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愛少女ポリアンナ物語 第1部 ストーリー詳細

第1話 教会の小さな娘
 1920年のアメリカ西部の小さな町に8歳になるポリアンナという1人の少女が住んでいました。ポリアンナは4歳の時にお母さんを亡くしていた為、教会の牧師をしているお父さんのジョン牧師と一緒に貧しいながらもつつましやかに2人で暮していました。元気でいつも明るいポリアンナのたった1つの心配はお父さんのジョン牧師が病気がちだった事でした。ジョン牧師は優しいお父さんでしたがポリアンナが人の悪口を言った時には厳しくさとし、良かった探しをするように言うのです。良かった探しというのはお父さんとポリアンナが始めたゲームでした。お母さんのジェニーが亡くなりお父さんとポリアンナの2人で寂しく暮していた頃、お父さんとポリアンナは聖書の中に書かれている“喜び”や“楽しみ”の言葉を一緒に探したのです。聖書の中には800もの“喜び”や“楽しみ”の言葉が書かれていました。ポリアンナはそのおかげで字を覚え、数を数える事ができるようになったのです。「いいかいポリアンナ、神様が800回も“楽しめ”とか“喜べ”とか言われているのは私達みんなが喜ぶ事を望んでいらっしゃるからだよ。これからは聖書の中だけではなく毎日の色々な事の中から喜びを探してごらん。きっとどんな事にも良かったと思える事があるはずだよ。お前とお父さんとどっちが良かったを探せるか競争しよう。わかったねポリアンナ」それ以降、ポリアンナは身の回りの出来事の中から良かったを探すようになっていたのです。
 その夜ジョン牧師はベッドに入ろうとしたところで病気の発作が起きてしまいました。ジョン牧師は苦しみながらマリア様の肖像に向かって「神よ、護りたまえ、ポリアンナ」とつぶやくと、そのまま意識を失って倒れてしまうのでした。
第2話 死なないで父さん
 翌朝、異変に気付いたポリアンナはたいそう心配し、一生懸命看病しました。でもお父さんは何も食べたがらず、病気はなかなか良くなりませんでした。お父さんの一番好きなイチゴを摘んで帰ったらお父さんはきっと喜んで食べてくれる。そう思うとポリアンナの胸ははずみ、友達のカレンと共に森へイチゴ摘みにでかけます。ところが森で熊にばったりと出会ってしまい、ポリアンナたちは命からがら逃げ出すのでした。ポリアンナたちはやっとの思いでイチゴを摘んで帰ります。ジョン牧師はポリアンナが熊のいる森に向かったと聞いて大変心配しました。ポリアンナはお父さんに余計な気苦労をかけた事で病気が悪くなるのではないかと心配でたまりませんでした。ところがポリアンナの心のこもったイチゴが食欲をそそったのかジョン牧師は食事も進み少しずつ元気を取り戻していったのです。
 元気になったジョン牧師はホワイトさんを教会に呼ぶと、こう言ったのです。「私にもしもの事があれば教会本部に問い合わせて下さい。ポリアンナの今後の事がわかるようになっています。私があの子にしてやれる事はもうこれくらいしかありません。あなたの他にお頼みする人がいないのです。どうかお願いします。」ジョン牧師は自分の命があまり長くない事を知っていたのです。
 その日ジョン牧師は再び倒れてしまいました。ジョン牧師はポリアンナをそばに呼び「ポリアンナ、お前は色々な事から本当に上手に良かったを探し出して私をほっとさせてくれた。これから先もそれを決して忘れてはいけないよ。お前と私の2人きりの生活にはない色々な事の中で、きっと本当に良かったと思える事がたくさんあるはずだ。良かったを探すんだポリアンナ、その良かった探しがきっとお前を幸せにしてくれる。ポリアンナ、どうやら私は神に召される時が来たようだ。ポリアンナ、良かったを探すんだ…」そう言い残すとお父さんは静かに息を引き取りました。「できないわ、お父さんと一緒じゃなきゃできないわ! お願いお父さん、死なないでっ!」ポリアンナはいつまでもお父さんの胸の上で泣き続けるのでした。
第3話 丘の上の賛美歌
 翌日ジョン牧師のお葬式が行われました。娘のポリアンナ1人を残して神に召されたジョン牧師は亡き妻の隣に埋葬されたのです。家に帰ったポリアンナはお父さんのベッドに腰かけてお父さんの事を考えていました。「やっぱり… やっぱりお父さんがいなくなって、それでも良かったなんて思うの、私できないわ… できないわ」そう言うとポリアンナは家の横につり下げられているトライアングルをいつまでも鳴らし続けるのです。そのトライアングルはポリアンナが野原で遊んでいる時にお父さんが食事を知らせる為に鳴らしていたものでした。「お父さん聞こえる? トライアングルの音が聞こえる? 聞こえたら帰って来て。私のそばに帰って来て、お父さん!」そう言うとポリアンナは泣き崩れてしまうのでした。
 身寄りのないポリアンナはホワイトさんの家に預けられる事になりました。その夜ポリアンナはお父さんがいなくなって良かった探しなどできっこないと考えていましたが、お父さんとの約束を守る為に、こんな大きくてふかふかなベッドで眠る事ができて良かったと思う事にしたのです。それを聞いたホワイト夫人はポリアンナの事が不憫でなりませんでした。
 ポリアンナがホワイトさんの家で暮すようになって数日後、カー牧師がジョン牧師の遺言であるポリアンナの今後について教会本部への問い合わせの回答を持って来ました。それにはポリアンナにはお母さんの妹にあたるパレー・ハリントンという名のおばさんがアメリカ東部のベルディングスビルという町におり、ジョン牧師に万一の事があったらポリアンナをそこに預けるように書かれていました。しかしポリアンナを預かったホワイトさんはもちろんの事、ポリアンナ自身もそのようなおばさんがいる事をまったく知りませんでした。ホワイト夫人はポリアンナを見ず知らずのおばさんの所に預けるのは反対でしたが、亡きジョン牧師がよく考えた末の結論だと考え、ポリアンナをベルディングスビルに送り出す事にしました。
 一方、ベルディングスビルのハリントン家ではホワイトさんからポリアンナを預かってほしいとの手紙を受け取ったパレーはたいそう怒っていました。ハリントン家の豪華な屋敷にたった1人残されたポリアンナのおばパレー・ハリントンは姉のジェニーや自分達の一家を不幸にした張本人としてジョン牧師を憎んでいたのです。しかし身寄りのないポリアンナを引き取らないわけにはいきません。パレーはメイドのナンシーに屋根裏部屋を掃除して簡易ベッドを用意しておくようにと命じました。ナンシーはポリアンナが来る事をたいそう喜びましたが、パレーは「愚かしい結婚をして、いりもしない子供を生むような姉を持ったからと言って、私が進んでその子の面倒を見る必要などあるはずがないと思うの。ただ私はこれでも善人のつもりだから自分の義務だけは果たそうと思っています」と言うのでした。
 ポリアンナは悩んでいました。このままホワイトさんの家で暮した方がいいのか、パレーおばさんのところに行った方がいいのか。ポリアンナはパレーおばさんが今まで手紙一通送って来なかったのはパレーおばさんが重い病気だったからではないかと考えていたのです。ポリアンナはお父さんの言っていた2人きりの生活にはない色々な事の中で、きっと本当に良かったと思える事がたくさんあるはずだという言葉の意味がパレーおばさんの事だと気付き、ポリアンナはパレーおばさんのところに行く決心をしました。パレーおばさんはお母さんと姉妹だから、きっと優しい人に違いないと思い込んでいたのです。
第4話 見知らぬ町へ
 ポリアンナがハリントン家へやって来る日、ナンシーは屋根裏部屋を掃除して窓を開け放っておきました。屋根裏部屋は夕方になると陽が差し込むので窓を閉めておくと蒸風呂のようになってしまうからです。しかしそれを知ったパレーは窓を開けると虫が入るからと言って窓を閉めさせます。ナンシーはポリアンナを出迎えにも行かず、しかもこんな大きな屋敷にパレーたった1人で住んでいるのに、わざわざ蒸風呂のような屋根裏部屋にポリアンナを住まわせるパレーに怒りを感じずにはいられないのでした。
 パレーはジョン牧師を憎んでいました。姉のジェニーがジョン牧師と結婚するまではハリントン家は幸せだったのに、貧乏なジョン牧師とジェニーが駆け落ち同然で西部に旅立って以来、ハリントン家には次々と不幸が訪れていたのです。そんなジョン牧師の子供であるポリアンナに優しくしてあげようという気持ちなどまったくありませんでした。
 ポリアンナは汽車に乗ってベルディングスビルにやって来ました。ポリアンナは嬉しくて大はしゃぎです。そこへナンシーと御者のティモシーの乗った馬車が到着します。ポリアンナはナンシーをパレーおばさんと勘違いしてしまい、いきなり飛びついてしまうのでした。ポリアンナはハリントン家へ向かう馬車に乗りながら素晴らしい景色に見とれます。ポリアンナはお父さんと一緒だったらと思うと急に悲しくなってしまうのでした。ナンシーとパレーおばさんを間違えていた事を知ったポリアンナは「良かった、私おばさんが迎えに来て下さらなくて良かったと思うわ。まだこの後おばさんに会える楽しみがあるんですもの。さっきはあなたに会った時とっても嬉しかったし、パレーおばさんってどんな方かしら? 長い間いる事も知らなかったたった1人の身内でしょ、胸がわくわくしちゃうわ」と言います。それを聞いたナンシーはポリアンナの事が不憫に思えてならないのでした。
 ハリントン家に着いたポリアンナはナンシーに連れられてパレーおばさんのところに行きます。パレーおばさんに会ったポリアンナは嬉しさのあまりナンシーの時と同じように飛びついてしまいます。そしてポリアンナがお父さんの事を話そうとするとパレーおばさんは「私はお前のお父さんの事は聞きたくないのです」と言ってポリアンナの話しを遮ってしまうのでした。ポリアンナにはなぜお父さんの話をしてはいけないのかよくわかりませんでした。しかしポリアンナはパレーおばさんがお父さんの事を好きではないという事は肌で感じ取っていたのです。
 パレーおばさんはポリアンナを屋根裏部屋に案内します。気を取りなおしたポリアンナは屋根裏部屋へ案内される途中、屋敷の数多くの部屋にふかふかの絨毯と絵の入った額縁、そして窓にはレースのカーテンがかけられているのを見て感激します。ポリアンナにとってそこはまるで宮殿のようでした。ポリアンナはカーテンと絨毯と額縁のかかったかわいい部屋が自分のものになるという嬉しい期待に胸をわくわくさせていたのです。ところがポリアンナが案内された屋根裏部屋はカーテンも絨毯も額縁もなく、ベッドと小さなタンスがあるだけのみじめな部屋でした。パレーおばさんが戻った後、ポリアンナは悲しくて思わず泣き出してしまうのでした。
第5話 ナンシーの約束
 様子を見に来たナンシーが泣き崩れていたポリアンナを慰めます。ナンシーはこんな事になるんじゃないかと思って心配していたのですが、ポリアンナはすぐに気を取り直し「さあ元気を出さなくちゃ、お父さんやお母さんに笑われちゃうわ。うん、慣れればきっといい部屋になるわ」と言うのです。そして窓から見える素敵な景色に「見て見てナンシー、まるで絵みたいだわ。これなら額なんかいらないわ、きっとおば様もそう思って…」ナンシーは不幸な身の上にもめげずに明るく生きようとするポリアンナの姿に「あなたって方は天からまっすぐ降りて来た天使のような御方。よくまあそんなあなたにこんな…」と言って思わず泣き出してしまうのでした。
 ポリアンナは窓から屋根に出て木に飛び移ると地面まで降りて行きます。そして少し離れた丘の上に岩山と松の木があるのを見つけました。ポリアンナは岩山めがけてひた走りました。何だかそこが世界でたった1つの自分の場所のような気がしたのです。岩山から眺める景色は、まるでポリアンナが今まで住んでいた町のような美しい景色でした。ポリアンナはペットのチップマックに話しかけます。「ねぇチップマック、私、パレーおばさんがお父さんの事を聞きたくないとおっしゃった時、とっても悲しかったの。でもそう言って下さった方が私には楽なのよね。話さない方が我慢しやすいもの。だからおばさんは話すなって言ってくれたんだわ」と…
 岩山に行っていたので夕食の時間に遅れたポリアンナに腹を立てたパレーおばさんはナンシーに罰として台所でパンと牛乳だけ与えておきなさいと命じます。ナンシーは気の毒そうにポリアンナにその事を話すと、ポリアンナは「良かった、だって私、パンも牛乳も大好きよ。それにナンシーと一緒に食べられるのもとっても嬉しいわ」と言うのです。何にでも嬉しがるポリアンナに感心したナンシーはポリアンナから良かった探しの事を聞いて自分もポリアンナと一緒に良かった探しをやってみようと決心するのでした。夕食後パレーおばさんはポリアンナに「台所でパンと牛乳を食べさせなければならないなんって嫌な事です」と言うと、ポリアンナは「あら、パレーおばさん、そんな心配なさらなくて大丈夫です。私パンも牛乳もナンシーも大好きですもの。それにここのパンはお父さん… 教会のパンよりずっとおいしかったからとっても嬉しかったのよ」と言うのでした。そしてポリアンナの身なりがあまりにひどいので明日は服を買いに行くと言うと、ポリアンナはパレーおばさんに飛びつき「わぁ〜 素敵〜 ありがとうパレーおばさん。私ここに来る前からきっとおばさんのそばにいるのが好きになるだろうって思ってたの。その通りになりそうよ」と大喜びです。罰としてパンと牛乳を与えたはずなのに逆に喜ばれてしまい、いじめているはずなのにそばにいるのが好きになると言われたパレーおばさんは面食らってしまうのでした。
 ナンシーはポリアンナが可哀想でなりません。ポリアンナが来る前、ナンシーはあまりにパレーおばさんにこき使われるのでハリントン家のメイドをやめるつもりでいましたが、ポリアンナが来てからは自分はポリアンナの隠れ場として、その助けの岩となる決心をしていたのです。ポリアンナは明かりのない屋根裏部屋で寝る為、ロウソクを持って屋根裏部屋へ上がって行きます。ところが屋根裏部屋は薄気味悪く、窓を開けていた為にロウソクの火は消えてしまいます。ポリアンナは恐くてベッドに泣き伏しながら「お父さん、私もうダメだわ、良かったなんって探せない、無理よ。お父さんだってこんな暗い所にあげられて独りぼっちで寝なければならなかったら喜ぶ事なんって探せないと思うわ」と泣き続けるのでした。
第6話 新しい服騒動
 朝になりました。ポリアンナが窓を開けっ放しで寝た為、食堂にハエが入って来ました。怒ったパレーおばさんはポリアンナに網戸が入るまで屋根裏部屋の窓を開けてはいけないと命じ、屋根裏部屋の窓を閉めてしまうのでした。そしてポリアンナへの罰のつもりでハエの危険性について書かれたパンフレットを読んでおくようにとポリアンナに渡しますが、ポリアンナは「こんなおもしろい絵の描かれたパンフレットを見るのは始めてだわ、ありがとうおば様」と大喜びします。ハレーおはさんは罰のつもりでパンフレットを渡したのに、またもやポリアンナを喜ばせてしまったのです。屋根裏部屋に行ったおば様はポリアンナの持って来た服をチェックし、汚い服… つまりそのほとんどを捨ててしまいました。そしておば様はポリアンナに朝から晩まで勉強や習い事をするように命じます。ポリアンナは自分の生きる為の時間がないと言って反論しますが、おば様はそれがハリントン家に住む者の責任と義務だと言うのです。ポリアンナは義務という言葉がすっかりと嫌いになってしまいました。ポリアンナには義務を喜ぶ事はできないように思えました。でも義務が終わったら本当に良かったと思うに違いないと考えたのです。
 その日の午後、パレーおば様はポリアンナの身の回りの物を買い整える為に町へ出ました。洋服屋で服を試着していたポリアンナはお店の人に「お店に入って新しい服を着てみたのは始めてなの、今までは慈善箱や婦人会のおかげでしか服を持った事ないもの。お古を合わせるのじゃないから縫い上げたり縫い込みを出したりしなくてすむでしょ、すばらしいわぁ〜」と言ってしまい、恥をかかされたパレーおば様はイライラしてしまいます。服から下着、靴と買い物をする間中、パレーおば様はハラハラのしどおしでゲッソリとしてしまいました。ところが家に帰って来た時、チップマックがパレーおば様に見つかってしまいます。チップマックの事を話すとポリアンナが怒られると考えたナンシーがチップマックを秘密にしていたのです。しかし庭師のトムがポリアンナの事を可哀想に思い、自分が面倒を見るから外で飼う事を条件にチップマックを飼う許しを得たのでした。
 そしてその夜の事。朝から閉め切ってあった屋根裏部屋はまるでオーブンのようにほてっていました。でも網戸が入るまでは閉めておく約束をした以上、窓を開けるわけにはいきません。あまりの暑さに眠れないポリアンナは屋根裏部屋からロープを伝ってサンパーラの屋根に降り、そこで寝てしまいます。物音に気付いたハレーおば様は泥棒がいるとトムやティモシーを呼び出し大騒ぎとなるのでした。
第7話 うれしいおしおき
 トムとティモシーは大急ぎで駆けつけました。しかしサンパーラの屋根に上ったトムとティモシーはポリアンナが寝ているのを見ると笑わずにはいられません。パレーおば様はポリアンナを目のとどく所に置いておく為、ポリアンナに自分のベッドで寝るように言いました。ポリアンナは1人で屋根裏部屋で眠るのは寂しかったのでパレーおば様と一緒のベッドで寝られると聞いて大喜びでした。そしてポリアンナは先にパレーおば様のベッドに入って寝てしまいます。パレーは途方に暮れていました。ポリアンナにこれで3度懲らしめの為に罰を与えたのですが3度が3度ともポリアンナは、それを特別の親切のように受け取ってしまったのです。そしてパレーのベッドに大の字になって眠るポリアンナを動かす事もできず、パレーはソファで眠る事にしたのです。「これじゃあ私が罰を受けているみたいだ」と独り言を言って…
 次の日からポリアンナの勉強や習い事が始まります。ポリアンナはパレーおば様にお母さんの話しをしました。ところがパレーおば様はポリアンナの話を遮るとポリアンナに「私はお前のお母さんの代わりに、このハリントン家を守っていく責任と義務を負わされたのです」と言って出て行ってしまいました。ポリアンナにはパレーおば様の言った意味はよくわかりませんでした。ただ悲しい事にお父さんの話しだけでなくお母さんの話しも決して喜ばれないという事だけは感じられたのです。
第8話 不思議な紳士
 ポリアンナはパレーおば様が笑わないのを不思議に思っていました。パレーはポリアンナに「不思議の国のアリス」を声を出して読ませます。しかし内容があまりにおもしろいのでポリアンナが笑うと、最初のうちパレーおば様は怒っていましたが、最近では知らん顔になりました。それを聞いたナンシーは「さすがのパレー様もお嬢様にかかってはお叱りになる元気もなくしておしまいなんですよ」と言うのです。そうです、パレーにとってはひどく奇妙に思えるポリアンナに毎日読み方や裁縫を教える仕事はほとほと精根尽き果てる仕事でした。それでも自分の義務と責任を放り出すパレーではありません。
 ポリアンナは散歩するのが好きでした。ポリアンナは町に出かけると出会う人すべてに挨拶してまわるので、いっぺんにベルディングスビルの町中の噂になります。あれがハリントン家のパレーが引き取ったジェニーの忘れ形見だ、ハリントン家の子供にしてはひどくみすぼらしい恰好をしていると… ポリアンナは町で恐そうな犬を連れた1人のおじさんを見かけます。ところがそのおじさんは町の人から挨拶されても返事もしないのです。ポリアンナはそのおじさんの事が大変気にかかりました。その夜ポリアンナは昼間出会った風変わりな紳士の事が気になってなかなか寝つく事ができませんでした。誰とも付き合えないらしい様子がとても気の毒に思えたのです。ポリアンナは次の日、おじさんに声をかけてみました。しかしおじさんはそのまま通り過ぎてしまいます。それから毎日ポリアンナは根気よくおじさんに声をかけ続けました。けれども一度も返事をしてもらえませんでした。それから10日ほど過ぎたある日の事、ポリアンナは今日もおじさんに声をかけると、とうとうおじさんは怒りだしたのです。ところがポリアンナは脅えるどころか、おじさんが返事をした事を喜び、「おじさんっていい人だと思っていたけど、やっぱりそうだったのね」と言うのです。そう言われたおじさんは少し明るさを取り戻したように去って行きました。ハリントン家ではナンシーやティモシーやダルギンたちがポリアンナがあの頑固で変わり者のペンデルトンさんと話をしていたと噂になります。ポリアンナはペンデルトンさんがとってもいい人だから明日会うのが楽しみだと言うとナンシーたちは顔を見合わせました。そしてペンデルトンさんはもう10何年も誰とも口をきいた事がなく、町一番の大金持なのにエツラという家政婦のおばあさんと2人で暮しており、たいそうケチだと言うのです。それを聞いたポリアンナはペンデルトンさんはお金を貧しい人達に寄付する為に節約しているのだと思い込んでしまいました。しかしナンシーからペンデルトンの屋敷の戸棚には骸骨が隠してあると聞いてポリアンナは怯えてしまうのでした。
第9話 放っておけないわ
 ある日ポリアンナはスノー夫人の家にお見舞いに行く事になりました。スノー夫人は寝たきりの為、教会の婦人会が世話をする事になっており、毎週1回ハリントン家が世話をする事になっていたのです。いつもはナンシーが行く事になっていたのですが、自分が行きたいとポリアンナが言い出したので今日はポリアンナが行く事になったのです。ナンシーやダルギンはスノー夫人が人の顔を見るたびに愚痴や泣き言を言うので誰も世話をするのを嫌がると言ってポリアンナを気の毒がりますが、ポリアンナは病人の世話ができると大喜びで出かけて行きました。スノー夫人の家にやってきたポリアンナは風変わりなスノーおばさんに会う楽しみに胸をはずませていました。ポリアンナはスノーおばさんを見舞いますがスノーおばさんはナンシーの言った通りポリアンナに愚痴や泣き言ばかりを言います。しかしそんな事でめげるポリアンナではありません。ひたすらおばさんの為に良かった探しをしてスノーおばさんを喜ばせようとします。スノーおばさんはポリアンナの事が気になって仕方がないのでした。ハリントン家に帰って来たポリアンナはスノーおばさんの見舞いに行ってとってもおもしろかったので来週も行くと言い出し、ナンシーたちを驚かせるのでした。
 ポリアンナはジミー・ビーンという少年に出会いました。ジミーは幼い時にお母さんを亡くし、お父さんに育てられてきましたが、そのお父さんも亡くなってしまったのでベルディングスビルの孤児院で生活しているというのです。ポリアンナは自分と同じように両親を亡くしたジミーの事がとても気にかかるのでした。ジミーは孤児院には自分の居場所がないので、どこかで働いて暮していこうと考えていましたが、どこにも働かせてくれる所はありませんでした。さっそくポリアンナはパレーおば様にジミーを預かってもらおうと考えたのです。
第10話 何とかしなくちゃ!
 ポリアンナはパレーおば様にジミーを預かってくれないかとお願いしますが、パレーおば様はジミーを追い返してしまいます。ポリアンナはがっかりしますが、婦人会にジミーを預かってもらえるようにお願いしようと考えました。ところが婦人会でもジミーの引き取り手はありません。ポリアンナはがっかりしてジミーに報告しますが、ジミーは誰にも頼る事なく1人で生活する為に自分だけのお城を作ろうと言うのです。ポリアンナは大喜びでした。2人はさっそくトムからいらなくなった木材を貰うと小さなお城を建てる事にしました。場所はジミーが目を付けていたペンデルトンの森の中でした。ジミーとポリアンナが森の中でお城を建てているとペンデルトンさんの飼っている犬のタリムがやって来て、ついて来いという仕草をするのでした。
第11話 ペンデルトンの森で
 気になったポリアンナはジミーをおいてタリムの後をついて行くと、森の中でペンデルトンさんが倒れていたのです。ペンデルトンさんは岩から落ちて足の骨を折ってしまい動けなくなっていました。ポリアンナはペンデルトンから教えられた通りペンデルトンさんの家に行くと骸骨の噂に怯えながらもチルトン先生に電話をかけます。そして再びペンデルトンさんの所に戻りポリアンナは看病を続けました。やがてチルトン先生が駆けつけペンデルトンさんは家まで運ばれます。チルトン先生はポリアンナの名前を知ると、ポリアンナの顔をまじまじと見つめました。チルトン先生は前々からポリアンナを一度見てみたいと思っていたのです。この日のペンデルトンの森での出来事は元気一杯のポリアンナにとってもさすがに精も根も尽き果てる大事件だったのです。でもポリアンナはペンデルトンさんやチルトン先生と仲良くなれてとても嬉しく思うのでした。
第12話 スノー夫人の驚き
 翌日ポリアンナは再びスノー夫人をお見舞いに行きました。スノー夫人は牛肉のスープを持っていくと羊のスープを食べたかったと言い。羊のスープを持っていくとチキンのスープが食べたかったと言うので、ポリアンナは3つとも持って行く事にしました。そしてスノーおばさんに何が食べたいかを尋ねます。スノーおばさんは今までそこにないものを食べたいと言っていたので、何を持って来たか聞く前に何を食べたいかを尋ねられて答えに困ってしまいました。しかしポリアンナが牛肉も羊もチキンも3つとも持って来た事を知ると、自分の為にそこまでしてくれるポリアンナの事が嬉しくてたまらなくなります。ポリアンナはスノーおばさんに良かった探しをするように薦めました。寝たきりの自分に良かったと思える事なんかありはしないと言うスノーおばさんに対し、ポリアンナは娘のミリーが世話をしてくれる事が良かったと感じるはずだと言うのです。そしてポリアンナに青い空を見ると生きる喜びが感じられるようになると言われベッドから起きあがり青い空を眺めます。スノーおばさんは今まで自分の事しか考えず人の事などかまっていられなかった自分を恥ずかしく感じ、今まで自分の面倒を見続けてくれたミリーと手を取り合って涙を流すのでした。パレーおば様は何の関係もないスノー夫人の為にポリアンナが一生懸命になっているのが理解できませんでした。
第13話 おば様はお気の毒
 チップマックがいなくなってしまいました。ポリアンナやナンシーたちが必死になって探しますが見つかりません。パレーおば様は、たかがリス1匹の為に大騒ぎするのが気に入りません。しかしチップマックを一生懸命探し回る人達を見ているとパレーはまた自分1人がとり残されたような奇妙な寂しさを感じるのでした。そんな事はポリアンナがこの家に来るまではパレーにはなかった事でした。探し回った甲斐があってチップマックは見つかりましたが、チップマックは病気になっていました。ポリアンナが駆け寄ってもピクリとも動かないチップマックを見てポリアンナは泣き出してしまいます。ティモシーは動物の病院に行って薬を貰って来ました。先生はチップマックが風邪だと言ったのですがポリアンナはチップマックのそばにいると言って離れません。雨の降り続く中を外でチップマックの世話をしようとするポリアンナを見かねたトムが家の中で世話をしてはどうかと提案しますが、ポリアンナはチップマックを外で飼う約束でおば様に許してもらったからと言ってそこから動こうとはしません。雨の降りしきる中をポリアンナとトムは食事も取らずにチップマックを見守り続けるのでした。それを見ていたナンシーは、あまりにポリアンナが気の毒になって泣きながらパレーおば様にチップマックをポリアンナの部屋に入れさせてもらえるようお願いします。パレーおば様も食事も取らずに自分との約束を守って雨の降りしきる外でチップマックの看病を続けるポリアンナの姿を見て心を痛め、とうとうチップマックをポリアンナの部屋に入れる事を許すのでした。
 ポリアンナはチップマックを部屋に入れるとパレーおば様にお礼を言いに行きました。ところがパレーおば様はポリアンナがドアをバタバタと大きな音をさせて開け閉めするのが気に入らずポリアンナに注意してしまいます。注意されたポリアンナはパレーおば様がドアをバタバタと開け閉めした事がないのを知ると「おば様は気の毒な人… だってドアをバタバタさせるのはそれだけの訳があるわ、とっても嬉しくてたまらない時にはどうしても静かにしていられないはずですもの。それがちっともそんな気にならないのは嬉しい事が全然なかったって事でしょ。私おば様がそんな嬉しい事がなかったっていうのがお気の毒でたまらないの、本当におば様はお気の毒だわ」と言って部屋へ帰っていきました。パレーはどういうわけか泣きたい気分でした。こんな事は1人で暮すようになってこの10年、1度だってなかった事です。そしてパレーは想い出していました、もちろんパレーにも嬉しい事はあったのです。何かにつけて明るい笑い声をたてずにはいられないほど嬉しかった事が…
第14話 手鏡の思い出
 パレーおば様が屋根裏部屋のポリアンナの部屋を訪れた時、パレーは手鏡を見つけました。その手鏡は今は亡きポリアンナのお母さんの形見でしたが、パレーにとっても自分の姉の想い出の品だったのです。20年も前、大好きだったお姉さんと、この手鏡で遊んだ事などを想い出していると、ポリアンナが「お母さんはこの手鏡をとっても大切にしていたんですって、だから私にも大切にしなさいってお父さんが…」そう言いかけたところでパレーは部屋から出て行ってしまいました。ポリアンナはお父さんの事を話題にしたからパレーおば様は怒って部屋を出て行ったのだと思い、手鏡に向かって「お母さんどうして? そんなに私がお父さんのお話をするのがいけない事なの?」と言って泣きました。でもパレーは怒ったのではありませんでした。いたたまれない思いで部屋を出て行ったのです。幸せいっぱいだったハリントン家が不幸に見舞われたのは、姉のジェニーが牧師のジョンと結婚して遠い西部へ旅立ったのがきっかけでした。気落ちした母が、続いて父が亡くなり、パレーはたった1人でハリントン家の富と名誉を守るべき義務と責任を負わされたのです。パレーが恋人と別れたのも大好きな姉のジェニーが早死にしたのも、みんなジョンのせい、パレーはずっとそう思ってジョンを憎んでいました。そしてなるべくなら過去のすべてを忘れてしまいたいと思っていたのです。しかしパレーは自分がひどい間違いをしていたのではないかという気になってきました。ポリアンナはパレーが大好きだったお姉さんのジェニーにそっくりだったのです。パレーはポリアンナを今夜から屋根裏部屋ではなく自分の寝室の横に住まわせるようナンシーに命じました。ポリアンナの与えられた部屋は宮殿のよう… というほどではありませんでしたが、カーテンやふかふかのベッドがあるかわいい部屋で、ポリアンナもナンシーも大喜びでした。
 チップマックが元気になってほっとしたポリアンナは足の骨を折って屋敷で療養しているペンデルトンさんが心配で、ポリアンナはグラタンを持ってお見舞いに行っていいかをパレーおば様に尋ねました。パレーおば様は了解してくれたのですが、ペンデルトンさんの所に見舞いに行く事を知った途端にダメだと言うです。しかしポリアンナから事情を聞くうちにペンデルトンさんはポリアンナが自分の姪とは知らないという事を知り、くれぐれもパレーがグラタンを贈ったとは言わないようにとポリアンナに口止めして見舞いに行く事を了解します。パレーは運命の不思議ないたずらに激しく動揺していたのでした。
第15話 不思議な特効薬?
 ポリアンナはペンデルトンさんの所にお見舞いに行きました。ポリアンナはエツラおばあさんに追い返されそうになりますが、屋敷に来ていたチルトン先生が「ポリアンナは特効薬だ」と言った為、面会する事ができました。ペンデルトンさんは不機嫌でしたがポリアンナと話しているうちにとても愉快な気持ちになって来ました。チルトン先生は自分の所に来る患者でポリアンナと知り合った人々は、みんな元気が出てきたと助手のハロルドに話します。ポリアンナは特効薬だ、その特効薬の主成分は良かった探しだ、今度処方箋にそう書いておこうと言って助手のハロルドと笑い合うのでした。
 ペンデルトンさんはポリアンナと話しているうちにポリアンナがパレーの姪だという事を知りました。ペンデルトンさんはポリアンナの両親が亡くなったと聞くと、たいそう辛そうな顔をしましたが、それでもパレーの姪のポリアンナを暖かく見つめます。ところがポリアンナの持ってきたグラタンはパレーが贈った物ではないのかと問い詰めると、さすがのポリアンナも口ごもりながら「おば様はくれぐれもおば様からだと思われないように気をつけなきゃいけないと言われてたんだけど…」と言ってしまいました。それを聞いたペンデルトンさんは急に機嫌が悪くなりポリアンナは気を使って帰ってしまいます。ポリアンナにはパレーおば様やペンデルトンさん、チルトン先生の3人はお互いの話になると急に口を閉ざして妙なそぶりをするのが不思議でなりませんでした。
第16話 怒らないで!おば様
 ポリアンナが家に帰って来た時、庭でトムに出会いました。ポリアンナはトムにペンデルトンさんの所に行って来たと言うとトムは驚いたような表情を見せるのです。さらにペンデルトンさんの家からの帰り、チルトン先生に送ってもらったと言うとトムはさらに驚いてしまうのでした。ポリアンナが家に入った後、トムは「あのお嬢様が悲しい思いをしなければよいが…」と言いました。そうです、トムはハリントン家に仕えて何十年にもなるので、すべてを知っていたのです。
 それから数日後、ポリアンナはパレーおば様の髪の毛が美しい事に気づき、髪の毛を結ってあげる事にしました。パレーは「何でこんな馬鹿げた事をさせているのかしら」と独り言を言いながらもポリアンナにされるままにしていましたが、ポリアンナが結ってくれた自分の姿は見違えるほど美しく見えたのです。パレーは心がときめくのを感じました。ところがチルトン先生が馬車でハリントン家へやって来るのが見えるとパレーはポリアンナがせっかく結ってくれた髪をほどき、飾りたても床に投げて「ポリアンナ、お前は何って事をしてくれたんです」と怒るのでした。チルトン先生はペンデルトンが呼んでいるからと言ってポリアンナを迎えにやって来たのです。ポリアンナはパレーおば様にペンデルトンさんの所に行っていいかを尋ねますが、パレーおば様は「そんなに行きたければ黙って行けばいいでしょ。さあ、私に構わずにさっさとお行き、行けばいいんです」と怒って言います。パレーおば様がなぜこんなに機嫌が悪いのかポリアンナにはどうしてもわかりませんでした。ただひどく悲しかったのです。
第17話 チルトン先生大好き!
 ペンデルトンはポリアンナを暖かく迎えると自分の過去を少しづつ話しました。ある出来事がもとでこの町の人間がみんな嫌いになり、インドや中国へ旅に出た事。そして4年後に戻って来て、それ以来10年の間、昔からの親友だったチルトン先生以外は誰とも喋らなくなった事を話しました。そしてポリアンナにこう言ったのです。「ポリアンナ、これからも毎日来てもらいたいんだ。君はね僕の寂しさをまぎらわしてくれるんだ。僕はね一番始めに君の身の上を聞いた時、そして君の名前を聞いた時、もう君には来てもらいたくないと思った、もう2度と顔を見たくないと思った。君は僕が長年かかって忘れようとしている事を想い出させるから… だがその後で僕は君に会いたがっている自分に気がついた。僕が忘れようと忘れようとしている事は君を見ないでいれば忘れられるような簡単な事ではなかった。それどころか君を見なければ見ないでいるほど、なおさら想い出してしまう事に気づいた。今では僕は君に来てもらいたいと思っている。君をいつも見ていたいと思っている。来てくれるねポリアンナ」
 ポリアンナは帰りの馬車の中で「ペンデルトンさんが忘れよう忘れようとしている事って何かしら? 私がそれを想い出させるんですって。私とても気になったんだけど何だか聞いてはいけないような気がして聞けなかったわ」とチルトン先生に言いました。チルトン先生はペンデルトンさんがポリアンナにそんな事を喋ったのかと驚きましたが、ペンデルトンさんが自分の方から喋るまでは聞かない方がいいと言います。ポリアンナも気にはなりましたがチルトン先生が言う通りペンデルトンさんが自分から喋るまでは何も聞かないことにしました。ポリアンナは優しくてお父さんに似ているチルトン先生がとっても大好きで、チルトン先生に飛びついてしまいます。チルトン先生は神の祝福の手が自分の頭上に置かれたような気がしていました。これからは一人暮らしの寂しさも一日の激しい仕事の疲れもポリアンナのこの笑顔が忘れさせてくれるような気がしていたのです。
第18話 ペンデルトンの謎
 ようやくジミーのお城が完成しました。ところがジミーはペンデルトンさんの森に勝手に小屋を作ってしまった為、ポリアンナと一緒にペンデルトンさんの所に行って了解を取る事にしました。ペンデルトンさんはポリアンナがいた事もあって快く了解してくれました。そしてガラス細工に太陽光線が当たって虹ができるのを喜んでいたポリアンナたちを見て、プリズムを使って部屋中に虹を作りポリアンナたちを喜ばせるのでした。ところがポリアンナがこの素敵な光景をパレーおば様にも見せてあげたいと言ってしまった為、ペンデルトンの機嫌は急に悪くなってしまいます。ペンデルトンさんにパレーおば様の話をするとなぜペンデルトンさんの機嫌が悪くなるのかポリアンナにはわかりませんでした。そしてパレーおば様もペンデルトンさんやチルトン先生の話しをすると機嫌が悪くなるのです。ポリアンナは何とかして仲直りしてほしいと考えていました。ところがそう考えていたポリアンナはふらふらと歩き出すと突然倒れてしまいます。ひどい熱でした。ジミーはポリアンナをおぶってハリントン家まで連れて帰りました。ベッドで横になったポリアンナの様子を見にハレーおば様がやって来て「明日になって熱が下がっていなければお医者様を呼びます」と言います。ポリアンナはチルトン先生がやって来ると思って喜びますが、パレーおば様はチルトン先生ではなくウォーレン先生を呼ぶと言うのです。ポリアンナはパレーおば様がチルトン先生をなぜ嫌っているのかよくわかりませんでした。
 ポリアンナはその事をナンシーに相談すると、ナンシーはペンデルトンがポリアンナを見ると忘れようとしている事を想い出すという言葉にひらめき「わかりました、わかりましたよお嬢様。ペンデルトンの秘密がわかりました。間違えありませんよ。秘密の謎は解けたんです」と叫ぶのでした。
第19話 驚くべき秘密
 ナンシーはペンデルトンがパレー様の恋人だったと言うのです。ナンシーはトムやダルギンからパレー様には昔、ケンカ別れした恋人がいたという事を聞いていました。そしてその恋人というのがペンデルトンだと思ったのです。それを聞いたポリアンナは信じられませんでした。ケンカしたといっても恋人同士だったのになぜあんなに仲が悪いのか、しかも10年以上の月日が流れているというのに2人ともいまだに独身なのです。ポリアンナは何とか2人が仲直りしてもらいたくて仕方ありませんでした。
 ナンシーはティモシーにパレー様の昔のケンカ別れした恋人はペンデルトンさんだと噂します。しかしそれを聞いていたトムはナンシーを叱り、「今後2度とパレー様の噂をしてはならない」と厳しく言いつけるのでした。トムは昔の出来事でパレー様やペンデルトンさんが殻にこもってしまった事を知っていたからこそ、これ以上2人を傷つけたくなかったのです。そしてパレー様の昔のケンカ別れした恋人がペンデルトンさんではない事も知っていたのでした。
 ポリアンナはパレーおば様とペンデルトンさんに仲直りしてもらう為に、良かった探しをしてもらおうと考えました。ペンデルトンさんは良かった探しがとても上手にできるようになりましたが、パレーおば様は良かった探しの存在すら知りません。なぜならポリアンナが良かった探しを薦める為には、どうしてもお父さんの事を話さなければなりません。ところがパレーおば様はポリアンナのお父さんの事は聞きたくないと言うのです。ポリアンナは困ってしまいました。しかしポリアンナは名案を思いついたのです、ペンデルトンさんに直接聞いてみようと…
 ペンデルトンさんの屋敷を訪れたポリアンナは、ポリアンナが尋ねるよりも早くペンデルトンさんから「この屋敷へ来て私と一緒に暮してもらえないかな? 私が良かった探しのゲームがちゃんとできるように手伝ってもらいたいんだ」と言われてしまいます。ポリアンナは困ってしまいました。ポリアンナはペンデルトンさんの事がとっても好きでしたが、それ以上にパレーおば様の事が好きだったのです。そしてパレーおば様は両親のいないポリアンナを家に呼んでくれた、たった1人の肉親なのです。ポリアンナは申し分けなさそうに断りました。ペンデルトンさんはがっかりした様子でポリアンナに語り始めました。「私はねポリアンナ、以前ある人を愛していた。そして私はその人をこの屋敷に迎えて一生幸せに暮せると思っていた。ところがその人は来なかった、ここへ迎える事はできなかった。それ以来この大きな石の建物はただの屋敷で決して家庭にはならない。家庭には婦人の手と心と子供の存在が必要なのだよ。しかしこの屋敷にはそのどれ一つもない。だから私は君に来てもらいたいんだ」と言うのです。それを聞いたポリアンナは大喜びで言うのです。「2人とも迎えて下さればいいの、それでみんな良くなるわ。おじさまが今、私におっしゃったようにお話しになればパレーおば様もきっとここへ来る事を承知なさるわ。おじさまはこの家を家庭にする為にパレーおば様の手と心が欲しかったんでしょ。ずっとそれを待ってらしたんでしょ」それを聞いた途端ペンデルトンは頭を抱えて唸ってしまいました。ペンデルトンはポリアンナに「今日僕が言った事は当分の間、誰にも言わないでもらいたいんだ、いいね」と言うと、ポリアンナは「もちろんよおじさま、私ちゃんとわかっているわ、おじさまはご自分でパレーおば様におっしゃりたいって事」と言って帰ってしまいました。ポリアンナは完全に誤解していました。
 その翌日、教会の日曜学校に出かけたポリアンナの帰りをチルトン先生が待っていました。ペンデルトンがポリアンナに会いたがっているから迎えに来たのです。馬車に乗ってポリアンナはチルトン先生に「まるで小説みたい、長い間ケンカしていた恋人が仲直りするんですもの。チルトン先生は知ってらっしゃるんでしょ、ペンデルトンさんがパレーおば様の恋人だったって事」と言うと、チルトン先生はとてもびっくりしてしまいました。しかしポリアンナから事情を聞くうちに「なるほどペンデルトンは君に会いたいはずだな」と言って納得するのでした。チルトン先生もすべてを知っていました。
 ペンデルトンさんは一晩中考えた末、ポリアンナの誤解を解く為に本当の事を話す決心をしたのです。ペンデルトンさんは屋敷の庭でポリアンナに言いました。「僕がずっと以前に求めていたのはパレーさんの手と心じゃない、君のお母さんの手と心なのだ。僕は君のお母さん、ジェニーを愛していたんだ…」
第20話 危い!!ポリアンナ
 ポリアンナはショックでした。ジェニーは家族の反対を押し切ってジョン牧師と結婚し遠い西部の町の教会に行ってしまったのです。その為にパレーおば様は今でもお父さんのジョン牧師を恨んでいるのだとポリアンナは始めて知りました。ペンデルトンさんは再びポリアンナに一緒に暮さないかとポリアンナを説得します。ペンデルトンさんは残りの人生をすべて君を幸せにする為にかけるつもりだとも言ってくれました。ペンデルトンさんはジェニーと一緒に暮す事はできませんでしたが、その娘のポリアンナと一緒に暮す事で悲しい過去に立ち向かって行こうとしたのです。しかしポリアンナはパレーおば様を1人残してペンデルトンさんと一緒に暮す事はできませんでした。ペンデルトンさんはパレーおば様がポリアンナをペンデルトンの屋敷に来てもいいかを聞いてくれるようポリアンナに頼みます。ポリアンナも引き受けざるをえませんでした。ハリントン家へ帰る途中、ポリアンナはとても悩んでいました。そこへナンシーが駆けて来ました。ハレーおば様は空が曇ってきたので雨が降ったら大変だとナンシーに傘を持たせてポリアンナの迎えに行かせたのです。パレーおば様はこのところすっかりとポリアンナに優しくなっていました。ポリアンナはもし自分がよその家の子供になると言ったらパレーおば様はどうするかナンシーに尋ねてみると、ナンシーはもちろん反対するに決まってますと答えるのです。それを聞いてポリアンナは大喜びするのでした。そしてポリアンナはパレーおば様にペンデルトンさんから頼まれた事を聞く事ができませんでした。
 その夜ポリアンナはなかなか眠れませんでした。自分の境遇をひどく悲しんでいるペンデルトンさんに一緒に暮せないと告げるのはとても辛い事だったからです。しかしポリアンナは1つの名案を思いつきました。それは孤児院で生活しているお友達のジミーをペンデルトンさんに紹介しようと考えたのです。翌日ポリアンナはペンデルトンさんの所に行きました。ペンデルトンさんはいい返事を期待していたのですが、ポリアンナはやはりパレーおば様から離れることはできないと言います。その代わりにジミーをペンデルトンさんの息子にしてほしいとポリアンナが言うと、ペンデルトンさんは怒ったように「誰が、誰が君以外の子供を欲しがるものか」と言って断ってしまうのでした。ポリアンナはがっかりでした。ポリアンナは帰りにチルトン先生の馬車で送ってもらいました。チルトン先生との別れ際、ポリアンナはチルトン先生に「私、先生が欲しくてもらえなかったものが私のお母さんの手と心じゃなくて本当に良かったと思うわ」と言いました。チルトン先生は複雑な心境でした。
 ポリアンナはジミーをペンデルトンの子供にする事をナンシーに提案しますが、ナンシーはあんな大金持が素性の知れない子供を養子にするはずがないと言います。素性がわかればいいのだと理解したポリアンナはさっそくジミーに素性を尋ねますがジミーはまったく知りませんでした。しかし孤児院に書類袋があったのをジミーが思い出しました。その袋はジミーが30歳になるまで開けてはいけないと書かれていたので、誰も中を見なかったのです。それを知ったポリアンナはジミーと一緒にさっそく孤児院に行く事にしました。途中の道で小鳥がケガしているのを見つけ手当てしようと道にしゃがみ込んだ時、車が猛スピードで走って来てポリアンナは車にはねられてしまったのです。倒れて意識を失っているポリアンナを見てジミーは泣き叫ぶのでした。
第21話 恐ろしい宣告
 ポリアンナは車に跳ねられてしまいますが、意識を取り戻すとポリアンナは元気に立ち上がりました。ジミーはほっとしましたが、ポリアンナの頭からは血が流れ続けています。家への帰り道、ジミーは心配でしたが、ポリアンナは大丈夫だという事を見せる為に駆け出したのです。ですがしばらく走ると急に足がいう事を聞かなくなりポリアンナは倒れてしまいました。そして起き上がる事すらできないのです。ポリアンナは足がまったく動かなくなってしまいました。家に担ぎ込まれたポリアンナは、すぐにウォーレン先生に診てもらいます。ポリアンナを診たウォーレン先生は頭の傷はたいした事ないし骨折もしていない、ただ脳や脊椎の損傷はしばらく経過を見てみないとわからないとパレーに言い残して帰っていきました。
 それからの数日、ポリアンナは高い熱のせいとウォーレン医師が処方した鎮静剤の効果でうつらうつらして過ごしました。パレーはポリアンナの為に必死に看病しました。そしてようやく熱が引いて、再びウォーレン先生がやってきました。ウォーレン先生はポリアンナの足をなでたり押さえたりしましたがポリアンナは何の反応も示しません。ウォーレン先生は部屋を出るとパレーにこう宣告したのです。「どうやら私の心配していた通りの事態になったようで、足が… 脊椎を傷めておりましてな、どうも私には手に負えんのです」「なおしようがないとおっしゃるのですか? あの子の足はもうダメだと…」「私のような町医者ではなく、しかるべき専門医ならあるいばあるいは…」「お願いです先生、専門医の方を教えて下さい。私はどうしてもあの子を元どおり元気なポリアンナにしてやりたいんです」「しかし例え専門医でも100%元どおりになるという保証は…」「先生お願いします。アメリカ中で一番信頼のおける専門医の方を、このハリントン家の財産をすべてつぎ込んでも…」
 ポリアンナはベッドの上で良かった探しをしていました。自分がスノー夫人のように一生の病気ではなくペンデルトンさんのようにケガで良かったと考えていました。ケガだったら治れば学校にも行けるようになるし、チルトン先生の馬車に乗せてもらったり、ジミーやペンデルトンさんやスノー夫人に逢えた時どんなに嬉しいと思うかを考えると胸がはずんでくるのでした。そこへパレーおば様がやってきました。パレーおば様はポリアンナの為にウォーレン先生の他に、もう1人先生に来てもらう事にしたとポリアンナに言います。ポリアンナはてっきりチルトン先生が来るものだと思って大喜びしますが、もう1人の先生はニューヨークから来るニード先生でした。がっかりしたポリアンナはどうしてもチルトン先生に診てもらいたいとパレーおば様にお願いしますが、パレーおば様は「ポリアンナ、私はお前の為ならどんな事でもしてあげたいと思っています。でもチルトン先生を呼ぶ事だけは…」と言うのです。ポリアンナは理由を尋ねますが、パレーおば様は顔をそらして「今は言えません」としか言わないのでした。
 そして数日後、ニューヨークからニード医師がやってきました。ニード医師はポリアンナを診察後、廊下に出てパレーおば様に言いました。「実にお気の毒ですがお嬢さんの病気は今の医学では手のほどこしようが…」「えっ! では先生、あの子は二度と歩けないとおっしゃるのですか?」「本当にお気の毒です」「そんな惨い事、ああ、どうしてポリアンナに…」パレーおば様はショックのあまりにその場に倒れてしまいました。ところがポリアンナの部屋の扉が開いていた為、ポリアンナはその言葉を聞いてしまったのです。ポリアンナは「おば様ぁ〜 今おば様が言った言葉は本当じゃないって言ってほしいの。お願いよおば様、嘘だと言ってぇ〜」と言って泣き叫び続けるのでした。
第22話 足が動かない!!
 ナンシーに慰められようやく落ち着きを取り戻したポリアンナはナンシーから自分の足は二度と歩けないなんって事あるはずがないと聞かされ安心します。パレーもナンシーと同じように言うのですが、パレーはポリアンナに嘘をついているのが辛くてたまらなかったのです。それを知ったトムは「いたいけな病人を慰める為の嘘は神様だっておとがめにはなりますまい」と言って慰めるのでした。ポリアンナは体の調子がいいので起きてみようと思いました。ところが起き上がる事ができません。それどころかどんなに頑張っても足を動かす事すらできないのです。ニード先生が言っていた事は本当だったのだと悟ったポリアンナは泣き叫びました。泣き声を聞きつけたパレーおば様が駆けつけますがポリアンナは泣きながら「もう一生どこにも行けない、生きてたっていい事なんかないのよ、みんな出てって!」と言ってパレーを追い出してしまうのでした。
 ニューヨークの先生でもポリアンナを治す事ができないと知ったジミーはトムやダルギンに言いました。「もう神様なんか信じないよ!」「何を言うんだジミー」「ポリアンナがどんな悪い事をしたって言うんだよ。あの子はいつだってエンゼルみたいにみんなを幸せにする為に飛び回ってたんだ、あの子のおかげで生きてて良かったって思い始めた人が町には大勢いるんだ。それなのにもう一生歩く事もできないなんって、そんなのあるかよ! 神様は何で俺を身代わりにしてくれなかったんだよ。何でポリアンナを… 俺、神様なんか信じられない…」「ジミー、神様を悪く言ってはならん。お嬢様は決して神様の悪口はおっしゃらなかった。いつだってお父様のお教え通り神様に感謝しておいでだった」「そうは言うけどね、あんた。今度ばかりはお嬢様だって良かったは探せないよ。私だって神様を恨みたいよ」「それを言ってはいかん、ダルギン。確かに今度の事は神様がお与えになる試練にしては惨すぎる。しかしお嬢様はしっかりと生きてなさる。例え足が不自由でも、きっとまたあの明るい笑顔を見せて下さる。お嬢様はそういう御方なんだ。いいなジミー、お嬢様を悲しませるような事は決してしてはならんぞ。辛いだろうが待つんだ。お嬢様が笑顔を取り戻す日はきっと来る」ジミーは涙を拭いてうなずくのでした。
 パレーおば様は一生歩けなくなってしまったポリアンナを気の毒に思い、ポリアンナの為なら何でもしてあげようと決心しました。そしてポリアンナをできるだけ喜ばせる為にポリアンナの事をよく知っているナンシーに協力を求めるのでした。パレーおば様はポリアンナが好きだった虹を作ろうと、家中のプリズムを集めて部屋一杯に虹を作ります。そしてパレーおば様はあれだけ動物嫌いだったのにチップマックと仲良くし、さらにポリアンナの大好物をいくつも用意するのでした。ところがポリアンナは食べたがりません。食べないと力がつかないと言うパレーおば様に対してポリアンナは「力をつけたって元気になったって動けなきゃ何にもならないでしょ、嫌なのよもう…」と言って泣き出すのでした。
第23話 よかったが探せない!
 ペンデルトンさんはジミーからポリアンナの足はニューヨークから来た偉い先生でも治せなかったと聞いてたいそうショックを受けました。そしてペンデルトンさんは意を決するとハリントン家を訪れました。それは14年ぶりの再会でした。ペンデルトンさんとパレーおば様はポリアンナの為に14年ぶりに仲直りする事ができたのです。ケンカの原因は些細な事でした。ジェニーがジョン牧師と結婚して西部へ旅立った後、ペンデルトンさんはひどく落ち込んでいました。そんなペンデルトンさんを気の毒に思ったパレーおば様はペンデルトンさんを元気づけようとしました。ところがその事でパレーおば様はペンデルトンさんを追いかけまわしていると町の人から噂され、気位の高いパレーおば様は我慢できずに誰とも関りを持たなくなって殻の中に閉じこもるようになってしまったのでした。ペンデルトンさんはパレーおば様からポリアンナの症状を聞くとひどく悲観しました。しかしペンデルトンさんはどうしてもポリアンナを喜ばせてやりたかったので、ポリアンナの望んでいたようにジミーを養子として迎えるとパレーおば様に伝えるのでした。
 パレーおば様は泣き伏しているポリアンナにペンデルトンさんはジミーを養子として迎える事を伝えます。ポリアンナは大喜びでした。「おば様、寝たきりでもやっぱり良かったと思える事があるのね、生きてさえいれば嬉しくなる事があるのね」嬉し涙にくれるポリアンナの姿はパレーをほっとさせました。けれどもそれがポリアンナ自身の幸せによるものでない事がパレーには悲しかったのです。
 その翌朝、ペンデルトンさんはさっそく孤児院にいるジミーを自宅に招きました。でもジミーはペンデルトンの養子になる事には反対でした。ジミーはポリアンナが歩けなくなったのは自分のせいだと思い込んでおり、自分だけ幸せになる事が我慢ならなかったのです。しかしペンデルトンさんは言うのでした。「ジミー、惨い事を言うようだが僕は君の為にそうするのではない、ポリアンナの為にそうするのだ。僕が自分の子にしたかったのはポリアンナだ。しかし見事にふられた、実のおばのパレーさんにはかなわなかった。ポリアンナは自分の代わりにジミーを養子にするよう言った。あの子は一生懸命僕を説得したよ、それが僕と君の為に一番いい方法だと思って。あの子は幼いなりに寂しいという事がどれだけ辛い事か十分知っている。だからどうしたら君を僕の子供にできるか心を痛めたに違いない。僕は昨日14年ぶりに思い切ってハリントン家を訪ねた。そして絶望しているあの子を何とか喜ばせたいと思って、あの子に伝えてもらったんだ、君を養子にする事に決めたと。ジミー、ポリアンナはそう心から望んでいたんだ。そのために忌まわしいあの場所に行ったんじゃないか。それがあの子を二度と立つ事のできない体にしたというのなら、僕たち2人がしてやれるのは、あの子の望みを叶えてやれる事じゃないのか。それしかないんじゃないか、ジミー。僕は少しでも早くあの子を喜ばせてやりたかった。わかってくれないかジミー。生まれも育ちも違う、なかなか大変かもしれないが仲良くやっていこうじゃないか。ポリアンナが本当に良かったと喜んでくれるように…」そしてジミーはペンデルトンさんの養子となる事を決意したのです。
 ポリアンナが二度と歩く事ができないという噂はベルディングスビルの町を駆け巡りました。いつも笑顔で挨拶をし、良かったを探しては周囲を明るくさせる、生き生きとしたポリアンナのあのかわいい朗らかな声が二度と聞けない事を思うと人々は深く嘆き悲しみました。やがてポリアンナを慰め励まし何とかして喜ばせたいと願う人たちがハリントン家へとやってきました。それはパレーにとっては思いもかけない事だったのです。何十人もの人々がハリントン家にやってきて口々にポリアンナのおかげでベルディングスビルの人々が見違えるほど明るく幸せに暮せるようになった、これもポリアンナが教えてくれた良かった探しのおかげだと。そしてポリアンナに良かった探しを続けるように伝えてくれと頼むのです。
 パレーは狐につままれたような思いがしました。パレーは良かった探しを知らなかったのです。パレーはナンシーに良かった探しを知っているかを尋ねました。するとナンシーは良かった探しを知らないのはベルディングスビルの町ではパレー様ただ1人だけだと言うのです。ナンシーは涙ながらに言いました。「パレー様、お嬢様はここにいらした時、第一番におば様に覚えて頂いて一緒に良かった探しをしてもらおうとおっしゃいました。でも良かった探しは亡くなられたお父様が始められたゲームだから、どうしてもお父様の事をお話しする事になる。だから、だからお嬢様はあきらめなさったのです。それがどんなに辛い事だったか…」
 ポリアンナはお母さんの遺品の鏡に向かいながら「お父さん、お母さん。私、ジミーがペンデルトンさんの子供になれて本当に良かったと思っているのよ。こんな時でも生きてて良かったと思える事があるのがとっても嬉しかったの。でもそれをジミーやおじさまに言ってあげる事ができないって気がついた時、私…」そう言って泣き続けていました。そこへパレーおば様が入ってきてバタンとドアを閉めたのです。ポリアンナはびっくりしました。あのおしとやかだったおば様がこんなに大きな音を出してドアを閉めるなんってポリアンナには考えられなかったのです。不思議に思うポリアンナにパレーは言いました。「嬉しい事があると静かにドアを閉めたりなんかできないものなのよ、ポリアンナ」パレーはベルディングスビルの人々がやってきてポリアンナに良かった探しを続けるように言っていたと伝えました。「でも私ダメなの、みんなの為に良かったを探してあげるのはそんなに難しくなかったけど、今自分の為に探すのは難しすぎるの。せっかく見つけたと思ってもそれがかえって…」「ポリアンナ、私に手伝わせてちょうだい。そうすればきっとうまくいくわ。一緒に良かった探しをしましょ」「おば様…」「その為にはゲームの事を初めからちゃんと教えてくれなきゃいけないわ」「でもそれは…」「ポリアンナ、私はね、大好きなジェニーお姉様をさらっていったお前のお父さんをとても憎んでいた。でも今ではお前をこの世に送りだしてくれた2人に感謝の気持ちでいっぱいなの。今まで憎んだり恨んだりした自分が本当に恥ずかしいと思っているの。お父さんの事もお母さんの事もいっぱい話してちょうだい、お前が大好きな人たちの事を私も知っておきたいの」「ありがとうおば様、私とっても嬉しいわ、本当に良かったと思うわ」「ポリアンナ、私もお前と一緒にいられて本当に良かったと思ってる」そう言って2人は抱き合って泣き続けるのでした。
第24話 もう一度歩きたい!
 ポリアンナが寝たきりになって1ヶ月が過ぎようとしていました。パレーをはじめ町中の人々の願いも空しく、ポリアンナの病状は悪くなる一方でした。歩けなくなった頃は自分で寝返りを打つ事はできましたが、今ではそれすらもできません。ポリアンナはこの1ヶ月の間、面会謝絶の為ジミーやペンデルトンさんやスノー夫人に会っていません。その中でも特に大好きなチルトン先生に会えない事がポリアンナには辛かったのです。パレーおば様は一緒に良かった探しをしてくれるようになり、ペンデルトンさんとも仲直りしてくれたのですが、チルトン先生とは相変わらず仲直りしてくれませんでした。
 チルトン先生は自分の患者たちから聞いたポリアンナの容体があまり良くないのを知ってたいそう心配になりました。そこで事件の様子を知っているジミーから一部始終を聞き出すと、チルトン先生はその夜、新しい医学に関する報告書や文献など知りえた限りのポリアンナの病状を比較検討を続けました。ポリアンナの事を思うとそうしないではいられなかったのです。そしてとうとうチルトン先生は大学の先輩のエームス博士が手術に成功した患者の症状がポリアンナにそっくりだという事がわかったのです。手術した患者の80%は元どおり歩けるようになったと報告されていました。チルトン先生はさっそくペンデルトンさんに知らせに行くとペンデルトンさんは大喜びでした。ところがチルトン先生は困っていました。それはポリアンナをエームス博士に紹介する為には、どうしても自分が診断しなければならない。しかしハリントン家から依頼もないのに自分からポリアンナを診察に行く事はできないのです。パレーはチルトン先生を嫌っている、それを痛いほどよく知っているチルトン先生は、例えポリアンナが歩けるようになる方法を知っていてもそれを実行する事ができなかったのでした。
 チルトン先生はペンデルトンにチルトン先生とパレーとのケンカの理由を話しました。ケンカの理由は親友のペンデルトンでさえ知らなかった事でした。それは今から14年前にさかのぼります。当時チルトン先生とパレーは恋人同士だったのです。パレーは大好きだったお姉さんのジェニーをジョン牧師に取られてしまい、ジョン牧師をたいそう恨んでいました。しかしジェニーとジョン牧師の駆け落ちを偶然にも見ていたチルトン先生は、ジョン牧師の事を悪く言うパレーに向かってジョン牧師を弁護し、パレーを責めてしまったのです。その事に腹を立てたパレーはチルトン先生に永遠の別れを告げて、以来14年間2人は1度も顔を見あわせることはなく独身でいつづけたのでした。
 チルトン先生とペンデルトンさんの話を偶然にも聞いてしまったジミーはパレーおば様の所に駆けつけ、「ポリアンナがもう1度歩けるようになる為には、おばさんはチルトン先生を呼ぶべきだ。せっかくポリアンナが歩けるチャンスなのに、大人たちの事情の為に治るチャンスを逃したんじゃポリアンナがかわいそうだ」と言うのでした。パレーおば様はポリアンナが歩けるようになる為には、どうしてもチルトン先生に診察してもらわなければならない事を知ると胸が苦しくなりました。しかしパレーはポリアンナの為に意を決したのです。ポリアンナはお父さんの夢を見ていました。そしてポリアンナが目覚めた時、お父さんにそっくりなチルトン先生が枕元に立っていたのです。ポリアンナはチルトン先生がパレーおば様と仲直りした事を知ると大喜びで涙を流しながら良かったと言うのでした。
第25話 危険な手術
 チルトン先生はポリアンナを診察した後、パレーおば様にポリアンナは歩けるようになる可能性がある、しかしその為にはボストンの病院まで行って大きな手術をしなればならないと言います。パレーおば様は失敗する場合もあると聞いて心配になりますが、チルトン先生から治る可能性があるならそれに賭けてみるべきだと説得され、ボストンに行ってポリアンナを手術する事にしました。
 ポリアンナは旅行に耐えられる体力を取り戻し注文した車椅子が届くと、さっそくボストンへ出発する事になりました。駅にはジミーから知らせを受けた町の人々が待ち受けていました。ペンデルトンさんはチルトン先生にこの旅がチルトン先生とパレーおば様の再出発になるようにと言います。そしてポリアンナとパレーおば様とチルトン先生の3人は町の人々に見送られてポストンへ向けて旅立っていきました。
 病院に着いた3人はさっそくエームス先生と看護婦のデラを紹介されました。2人ともとってもいい人でポリアンナはこの病院がとっても好きになってしまいました。それからの数日、ポリアンナは手術に備えての検査や診察に追われて過ごしました。そしてエームス先生の診断が下される日が来ました。エームス先生はポリアンナが歩けるようになる可能性は20%しかなく、そればかりか手術に伴う生命の危険すらあると言うのです。パレーはショックでした。20%の可能性に賭けるか、生命の危険や手術の苦痛をすべて避けて今のままの状態を続けるか、2つに1つを選ばなければなりません。パレーおば様は命の危険を冒してまで20%しかない可能性に賭けるのは反対でした。もうポリアンナのいない生活は考えられないので、手術をせずにポリアンナの足となりポリアンナの行きたい所へ車椅子を押して行くと言うのです。しかしチルトン先生は身寄りのないポリアンナが1人残った時の事を尋ねます。チルトン先生はポリアンナの意志を尊重すべきだと言うのでした。
 チルトン先生はポリアンナを病院の庭に連れ出すとポリアンナにパレーおば様は手術をやめたがっていると言います。そして手術は命の危険があるばかりか10のうち2つしか歩けるようにならないと説明したのです。ポリアンナは手術にチルトン先生も立ち会う事を知ると、手術する事にしました。ポリアンナはどうしても自分の足で歩けるようになりたい、その為には手術してわずかでも歩けるようになる可能性が残されているなら、それに賭けてみたいと言ったのです。ポリアンナのお父さんはどうしてもやりたい事があって、それが正しいいい事だと思ったら、どんなに苦しくても辛くてもやってみるべきだとポリアンナにいつも言っていたのでした。その様子を見ていたデラは、とこまでも前向きに生きようとするポリアンナの姿とポリアンナを見守るパレーおば様とチルトン先生の愛情溢れる姿に深い感動を覚えずにはいられませんでした。
 そして手術の日がやって来ました。歩ける可能性20%、そのうえ命の危険さえ考えられるというエームス先生の宣告に、手術を断念してベルディングスビルに帰ろうとしたパレーおば様でしたが、そのすべてを知ったうえで手術を受けたいというポリアンナの決意は固かったのです。ポリアンナは手術室に入っていきました。
第26話 死なないでポリアンナ
 手術室の前でパレーおば様はポリアンナの想い出にひたり、手術の成功を祈ります。一方ベルディングスビルでもポリアンナの手術が行われるという知らせを聞いた人々がその成功を祈り続けていました。
 5時間後、手術は終わりました。エームス先生は内出血した血の塊が神経を圧迫しており、それを取り除く事はできたのですが手術に長時間の麻酔を使った為、麻酔が覚めるまでは油断ができないと言うのです。ポリアンナはなかなか目覚めませんでした。パレーおば様は悲観してしまいますが、ようやくポリアンナは目覚めたのです。ポリアンナは夢を見ていました。夢の中でお父さんとお母さんがポリアンナの手を引いて歩いている。でもいつのまにかお父さんもお母さんもいなくなってポリアンナが独りぽっちになってしまったところで麻酔から覚めたのです。パレーおば様とポリアンナは手を取り合って手術の成功を喜び合うのでした。そして麻酔から覚めた時、パレーおば様とチルトン先生が見守っていてくれているのを見たポリアンナはまるで夢の続きを見ているかのようでした。5時間を越える大きな手術に耐えて、気づかわれた麻酔による昏睡状態からも覚めてパレーおば様やチルトン先生をほっとさせたのです。
第27話 第1部完・愛になりたい
 ポリアンナはパレーおば様とチルトン先生が夢の続きのように自分のお父さんとお母さんだったらどんなに嬉しい事だろうと言うと、パレーおば様もチルトン先生も一瞬お互いの顔を見合わせた後、顔をそむけてしまうのでした。
 そして数日後チルトン先生はベルディングスビルに戻る事になりました。チルトン先生はポリアンナとパレーおば様に別れを告げるとベルディングスビルへ戻ってしまいました。汽車の中でチルトン先生はひどく大事なものを忘れて来たような落ちつかない気分に襲われていました。チルトン先生はベルディングスビルに戻るとペンデルトンさんの家に行きました。そしてペンデルトンさんに手術の報告をすると、逆にペンデルトンさんからパレーおば様との仲に進展があったかを尋ねられてしまいます。チルトン先生は何とかこの機会にパレーおば様との仲を昔のように戻したいと考えていたのですが、それを言う事はできませんでした。チルトン先生はこの14年間ずっとパレーおば様を愛し続けてきました。でもチルトン先生は相手の気持ちがわからないのに結婚を申し込む事はできないと言います。ペンデルトンさんもパレーおば様の気持ちを知りたかったのですが、パレーおば様は誰にでも気安く心の内を話す人ではありません。2人とも悩んでしまいました。しかしその会話をジミーがこっそり隠れて聞いていたのです。ジミーは自分が何とかしなくてはと決心しました。
 早く治りたい一心から痛み止めも使わず頑張り抜いたポリアンナは順調に回復し、いよいよリハビリテーションが始まりました。リハビリはポリアンナにとって痛くて辛いものでした。でもポリアンナは痛いのは生きてる証拠だから痛くて良かったと思ってリハビリの苦しみに耐え抜いたのです。リハビリは連日続けられました。それはポリアンナにとって想像以上に辛く厳しいものでした。
 ある日ペンデルトンさんとジミーがボストンの病院まで見舞いに来てくれました。ジミーはポリアンナと2人っきりになった時、パレーおば様がチルトン先生の事をどう思っているかを尋ねました。そしてジミーはポリアンナにパレーおば様のケンカ別れした昔の恋人がチルトン先生だった事を告げたのです。ポリアンナはびっくりでした。ジミーはチルトン先生が今でもパレーおば様の事を愛しており、パレーおば様さえよければ結婚したいと言っていたと言うのです。ポリアンナは大喜びでした。大好きなパレーおば様とチルトン先生が自分のお父さんとお母さんになってくれる、そう考えただけでポリアンナの胸ははずむのでした。でもポリアンナはパレーおば様がチルトン先生の事を愛していないと思っていたので、すぐに考え込んでしまいます。その様子を見ていたデラはパレーおば様は今でもチルトン先生を愛していますよとポリアンナを励まします。パレーおば様とチルトン先生、2人は好き同士なのにお互いの気持ちがわからなくて悩んでいるだけだと考えたジミーとポリアンナは、とある計画を企みます。ポリアンナはベルディングスビルにいるチルトン先生にパレーおば様が病気だからボストンの病院まで来てほしいと、日付と時間まで指定して手紙を出したのです。
 チルトン先生が汽車でボストンに向かっていた頃、ポリアンナはパレーおば様を買物に行ってもらう事を口実にお粧ししてもらいます。ポリアンナは何とか自分で車椅子から立ち上がってパレーおば様の髪にバラの花をさそうとしますがポリアンナは立ち上がる事ができませんでした。そしていかにも偶然を装って病院を出たところでパレーおば様とチルトン先生を合わせることに成功したのです。チルトン先生はパレーおば様が病気だと聞いていたので元気なパレーおば様をみてびっくりしてしまいますが、ポリアンナたちの企みを知らないパレーおば様にはなんの事だかさっぱりわかりませんでした。そして2人は病院の庭で話し合います。パレーおばさんはチルトン先生に14年前のケンカの事を泣きながら謝り2人は抱き合ったのです。するとどこからともなく拍手が聞こえてきました。ハレーおば様とチルトン先生が14年ぶりに仲直りした光景をポリアンナとジミーが見ていたのです。ポリアンナたちだけではありません、ペンデルトンさんやエームス先生、デラ、そしてナンシーやトムまでが駆けつけ花束を渡して2人の14年ぶりの仲直りと新しい門出を祝福したのです。その様子を見ていたポリアンナはどうしても自分の手でバラをパレーおば様に手渡したいと考え、思い切って車椅子から立ち上がりました。そして途中転びながらも1人でパレーおば様のところまで歩きバラを手渡したのです。「おば様。私、私歩けたのよ。本当に良かったわ」そう言ってポリアンナとパレーおば様は抱き合って喜ぶのでした。
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