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トラップ一家物語  感想

 「トラップ一家物語」は世界名作劇場の中では、かなり珍しい特異な分野になるのではないでしょうか。それは主人公の年齢です。世界名作劇場の主人公のほとんどは小学校の低学年くらいからスタートしていますが、「トラップ一家物語」の主人公マリアは、何と18才からスタートしているのです。「私のあしながおじさんの」は14〜21才までの主人公ジュディを描いていましたが、物語の大半は14〜17才の3年間だけです。しかしマリアの場合は18〜20才までの2年間を描いているのです。いったいどの年齢が見る事を意識して物語を作ったのでしょう。
 そしてこの「トラップ一家物語」は主人公の結婚生活が描かれている点でも異色です。前作「私のあしながおじさん」でも主人公ジュディは結婚しましたが、それは最終話の最後で結婚しただけであり、「トラップ一家物語」のように物語の後半で結婚して、終盤にかけて結婚生活が描かれるという作品は「トラップ一家物語」だけではないでしょうか。
 物語はマリアがノンベルク修道院にシスター見習いとして入る所から始まります。しかしマリアはおてんばで悪さの限りを尽くした為、ノンベルク修道院を追い出されそうになった事さえありました。マリアがノンベルク修道院の生活に慣れてきた頃、トラップ男爵が家庭教師を派遣してほしいとノンベルク修道院に依頼した事からマリアが派遣される事になります。しかしトラップ男爵の子供たちは2年前に母親を亡くし、以来心を閉ざしてこれまでに25人の家庭教師がやめていたのでした。マリアも最初は子供たちから嫌がらせを受けますが、マリアの明るさと誠実な心が子供たちに受け入れられ、しだいにマリアは子供たちにとって、なくてはならない存在になっていきます。子供たちばかりかトラップ男爵にとってもマリアはなくてはならない存在になり、とうとうトラップ男爵とマリアは結婚し、幸せな家庭生活を描きます。しかし銀行が破産してトラップ男爵は無一文になり、ドイツ軍が侵攻してオーストリアは消滅しトラップ一家はアメリカに亡命しますが、家族の絆で結ばれたトラップ一家合唱団の歌声は途絶える事はありませんでした。
 この作品は実話で、作者も Maria Augusta Trapp といってマリアその人です。自分の自叙伝を書いた作品らしいですが、ずいぶんと波乱万丈な生き方をして来たようですね。それにしても20才も年上の7人も子供のいるおじさんと結婚するとは驚きです。前作「私のあしながおじさん」の主人公ジュディも13才年上のおじさんと結婚していましたから、一種の流行ですか…
 ところでこの作品に登場する家政婦長のマチルダ夫人とはいったい何者なのでしょうか? あくまで雇われている身分であるはずなのに、時には主人のトラップ男爵よりも威張ったりしているのです。「アルプスの少女ハイジ」のロッテンマイヤーさんもそうであったように、あの当時の家政婦長や執事は主人以上に威張るものなのでしょうか? おそらくマチルダ夫人はトラップ男爵の事をゲオルクと呼んでいましたから、トラップ男爵のおばさんにあたる人ではないかと思うのですが、結局真相は公表されませんでした。
 マチルダ夫人はやたらと身分や階級にこだわる人でトラップ男爵がマリアと仲良くするのを極端に嫌い、貴族は貴族としか結婚を認めず、さらに子供たちにまで貴族として恥ずかしくない振舞いをしなさいと言って、子供たちが庭で遊ぶ事さえ禁止してしまいます。トラップ男爵はもともと貴族の生まれではなかったので、子供は元気に遊ぶのが一番だと考えおり、マチルダ夫人の考えには反対でしたが、マチルダ夫人があまりに貴族としての生活を唱えるので反対すらできませんでした。しかしさすがのトラップ男爵も身分が違うからといってマリアとの結婚を反対された時には声を荒げて反対していました。身分や階級にこだわる人はどこの世界にもいるものですが、そんな事はどうでもいいのにと思わずにはいられなくなる作品でもありますね。  この「トラップ一家物語」は世界名作劇場には珍しくミュージカルな作品でもあります。主人公のマリアが歌を歌う事が好きで、ノンベルク修道院時代にもノンベルク小学校で生徒たちを集めてギター片手に子供たちと一緒に歌を歌っていたし、トラップ一家に家庭教師として派遣されてからも歌で子供たちの心をつかんでいきます。そして小さいマリアはお母さんの形見のヴァイオリンに一生懸命打ち込んで練習するようになります。トラップ男爵と小さいマリアはヴァイオリンが弾けますが、マリアは一度も弾こうとしなかったので、きっと弾けないのでしょう。それにしても小さいマリアはヴァイオリンの弾けないマリアに教えてもらって、よくヴァイオリンの練習ができたものです。それだとほとんど独学に近いような気がするのですが… もともとヴァイオリンの上手だったトラップ男爵に教えてもらった気配もないので、きっと独学でモーツァルトを弾けるようになったのでしょう。  この作品の訴えている事は、やはり家族の絆でしょう。おそらくトラップ男爵の妻アガタが生きていた頃はトラップ一家の子供たちもうまくやっていたと思われます。ところが2年前に縣が亡くなって以来、インチキ家庭教師とマチルダ夫人のおかげで子供たちは心を閉ざしてしまいました。しかしマリアが家庭教師として派遣されてからは、歌を通じて子供たちも心を開き、やがて家族の心が一つになっていきます。やはりマリア自身が家族に恵まれなかっただけに、家族の大切さを訴えたかったのでしょう。

評価
 項目 5段階評価 コメント
不幸度 生まれは不幸ですが、トラップ一家でのマリアは不幸ではありませんね
ほのぼの度 ☆☆☆☆ 作品としては、ほのぼのしていると思います
お薦め度 ☆☆☆ あんまり感動の名場面はないかな?
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