HIRAO'S HOME PAGE > 世界名作劇場 > 家族ロビンソン漂流記 ふしぎな島のフローネ > 家族ロビンソン漂流記 ふしぎな島のフローネ 感想

家族ロビンソン漂流記
ふしぎな島のフローネ  感想

 「家族ロビンソン漂流記 ふしぎな島のフローネ」はスイスからオーストラリアに移住しようとしたロビンソン一家が嵐で無人島に漂流し、そこで繰り広げられるサバイバル生活を描いた異色の作品です。
 物語はスイスのベルン市でロビンソン一家が暮しているところから始まります。お父さんは医者をしていましたが、ある日、オーストラリアのメルボルンで病院を経営する古い友人から手紙が来て、オーストラリアは医者が足りないから来てくれないかと誘われます。お父さんは医者というものは医者を必要としているところで働くのが生き甲斐であると考え、家族を連れてオーストラリアに移住する事にしました。ところがオーストラリア北東の珊瑚海までやって来たところで嵐に遭遇し、船は座礁して乗組員と乗客はみんなボートで脱出してしまいます。残されたロビンソン一家は筏を作って近くに見えていた無人島に上陸。そしてそこでサバイバル生活を繰り広げます。生きて行く為の生活必需品はすべて自分達で作りだし、さらに脱出用の船まで自分たちで建造します。無人島で生活するようになって1年が経過した頃、同じく近くの海で遭難した船に乗っていたモートンさんとタムタムが無人島に漂着。ロビンソン一家は家族以外に1年ぶりに出会った他人を歓迎します。モートンさんはとても気難しい人でしたが、ロビンソン一家は困り果てていましたが、しだいにロビンソン一家と親しくなっていきます。お父さんとお兄さんの努力のおかげで無人島の生活もそれほど不便ではありませんでしたが、無人島は実は火山島で、地震が頻発するようになり、いつ噴火するかわからない状態になったので、お父さんたちは脱出を決意。船員だったモートンさんの指示で船を作り、ようやくオーストラリアに脱出するのでした。
 この作品で注目すべきはやはり何でもできる頼りになるお父さんでしょう。本当に感心するくらい何でもこなしてしまいます。例を挙げれば筏やカヌー、船、テント、家、井戸はもちろんの事、砂糖や塩、揚げ句の果てにはロウソクや靴まで作ってしまいます。筏やカヌー、船なんかはお兄さんと一緒に試行錯誤を繰り返し、合計5隻も建造していました。こんなお父さんが一緒にいれば無人島生活も恐くないってもんです。これほどまでに頼りになるお父さんは世界名作劇場の中にはいないのではないでしょうか? マルコやスターリング、ジョンのお父さんはあまり頼りにならないし、セーラやポリアンナのお父さんはすぐに亡くなってしまったし、ジョオやナンのお父さんはほとんど登場しなかったし… 頼りになりそうなのはルーシーとナナミのお父さんくらいですが、やはりフローネのお父さんに比べたらまだまだです。
 逆にお母さんは恐がりの心配性で、子供たち以上に無人島生活に脅えていましたが、それでも農家の出身だけあって、畑を作ったり、お父さんたちが木をうまく切り倒せなかった時にアドバイスしたりして助けていました。
 主人公のフローネで思い出されるのは“ブス”事件でしょう。お兄さんがつい口を滑らせてフローネの事をブスと言ってしまった為にフローネが激怒した事がありました。確かにフローネはひょうたん顔で眉毛も太く、そばかすだらけで決して美人タイプではありませんが、きっと大人になったらきれいになるのではないでしょうか? それとフローネは何かにつけてすぐに服を脱ぐ癖がありました。池や滝壷で泳ぐ時はもちろんの事、雨が降ったらシャワー代わりだと言って服を脱ぎ、船が通ったら服を脱いで旗代わりにして振り続けるし、本当によく脱ぎました。
 途中から漂流して無人島の仲間に加わったモートンさんも注目すべき登場人物の1人です。モートンさんは一見、頑固で気難しく、ロビンソン一家はモートンさんに相当手を焼いていました。しかしモートンさんは根っからの悪人ではなく、本当は優しい人なのです。ただ、自分が優しい人だとは思われたくない為に、つい自分を悪人のように見せてしまう癖がありました。例えばモートンさんはロビンソン家のカヌーを勝手に持ちだして無人島を脱出し、自分だけ助かろうとした事がありました。お母さんたちはモートンさんの自分勝手さに呆れ返りましたが、本当はモートンさんは無人島で暮すロビンソン一家を助ける為、自分の命を犠牲にしてでも発見してもらおうと考えていたのです。こういう人ってあまり見かけませんが、いい人なのにそう思われたくない不器用な人に思えてしまいます。
 「ふしぎな島のフローネ」の時代設定で疑問に思う事は、ニュータイプ95年2月号にはロビンソン一家は1813年にスイスを出発した事になっていますが、どう考えても1837年にオーストラリアに着いたルーシー一家よりも時代設定が後のように思えてならないのです。例えばルーシーはイギリスからアデレードまで3ヶ月以上かかっていますが、フローネはイギリスから珊瑚海まで2ヶ月ほどで着いています。さらにシドニー〜メルボルン間に鉄道が走っていたりもしました。この「ふしぎの島のフローネ」の原作は1812年に発行されましたから原作の時代設定はあっていると思われますが、それをアニメ化するにあたり、時代設定を50年ほど後ろにもっていったのではないかと思われます。ただ、アニメの中では年代のわかる言葉は一切聞かれませんでしたから、いったいいつの時代設定なのかは不明のままです。
 まったくの余談ですが、EDテロップの登場人物の名前に少し間違いがありました。ロビンソン一家がライン川を下った時に、一緒に乗っていたルイーゼコップさんの名前がハイーゼコップになっていました。他にもお父さん役の声優の小林勝彦さんの名前が、10話から小林修さんに変更になっていましたが、これは本当に声優が変更になったそうです。
 この作品の訴えている事は、失敗してもあきらめてはいけないという事ではないでしょうか。例えばお父さんとお兄さんは無人島に漂流してからとりあえずカヌーを作りますが、せっかく作ったカヌーはあっという間に沈んでしまいます。お父さんは生木で作ったから割れてしまったのが原因だと判断し、あきらめる事なく鉄の木ですぐにもう1隻作り上げます。さらに今度はそれを参考にして何ヶ月もかかって大きな船を作りますが、それも嵐で沈没。しかしそれにもくじけず、もう1隻船を作ってとうとう無人島からの脱出に成功します。他にロウソク作りも一度は失敗しましたが、あきらめる事なく再びチャレンジして成功しています。お母さんも畑を作ろうとしましたが、一度目は野生の猪に畑を荒らされ全滅。再度チャレンジした畑も今度は鳥に荒らされて全滅。それでもくじけずに三度目にようやく成功し、畑から取れた食料を食べる事ができました。失敗した時には落ち込みもしましたが、決してあきらめる事なく挑戦し続けることが大切なのではないでしょうか。

評価
 項目 5段階評価 コメント
不幸度 ☆☆ 無人島に漂流した事は不幸ですが、けっこう楽しんでましたから…
ほのぼの度 ☆☆☆☆ いつも明るく能天気なフローネを見ているとほのぼのしますね。
お薦め度 ☆☆☆ サバイバルするならこの作品は必見です。
戻る
inserted by FC2 system