいで、ジャッキーがいなくなった事を知りました。ロバート少佐とお父さんたちは相談しました。その時、お父さんはモーターボートに乗っていた人が、以前キリマンジャロの麓で見かけた密猟者だと思い出したのです。そしてお父さんはジャッキーやテンボが密猟者に追われて川の上流へカヌーで逃げていき、その後を密猟者たちが追いかけ、テンボは野生動物保護管のドナルト・ゴートレットを頼ってヌディに行こうとしている事を悟ったのです。お父さんとお兄さん、そしてロバート少佐のジャッキーを追う旅が始まるのでした。
第29話 野生をとりもどせ!!
 ジャッキーたちの徒歩でのサバンナの旅が始まりました。夕方になりテンボは今夜の寝床を見つけます。ジャッキーはカマキリを見つけるとマーフィーに捕らせようと考えました。ジャッキーはこのサバンナの旅の間にマーフィーに自分で餌を捕れるように訓練し、アフリカの自然に帰そうと考えていたのです。しかしマーフィーはカマキリが羽を広げただけで驚きのあまり逃げ惑い、とても自分で餌を捕れるようになるとは思えませんでした。その後、ジャッキーは何度もマーフィーに自分で餌を捕るように訓練しますが、いずれも失敗します。ジャッキーはマーフィーが自分で餌を捕れるようになるまでは食事を与えないでいようと決心し、その日マーフィーは何も食べる事ができませんでした。
 ケイトの家では家族全員で心配そうにラジオを聞き入っていました。ラジオからはジャッキーの誘拐のニュースが流れていたのです。そこへクランクショウ博士がやって来ました。クランクショウ博士もジャッキーの事が心配だったので、ケイトにマザーグース号でジャッキーを探す事を約束します。そしてお父さんたちも夜遅くまでカヌーを漕ぎ続けて、少しでもジャッキーたちに近づこうとするのでした。
 夜中、見張りで起きていたテンボはワランガ族の男がこちらをうかがっている気配を感じました。その夜は何も起きませんでしたが、朝になり象が近づいてきたので、ジャッキーたちは朝食も食べずに出発します。マーフィーは昨日から何も食べておらず、とてもお腹がすいた様子でした。
 ジャッキーたちが暑さに苦しみながらサバンナを旅していると、突然ヘリコプターの音が聞こえてきました。ジャッキーたちは慌てて茂みに隠れましたが、マーフィだけは隠れようとせず、ヘリコプターの乗員に見つかってしまいます。マーフィはカマキリを見つけ、自分でカマキリを捕まえようとしていたのです。マーフィは意を決してカマキリに飛びかかると、とうとうカマキリを捕まえました。マーフィにとって始めて自分で餌を捕まえる事ができたのです。それを見ていたヘリコプターの乗員は安心したかのように飛び去ってしまいました。ジャッキーたちはマーフィが自分で餌を取ることができた事にとても喜ぶのでした。
 ヘリコプターが飛び去った後、今度は飛行機の音が聞こえてきました。ジャッキーたちは再び茂みに隠れますが、ジャッキーはそのエンジン音に聞き覚えがありました。それはクランクショウ博士のマザーグース号だったのです。クランクショウ博士はジャッキーを探しにモンバサへ向かうところでした。ジャッキーたちは慌てて茂みから飛び出しましたがクランクショウ博士に発見される事なく、マザーグース号は飛び去ってしまうのでした。
第30話 サバンナのおきて
 ジャッキーたちのサバンナの旅は続きます。ジャッキーたちはワランガ族の男に、ずっと後をつけられており、ジャッキーたちもそれに気付いていましたが、攻撃してくる気配はなかったので、そのまま歩き続ける事にしました。ヌディまであと40キロほどになりましたが、日中は暑くてあまり歩く事ができず、ヌディまであと3〜4日はかかりそうです。手持ちの食料が少なくなってきましたが、野生の果物が豊富にあったので食料には不自由しませんでした。
 その頃お母さんはモンバサの警察に呼び出され、警察署の中でミッキーのお母さんのメアリーに出合いました。話を聞くとミッキーまで行方不明になっていると言うのです。ミッキーは友達とピクニックをしながら自宅の方に帰るから心配するなと置き手紙を残していました。それを知ったお母さんは友達というのがジャッキーで、ジャッキーとテンボとミッキーの3人でサバンナを旅していると悟ったのです。それでも警部は相変わらずテンボがジャッキーとミッキーを誘拐したと思い込んでいました。
 密猟者たちもジャッキーたちの後を追って旅をしていました。ところが密猟者たちはワランガ族の集団に取り囲まれてしまったのです。密猟者たちはワランガ族のリーダーにアフリカ人と白人の子供の2人連れを見かけなかったかと尋ねると、アフリカ人と白人の子供2人の3人連れが歩いていったと教えてくれました。しかもワランガ族は3人が自分たちの水袋を盗んだので3人を殺せと言うのです。やはりジャッキーたちはワランガ族にうらまれていたのでした。
 ジャッキーたちは水の湧き出ている場所にやって来ました。しかしそこは動物たちも訪れる場所でした。ジャッキーたちが様子をうかがっているとライオンが現れたのです。ジャッキーたちは慌てて茂みの中に隠れますが、ライオンは人間の匂いに気付いてこちらにやって来ました。ジャッキーたちは危うくライオンに襲われるところでしたが、その時、象の群れが水飲み場にやって来て、ライオンは渋々退散していきます。しかし象の群れもジャッキーたちにとっては危険で、夜になっても象たちは水飲み場を離れようとはせず、とうとう茂みの中で夜を明かすのでした。
第31話 毒矢とハーモニカ
 ジャッキーはマーフィーに昆虫を捕らせようとしますが、すぐにミッキーが甘やかしてマーフィーに餌をあげるので、ジャッキーは少々おかんむりです。しばらく歩くと煙が見えてきました。それはマサイ族の行う野焼きの火でした。マサイ族は雨季の直前に野原に火を放ち、雨になると牧草の種をまけばよく育つ事を知っていたのです。そして煙の先にキリマンジャロの頂きが見えてきました。キリマンジャロを目指して歩けば、その途中に目的地ヌディがあるのです。そう考えると3人は力が沸いてくるのでした。
 3人が日差しを避けて木陰で休憩しているとマーフィが飛び回り、それをミッキーが1人で追いかけていました。するとばったりとワランガ族の男に鉢合わせしたのです。ミッキーはびっくりして逃げ出してしますが、ワランガ族の男もびっくりして弓を放ってしまい、矢はミッキーの腕をかすめ、ミッキーは逃げる途中で崖から転げ落ち、足をケガしてしまいます。ワランガ族の男はそのまま逃げてしまいましたが、ミッキーは歩けなくなってしまいました。
 ジャッキーとテンボはミッキーの手当てをしました。足が痛くて歩けないこと以外には大したケガはなさそうでした。テンボはワランガ族の男が放った矢に毒が塗っていないかを調べに出かけました。ジャッキーとミッキーがテンボの帰りを待っていると、何と密猟者たちがジャッキーたちを発見したのです。ジャッキーたちは密猟者たちに捕らえられてしまいました。密猟者たちはテンボが奪った偽の輸出許可証を奪い返しに来たのです。テンボが戻って来た時、テンボは密猟者たちを見つけました。テンボは密猟者の1人のジョンに襲いかかり、銃を奪って逃走します。取り残されたジャッキーとミッキー、そして2人の密猟者は心細い気持ちで夜を迎えました。そして夜になって、どこからともなくハーモニカの音が聞こえてきたのです。それはまぎれもなくテンボのハーモニカの音でした。テンボは闇の中に隠れて自分がそばにいる事をハーモニカを使って知らせ、それを聞いたジャッキーたちは心強く感じるのでした。
第32話 やさしい戦士・テンボ
 夜中、ジャッキーはテンボに会おうと考え、トイレと言って茂みに入っていこうとしました。ところが密猟者のもう1人のマイケルはジャッキーの企みを見抜いていました。しかしマイケルはジャッキーにテンボへの伝言を頼んだのです。事務所から持ち出した書類を返せば子供たちを解放すると… ジャッキーはミッキーを残したまま茂みに入っていき、テンボにその事を伝えました。しかしテンボはサバンナの地では例え1人対2人でも絶対に負けない自信があり、密猟者たちの要求を拒否する事にしました。ジャッキーが密猟者のもとに戻ってきた時、ジャッキーは野犬に襲われそうになります。マイケルは銃で野犬を撃とうとしますが狙いがうまく定まらず、野犬がジャッキーに飛び掛かったその時、別の方角から銃声が聞こえ野犬は1発で仕留められました。それはテンボが撃ったものでした。
 翌日、ミッキーはケガの為に熱を出してしまいます。密猟者はミッキーの処置に困り、早くミッキーをテンボに引き渡そうと考えますが、いつまで待ってもテンボは現れませんでした。その頃テンボはクランクショウ博士のマザーグース号が飛んでいるのを発見し、クランクショウ博士と合流していたのです。
 密猟者たちはテンボを待ち切れなくなり、ジャッキーたちを置いてヌディへ先回りしようとしたその時にテンボが現れ、林の中に走って行ったのです。マイケルはテンボを追いかけて林の中に入って行きました。ところが残ったジョンにクランクショウ博士が銃を突きつけてジャッキーたちを解放したのです。そしてテンボは追いかけていたマイケルを巻いてジャッキーのもとに駆けつけてきました。ジャッキーたちは密猟者から逃げ切る事ができたのです。でもヌディへの旅は、まだまだ困難が続きそうでした。
第33話 炎に向かって走れ!
 クランクショウ博士はマザーグース号で全員を連れて帰ろうとしますが、マザーグース号は2人乗りの為、最初に足をケガしているミッキーが乗る事になりました。ミッキーの足の具合は悪く、熱もいっこうに下がらなかったのです。そしてテンボはクランクショウ博士に密猟者たちの偽の輸出許可証を託します。その頃テンボたちが向かおうとしているヌディの方向のサバンナはマサイ族の野焼きの炎が広がっていました。いつもなら雨期にさしかかる頃なので火は消えてしまうのですが、今年はなぜか雨が降らず炎は燃え広がるばかりで、ジャッキーたちの近くまで迫っていたのです。クランクショウ博士は風向きが変わらなければマザーグース号で往復するくらいの時間は大丈夫だと言い残して飛び立って行きました。
 その頃、お父さんとお兄さん、そしてロバート少佐はジャッキーを探してすぐそばまで来ていました。お兄さんはクランクショウ博士のマザーグース号の音を聞きました。そして続いて男の悲鳴が聞こえたのです。駆けつけると密猟者が野犬に襲われていました。お父さんとお兄さんは野犬を追い払うと密猟者を捕まえます。密猟者はジャッキーとテンボを追いかけていたジョンでした。お父さんたちは足手まといになるのでジョンをその場に置いていこうとしますが、ジョンは食料も水も何も持っていなかったので、お父さんたちと一緒に同行する事にしました。
 ジャッキーたちは炎を避けてサバンナを歩き続けますが、風向きが頻繁に変わり、とちらに逃げていいかわからなくなります。そして炎は飛び火し、ジャッキーたちは完全に炎に取り囲まれてしまいました。あたりには煙が立ち込め息もできないほどでした。
 お父さんたちは密猟者からジャッキーとテンボが近くにいる事を知り、サバンナを探し始めました。そして小高い丘の上から探そうと丘に登った時に見たものは、あたり一面火の海のサバンナだったのです。お父さんたちはテンボが一緒についているのだから、ジャッキーはきっと安全な所にいるはずだと祈るのでした。
 ジャッキーたちは完全に炎に取り囲まれ逃げ場所を失ってしまいました。テンボは最後の手段として炎の中を走り抜けようとします。サバンナが燃える時は炎の幅は比較的狭いはずなので、その中を走りぬけようと考えたのです。ジャッキーは恐がりましたがテンボに説得され一緒に走り抜ける事にします。2人で水袋の水をかぶると2人一緒に炎に飛び込んで行きました。テンボの予想した通り、炎の幅は10メートルほどしかなく、幸いにも2人とも大したケガもなく炎を通り抜ける事ができました。しかしあたりは煙が立ち込めて前が見えず、どっちに逃げれば良いのかまったくわかりませんでした。
 テンボは煙のすき間から岩山を見つけました。岩山なら炎は来ないので岩山目指して2人は走り始めたのです。しかし岩山の麓で行く手を藪に阻まれてしまいました。テンボはタンガを振るって道を切り開こうとしますが、炎の迫るスピードの方がはるかに早く、とうとうジャッキーは煙にまかれて意識を失ってしまいました。
第34話 マサイ族の小屋
 テンボが必死で道を切り開いていると子象が煙にまかれて避難してきました。テンボは子象を脅かし、怯えた子象は藪の中に逃げ込み、自ら道を切り開いて行ったのです。テンボはジャッキーを抱えて子象の尻尾につかまると、そのまま藪を突破することに成功しました。
 ジャッキーは気が付くと岩山の岩陰で寝ていました。炎は岩山のふもとまで来ていましたが、ここまでは来そうにありません。他の動物たちもたくさん岩山に避難していました。ジャッキーたちは岩山の頂上目指して歩き始めます。避難していた動物たちも頂上へ登り始めました。頂上から見たサバンナはあたり一面火の海でひどいありさまでした。しかし煙の間からかすかに見える空模様は、そろそろ雨が降り出しそうになっていたのです。雨期が到来するとサバンナの火は消えますが、今度は洪水で前に進めなくなってしまいます。
 ジャッキーとテンボは炎と藪の中を突破して来たので、すり傷と火傷、そして体中泥だらけでした。しかしそんな事を気にしている暇はありません。テンボは岩山の周りを調査する為、ジャッキーを頂上に残したまま1人で出かけました。ジャッキーが木陰で休んでいるとマーフィは木の根から虫を探し出し食べ始めたのです。ジャッキーはマーフィが自分で餌を見つけて食べることができるようになった事に大変喜びました。しかし、いずれマーフィを野生に帰す為に別れる時の事を考えると涙が溢れてくるのでした。
 テンボは岩山の南側に小屋を見つけてきました。ジャッキーたちがその小屋に行くと、そこはマサイ族の使っていた小屋のようで、ロバがつながれていました。しかしマサイ族の姿はどこにも見えません。ジャッキーたちはその小屋を一晩借りる事にしました。炎から逃れる事のできたジャッキーたちは一安心するとお腹がすいてきたので、狩りをする事にしました。岩山には同じように炎を逃れてきた動物たちでいっぱいで、獲物には不自由しませんでした。やがて夜になって雷と共に豪雨が訪れました。雨期がやって来たのです。サバンナの火が消えればヌディはすぐそこです。でもマーフィとの別れが近づいたと思うとジャッキーは思わず涙を流してしまうのでした。
 朝になってジャッキーが目を覚ますと、雨はあがっておりサバンナの火も消えていました。テンボはどこかに出かけたようで小屋にはジャッキー1人でした。すると突然、マサイ族の男が小屋に入って来たのです。マサイ族の男は手に血の付いた槍を持っており、怯えたジャッキーはタンガを構えました。見張りをしていたはずのテンボはおらず、ジャッキーはテンボがマサイ族の戦士に殺されてしまったのではないかと脅えてしまうのでした。
第35話 ジャッキー倒れる
 マサイ族の男はジャッキーを襲う様子はありませんでした。マサイ族の男はアトマニという名前で家畜を襲っていた野犬を槍で殺してきたばかりだったのです。この小屋はアトマニの家でアトマニはロバを探していました。その時テンボが小屋に帰ってきてロバは豹に襲われたと言います。テンボは小屋の水を使わせてもらった為、川まで水を汲みに行ってそこでロバの死骸を見つけたのです。
 テンボはアトマニに小屋を使わせてもらったお礼にお金を払おうとしますが、アトマニはお金ではなく逃げた家畜を集めるのを手伝ってほしいと言います。しかしテンボはヌディへの道を急いでいたので断ろうとしますが、その時突然ジャッキーが倒れてしまいました。ジャッキーはこれまでの度重なる疲労の為に高い熱を出したのです。テンボはジャッキーをアトマニの小屋のベッドに寝かせると、クランクショウ博士のマザーグース号でジャッキーを運ぼうと、クランクショウ博士と別れた場所まで行く事にしました。小屋にいてはクランクショウ博士に発見してもらえないからです。しかしジャッキーは高い熱を出しており誰かが看病する必要があります。アトマニは逃げた家畜を探しに行くので看病できませんが、アトマニの妹のサフィナが逃げた家畜を連れて帰って来たのでジャッキーの世話はサフィナに任せる事にしました。
 ジャッキーはマーフィに昆虫を食べさせようと思い、マーフィを野原に連れて行ってもらえるようにサフィナにお願いします。サフィナはマーフィを野原に連れて行きますがマーフィは昆虫を取るのに夢中でどこかに行ってしまいました。サフィナはあたりを探し回りましたが見つからず、マーフィがどこかに逃げたと言って小屋に戻って来ました。しかし、そこにはすでにマーフィが戻って来ていたのです。サフィナはそれからジャッキーの看病を続けました。サフィナは白人の世話などした事もなかったのですが、サフィナとジャッキーはすっかりと仲良しになりました。
 お父さんたちはジャッキーを求めて焼け野原となったサバンナを探し回りました。そこへケニア軍のヘリコプターが飛んで来て、お父さんたちのそばに着陸します。中にはベニング大尉が乗っておりクランクショウ博士の代わりにジャッキーを探していました。クランクショウ博士はミッキーをナイロビ空港まで運んだ後、再度離陸しようとしましたがエンジンの不調で飛び立てなかったのです。ヘリコプターは燃料不足でこれから基地に帰ると言うのでお父さんたちは密猟者のジョンを引き取ってもらう事にしました。そしてジョンの証人としてロバート少佐も一緒にヘリコプターに乗り込みます。こうしてサバンナにはお父さんとお兄さんだけが残されて、ジャッキーとテンボを探し続けるのでした。
 テンボはマザーグース号を待ち続けましたが、マザーグース号はやって来ません。テンボがジャッキーの様子を見る為に小屋に戻って来た時、アトマニが慌てて駆け込んで来ました。アトマニは近くに豹が出没したので家畜を集めるのを手伝ってほしいとテンボに言います。テンボもすぐに家畜集めを手伝う事にしました。サフィナも水を汲みに出かけ、ジャッキー1人でベッドに横になっていた時、豹が小屋の中に入ってきてジャッキーに牙を向けたのです。
第36話 ヒョウと二人の戦士
 豹はジャッキーのすぐそばまで近づいてきました。そして脅えて小屋の中を逃げ惑うマーフィーを追いはじめたのです。そこへテンボとアトマニが戻ってきたので豹は逃げ去ってしまいました。しかし小屋の裏に豹に襲われた家畜の牛の死体があり、アトマニとテンボは豹を退治する為、出かけていきました。
 サフィナの看病の甲斐あってジャッキーの熱は下がり、すっかりと元気になっていました。小屋に残ったサフィナはカンバ族のテンボと白人のジャッキーが一緒に旅をしている事が不思議でなりませんでした。ケニアでは部族間ですら交流を持たないのです。ジャッキーはマサイ族のアトマニとカンバ族のテンボが友だちになっていると言いました。サフィナもジャッキーもケニアの部族が仲良くすればいいのにと思わずにはいられませんでした。その夜もジャッキーとテンボは小屋に泊まり、明日ヌディに向かって出発する事になりました。ジャッキーとテンボが小屋に寝てアトマニとサフィナが家畜の見張りの為、小屋の外で寝るのてす。しかし夜中に豹が再び家畜を狙っていました。
 朝になりジャッキーは銃声で目覚めました。テンボは出発前にアトマニと一緒に朝早くから豹を追いかけて出かけていたのです。サフィナは家畜の見張りで小屋に残っていました。ジャッキーはサフィナから牛の乳を分けてもらっているとアトマニ1人が帰って来ました。アトマニは家畜の世話が残っているので豹を仕留めるのはテンボ1人に任せて帰って来たと言いますが、本当は豹が恐かったのです。ジャッキーはテンボが心配でしたが、アトマニやサフィナと一緒に牧場まで家畜たちを連れて行く事にしました。
 テンボが足をくじいているとアトマニから聞いたジャッキーはテンボを助けに行こうとします。アトマニはジャッキーを引き止めましたが、ジャッキーはテンボのいる場所を聞き出すとそのままテンボの所に出かけてしまいました。アトマニは家畜の世話を続けようとしますが、その様子を見ていたサフィナから豹が恐いから助けに行かないんだと言われ、アトマニもジャッキーの後を追ってテンボを助けに行く事にしました。
 アトマニはジャッキーに追いつき、ジャッキーにここで待っているように言って森の中に入っていきます。ところがジャッキーの待っていた場所のそばに豹が潜んでいたのです。豹を見つけたジャッキーは恐怖のあまりに動けなくなってしまいました。ジャッキーの悲鳴を聞きつけたテンボとアトマニが駆け寄ろうとしたその時、豹がジャッキーに飛びかかり、すぐさまテンボは銃で豹を撃ちました。弾は豹に当たり豹は一度は倒れましたが、すぐさま起き上がって再びジャッキーに襲いかかります。テンボは再び銃を撃とうとしますが次弾をうまく装填できません。ところがその光景をただ震えながら見ていたアトマニが勇気を振り絞って槍を構えて猛然と豹に立ち向かったのです。見事に豹はアトマニの槍に仕留められて息絶えました。ジャッキーはマサイ族の勇者に深くお礼を述べて小屋に戻るのでした。
 テンボが足を痛めていたので、この日もジャッキーとテンボは小屋に泊まらなければなりませんでした。そして夜になって恐れていた雨が降りはじめました。雨季になるとこのあたりは一面水びたしとなり移動する事さえできなくなってしまうのです。
第37話 雨の日の思い出
 ジャッキーとテンボは小屋に泊まりました。しかし雨期が到来したようで次の日になっても雨はやむ気配はありません。ヌディまであと10キロ程の距離でしたが、テンボは足を痛めており洪水の道を歩けないのです。ヌディよりもこの小屋のある岩山の方が高い場所にあり、線路が土手の役目をしていたので、テンボたちは筏を使って線路まで行き、線路伝いに歩いてヌディまで行こうと考えました。ちょうどアトマニが小舟を持っていたので、その小舟で線路まで行く事にしました。しかし、小舟はとても小さくて、おまけに舟底に穴が開いていたので、泳げないテンボはとても心配です。今日はまだ水かさが浅かったので、もう1日待って明日出発する事にしました。
 アトマニは牛に草を食べさせる為に出かけますが、テンボとジャッキーとサフィナはその日1日、何もする事がなく、ジャッキーとサフィナは仲良く話し続けました。サフィナにとってイギリスの女の子と友達になった事がとても嬉しかったのです。
 翌日ジャッキーとテンボは雨の中を出発する事にしました。辺りは洪水とぬかるみで、しかもテンボは足を痛めていたので、普段なら1日歩けばヌディまで着くはずでしたが、何日かかるかわからないような状態でした。
 途中までアトマニとサフィナに送ってもらい、洪水になっている箇所からは小舟で行く事になりました。サフィナとのお別れの時、ジャッキーはお世話になったお礼に自分のハンカチを贈りました。そして2人は抱き合って涙を流して別れを惜しみます。たった4日の滞在でしたが2人は大の仲良しになっていたのでした。アトマニとサフィナに別れを告げると2人は小舟でヌディを目指しました。
 小舟はとても小さく、2人が乗るとスペースはいっぱいになってしまいます。また水が激しく漏っていたので小舟の中はいつも水びたしでした。そして洪水の流に身を任せて進んでいると突然小舟はワニに襲われます。危うくジャッキーはワニの餌になるところでしたが、間一髪テンボが銃の引き金を引いた為、ワニは水の中に沈んでいきました。
 ようやく線路が見えてきました。ここからは線路伝いに歩いていけばヌディはすぐそこです。ところが線路に近づくにしたがい川の流れが早くなっていくのです。よく見ると線路の走っている堤防が決壊し、そこから水が溢れ出していたのです。ジャッキーとテンボは必死で流れから逃れようとしますが無駄でした。テンボとジャッキーは意を決すると荷物を捨て、小舟が決壊した堤防を通り過ぎる瞬間に堤防に飛び移ったのです。その直後、堤防はさらに大きく決壊し、テンボとジャッキーは命からがら堤防の上にはい上がるのでした。
第38話 列車が流される!?
 テンボとジャッキーはヌディ目指して土手の線路の上を歩き続けます。2〜3キロ歩いてようやくヌディの駅に到着しました。駅舎には誰もいないように見えましたが、密猟者の残り1人のマイケルがテンボを待ち伏せしていたのです。銃を突きつけられてテンボとジャッキーは再び囚われの身となってしまいました。マイケルはテンボから偽の輸出許可証を奪い取ろうとしますが、偽の輸出許可証はクランクショウ博士に預けてありました。マイケルはテンボを脅してロープでジャッキーを縛らせると、テンボに増水している川に飛び込むように命令します。こんな大雨で氾濫している川に飛び込んだら死んでしまうとテンボは反論しましたが、マイケルはテンボのおかげでひどい目にあったのだから、罰としてそれくらいの事はしてもらうと言って聞きません。テンボはマイケルと一緒に、ロープで縛られているジャッキーを残して駅舎から外に出て行こうとしました。ところがその時マーフィがマイケルの顔に飛びつき、マイケルが怯んだ隙にテンボは銃を払い落としたのです。2人はそれから格闘を続けましたが、後からやって来たヌディの駅長のギデオンさんと協力してマイケルを取り押さえてしまいました。
 テンボは自分が誘拐犯人として捕まえられるのではないかと心配していましたが、ヌディの駅舎には昨日お父さんとお兄さんがジャッキーを探して一泊しており、ギデオンさんは何もかも知っていたのです。ジャッキーはお母さんに電話で連絡をとろうとしますが、あいにく電話は今朝から大雨で不通になっており、ギデオンさんは駅の無線機でヌディの駅の南も北も堤防が決壊して完全に孤立したとモンバサの駅に連絡しました。そして誘拐されたと言われていたジャッキーを保護した事と、殺人未遂の犯人を捕らえた事も連絡しました。ところが連絡がうまく伝わらなかったのか、ラジオのニュースを聞いていると、ナイロビからヌディに向けて列車が出発したと報道していたのです。ギデオンさんは慌てて無線機でモンバサの駅を呼び出しましたが、その時停電が発生し無線機は使えなくなってしまいました。
 ギデオンさんとテンボ、ジャッキーの3人はロープで縛ったマイケルを残してヌディ駅からナイロビ方向、すなわちジャッキーたちが先程、遭遇した堤防の決壊場所に向かいました。何としても列車を止めないと列車は決壊した堤防から濁流の渦巻く川に落ちてしまうのです。ギデオンさんは線路の上を走れるように改造したランド・ローバーを用意しました。ところが決壊場所に到着したので止まろうとしてブレーキを踏んでもブレーキはまったく効かないのです。車は線路を脱線して砂利の上を走り、堤防の切れている直前で何とか止まりました。
 堤防の決壊場所までやって来ましたが、列車は反対側からやって来るので誰かが反対側に渡らなければなりません。決壊場所の上を給水パイプが通っていましたが、嵐の為にパイプは曲り、人の重みには耐えられそうにありませんでした。ところが反対側に人影が見えたのです。よく見るとそれはお父さんとお兄さんだったのです。ジャッキーは2人に向かって叫び続けましたが、豪雨と濁流の為にその声はお父さんたちには聞こえませんでした。
第39話 駆けぬけろマーフィ
 テンボたちが車のヘッドライトを点滅させたおかげで、どうやらお父さんたちもジャッキーたちに気付いたようでした。お父さんたちも探し続けていたジャッキーが無事な姿で見られた事で涙を流して喜びました。しかしジャッキーたちとお父さんたちの間の堤防は決壊し、お互いの所に行く事すらできないのです。ジャッキーはナイロビからの列車を止めなければならない事を伝えようとしますが、どうしても伝える事はできません。ジャッキーは給水パイプを伝って反対側に行こうと鉄塔に登りましたがテンボに止められてしまいます。しかしテンボはマーフィを使って反対側に手紙を送る事を考えつきました。さっそくギデオンさんは手紙を書いてマーフィの背中にくくりつけ、再びジャッキーとテンボは鉄塔に登ってマーフィを送りだしました。反対側ではその事にお兄さんが気付き、給水パイプの反対側で待っているとマーフィがやって来ました。駅長からの手紙にはナイロビから列車がやって来るので列車を止めてなければならない事と、手紙が届いたら銃を2発撃ってほしいと書かれていました。お父さんは空に向けて銃を2発発射し、その音を聞いたテンボたちは安心するのでした。
 手紙を受け取ったお父さんたちは困っていました。列車がヌディに着くのは夜の7時頃ですが、その時間に列車をとめるには発煙筒がいるのです、しかしお父さんたちは発煙筒を持っていませんでした。そこでその旨を手紙に書いて再びマーフィーの背中にくくりつけて送り出しました。ところが途中で鉄塔が傾き、給水パイプの継ぎ目が広がってマーフィーが渡れなくなってしまったのです。反対側で待っていたテンボはその事に気付くと、マーフィーの大好きなハーモニカをパイプに向かって演奏し、マーフィーは勇気を振り絞ってパイプの広がった継ぎ目を飛び越えてジャッキーのもとに戻ってくるのでした。
 ギデオンさんは発煙筒を持っていましたが、お父さんたちに渡す手段がありません。そこでギデオンさんは釣り糸をマーフィーにくくりつけてお父さんたちのもとに再びマーフィーを送り出し、釣り糸を手繰り寄せて発煙筒を渡す事にしました。釣り糸は駅舎にしかなかったので、ギデオンさんが駅舎に戻りますが、駅舎に残したはずのマイケルの姿はありませんでした。ギデオンさんは釣り糸を持って決壊現場に戻り、マーフィーの背中にくくりつけてマーフィーを送り出します。マーフィーはナイロンの釣り糸を引っ張ってお父さんとお兄さんの待ち受ける対岸へ向かいました。今にも崩れそうな鉄塔と迫りくる列車を前に、ジャッキーたちはただ見守るしかありませんでした。
第40話 マーフィのさようなら
 マーフィーは給水パイプの中を進み、パイプの継ぎ目の所まで来ましたが、継ぎ目が広がっていてマーフィーは脅えて渡れません。お兄さんは給水パイプに向かって必死でマーフィーを呼び、それに勇気づけられたマーフィーは継ぎ目から川に落ちそうになりながらも、釣り糸を引っ張って3度対岸まで行く事ができました。そしてジャッキーたちは発煙筒をを入れた袋を釣り糸にくくりつけてお兄さんたちに釣り糸を引っ張ってもらいますが、パイプの継ぎ目に袋が引っかかってしまいます。列車は刻々と決壊現場に近づいており、一刻の猶予もありません。お兄さんはマーフィーが袋が引っかかっているのを外してくれればと言いますが、マーフィーに言葉が理解できるはずがありません。しかし袋が引っかかっているのを知ったジャッキーが対岸からマーフィーに叫ぶと、マーフィーは果敢にも再び給水パイプの中を進み、袋が引っかかっているのを外したのです。袋は無事にお兄さんのもとに届きましたが、その瞬間、鉄塔が崩壊し給水パイプは濁流の中に落下していきます。しかしジャッキーは給水パイプが落ちる直前に給水パイプの中を走ってジャッキーのもとに戻って来たのでした。
 ナイロビからヌディに向かう列車にはクランクショウ博士も乗っていました。列車はお父さんたちが用意した発炎筒の光を見るとただちに停車し、決壊した堤防から転落する事をまのがれました。やがて堤防の決壊した場所には仮設の橋がかけられて行き来できるようになります。ジャッキーたちとお父さんたちは仮設の橋の上で抱き合って再会を喜ぶのでした。そこへ警察本部のダールという男がテンボを尋ねて来ました。テンボは自分が誘拐犯だと疑われているのではないかと思って身構えますが、ダールは密猟者の事や偽の輸出許可証の事で話を聞きたいと言って握手を求めて来たのです。テンボは笑顔で握手に応じるのでした。
 ヌディの駅舎に戻りジャッキーはこれまでのいきさつをお父さんやお兄さん、クランクショウ博士に話しました。すべてを聞き終わった後、お父さんは「まったく無茶な事をしてくれたものだなぁ〜 もしお前がマーフィを連れて旅をしなかったらあの列車は決壊箇所から川に突っ込んで大事故になるところだった」と言います。お父さんはマーフィの国外持出許可証がどこにいったのかを聞きましたが、ジャッキーはわからないと答えました。でも本当はわかっていたのです。
 それから2週間が経過しました。ジャッキーたち一家は既に自分たちの家を売り払ってしまい、今は他の人が住んでいたので、ケイトの家にしばらく泊めてもらう事になりました。マーフィを野生に戻す為に、もとの夜行性に戻すには時間をかける必要があったからです。そしていよいよ今日、マーフィを野生に戻す日が来ました。ジャッキーやケイト、そして足の骨の折れていたミッキーが病院から駆けつけ、クランクショウ博士の運転する車で近くの森に出かけます。車の中でミッキーはジャッキーにマーフィの国外持出許可証の事を謝ろうとしました。自分が国外持出許可証を隠したりしなければ今頃ジャッキーはイギリスでマーフィと一緒に暮せていたのです。でもジャッキーはミッキーの言葉を遮ると「待ってミッキー、あんたの言いたい事はわかっているわ。お願い、もう何も言わないで。ありがとう話してくれて、それで十分よ。私、こうなって良かったと思ってるわ。マーフィはアフリカの自然に帰すのが一番よ」と言うのでした。
 ジャッキーはブッシュベイビーの仲間がたくさんいる森でマーフィを放しました。でも、マーフィはジャッキーのもとに帰って来ます。何度仲間のところに連れて行こうとしても同じ事でした。マーフィは仲間のところよりもジャッキーのそばにいたかったのです。ジャッキーもミッキーも悲しくて泣いてしまいました。そしてとうとうミッキーは見ていられなくなり、マーフィをイギリスに連れて帰ってくれと言ってマーフィの国外持出許可証をポケットから取り出したのです。ジャッキーの心は揺すぶられました。一度はマーフィを野生に帰そうと決心しましたが、国外持出許可証があればマーフィをイギリスに連れて帰れる… しかし、ジャッキーの決心は変わりませんでした。ジャッキーは「大丈夫よ、マーフィはちゃんと生きていける。私はマーフィを信じているわ」そう言って国外持出許可証を細かく破り、風に飛ばしてしまったのです。マーフィは風に飛んでいく紙吹雪を追いかけるとマーフィーの目にブッシュベイビーの仲間の姿が入りました。仲間の1匹がマーフィに近づいて来ました。そしてマーフィはブッシュベイビーの仲間に暖かく迎えられたのです。マーフィは仲間の所に飛んで行きました。ジャッキーはマーフィが自分の方を振り返った時、マーフィが「さらなら」と言ったような気がしました。でも、ジャッキーはマーフィが仲間に暖かく迎えられた事をとても嬉しく思い「さようなら、マーフィ」と嬉しさと悲しさで涙を流しながらつぶやくのでした。
 現場にはお父さんやお母さん、お兄さんも来ていました。ジャッキーはお母さんの姿を見るとこらえていた悲しさが一気に吹き出し、お母さんにしがみついて泣きました。お母さんは「マーフィ嬉しそうだったわ、お母さんにはそう見えた」と言ってジャッキーをなぐさめます。とても大きな満月の夜の事でした。
 次の日、ジャッキーたち一家は飛行機でイギリスに向かいました。アフリカは自然と人間を通してさまざまな事を教えてくれました。さようならマーフィ、さようならアフリカ。大人になったらまた来ます。ジャッキーは飛行機の窓から広がるケニアの大地を見つめながら、そうつぶやきました。森の中で恋人を連れたマーフィはジャッキーたちの乗った飛行機をいつまでも見送るのでした。
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