昨夜もあまりよく寝つけず、夜中に何度も目覚めてしまう。まだテント生活に慣れていないようだ。朝、目覚めると4時10分だった。ここはキャンプ場ではなく、道端で野宿しているだけだから、あまり遅くまではいられない。10分だけうつらうつらして4時20分には起きる。テントを出ると外はすごい霧だった。すぐに荷物をまとめるとテントを撤収した。昨日と一昨日はほとんど距離を走らなかったので、いつものパンツをはいていたが、今日は中山峠越えのイベントがあり、さらにその後、ニセコの五色温泉まで登る予定にしていたので、自転車用のパッド付きのパンツにはき替える。朝食に昨日の朝にモラップキャンプ場の管理人のおばさんからもらったおにぎりの最後の1個とトマトを食べる。水道がないので洗面は後にして5時10分に出発した。
道端での野宿風景 朝から霧がすごかった
|
朝の気温は18℃ 少し肌寒いが峠越えにはちょうどいい
|
すぐに道路情報館に行きトイレと洗面を済ませる。予想通りここはキャンピングカーやら車中泊の車が大挙して押し寄せていた。こんな場所でテントを張らなくてよかったとつくづく思ってしまう。天気予報を確認すると昨日までの予報では今日はどこも台風一過の晴れのはずだったが、今日の天気予報では札幌や留萌が晴れ、倶知安は晴れのち曇りになっている。それだったら中山峠やニセコ、積丹半島はすっ飛ばして、札幌経由で留萌まで行ってしまおうかとも考えた。しかしそれではせっかくの中山峠越えができなくなってしまうし、スケジュールが早まり過ぎてしまう。やはり予定通り曇りでもいいから中山峠を越えてニセコまで行く事にした。
5時30分に道路情報館を出発するが、よく考えたらここでボトルに給水するのを忘れていた。これから中山峠越えだが、まだ昨日給水した水が1リットル近くあったし、また今日はそれほど暑くないのできっと大丈夫だろう。朝からすごい霧だったので、安全の為にリアのフラッシングライトを点灯して走る事にした。国道230号線を走り始めてしばらくは追い風の平地だったのでかなり飛ばして走ったが、やがて緩やかな登りとなりスピードはしだいに落ちていった。それでも朝早い事もあって体力は十分にあり、全長108mの錦トンネルと全長116mの白糸トンネルの短いトンネルを越えて定山渓温泉を通過し、いよいよ中山峠に突入する。昨日、真駒内の自転車屋でヘッドパーツを調節した為、ハンドルが固くてとても乗りにくい自転車になっていたが、今日はなぜかそれほど乗りにくいとは思わなかった。早くも慣れてしまったのだろうか?
豊平川を渡る
|
中山峠まではあと16kmだ
|
この中山峠は5〜6%程度の登り勾配が延々と続くが、路肩が広いので比較的走りやすい。何とか苦労して6時40分に標高530mまで登り、パーキングで休憩する。今回の北海道自転車ツーリングからは休憩を少し長めに取ろうと考えていたので、休憩時間に旅の日記を書いて時間をつぶし6時55分に出発する。すぐに大きく曲がった無意根大橋を渡って全長159mの薄別トンネルに入り、さらに渓明大橋を渡るといよいよ定山渓トンネルが見えてきた。この定山渓トンネルは1124mと長く、しかもこのトンネルが峠の頂上ではなく、峠の途中にあるので、トンネル内の登り勾配がきつかったら嫌だなと思っていたが、いざトンネルに入ると登り勾配はそれほど急ではなかった。その代わりに道幅は狭く交通量は多いので、フラッシングライトを点灯させているとはいえ、後方から接近する車にはひやひやさせられた。
ぐるっと曲がった無意根大橋を渡る
|
定山渓トンネルを出てから、また急な登りを登り、標高700m地点まで登ったところで7時25分から再び休憩。ここで一昨日、千歳空港で買ったおにぎりを食べる。ここからは雨が降りだしたのでレインスーツを着る事にした。3日連続の雨だが、どうせ雨が降っているのは山間部だけで、中山峠を越えれば雨は止むはずと考えると、それほど嫌な気持ちにはならなかった。
国道230号線は定山渓国道と 呼ばれているらしい
|
ここは札幌の水源になっているようだ
|
10分だけ休憩して7時35分に出発。ここからは傾斜も緩やかとなり走りやすくなった。しかも景色もよくなってきたので、写真を撮りながらの走行となった。途中、水源の森という石碑があったので、自転車を止めて写真を撮る。どうやらこの森は15500ヘクタールの広大な奥定山渓国有林で札幌市182万人の上水道の85%を供給しており、水源の森百選にも選ばれているそうだ。そこから先も緩やかな傾斜を走り続け、8時15分に中山峠に到着した。峠の頂上には道の駅「望羊中山」があったのでトイレで給水しようとしたが、なぜかトイレは閉まっていたので給水は断念し、写真だけ撮って退散する。
あと1kmで頂上の道の駅だ
|
頂上付近は景色もよい
|
道の駅から出ようとした時、大変な事に気付いた。再びハンドルがぐらぐらになっているのだ。昨日、札幌の自転車屋でヘッドパーツを調節したはずなのにと思って、昨日のおじさんの作業内容を思い出してみると、よく考えたらおじさんはハンドルの固さを調節するのにロックナットを緩めていた事を思い出した。ロックナットをしっかり絞めなかったのだからヘッドパーツが緩むのは当たり前だ。だから昨日と違って今日はハンドルが軽くて乗りやすいと感じたのは、ハンドルの固さに慣れたのではなく、単にロックナットが緩んでハンドルが軽くなっただけだった。私はどうしようかと悩んだ。中山峠の頂上に自転車屋などあるはずもなく、この先、自転車屋がありそうなのは、倶知安か、最悪の場合、余市まで行かないとないだろう。そこまでヘッドパーツが持ちこたえるかどうかとても不安だ。ただ、今回はロックナットが緩んでおり、手でロックナットを廻すと簡単に廻ったので、応急処置として手で締められるところまで廻して、自転車屋まで騙し騙し走る事にした。
中山峠の名物はあげいもらしい
|
中山峠に到着
|
道の駅を出発し、ブレーキをかけながらゆっくりと下り坂を下る。雨で路面は濡れていたし、ヘッドパーツも緩んでいたので下り坂だというのに30km/h以上はスピードを出さないようにブレーキをかけながら、どこまでも続く坂を下った。しかし雨の中ブレーキを酷使したおかげで、ブレーキのシューが相当に磨り減ってしまった。昨日も札幌支笏湖自転車道を札幌に下る際に雨の中でブレーキを酷使しており、今回の北海道自転車ツーリングでブレーキシューがもつかどうか不安だったのだ。
私は中山峠を下ればすぐに雨は止むだろうと思っていたが、どこまで下っても雨が止む事はなかった。下り坂の走行は楽だが、ゆっくり下ったので、喜茂別の町に着いた時には9時になっていた。しかも喜茂別に着いても雨は止まず、私の期待は見事に裏切られた。
中山大橋からパノラマを展望する
|
国道276号線に入ってすぐの空き地で9時10分から休憩する。ここで手持ちの工具を使ってヘッドパーツを調整できないかトライしてみることにした。工具さえあればヘッドパーツの調整など自分でもできるのだが、さすがに北海道自転車ツーリング中に、ヘッドパーツを廻せるような大きなスパナやモンキーレンチを持ち合わせてはいない。そこで手持ちの小さなプライヤを目一杯広げてロックナットをつかんでみると、辛うじてギリギリつかむ事ができ、完全ではないがロックナットを締める事ができた。これなら倶知安か京極あたりまでならどうにか走る事ができるだろう。
ヘッドパーツの調整が終り、休憩がてらに昨日コンビニで買ったパンを食べた。喜茂別を過ぎた頃から雨が止んだのでレインスーツの上だけ脱ごうとしたが、その瞬間に雨が降り出してしまいレインスーツを脱ぐ事はできなかった。おかしい、天気予報では今日は晴れのち曇りのはずなのに… こんな事なら札幌を抜けて留萌目指して走ればよかったと後悔する。10分だけ休憩して9時20分から再び走り始めた。
雨の中、国道276号線を走る
|
羊蹄山は雲でほとんど見えなかった
|
喜茂別からは国道230号線に代わって国道276号線を走る。この国道276号線はアップダウンこそ多少あるものの、交通量も少なく比較的走りやすい。しかも羊蹄山ビューポイントという名のパーキングが2ヶ所もあった。1ヶ所は道の真正面に羊蹄山を見ながら走る絶好のポイントだったが、残念な事に羊蹄山は雲に隠れて何も見えなかった。もう1ヶ所は尻別川を挟んで道の真横に羊蹄山が見えるポイントだった。ここでは雲の切れ間から少しだけ羊蹄山が見えたので写真を撮りつつ9時45分から休憩する。ここでも河原に腰かかけて羊蹄山を眺めながら旅の日記を書き、少し長めの休憩を取った。この頃になると雨は止んでしまい、路面も乾いていたのでレインスーツをすべて脱いでしまった。
羊蹄山ビューポイントからの羊蹄山のパノラマ写真
|
旅の日記を書きながら20分休憩して10時5分に出発。しばらく走ると京極に到着した。すると見覚えのある橋が見えてきた。この橋は尻別川にかかる目名橋で、昨年、道を間違えて渡りそうになってしまった橋だ。この目名橋を渡ると、すぐに京極温泉と、その隣に京極スリーユーパークキャンプ場が見えてきた。私はこのキャンプ場か、倶知安の旭ヶ丘公園キャンプ場か、ニセコ野営場に泊まろうと思っていたので、この先どうするかを考える為に、すぐそばにあった道の駅「名水の郷きょうごく」に向かった。
この道の駅「名水の郷きょうごく」は3ヶ月前にできたばかりの道の駅で、ふきだし公園の中にあり羊蹄のふきだし湧水がある事で有名らしく、羊蹄山に降った雨や雪が数十年の歳月をかけて地下に浸透し、この場所に夏も冬も絶え間なく湧出するとの事だそうだ。しかしこの時の私にはこの先どうするかを考えるので精一杯で、とてもふきだし湧水の事まで考える余裕はなかった。
さて、10時20分に道の駅に着いたものの、この先どうすればいいか悩んだ。今はまだ10時20分だし、今日はまだ60kmしか走っていない。昨日一昨日と台風の影響で50kmも走っていないので、今日はせめてもう少し走りたい。そこでとりあえず倶知安まで走る事にした。倶知安まで走って余力があるようならニセコ野営場まで登り、余力がないようなら麓の旭ヶ丘公園キャンプ場に泊まろう。気に入らなければ京極まで戻って京極スリーユーパークキャンプ場に泊まればいいのだ。そう考えるとパンだけ食べて道の駅を出発し、道道478号線を走り始めた。
道の駅を出発してからの道道478号線は標高30mほど登ったと思ったら50mほど下り、再び50mほど登るというアップダウンの繰り返しで急坂を登るのに苦労する。そう言えば昨年、この道道478号線を逆方向に走った時にも、この急坂で力尽きて道端で休憩したのを思い出した。今年は手前の道の駅で休憩したばかりだったので、何とか走り切る事ができた。アップダウンが激しいとはいえ、京極から倶知安へは下りがメインであり、道道478号線の直線区間東端にある丘を越えると、あとは下りばかりになった。この丘の上からは果てしなく長い直線道路がよく見えたので写真を撮りつつ走る。本来ならこの道道478号線の直線区間は南に美しい羊蹄山を見ながら走るはずだったが、あいにくの曇り空で羊蹄山はまったく見えなかった。
ひまわり畑のバックには 羊蹄山が見えるはずなのだが
|
道道478号線の直線道路を走る
|
写真を撮るついでに先程締めたばかりのロックナットを確認すると、早くも緩んでいた。どうやら手持ちのプライヤで締めても、10kmも走れば再び緩んでしまうようだ。私はプライヤでロックナットを締めるのは断念して、これからは10kmおきに走りながら手でロックナットを締めながら走る事にした。
倶知安が近づくとニセコアンヌプリが見えてくるはずだが、雲に隠れてまったく見えない。このペースで走っていたら14時にはニセコ野営場に到着すると目論んでいたが、これだけ雲がかかっているという事は、上はきっと雨に違いない。しかも天気予報を調べると、倶知安の天気は今日が曇り時々雨、そして明日が曇りとなっている。そもそも昨年も訪れたニセコに再び行こうと考えたのは、美しい景色の写真を撮る為と、ツーリングマップルで推薦されている道道66号線、通称ニセコパノラマラインを走る為だ。しかしいずれも雨や曇りでは意味がない。わざわざニセコ野営場まで苦労して登って、雨降りの中テントを張る必要はない。
私は道道478号線と国道5号線の交差点で、この先どうするか散々悩んだ。もうニセコ野営場という選択肢は断念した。あとは再び京極まで戻って京極スリーユーパークキャンプ場にテントを張るか、もしくは倶知安の旭ヶ丘公園キャンプ場だ。京極スリーユーパークキャンプ場なら温泉もコンビニも近くて便利だ。旭ヶ丘公園キャンプ場は温泉まで少し遠くて不便だ。
しかし明日の行動の事も考えておかなければならない。当初の予定では明日は道道66号線を経由して岩内に行き、そこから日本海沿いに北上して積丹に泊まる予定でいた。これらはすべて晴れていたら景色がきれいな場所で写真を撮ろうという願望から決めたコースだ。しかし明日の天気予報は曇りとなっており、それなら積丹半島は2年前に訪れた事があるので、あえて曇りの日に訪れる必要もあるまいと考えた。だったらニセコと積丹半島をショートカットして、早く晴れているオロロンラインに向かおうと考えた。
倶知安から札幌に行く最短ルートを探すと、国道393号線というのが近そうだったが、これはまだ全線開通していない。次に近そうなのは先程走ってきた中山峠を越える国道230号線だが、さすがについ2時間前に越えてきたばかりの中山峠を再び越えようという気は起きない。そこで国道5号線で余市に抜けようと考えた。そこで国道5号線を走る前提で今日泊まるキャンプ場を考えてみた。というのは、余市から月形までの90km以上はほとんどキャンプ場がないのだ。正確には蘭越や石狩の海岸沿いにキャンプ場は存在するが、そのほとんどが浜辺のキャンプ場で自転車の乗り入れはできないし、家族連れのファミリーテントばかりだし、近くに温泉もないのだ。だから明日はぜひとも月形まで走りたい。ところが今日、京極スリーユーパークキャンプ場に泊まると、明日、月形の皆楽公園キャンプ場まで余市経由で150km以上も走らなければならないのだ。これはちょっと遠すぎる。旭ヶ丘公園キャンプ場から月形皆楽公園キャンプ場までなら140kmくらいだが、それでもまだ遠い。
そこでもう少し明日の走行距離を減らす為に前進できないものかと考えた。まだ時間は11時過ぎだし、15時まで走るとして60kmは走れるだろう。そこで私は倶知安から60km以内で適当なキャンプ場を探した。するとここから45km走れば余市にたどり着ける事が判明した。余市に行けばモイレ浜中海水浴場がある。このキャンプ場は浜辺のキャンプ場で、おそらく自転車の乗り入れはできないし、家族連れで一杯だろうと思われたが、近くに温泉はあるし、何より明日、月形まで走る走行距離が100kmになるのがありがたい。まだ時間は11時過ぎだし、今から45km走っても14時には到着する事だろう。そこで私はどうせ曇りできれいな写真の望めないニセコと積丹半島をすっぱりと諦めて、台風での後れを取り戻すかのように余市まで走る事にした。
恨めしそうに標識を眺めた
|
ニセコアンヌプリは厚い雲で 隠れて何も見えなかった
|
国道5号線を少し走ると倶知安の町中に入り、道道58号線への分岐が見えてきた。ここを左に曲がればニセコ野営場だ。私は何度も心を動かされたが、しかし前方にそびえるはずのニセコアンヌプリは厚い雲に隠れて見えず、キャンプ場は雨である事が容易に予想された。やはりニセコ野営場は断念するしかなさそうだ。私は天気予報を確認すると、今日は札幌は晴れかと思っていたが、どうやら曇りのようだ。しかし留萌付近はここ数日晴れのようで、ニセコと積丹半島はすっぱりとあきらめ、早く晴れたオロロンラインに向かう事にした。
倶知安の町を過ぎ、国道5号線を北に走る。余市まで走ると決めた後も京極まで戻ろうかと何度も考えた。倶知安の町を過ぎると、国道5号線は緩やかな登りが続く。ツーリングマップルには載っていなかったが、これは倶知安峠と言うそうで、標高180mの倶知安から70mほど登らされる。しかし緩やかな登りなので、峠というよりは丘越えだ。そして標高250mの峠の頂上から少し坂を下って全長75mの短い盤の沢トンネルを過ぎると、標高40mまで一気に急坂を駆け降りた。さすがにこれだけ坂を下ってしまうと、もう京極まで戻ろうという考えは起きなくなり、前進するしかなくなってしまった。
国富までは丘がいくつかあったものの、ほとんどが下りばかりで比較的楽な走りだった。途中から小雨が降りはじめたが、小雨だったのでレインスーツを着ずにそのまま走り続けていたら、いつの間にか雨は止んでいた。全長105mしかない国富トンネルを過ぎると、すぐに国道276号線との交差点に着いた。先程、積丹半島はパスすると決めたばかりだが、この交差点で国道276号線に向かうと、すぐに岩内だ。岩内から日本海沿いに北上すれば積丹半島に行ける。しかしこの道を走ると、今日泊まるキャンプ場は盃キャンプ場になってしまうが、盃キャンプ場から月形までは180km以上もあり、明日月形まで行けなくなってしまう。明日月形まで行こうとしたら、少なくとも今日のうちに積丹岬キャンプ場まで行かなければならないが、そうすると今日160kmも走る事になってしまう。それに今日も明日も曇りの天気予報だし、積丹半島をまわったとしてもいい写真は撮れないだろうから、やはりここはそのまま余市に向かう事にした。
国道5号線を国富から先に進むと、ゆるやかな登りが始まる。この国道5号線を走っていた時、前方からソロのチャリダーがやって来たので、すれ違いざまに挨拶する。走っているチャリダーに出会うのは今回の北海道自転車ツーリングでは初めてだ。さらに少し進むと、今度は2人組みのチャリダーがやって来た。今度も同様に挨拶すると、何と相手は外国人の夫婦か恋人連れのチャリダーで、満面の笑みで応えてくれた。今日まで3日間、台風や雨ばかりで辛い思いをしてきたが、こういう笑顔を見ると勇気づけられ自分も頑張ろうという気になるから不思議だ。
国道5号線の国富から先は、しばらく緩やかな登りが続いたが、やがて急な登り坂に変った。頑張って急坂を登り続け、全長225mの島付内トンネルを越えるとさらに勾配は急になった。中山峠よりも勾配は急だろう。それでも頑張って急坂を登り続け、ようやく標高266mの稲穂峠の頂上に到着した。休憩を取ろうかと考えたが、稲穂トンネルの入口で車が途切れるのを待っているうちにそのままトンネルに突入。トンネルは全長1230mととても長く、しかも路肩がほとんどなかったので恐かったが、若干の下りだったので一気にトンネルを駆け抜けた。正直言ってリアのフラッシングライトとHIDのヘッドライトがなかったら相当恐かっただろう。
余市まであと26kmだ
|
松浦武四郎翁の記念碑を見つけた
|
稲穂トンネルを抜けると外は雨が降っていた。しかも小雨ではなく本格的な雨だ。私はトンネル出口に自転車を止めると急いでレインスーツを着た。最初、頭のフードなしで走り始めたが、すぐにフードが必要だと実感し、50mほど坂を下って再び自転車を止めるとレインスーツのフードを被った。その時ふと道端を見ると松浦武四郎翁の記念碑があった。松浦武四郎翁は江戸末期に北海道から樺太、千島列島を6回も探検し、正確な地図を作成した北海道の名付け親である。こんな場所に記念碑を作ったって誰一人見に来る人はいないぞと思いつつ記念碑を撮影する。
雨の中、峠の急坂を下ると、ソロのチャリダーが峠を登ってくるのが見えた。お互い手を挙げて挨拶するが彼はこの雨の中、レインスーツも着ずに必死になって峠を登っていた。きっと峠を登ると暑くてレインスーツを着ていられないのだろう。私も峠を登る時は多少の雨でもレインスーツを着ない事が多い。チャリダーの考える事はみな同じだと実感する。さらに数100m下ると今度は2人組みのチャリダーに出会った。きっと先程の1人と合わせて3人組みだったのだろう。それにしても海岸線でもないこの場所で、これだけ多くのチャリダーに出会えるとは思わなかった。
さらに自転車を走らせるが、雨はなかなか止む気配を見せず、大江パーキングエリアを通過。しかしその直後に雨は止み、道路は乾いてきた。どこかでレインスーツを脱げそうな場所はないかと思って、あたりを見渡しながら走るが、なかなかいい場所が見つからない。そのうちに小さな丘越えの登りになったので、迷わず路肩に自転車を止めてレインスーツを脱いだ。しかしレインスーツを脱いだ瞬間に再び小雨が降りはじめた。まだレインスーツを着るほどの雨ではないがちょっと嫌だ。さらに余市も雨ではないかという嫌な予感がしだした。余市が雨ならニセコ野営場に行った方が良かったのではないかと考えてしまう。
そのうちに雨が本降りになってきた。私はレインスーツを着ようと自転車を止める場所を探していると、前方から来たソロのライダーが私の目の前でUターンするのが見えた。この付近に分かれ道はないので、このライダーはきっと雨が嫌でUターンしようとしたに違いない。するとこの先はきっとすぐに雨が止むはずだ。そう考えた私は雨の中、レインスーツも着ずに走り続けた。すると私の予想通り雨はすぐに止んだ。そのうちに町並みが続くようになり、14時20分に余市の町に着いた。
余市の町では余市川温泉とモイレ浜中海水浴場を探さねばならない。いずれも余市の町の中心部から少し離れた場所にあり、まず余市川温泉、続いてモイレ浜中海水浴場を発見した。モイレ浜中海水浴場はキャンプ場の標識こそなかったが、みんなテントを張っているし、流しやトイレもあるのでここに間違いない。流しやトイレの近くはいずれもファミリーテントで溢れ返っており、ライダーやチャリダーの来るキャンプ場ではなかったが、もうここに泊まるしかない。私は浜辺に自転車を止めるとテントを張る場所を探して浜辺を端から端まで30分ほど歩いてまわった。しかしここは海水浴場で、水着のお姉ちゃんが戯れる中で、汚いチャリダーが浜辺を歩き回るのは、あまりにも場違いだったので足早に立ち去った。いくつかよさそうな候補地はあったが、まだ海水浴客が多かったので、テントは張らずに先に温泉に行く事にした。
スペースシャトルのオブジェのある 宇宙の湯、余市川温泉
|
モイレ浜中海水浴場で テントを張りマットを乾かす
|
モイレ浜中海水浴場から数100mほど来た道を戻り、15時10分に余市川温泉に到着。何故か不思議な事に宇宙の湯という看板とスペースシャトルの大きなオブジェがあった。この宇宙の湯余市川温泉は390円とリーズナブルだが石鹸とシャンプーがなく、まるで銭湯のようだ。幸いな事に私はこんな事もあろうかと石鹸とシャンプーを持って来ていたので問題はない。昨日、一昨日と温泉に入れなかっただけに、3日ぶりの風呂は気持ちがいい。この温泉は湯船がとても深くて、湯船の底にお尻を付ける事ができず、まるでプールのようだった。さすがに温泉銭湯に露天風呂はないだろうと思って探しもしなかったが、実際には露天風呂まであったようだ。水風呂があったので湯船から出る前に水風呂に2分間浸かって体を冷やしてから出る。
風呂から出た後、番台でコーヒー牛乳を買って一気飲みする。やっぱり風呂上がりのコーヒー牛乳はうまい。そしてロビーで旅の日記を書く。この温泉の2階には休憩室があるが、2階まで行くのが面倒だったので、ロビーで旅の日記を書き続ける。するとおばあさんがやって来て、私の横に置いてあったスロットルマシーンで遊び始めた。ところがおばあさんは椅子のバランスを崩して後ろにひっくり返ってしまい、私の方に倒れてきてしまったのでびっくりしてしまう。
ロビーで30分ほど旅の日記を書いて16時10分に温泉を出発。温泉を出た時、太陽が顔を出していた。今回の北海道自転車ツーリングで初めて見る太陽だったので嬉しくなってしまう。これならキャンプ場で夕陽の写真が撮れそうだ。温泉の向かいにコンビニがあったので寝酒とカップの野菜サラダを購入。このコンビニには凍らせたペットボトルが売っていたので明日の朝にぜひとも購入する事にしよう。
シリパ岬をバックに炊事する
|
モイレ浜中海水浴場での自炊風景
|
16時20分にキャンプ場に戻り、めぼしを付けていた場所にテントを張る。さすがに自転車は砂浜に持ち込めないので通路に自転車を止め、そのすぐそばにテントを張る。テントを張ったらフライシートやマットを乾かす。そして炊事の準備だ。16時50分から米を水にひたして、それから30分ほど写真を撮ったり旅の日記を書いたりして時間を潰した。天気予報を確認すると明日の天気は曇りのち晴れ、以降9日まではずっと晴れだったので、もうレインスーツは必要ないだろうと考え、レインスーツはたたんでしまう。今日までの3日間は雨ばかりだったが、ようやく明日から晴れると思うと嬉しい限りだ。このキャンプ場は海水浴場で昼間はみんな海で泳いでいた。よく考えたら私も今年は水着を持って来ていたので、これだけ暑いのだし海で泳げば良かったと後悔してしまった。
夕陽とテント
|
波打ち際に沈む夕陽
|
17時20分から炊事開始。17分で炊き上がり13分間蒸らして完成。今日はカレーとあさげの味噌汁とカップ野菜だ。食べ終わって後片づけまで終らせた時には18時20分になっていた。ちょうどその頃、太陽が雲から顔を出そうとしており、海岸まで行って夕陽を待った。無事に太陽は顔を出してくれ、見事な夕陽を撮る事ができた。海岸の波打ち際で写真を撮ったり、テントや自転車を絡めて写真を撮ったりと砂浜を歩き回って写真を撮る。太陽が沈んでからも何度も海岸に夕焼け空を撮影に行き、テントに戻った時には19時20分になっていた。それからアンメルツを脚に塗って至福の時を過ごし、20時から旅の日記の続きを書く。
夕焼け空に浮かぶシリパ岬
|
夕陽とテント
|
ちょうどその頃、なにやらテントの外で話し声が聞こえ、おまけに懐中電灯で私のテントを照らし出した。人のテントに懐中電灯を浴びせるなど失礼な人がいるものだと思っていたが、話し声を聞いていると、どうやらキャンプ場で泊まっているテントの数を調べている地元の人のような感じだった。このキャンプ場はファミリーばかりで子供の叫び声がうるさく、しかも隣の家族連れは打ち上げ花火を100発以上上げているのでうるさくてたまらない。やっぱり海辺のキャンプ場は好きになれない事を実感する。
余市湾の夜景
|
どうにか21時過ぎには花火も終ってくれたので一安心。これでゆっくり寝られそうだ。夜に余市の湾内で明かりを付けて操業する漁船がいたが、21時過ぎには港に帰って来た。ちょうど余市の港町の夜景を撮ろうとしていた時だったので、ついでに漁船の明かりも長時間露出で航跡として撮影する。21時過ぎには旅の日記も書き終わり、21時30分には就寝するが、暴走族らしきうるさい車が時々やって来ていたようで、気になってなかなか眠る事はできなかった。
走行データ
走行距離 |
119.1km |
走行時間 |
6時間56分 |
ペダリング数 |
16000回 |
平均時速 |
17.1km/h |
最大速度 |
47.3km/h |
平均ペダリング数 |
38rpm |
総走行距離 |
208.9km |
天候 |
曇り時々雨 |
最高気温/最低気温 |
23℃/20℃ |
食事
朝食 |
おにぎり |
昼食 |
パン |
夕食 |
カレー(自炊) |
出費
温泉 |
余市川温泉 |
390円 |
温泉 |
コーヒー牛乳 |
120円 |
夕(コンビニ) |
寝酒、カップ野菜 |
326円 |
合計 |
836円 |
キャンプ場
名称 |
モイレ浜中海水浴場 |
場所 |
国道229号線の余市の西の端
北緯43度11分58秒、東経140度46分60秒 |
費用 |
0円 |
設備 |
流し場、簡易トイレ |
風呂 |
近くに余市川温泉あり |
ゴミ |
ゴミ箱なし |
行きやすさ |
標識がないので少しわかりにくい |
乗り入れ |
不可 |
特徴 |
余市の余市湾沿いにある海水浴場併設のキャンプ場
砂浜なので車やバイク、自転車の乗り入れはできない
家族連れが多く、チャリダーやライダーにはお薦めできない
炊事場とトイレの数も少なく、トイレも簡易トイレだ |
|