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小公女セーラ  原作

原作本の紹介 小公女セーラ
原本 A Little Princess
発行年 1887年
原作者 フランシス・エリザ・ホジソン・バーネット
イギリス人(1849年〜1924年)
訳書名 小公女
出版社 新潮社 他
翻訳者 伊藤整 他

原作の補足説明
 小公女の日本語翻訳本は新潮社以外にも岩波書店や角川書店から発売されているが、ここでは新潮文庫版を紹介する。多くの出版社から発売されている事もあり、入手は比較的容易である。
アニメとのストーリーの違い
 アニメと原作は、基本的にほとんど同じ内容です。ですが、何点か異なるところもあるので、それを紹介します。まず一番大きな違いは物語の始まる時のセーラの年齢です。物語の始まりはアニメも原作もセーラとお父さんがミンチン女子学院に来るところから始まりますが、その時の年齢はアニメでは10歳なのに対し、原作では7歳なのです。ただし、お父さんが亡くなったとの知らせがあるのはアニメも原作もセーラの11歳の誕生日です。つまりセーラがミンチン女子学院に来てからお父さんが亡くなって小間使いになるまでの期間は、アニメがおよそ半年なのに対し、原作では4年ほどたっているのです。その他にもアニメと原作では年齢も若干異なり、アニメではベッキーはセーラと同年代で、ラビニアはセーラよりも3歳年上という設定ですが、原作ではベッキーはセーラより5歳年上で、ラビニアはセーラよりも6歳年上なのです。あまり年が離れすぎていると物語にならないと考えたのか、アニメでは原作よりも年齢差を縮めています。
 ストーリーはほとんど同じですが、アニメでは1年間の番組として放映するには1冊の原作では足りないのか、原作よりいくぶん膨らませています。例えばセーラが病気になって死にそうになる話はアニメのオリジナルだし、市長夫人の話やセーラが馬小屋で寝起きさせられたり、ミンチン女子学院を追い出されたりする話もアニメのオリジナルです。ただし、基本的なストーリー展開は原作もアニメもほとんど変わりません。
アニメとのキャラクターの違い
 原作とアニメでのキャラクターの違いはピーターの存在でしょう。アニメではピーターというセーラのボーイフレンド的存在があり、セーラを影から支えてきましたが、原作にはピーターは存在しません。ジェームスやモーリーも料理番という名前ででてくるだけで存在感は低いです。キャラクターの性格の違いを挙げると、原作とアニメではセーラの性格は少しばかり異なります。アニメではどんなにいじめられても、ただ黙って耐えているまるでおしんのような少女に描かれていましたが、原作のセーラは少しばかりアニメとは異なり、それなりに言い返したりしています。
 アニメでのセーラは、ミンチン院長に反抗的な態度を示したのはミンチン女子学院を追い出される時に見せた1回きりでした。またセーラがよく見せた、怒られている時に相手の目をじっと見返すのは、亡くなったお父さんの事を思い出しているからだと言っています。ところが原作ではそうではなく、まずアニメで見せた唯一の反抗的な態度は、実はお父さんが亡くなって身の回りの物をすべて奪われ、それでもミンチン院長から感謝するように言われた時に同じセリフを言い返しているのです。その他にもセーラが年少組の生徒にアルフレッド大王の話をしていてミンチン院長に殴られた時、アルフレッド大王の話と同じでセーラが金持ちの娘だったらミンチン院長はセーラを殴ったりしないだろうとデュファルジュ先生が言っていましたが、原作では同様のセリフをセーラ自身が言っているのです。しかも原作でのセーラはアニメのように不条理な理由で怒られるのをお父さんの事を想い出しながらただ黙って耐えていたのではなく、セーラは微笑みを浮かべながら自分がもし公女様だったらどうなっていただろうと考えていたのです。他にも原作では乱暴な言葉を浴びせられ、煮えたぎるような腹立たしさの中、疲れ切ってお腹をすかして屋根裏部屋に戻ったところで、セーラはエミリイに慰めを感じる事ができなくなり、「あんたなんかただの人形よ」と言ってあれだけ大切にしていたエミリイを椅子から叩き落とした事もありました。原作でのセーラはただ黙って耐えるだけのアニメのセーラではなく、このあたりは原作とアニメでの違いを感じるところでしょう。ちなみにアニメのセーラの髪型は黒色のロングですが、原作では黒色のショートで、毛の先の方は少し縮れているそうです。
 セーラ以外の登場人物の性格はほとんど同じですが、予想に反して原作でのラビニアはアニメで見せたほどの強烈ないじめはしていません。かといって親切だったわけではありませんが、ラビニアのセーラへのいじめはそれほど大きなものではなく、どちらかというとミンチン院長や料理番として登場するモーリーやジェームスからのいじめの方が大きかったようです。
まとめ
 やはり原作を読んだ印象はセーラの性格の違いです。セーラはマリー・アントワネットにとても憧れていました。それはマリー・アントワネットが女王の座を追われ、牢獄に入れられて断頭台で首を切られても女王としての誇りを失わなかったのに憧れており、セーラも自分の境遇がマリー・アントワネットと同じようだと思ったのでしょう。セーラも下僕として蔑まれ、料理番に乱暴な言葉を投げられ、疲れ切ってお腹がすいて、固いベッドの上で寒さに震えている時でさえ公女としての誇りを失わないように努めていたのです。そのあたりの心理描写が原作とアニメでは多少異なったりします。
 そこで原作でセーラがミンチン院長に怒鳴られていた時に、微笑んでミンチン院長を見つめながら、セーラが考えていた事を紹介します。「あなたは公女様に向かってそんなひどい事を言っているのに気がつかないのですね。もし私がしようとさえ思えば、私の合図しだいであなたなんかひどい目に遭わされるのですよ。私は私の方が公女様で、あなたはわけのわからない哀れな心の冷たいつまらない年寄りで本当の事を知らないのだ。と思うからこそ許してあげているのですよ」セーラはミンチン院長に怒鳴られていた時に、お父さんの事を想い出しているのではなく、こんな事を考えていたのですね。
 さらにアニメでは決して言わないであろうセリフを紹介しましょう。アルフレッド大王の話をしていてセーラがミンチン院長に殴られた時、セーラは少し笑いました。ミンチン院長はセーラがなぜ笑ったのかを問いただすと、セーラはこう言ったのです。「先生はご自分が何をしたのかわかっていられないのだ、と考えておりました。それから、もし私が公女様で、その私の耳を先生が打ったとしたらどうなるか… 私がどうするか、という事を考えていました。それから、もし私が公女様であったら、私がどんな事をしたり言ったりしても、先生は決してあんな事をしなかっただろうと考えていました」
 最後に、アニメではセーラがダイヤモンドプリンセスに戻った後でも、セーラは決してミンチン院長に文句を言ったりせず、10万ポンドの寄付までしましたが、原作では少しばかり異なります。ミンチン院長が大金持となったセーラをクリスフォードさんから取り戻す為にセーラに向かって「私はいつもあなたを愛していました」と言うと、セーラは「私を愛していらしたのですか、ミンチン院長。私は少しも気がつきませんでした」と言い、さらにこう付け加えています。「ミンチン院長、あなたは私がなぜ、あなたのところへ戻らないかご存じです。あなたはよくご存じのはずです」と、まあこんな具合に設定の違いは感じられます。おそらく例え意地悪されても黙って耐えて相手を許してあげるというのがアニメには、というより日本人の心情としてあるのでしょうか。ちょうどアニメとは対極にある小公女の実写映画を見るとそんな気がします。

評価
 項目 5段階評価 コメント
アニメとの類似性 ☆☆☆☆ 登場人物の年齢が若干違う以外はほとんど同じです
入手の容易度 ☆☆☆☆ 有名な作品だけあり大きな本屋なら必ずあります
お薦め度 ☆☆☆☆☆ アニメを見た人でもそうでない人でも十分楽しめます
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