昨夜はぐっすりと… というわけにはいかず雨が気になって途中で何度か目覚めた。2時くらいまでは雨は降っていないようだったが、3時には雨が降っていたようだ。そして4時50分に目覚めた。この時には雨は止んでいた。今朝はやけに暑く、朝の気温は20℃を越えていそうだ。シュラフから上半身を出していないと汗だくだ。今年の北海道は初日の旭川と2日目の幌加内だけは寒かったが、それ以降は逆に暑いくらいだ。 私は雨に備えてテントで朝食を作れるように昨夜のうちに準備をしていたが、よく考えたら肝心のラーメンをサイドバッグに入れたままだったことに気づいた。私は雨が降っていない隙をついてテントから出るとラーメンを取り出し、ついでにトイレに行って用を済ませた。
しばらく旅の日記を書いていたが雨の降りそうな気配もないので5時20分から朝食の準備を始めた。今朝からラーメンはマルちゃん正麺の塩味からセブン−イレブンの金の麺味噌味に変わった。プライベートブランドで安かったのに生麺のようでなかなかおいしく今後の朝食の楽しみとなりそうだ。後で知った話だがこのセブン−イレブンの金の麺はマルちゃん正麺を作る東洋水産がセブン−イレブンのブランドで販売している麺なので同じ会社が作っているのだからおいしくて当然だ。
撤収を完了して6時30分にはキャンプ場を出発する。キャンプ場を出ると最初に足湯を撮影しようと温泉ゆめ広場に立ち寄った。温泉ゆめ広場には数多くのかかしが立てられていた。このかかしは温根沼のかかしの会がおんせん祭りにあわせて立てたもので、3年前に見た時からパワーアップして今年は100体が並べられていた。中にはくまモンやふなっしーなどのゆるキャラの他、マツコデラックスのかかしまであった。
コンビニに寄ってキャンプ場で出たゴミを捨て、バナナとカツゲンを買って店の前で食べた。店を出ようとしたとき雨が降り始めた。撤収作業中に雨にならずによかった。私はとりあえずレインシューズカバーを付けないインターミディエイトで走ることにした。足湯やコンビニに立ち寄っていたことで国道39号線に出たときには6時55分になっていた。
雨は小雨程度で済んでいたが留辺蘂に着く頃には本格的に降り始めた。私は国道242号線との交差点でレインシューズカバーを装着し雨装備をエクストリームウェザーに転向した。すると5人組と4人組のチャリダーが前方からやってきて国道242号線の遠軽方面に向かって走っていった。私は挨拶してやり過ごすがその大学のサークルと思われるメンバーにはやはり女性が何名か含まれていた。私も人のことは言えないが台風の迫っているこの雨の中をいったいどこに行くのだろう。 留辺蘂から陸別に向かうのであれば通常は置戸経由の国道242号線で南下すればたどり着ける。しかし私はどうしても道道143号線の美園峠を走りたかったので訓子府経由の道道143号線で南下することにした。その為にはまず国道39号線を相内まで走らなければならい。 訓子府目指して国道39号線を東に走る。この道は2010年に走ったことがある道だ。この付近もわずかな下りが延々と続きいつもよりもスピードを出して走ることができた。キャンプ場を出発してから18km走ってそろそろ道道143号線に曲がるはずだと注意深く走ったがどこまで走っても標識が見えない。20km走っても見えてこないので心配になったが22km走ってようやく道道143号線への標識が見えてきた。 今日は夕方から夜にかけて台風7号が北海道を通過する。これをどこでやり過ごすかが問題だが、最有力候補は陸別のかぶとの里キャンプ場のコテージに泊まること。これがダメなら陸別の道の駅「オーロラタウン93りくべつ」の2階の宿泊施設で泊まること。もしくは台風に近づくのではなく美幌まで行って美幌後楽園に泊まるという方法もある。しかし後者だと目標としている美園峠が走れなくなるのでこれは却下だ。とりあえず陸別までは走る事にしよう。
さらにこの道道143号線は道東自動車道の訓子府〜北見間が完成しておりここを走ろうとするトラックが通るので道道の割には交通量が多く走りにくかった。それでもこのあたりを走る頃には雨も止んでフードを外して走れるようになり丘の上から見る景色もよくて軽快に走った。何度か写真撮影を繰り返しながら8時35分にようやく訓子府にたどり着いた。 訓子府の町は2013年にも訪れていて、町の規模の割にはコンビニが2店、少し東側にあるローソンも含めると3店もあるのを知っていたので、ここでパンを買い店の前でバナナを食べて補給を済ませる。今日はここから先陸別までコンビニはないはずだ。
道道143号線を走っていると建設中の高速道路をよく見かける。これは建設中の道東自動車道で陸別と北見を結ぶものだ。現在は札幌から帯広を経由して足寄までだが、これが全線完成すれば足寄から訓子府、北見、美幌を経由して網走までつながるのだろうけど、網走まで行くのであれば南回りの帯広経由で行くよりも旭川経由の北回りの方が早いような気がする。
道道143号線の美園峠は少し変わった峠だ。一般的な峠はほとんど勾配が変わらず6%程度の一定の勾配が延々と続く。しかしこの美園峠は勾配に変化があり途中で息抜きできるようになっている。ギアチェンジが頻繁になって煩わしいが、勾配の緩やかな箇所では楽ができるのがいい。そして峠の頂上が近づくと再び雨が降り始めた。 10時20分に美園峠の頂上に到着。訓子府から300m以上登ったはずだが大して苦労することなく出発から1時間20分で登ってしまった。何だがこのクラスの峠を越えるのは苦でも何でもなくなってしまった感じだ。毎日の日課のように当たり前のように登れてしまう。このクラスの峠であれば平地と大差なく走れるようになってしまった。 美園峠の頂上には標識も何もなく高速道路の工事をしているだけだった。休憩することなく頂上から下り始めると一気に雨が激しくなった。私はここであることに気づいた。美園峠を越えたことで天気の支庁が網走から十勝に変わったのではないかと。十勝の方が台風に近い太平洋側にあるので雨の影響を受けているのではないかと考えた。しかし今更どうすることもできず、陸別に向かって峠を下っていくしかなかった。
この国道242号線は好きになれなかった。なぜならアスファルトの温度ひび割れがとても多いのだ。これは昼夜の気温差の激しい場所で発生し、アスファルトの昼間の膨張に対して夜間の収縮が追いつかずアスファルトが道路に対して直角に10mくらいの等間隔でひび割れが入るのだ。ひび割れ自体は2cm程度の小さなものだが、そのひび割れしている前後がくぼんでいるので自転車にかなり大きな衝撃が伝わるのだ。 この衝撃は体に不快感を与えるだけでなく自転車にも負担が大きい。特に私のようにカーボンのディープリムのホイールはスポークの本数が少ないので可能な限り後輪へのダメージを減らしたい。それにはブレーキをかけてゆっくり走るしかない。おかげでせっかくの下り坂なのにかなりゆっくりでしか下ることができなかった。
激しい雨の中を走り続けてようやく11時30分に陸別の町に到着。滝のように降る豪雨の中を1時間ほど走ったがレインスーツは見事なまでに雨を弾き、汗をかいていないこともあって中の服はほとんど濡れていない。2年前にレインスーツを買い換えて今年が初めての実戦投入のようなものだけど、これだけの雨で浸水しないのならモンベルのGORE−TEXサイクルレインジャケットも上出来だ。 とりあえず道の駅「オーロラタウン93りくべつ」に立ち寄って様子を見る。雨の当たらない場所に自転車を止めることはできそうになかったので休憩は断念するしかない。この道の駅の2階には宿泊施設がある。1泊2食付きで各部屋に風呂まで付いて6700円とのことだ。もしかぶとの里キャンプ場でコテージを断られたらここで泊まるとしよう。
キャンプ場にはテントが見えなかったので聞いてみると、今日は誰も宿泊する人はいないとのことだった。まあこんな台風の日にキャンプする人もいないだろう。2畳のコテージをお願いしたが3畳のコテージにしてくれた。コテージに向かいながらサイトの様子を確認するがサイトはどこも水びたしの状態だった。場合によってはテント泊も考えていたがこの状態を見るとテント泊をする気などまったく起きなかった。 いちいという名の3畳のコテージに行く。畳の上にカーペットを乗せただけの少し薄汚れたコテージだったが台風の雨風を防ぐにはこれで十分だ。おまけにコンセントまで用意されていたのでスマホにも充電できるし何よりテレビ見放題だ。もちろんテレビはないのでスマホでテレビを見るのだが。 ただ1つ、せっかくのコテージで気になったのが天井だ。コテージの屋根がトタン屋根だったので激しい雨が降ると雨がトタン屋根を叩く音がうるさくてテレビの音がまったく聞こえないのだ。雨が降っていなければまったく問題にならないのだろうけど、今日のような激しい雨の日にはうるさくてたまらない。しかしこればかりはどうしようもないだろう。 かぶとの里キャンプ場は私設のキャンプ場で国道から200〜300m入ったところにある林豆腐店の裏にあり一見ここがキャンプ場には見えない。この林豆腐店はかぶとムシの養殖もおこなっており、店の裏手に北方かぶとムシ自然公園があってその中にキャンプ場があるというわけだ。キャンプ場は広いうえに適度に芝生と林が整備された素晴らしい環境のキャンプ場で、とてもここが私設のキャンプ場には思えないほどだ。私は晴れた日にぜひとももう一度訪れたいと思うほどだ。ただしトイレと炊事場だけは最低限の設備だ。
キャンプ場に戻ると12時40分から洗濯することにした。サイクリングジャージーは3日前にクッチャロ湖で洗濯して以来、紋別でも昨日の温根湯でも雨のために洗濯できなかった。さらにズボンも洗濯することにした。ズボンは初日から今日まで洗濯することなくずっと履き続けている。ここ3日間くらいは気温も低くそれほど汗もかいていないが、初日からの4日間で相当に汗をかいていたのでそろそろ危ない。 私はジャージに履き替えるとズボンもまとめて洗濯し屋根のある炊事場のロープに干しておいた。こんな台風の日に乾くはずはないのは承知の上だが、明日の朝は雨は降っていないと思われたので何なら濡れたまま着ればいいのだ。今のうちに洗濯すれば乾くことはなくても絞れないくらいにはなるだろう。 ところがズボンを干していて気づいたのだが、私のズボンは後ろのポケットの部分が3cmほど破れていた。どうもズボンのお尻周りが細いのとヴィトンの財布が堅くてペダリングを繰り返したことで生地が耐えきれずに破れたのだろう。そのままだと財布が見えてかっこわるいので財布は反対側のポケットに入れることにする。キャンプ生活ではそれほど困らないが、飛行機に乗って帰るのが恥ずかしそうだ。 私の場合、モンベルのズボンのサイズはS−Lを購入している。これはウエスト周りは72〜76cmのSサイズだが、股の高さは77〜82cmのLサイズというものだ。背が高くて細身の私にはピッタリのサイズだが、どうも私は自転車で鍛えすぎたせいか足が太くて股のあたりはピチピチになってしまう。ふくらはぎの筋肉の盛り上がりもそれなりにあったりして競輪選手ほどとは言わないが、足の筋肉だけはそれなりにあったりする。
雨が小降りになってきたのでキャンプ場の偵察に出かけた。このキャンプ場はロケーションは非常に恵まれていると思う。広大な芝生の広場や適度な木々と林、そして裏には斗満川という小川も流れているのだ。晴れていれば私のお気に入りのキャンプ場になっていたことだろう。その小川は今や豪雨によって濁流のように流れているがコテージまでは高低差があったので大丈夫のように思われた。 おなかが空いてきたので13時20分から昼食を作ることにした。昼食は昨日買った5食パックのラーメン、セブン−イレブンの金の麺味噌味だ。正方形の形をしているので割らないとコッヘルに入らないのとゆで時間が5分もあるのが問題だが味の方はなかなかよい。 旅の日記を書く前に天気予報を確認すると私のいる足寄郡陸別町には大雨洪水警報、雷強風濃霧注意報が発令されていた。しかも台風の進路はまっすぐこちらに向かって接近しており今夜の19時から20時にかけて通過するようだ。今でもすさまじい雨が降っておりテント泊でなくてよかったと思わずにはいられない。
ラジオもいいがテレビの方が具体的にどこまで台風が接近していてこれからどこに向かっているのかよくわかってよい。私の北海道自転車ツーリングもスマホを持ってくるのであれば1日くらいはこうしたコテージでの宿泊もいいかもしれない。 15時30分頃から雨が激しくなりバケツをひっくり返したような雨になった。この雨では自転車で走ることなどできない。チャリダーやライダーはみんなどうしただろうか? 陸別にライダーハウスはないので道の駅で途方に暮れて軒下で寝ることにならなければよいのだが。 あまりの激しい雨に裏を流れる斗満川が気になって見に行ってみた。すると3時間ほど前に比べて水かさが20cmほど上がっていた。コテージまでは高さであと3mほどあるので大丈夫だと思うが少し気になった。対岸は崖になっているのでこの崖が崩れたらコテージまで水が来るかもしれない。 スマホのテレビを見ながら旅の日記を書き続け、そろそろ夕食の準備をしようとしていた17時頃にキャンプ場の管理人さんがやってきた。裏に川があって増水していて危険なのでバンガローに移動してほしいと言う。移動先を案内するからと言われて軽トラに乗ってキャンプ場を走り、入り口近くにあったバンガローを紹介された。 バンガローの中を見ると部屋の広さは12畳くらいの広い部屋で、何より嬉しかったのはテーブルがあったこと。そして玄関ポーチがあったので濡れずに外に出ることができる点。テレビも付いていたがあいにくアンテナが繋がっていないようでテレビを見ることはできなかった。 困ったのは荷物を移動しなければならないこと。既にコテージにマットを広げ食材も全部出した後なのだ。それでも移動しないわけにはいかないので装備をまとめて自転車に積み込み、2回に分けて移動した。激しく雨の降り続く中どうにかバンガローに移動することができた。ただ、雨を避けるためにバンガローの玄関ポーチに自転車を持ち上げたとき腰を痛めてしまった。明日以降に響かなければよいが。 30分ほどでどうにか移動して装備を再度部屋の中に広げた。コテージのカギは部屋を借りた時に返却場所を聞いていたので、コテージを撤収した後にカギを返しておいたのでこれは問題ない。しかしバンガローのカギは渡されなかったので「カギはどうするのですか?」と聞いたら、「カギ、いりますか? 普段もカギかけてないんだけど…」と言われた。まあこの時間から出かけることもないし、カギを持っていてもかけることはないのだから不必要ではあるのだが、普段からカギをかけていないのには驚いた。確かに昔の古き良き時代の田舎では家にカギなどかける習慣もなかったし、泥棒に入る人もいなかったのだろうけど、現代においていまだにそうした家(コテージ?)があるのには驚かされた。
台風7号は17時30分に襟裳岬付近に上陸し時速60kmでまっしぐらにこちらに向かって突き進んでいる。台風が北海道に上陸するのは2007年の台風9号以来9年ぶり、台風が本州に上陸することなく北海道に直接上陸するのは1993年の台風11号以来とのことだ。 私も北海道自転車ツーリングでは何回か台風に遭遇した。2003年の台風10号は北海道に上陸し私が宿泊する羅臼の20kmほど南を通過していった。2007年の台風7号は北海道に上陸することなく私の160kmほど南を通過。2010年の台風4号は私の400kmほど南を通過。2014年の台風11号は私の300kmほど西で熱帯低気圧に変わった。そして今年は台風6号が根室をかすめるように私の300kmほど南東をで熱帯低気圧に変わった。さらに今日は真っ直ぐにこちらに向かって接近している。これで6回目の台風遭遇だが、今回は2003年並に直撃されそうだ。 いつもだったらテントの中で台風に怯えているところだが今回は違う。バンガローで快適にウイスキーを飲みつつテレビで台風情報を見ながら旅の日記が書けるのだ。残念なことにウイスキーは山崎だったものがトリスを混ぜすぎたためにおいしさが半減した。 17時30分頃から雨はますます激しさを増しとんでもない豪雨となってきた。そして19時には雨は小降りとなったが、それに変わって風が激しくなってきて、うなりをあげて吹き荒れている。風は20時頃に一番激しさを増し、一度はバンガロー全体が揺れるほどの衝撃があった。最初は自転車が倒れたのだろうと思っていたが自転車は何事もない。大きな木の枝が落ちてきたか木が倒れたのだろう。今は暗くて確かめられないので明日の朝にでも確かめることにしよう。 台風は20時前にこの陸別から20〜30km西を通過していったようで、こんなに台風に接近されたのは2003年の羅臼での出来事以来だった。21時には雨は完全に止んで風も収まってきた。そして21時には台風7号は温帯低気圧となった。あとは明日の天気が雨にならないことを祈る限りだ。
今日は久しぶりにスマホでテレビを見続けたこともあって世間の情報を多く入手できた。中でも卓球女子団体で涙の銅メダルを獲得できたとしきりにニュースで放映していた。福原愛選手がメダルを取れたのは何より喜ばしいことだろう。それにしても今回のオリンピックは日本人選手の活躍がめざましい。 テーブルで快適に作業できたおかげで何とか今日の分の旅の日記は書き終え、一昨日の書き残していた旅の日記もどうにか書き終えることができた。後は初日の分だけだがこれは帰りの飛行機の中で書くことにしよう。北海道自転車ツーリングでも時にはこうした半日ほどの休息時間が欲しいものだ。 明日以降の予定だが当初の予定では明日はカネラン峠、足寄峠、釧北峠を越えてチミケップ湖に行き、明後日は津別峠越えの屈斜路湖の予定だった。しかし台風が過ぎたにもかかわらずこの先の天気が思わしくないのと、来週から仕事の予定が立て込んでいるので2日前倒しでの帰宅を考えている。明日津別か美幌か女満別まで行って明後日に女満別から飛び立てば2日の前倒しだ。
幸いにも19日の女満別から中部への予約は取れたので2日前倒しのそのフライトで帰る方向で検討したい。そうすると明日は予定通りカネラン峠、足寄峠、釧北峠を越えるがチミケップ湖には寄らず津別か美幌か女満別のキャンプ場に行くとしよう。そうすれは明後日の飛行機に余裕を持って乗れる。 そんなことを考えながらいつも通り22時30分に寝ることにした。もう台風は完全に過ぎ去って雨も風も止みいつものような穏やかに夜となった。ただ、台風が過ぎても暑いままなのが問題だろう。今夜はゆっくりと眠れそうだ。
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