昨夜は22時30分に寝て以来ぐっすりと寝続け、目が覚めたのは4時ちょっと前だった。まだ外が暗いこともあり二度寝すると、次に目覚めたのは5時ちょうどだった。今朝もぐっすりと寝ることができた。そろそろ起き出さなければ。 バンガローから外を見ると青空が見えて太陽まで出ていた。天気予報を確認すると今日は昼過ぎまで晴れで以降は曇りとのことだった。台風一過と言ったところだろう。ただし陸別の下流にあたる足寄では町内を流れる2本の足寄川と利別川が氾濫して住宅が浸水し避難指示が出ているそうだ。
昨夜はバンガロー全体が揺れるほどの大きな衝撃があり何が起きたのかよくわからなかったので朝になってバンガローの周りを一周して確認してみたがそれでもよくわからなかった。少なくとも木が倒れてきたりバンガローに衝撃を与えるほどの落下物はなかった。 バンガローで作業できたので撤収準備は楽にできたが、なぜか時間は余計にかかってしまった。快適だからと言って早く撤収できるかは別問題だ。おそらくこのバンガローはトイレと炊事場から離れていたのが原因のように思われた。バンガローからトイレや炊事場に行くには豆腐屋の前を横切る必要があるがこの豆腐屋の従業員と思われる人が朝早くから店の前を台風の後片付けをしていたので話をする。今日はどこまで行くのかと聞かれて美幌あたりと答えるが、カネラン峠を越えて阿寒湖経由で美幌まで行くと聞いて驚いていた。
7時15分にコンビニを出発すると道道143号線に入る。ここから8kmほど先にある標高517mのカネラン峠までは宇遠軽川に沿って登っていく。途中、陸別サーキットがあった。どんなサーキットなのか興味があったが、どうやら全長1.3kmのオフロード専用のコースらしい。 ところがコンビニを出発して10分も走ると前方から工事用の車両がやってきてセンターラインを越えて私の方にゆっくりと近づいてきた。何だろうと思って止まると、この先の道は通行止めになっているとのことだ。私は台風の影響ですかと聞くと倒木で通れないのでさっきゲートを閉めてきたとのことだった。
私はツーリングマップルをよく見て釧北峠を通ることのできるルートを考えた。すると国道242号線を20kmほど逆走して道道621号線で国道241号線に出て、そこから元のコースに復帰するというプランを考えた。このルートだと25kmほど大回りになってしまうが、峠を1つ回避できるし今日は元々それほど走らないつもりだったので何とかなるだろう。そう考えた私は自転車をUターンさせるとここまで登ってきた道道143号線を下り始めた。 こうした通行止めは2009年にも経験した。この時には迂回路もなく大幅なコース修正を余儀なくされた。通行止めが北海道自転車ツーリングの2日目の序盤だったことから一部ショートカットして元のコースに復帰したが、これが今日のような帰宅直前とかだと影響が大きくなってしまう。と言っても今回は元々迂回する予定だった道が通行止めになったのでショートカットは十分可能だったのだが。 先ほど買い出ししたコンビニを過ぎ、カブトの里も通過して国道242号線を南西に走り続けた。この国道242号線は足寄に向かってわずかに下っているので走りやすいはずだが、今日は南西から風が吹いているのでどちらかというと向かい風のせいで走りにくかった。そして相変わらずこの国道242号線はアスファルトの温度ひび割れがひどくて走りにくかった。 私は国道242号線を南西に走りながら「明日女満別から飛行機で帰ろうとしている人がこんな場所を逆に走っていていいのだろうか?」という考えがふつふつと沸いてきた。正直言うと今日の走行も予定を変えてしまったのでどれだけ走ればいいかよくわかっていない。本当に明日女満別発の飛行機に乗れるのか心配になってきた。
ツーリングマップルには旧上利別駅が懐かしい雰囲気の木造駅舎と書かれていたので行ってみたが駅舎は既に撤去されたようで、そこにあったのはバス停とトイレだけだった。どうやら1年前の暴風雨で屋根が傷つき修理に多額の費用がかかることから取り壊しが決まって3〜4ヶ月前に撤去されたらしい。残念だが仕方がない。 Uターンから1時間20分後の8時45分に道道621号線との交差点に到着。この交差点の標高は130m程度なので陸別から標高差で90mほど下ってきたことになる。私はここから国道242号線を離れて国道241号線に向かうべく道道621号線に入っていった。
この道道621号線は地図を見る限り、ある程度の峠になっているだろうと覚悟はしていた。最初のうちこそ緩やかな傾斜の登りだったがやがて急な傾斜が延々と続くようになり、結局麓から150m登らさせられることになった。丘越えと言うには高く峠越えと言うには低い、頂上の景色から高原を越えるようなイメージだった。 この道道621号線にも温度ひび割れが多く見られた。この温度ひび割れがあると乗り越える際に後輪のスポークが折れてしまうそうでとても怖い。この温度ひび割れは昼と夜の気温差の激しい場所で発生する傾向にあり、北海道だと内陸部によく見られる。
9時35分にラワンドライブインに入って牛乳を注文。店のおばさんとしばらく立ち話をするが、驚いたことにこの付近は昨日の台風の影響でいまだに停電しているとのことだった。昨日の台風はこのあたりでもすごかったらしい。後で知ったところによると、昨夜から今朝にかけて北海道全土で8万戸ほど停電し、ここ足寄町でもまだ500戸ほど停電しているとのことだった。 このラワンドライブインの牛乳は本当においしい。牛乳好きの私が言うのだから間違いない。もちろん市販の牛乳ではなく絞り立ての牛乳を煮沸して殺菌させただけのものだ。カップ一杯250円と牛乳としてはとても高いが、その高いお金を払うだけの価値はあると思う。
国道241号線を少し走ると見覚えのある東屋が見えてきた。あれは2010年の台風4号の大雨の際に逃げ込んだ沼田農場の足寄ひだまりファームだ。まだ営業していなかったし、さっきラワンドライブインで牛乳を飲んできたばかりだったので写真だけ撮って通り過ぎる。6年前に台風の大雨を避けて非難した時のことを感慨深く思い出していた。 10時35分に道道143号線との交差点に到着。もしカネラン峠が通行止めになっていなければ、ここから国道241号線に合流したはずだ。7時15分にコンビニを出発し、ここまでカネラン峠経由で23km。カメ作戦を使って2時間だが標高差300m程度の峠越えなので1時間は加算が必要だ。なおかつ下りは3.5kmのダートがあるのでスピードを出すことができず3時間以上かかることを考慮すると、時間的にはカネラン峠を越えても道道621号線経由の迂回路を走っても変わらなかったことになる。
ちょうどこのあたりを走っていた頃、私は左足の裏に痛みを感じるようになった、以前から痛みを感じていたアレだ。しかしこの痛みは4日前の知駒峠越え以来、再発しなくなり私自身も痛むことを忘れていたくらいだ。ただペダルの踏み場所を変えることで改善できることを知っていたのでハンカチを使う事なき乗り切ることができた。 国道241号線も足寄川沿いに走るが、この足寄川も堤防がなく自然の流れに任したままで増水して周囲の木々をなぎ倒しながら轟々と流れていた。橋の上から見ていても恐ろしく感じるほどの流れだ。これだけ激しい流れであれば下流の足寄の町で洪水になるのも理解できる。
しばらく走ると11時10分に茂足寄パーキングエリアに到着。トイレで給水しつつパンを食べて休憩する。なぜか自衛隊の車両が大挙してやって来てトイレ休憩していった。ここまでは標高で140mほど登ってきたので勾配にして1%ほどでほとんど平坦だったが、ここからは勾配4%くらいになる。それでも国道なので傾斜はましな方だ。ここのトイレで水浴びし、この先当分の間給水場所がないのでボトルに水を満タンにして11時20分に出発する。
茂足寄パーキングエリアからは勾配が少しきつくなってきたがそれでも頑張って自転車を走らせ続けた。この頃から空に雲が多くなりはじめ、時折曇り空となった。今日は15時から曇りとの天気予報だったが少し早まったのだろうか? やがて道道949号線との分岐に12時ちょうどに到着しパンを食べながら5分ほど休憩する。このあたりはもう勾配も急で自転車で登るのも汗だくだ。ここからも頑張って自転車を走らせ続けた。このあたりの国道241号線沿いには過去にWRCのコースとなった35線沢林道や白藤の滝などがあるが、今日はあとどれだけ走らなければならないかよくわかっていなかったのでパスする。
足寄峠の頂上から距離にして2km、ブレーキをかけながら標高で100mほど急坂を下ると国道240号線との分岐だ。右に行けばすぐに阿寒湖だが、今日は釧北峠を越えて津別を目指すために左に曲がる。 ここからもさらに下りが続き尻駒別川で標高513mまで下ると今度は登りが始まる。これが釧北峠だ。釧北峠は標高594mの峠だが阿寒側から登ると80mほどしか登らない。この登りはじめでおなかが空いてきたので日陰に自転車を止めておにぎりを食べて少し休憩する。
釧北峠を出発すると勾配4%程度のそれほど急でもない下り坂が延々と続く。ただ時速30km以上出さないようにしようとするとブレーキが必要になる。ほとんどペダルを回すことなく10kmほど走ると13時30分に道の駅あいおいに到着した。
道の駅あいおいを出発すると今度は勾配1%程度のなだらかな下りが延々と続く。このくらい緩やかだと下りを感じさせないくらいだが、軽い力でペダルを回すだけで自転車は軽やかに走るのでとても楽だ。この楽な道を使って私は恒例の走行中の自転車からの写真を撮ることにした。カメラを片手で持って時速20km程度で走り、スローシャッターで臨場感溢れる写真を撮る。言葉にするのは簡単だが実際には自転車を片手ハンドルで走らせながら1kgを越えるカメラをもう片手で持って、かつそのカメラを持った手でシャッターを押すというのは至難の業だ。おかげで何度もトライすることになった。
まず飛行機のチケットは19日、20日、21日すべてとれた。それに対してこの地方の天気は明日は曇り時々晴れに対して20日と21日はいずれも曇り時々雨になっている。こんな天気なら北海道にいてもあまり意味がないし体を休めるためにも早く帰ろう。私は少しでも望みがあればチミケップ湖に向かう予定でいたが、その考えをすっぱりと断念して19日に帰るべく津別向かって走り始めた。
女満別まで走ることにしたのにはもう一つ理由がある。津別21世紀の森キャンプ場やみどりの村森林公園キャンプ場は近くに温泉がない。それに比べると女満別湖畔キャンプ場は歩いて行ける場所に温泉があり最終日に汗を流すことができる。確か2010年にも同様の理由で層雲峡から無理して女満別まで走ったことがあったが、今年も似たようなものだろう。
ところでこの時献血カードを見て気付いたのだが既に献血を400ccばかり29回しており、今度献血したら30回目となるので献血者顕彰規程により黄色のガラス器が記念品としてもらえるはずだったが、こんな北海道自転車ツーリングの途中で記念品など持たされたら邪魔で仕方がなかっただろう。
受付の前にキャンプサイトをぐるっと見渡したが、ここは雨に弱いキャンプ場で、昨日の台風7号による大雨のためにサイトは水浸しでテントを張ることのできる場所は限られていた。とりあえず2013年にテントを張ったブランコ前の場所なら地面もそれほど濡れていないし雨にも強そうだったので、そこに決めて先に受付を済ませることにした。
本来女満別野営場は区画整理されたサイトで、案内所で受付をすると指定の番号にテントを張る必要がある。しかし管理人のおばさんは今日は誰も宿泊客がいないことから受付もせずに好きな場所にテントを張ってくれていいよと言ってくれた。案外いい加減なものだ。 女満別湖畔野営場からさらに湖畔沿いに700m入り、一部ダートまで走って女満別野営場に到着した。私はこれまで旅の締めくくりはいつも女満別だったが、泊まっていたのはいつも女満別駅裏の女満別湖畔野営場だった。今回初めて女満別野営場に泊まることになり少し心配したが、いざ来てみると雰囲気は悪くない。何より湖畔沿いで眺めがいいのが一番だ。 こちらのサイトにも昨日の大雨で多少の水たまりはあった。どこにテントを張ろうかとサイトを歩き回るが、意外とこちらのサイトも水はけが悪く芝生の上に体重をかけると水がしみ出してくるような状態だった。どうやら女満別のキャンプ場はいずれも雨には弱いようだ。
コンビニで角ハイボールとコーラを買って店を出ると、ふとズボンの破れのことが気になった。私は手でズボンの裂け目を確かめると昨日とは比較にならないほど大きく破れていた。ズボンがダークグレーでパンツが黒なので仮に破れ目からパンツが見えたとしてもほとんど目立たないだろうけど、これはとてもごまかせるサイズではない。このズボンをはくことはもうできないだろう。 私は替えのズボンを持っていなかったのでどうしようか悩んだ。選択肢としては女満別で新たにズボンを買うか、寝間着代わりのジャージを履くか、レインスーツの下を履くか。私はジャージを履いて帰ることにした。下だけジャージで飛行機に乗るのは恥ずかしいが自分が思うほど人は自分のことを気にしないものである。 それよりも明日帰る決心をしてよかったと心から思った。もしチミケップ湖に行っていたら履くズボンがないのでジャージを履いて自転車に乗ることになるが、そもそもジャージにはそれほど耐久性がないのでジャージもすぐに破けてしまうことだろう。
夕陽の次は夕食の自炊だ。もう暗くなりつつあったのですぐに炊飯開始。ところが今日に限って雲が出ていたことから夕陽だけでなく夕焼けまで見えてしまい、何度も夕焼けの撮影を繰り返しながらも何とかご飯はうまく炊けたが、撮影にかかりっきりで蒸らす時間が異常に長くなってしまった。
今日は夕日がとても美しく見えたことから食事中も何度も夕陽の撮影に行くことになった。この網走湖の女満別湖畔では12年前にも美しい夕焼けを見ることができた。北海道自転車ツーリングで夕陽を見ることは多いが、夕焼けまで見ることができる機会は少ないだけに最終日の夕焼けを目に焼き付けてしっかりと楽しんだ。
温泉に着くと店の前に4台のチャリダーの自転車が止まっていた。きっと今頃温泉を楽しんでいるのだろう。私もすぐに温泉に入ろうとするが入り口から劇混みで入浴券を購入するのに長い列ができていた。この温泉はいつ来ても人で一杯な気がする。そして楽しみな温泉に浸かる。この温泉は「美肌の湯」と言うくらいで確かに肌がツルツルになるような気がする。 温泉からあがると19時40分から休憩室で旅の日記を書いた。今日もツーリング中は旅の日記を書いてこなかったので書くことがたくさんありすぎて全然書くことができなかった。早くウイスキーを飲みたかったので温泉の休憩室は1時間ほどで切り上げてテントに戻ることにした。 21時前にテントに戻ってキャンプ場の夜景の撮影を楽しむ。今夜も誰もいないので色々な角度から撮影して回った。よく考えたら今年の北海道自転車ツーリングのキャンプ場宿泊ではトータル8泊のうち利用者が私一人という誰もいないキャンプ場に4泊もしている。確かにこれまでの北海道自転車ツーリングで誰もいないキャンプ場に泊まったことはあったが、ここまで多いのは珍しい。
22時頃テント前のゴミ袋がガサガサいうのが聞こえた。これはキタキツネの仕業に違いない。私はすぐにテントを開けるとカメラを構えたが、暗すぎてカメラのシャッターが降りない。どうにか設定を変えてシャッターだけは降りたが10秒くらいのシャッタースピードになってしまい、その間にキタキツネは逃げていったが、シャッターが閉じる瞬間にフラッシュがたけて偶然にもキタキツネを撮すことに成功した。 気が付いたら今日は147kmも走っていた。最近においては記録ではないだろうか。峠越えもあったがこれだけ走れたというのは連日のハードなツーリングに体力が付いてきたというのもあるが、日に日に食料やウイスキーが減って自転車が軽くなっているというのもあるだろう。帰宅したら体脂肪を測定するのが楽しみだ。 そして今日はカネラン峠が通行止めだと聞いたときどうしようかと考えたが、どうにか迂回路を見つけだして釧北峠だけでもクリアすることができた。おかげで25kmの追加となって走行距離が伸びてしまい、今日は147kmも走ることになった。3日前の浜頓別から紋別も追い風のおかげで140km走ったが、今日は峠を越えての147kmだ。しかもこの距離を10時間で走りきったので平均時速は14.7km/hで今回の北海道自転車ツーリングで最高峰となる足寄峠も越えているのにカメ作戦よりずいぶん早い。もう体力が落ちたのかと思っていたが、まだまだ走れるようだ。
気になるのは左足の裏の痛みだが、これは靴を替えたことが原因と思われた。過去3回ほどの北海道自転車ツーリングはマリポサトレールLowを使っていた。この靴はトレッキング用としては非常に優れていたが、爪先の部分が少し窮屈で小指が痛くなるという問題があった。それでもこれに変わる靴がなく使い続けていた。 しかしこの靴も日常の使用にソールがすり減って使えなくなり買い換えることとした。ちょうどその頃モンベルからラップランドストライダーワイドが新発売された。これは「足囲を大きく設計することで足幅の広い方や甲高の方にも快適にご使用いただけるワイズ4E〜F相当のワイドモデルです」とのことで店頭で試し履きしたところ甲高な私にも十分使えそうなことからすぐに購入した。 ただこのラップランドストライダーワイドにも問題がありソールのトレールグリッパーが固すぎてクッション性がないのだ。これは以前のモデルのビブラムソールの方がよかった。フットベッドはこれまで使っていたショックドクターに交換していたが、それでもソールは固く、それゆえに足の裏が痛くなったような気がする。これは来年に向けての検討課題となりそうだ。 それからもコーラで割ったウイスキーを飲みながら旅の日記を書き続けたが、さすがにこれ以上起きていると明日の行動に支障がでるので0時ちょうどに寝ることにした。今夜も暑い。今年の北海道は昼間も暑いが夜も暑いのが特徴だろう。温度は22度もありシュラフに入ると暑くて汗をかいてしまうため片足だけ出して寝る。
|
← 7日目へ 北海道自転車ツーリング2016年 9日目へ →