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大草原の小さな天使
ブッシュベイビー  原作

原作本の紹介 大草原の小さな天使 ブッシュベイビー
原本 The Bushbabies
発行年 1965年
原作者 ウィリアム・H・スティーブンソン
イギリス人(1925年〜)
訳書名 カバの国への旅
出版社 新潮社
翻訳者 青木日出夫

アニメとのストーリーの違い
 アニメと原作の大きな違いは、物語の始まりにあります。アニメではブッシュベイビーを捕まえるところから始まり、そして人に慣れないと言われるブッシュベイビーをジャッキーが育て上げ、そしてその間に探偵団や密猟者の話が続きます。ところが原作では物語の始まりから既にブッシュベイビーはジャッキーによって飼い慣らされており、しかもジャッキー達がケニアを去る事が決まり、ナイロビから出航するところから始まるのです。原作はアニメの中盤となる19話の一部と、そして22話あたりから始まりまるので、ここまでのアニメのストーリー、つまりケイトやミッキーなどのクラスメイトや探偵団、密猟団の話などはすべてアニメのオリジナルとなる。
 ジャッキーが船を抜け出してからのストーリーはアニメと原作は類似していますが、原作には密猟団やミッキーが登場しないので、テンボが密猟団に追われたり、ミッキーが冒険に加わったりするのはアニメのオリジナルです。しかしそれ以外の細かなストーリーについてはアニメは原作を踏襲しています。ただ、原作では旅の序盤に使うカヌーをテンボが盗んできていますが、アニメ化にあたってはさすがに泥棒できないので、お父さんのカヌーを使うという設定に変更されている。
 アニメではヌディに向かって進み続けるジャッキーとテンボを、お父さんとお兄さん、偽の輸出許可証を持ち出された密猟団、水袋を盗まれたワランガ族、警察、軍隊が追いかけるという設定で、なかなかスリルとサスペンスが豊富に詰まっていますが、原作では警察と軍隊がジャッキーとその誘拐犯を探しているくらいで、お父さんやお兄さんが探している場面も登場しません。ひたすらジャッキーとテンボの旅を二人の視点から描いている。
 またアニメでは密猟団を象牙を売って金儲けをする白人の悪人として忌み嫌っていたが、原作では少し事情が異なっている。原作には密猟団は登場しないが、贈狩りをするワリングルー族の話は登場する。このワリングルー族は自分達の食べる分だけ象を弓矢で狩って食べていた。しかし東アフリカの野生動物を護ろうとしている白人が勝手に作った法律をワリングルー族が従おうとしない為、彼らは密猟者の烙印を押されているという話が登場する。原作で登場する密猟者はアニメのような悪人ではなく、それを生活の枷にしているアフリカの部族なのだ。
 ジャッキーとテンボの旅はクランクショー博士の登場後、アニメと原作で大きく異なる事になる。アニメではクランクショー博士はジャッキーとミッキーが密猟団に捕まっている間にテンボと合流し、無事に密猟団からジャッキーとミッキーを奪い返し、足を怪我していたミッキーがクランクショー博士のおんぼろ飛行機マザーグース号で帰る事になる。しかし原作ではミッキーがいない為、矢で怪我をするのはジャッキーだし、ジャッキーが怪我して動けなくなっているところへマザーグース号が飛んできたので、テンボは助けを求めるが、クランクショー博士はジャッキーがどんなに説明してもテンボが誘拐犯だと信じて疑わないので、テンボはクランクショー博士に説明するのを断念し、クランクショー博士のライフルと弾丸を奪って逃走してしまう。そしてジャッキーもそんな頭の固いクランクショー博士に嫌気が差し、博士の元を抜け出して再びテンボと合流して旅を続ける事になる。ジャッキーに逃げられたクランクショー博士は再びマザーグース号を飛ばすが、途中でエンジンが止まってしまい、さらには機体が空中分解して線路に不時着してしまう。
 クランクショー博士と別れた後の火災から逃げ惑うところは原作もアニメも同じで、アニメは原作を忠実に再現している。しかし火災から逃げた後、マサイ族の小屋での出来事はアニメと原作では多少異なる。アニメではジャッキーが倒れ、マサイ族のサフィナがジャッキーの世話をして、ヒョウに襲われそうになるが、原作ではサフィナは登場せず、その代わりにおばあさんが登場する。そしていきなりテンボとヒョウとの戦いになる。アニメと同様、原作でもテンボが足をくじいてそれから数日マサイ族の小屋に泊まる事になるが、原作ではアニメのようにマサイ族と仲良くなる事はなく、マサイ族の男はテンボが誘拐犯だと知って警察に知らせに行くし、丸木船を借りるのでさえマサイ族の男とテンボは騙し合いをします。
 丸木船で氾濫した川を下り、線路沿いの堤防が決壊するところまではアニメは原作と同じになるが、原作には密猟団は登場しないのでヌディ駅でのテンボと密猟団との格闘はない。ヌディ駅の駅長のギデオンは理解ある人で、誘拐事件の事は知っていたが、テンボとジャッキーが手をつないで駅にやって来たので、これは誘拐ではないと悟ったのだ。
 しかし再び決壊現場に戻ってからはアニメと原作ではまったく異なる。アニメでは決壊現場を挟んでお父さんと再会し、列車が来ている事を伝える為にブッシュベイビーを伝令にやりますが、原作では対岸でお父さんが信号弾を上げたのを誤解してテンボはお父さんに向かってライフルを発砲してしまい、お父さんの周りにいた警察に完全に誤解されてしまう。そこでテンボへの誤解を解く為と特急列車の接近を知らせる為にブッシュベイビーを伝令に走らせ、無事に連絡が取れて、テンボの誤解が解けるのだ。
 さてアニメではミッキーが輸出許可証を盗んだ為に、ジャッキーは船を下りテンボと一緒に旅を続ける事になったが、原作ではミッキーが登場しないので、輸出許可証はお母さんがパスポートや健康診断書と一緒に持っていたという落ちがある。そして物語の最後にアニメではブッシュベイビーを自然に帰してしまうが、原作では輸出許可証が見つかった事から、そのままイギリスに持ち帰ってしまう。
アニメとのキャラクターの違い
 アニメと原作のキャラクターの違いとして、ジャッキー達の家族構成が挙げられます。アニメではローズ家は父のアーサー、母のペニー、兄のアンドルー、妹のジャックリーヌの4人家族ですが、原作では他にもジャッキーの下にケビンとサリーの2人の弟と妹がいて、合計6人家族となっている。
 さらに原作はアニメの22話あたりから始まる為、それまでに登場するジャッキーの友人のケイトやミッキー、そして密漁団やムーア、そして女医のハンナなどはすべてアニメオリジナルの登場人物となります。またブッシュベイビーの名前もアニメではマーフィーですが原作ではカマウという名前で少し違っていたりする。
 アニメと原作のキャラクターでもっとも異なるのはクランクショー博士だろう。アニメのクランクショー博士は物わかりのいい年寄りで、テンボがジャッキーを誘拐などするはずがないと信じていたが、原作のクランクショー博士は物わかりの悪い頑固な年寄りで人の言う事に耳を貸さず、テンボがジャッキーを誘拐したと信じて疑わないような人だった。
 また物語の終盤で登場するマサイ族もアニメと原作では異なる。アニメでは少し気の弱い男と心優しい妹が登場するが、原作では気の弱いところは変わらないが抜け目のない男とおばあさんが登場するだけで、アニメのようにテンボやジャッキーと仲良くなる事はなかった。
まとめ
 原作に比べるとアニメでは1年間の物語にする為に、前半は原作にないジャッキーのアフリカでの生活を付け加えてアニメオリジナルのストーリーとしている。そしてそこで遭遇した密猟団が、テンボとの旅が始まった後も次々と追いかけてきて、物語を面白くしている。この密猟団の設定はアニメオリジナルのものだが、ジャッキーは何度も密猟団に捕まったりとなかなか物語を面白くしている。
 しかしいただけないのはミッキーの存在だ。冒険を始めの前の日常生活を描いた前半においてもミッキーは邪魔な存在だったが、ジャッキーとテンボの二人だけの旅に、アニメでは無理矢理ミッキーを連れて行く事になり、これは正直言って邪魔なだけで面白みをなくしてしまっていた。なぜこんな邪魔者を付け加える事になったのか不思議なところだが、クランクショー博士に連れて帰ってもらってホッとしたところだ。
 他にも原作で登場したキャラクターが、アニメでは少しいい人になっていたりと少しずつ設定も変わっているが、おおむね原作のストーリーを踏襲しており、原作もアニメも両方とも楽しむ事ができる。ミッキーさえいなければアニメの方が密猟団など面白い脚色をしていると言えるだろう。

評価
 項目 5段階評価 コメント
アニメとの類似性 ☆☆☆ アニメ後半の旅の部分はミッキーの存在を除いてほとんど同じです
入手の容易度 ☆☆ 絶版にはなっていないので出版社から取り寄せ可能です
お薦め度 ☆☆☆☆ アニメにかなり近い設定なので、楽しんで読めます
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