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愛少女ポリアンナ物語  感想

 世界名作劇場の中でどの作品が一番泣けるかを聞かれたら私は迷わず「愛少女ポリアンナ物語」と答えるでしょう。それほどまでにこの「愛少女ポリアンナ物語」は涙なしには見られない悲しい作品です。同じように悲しい物語として「フランダースの犬」と「小公女セーラ」が挙げられますが、上記2作品はひたすら主人公はいじめに耐え抜くストーリーなのに対し、この「愛少女ポリアンナ物語」は、いじめられても落ち込むどころか、いじめられた事を特別の親切のように受け止め、持ち前の明るさと“良かった探し”でいじめた人を幸せにしてあげようとする、心温まるストーリーに心を打たれる事でしょう。
 この「愛少女ポリアンナ物語」は世界名作劇場としては唯一の2部構成を採用しています。第一部はお父さんを亡くしたポリアンナは見ず知らずのパレーおば様のもとに引き取られます。しかしパレーおば様はポリアンナのお父さんをひどく憎んでおり、ポリアンナの事も快く思っておらず、ポリアンナにひどい仕打ちばかりします。ところがポリアンナは得意の良かった探しをして、その仕打ちを特別の親切のように考えて逆に喜んでしまいます。それを見ていたナンシーはポリアンナがいじめられているのに明るく振る舞う姿が不憫で泣き出してしまいます。この時のナンシーをはじめとするサブキャラの存在は、とても物語を引き立てているでしょう。きっとナンシーやトムのような人間味あふれたキャラクターがいなければ、この作品はきっともっとつまらないものになっていたと思います。いじめられても前向きに受け止めるポリアンナ、それからそれを影から支えるナンシーたちがいたからこそ、この作品はここまでおもしろく仕上がったのでしょう。そしてポリアンナお得意の“良かった探し”で不幸な人々に次々と生きる喜びを与え、ベルディングスビルの人々を幸せにしていきます。一生の病気で寝たきりだったスノー夫人や、この10年間、誰とも口をきいた事のなかったペンデルトンさん、そしてパレーおば様でさえもポリアンナの虜となって、良かった探しのおかげで明るく幸せになったのです。ところがやっとポリアンナにも幸せがやってきたと思った途端にポリアンナは事故で歩けなくなってしまいます。この頃のポリアンナが一番見ていて痛々しいですね。落ち込むポリアンナを何とか元気にしてあげようとパレーおば様やペンデルトンさんが手を尽くし、今までポリアンナの良かった探しの為に幸せになった自分達が、今度はポリアンナの喜ぶ事をしようとペンデルトンさんはパレーおば様と14年ぶりに仲直りし、そしてクライマックスでは14年前に恋人同士だったがケンカ別れしたチルトン先生とパレーおば様が晴れて結ばれるという素晴らしいエンディングを迎えます。
 第2部はボストンの病院通いの為、カリウ夫人の家で暮す事になったポリアンナが、ひたすら行方不明になった甥のジェミーを探すというストーリーです。しかしその途中でせっかく14年ぶりにパレーおば様と結ばれたチルトン先生は事故で亡くなるという悲しい出来事が起ります。この頃のパレーおば様やトムじいさんは見ていて痛々しいですね。ポリアンナは悲しみに沈んでいるパレーおば様を何とか元気づけようと良かった探しをしますが、どれも効果がなくポリアンナまで悲しくなってしまうのは見ていて辛いです。そして最後にカリウ夫人が探していたジェミーはペンデルトンさんが養子にしたジミーだとわかってハッピーエンドで終わりを迎えます。
 この作品を最後まで見た人が必ず思っているであろう疑問は、ペンデルトンさんとカリウ夫人が結ばれたかどうかでしょう。ペンデルトンさんは最終話でカリウ夫人にプロポーズしますが、カリウ夫人は喜びながらも返事を延ばしてもらっています。そして半年後には、まだ結婚していないようでしたから、カリウ夫人はどう返事したのか気になるところですよね。個人的にはペンデルトンさんと結婚した方が念願だった甥のジェミー・ケントと一緒に暮せる事になるし、カリウ夫人にとってはいい事だと思うし、ペンデルトンさんやジミーはカリウ夫人のようなきれいな人がお嫁さん&お母さんになってくれたら嬉しい事この上ないと思うのですがいかがでしょう。若君ジェームスにはちょっとかわいそうかもしれませんけどね。
 それとこの作品には個人的にもう一つ疑問があります。それはパレーおば様がチルトン先生と結婚した後、なぜポリアンナを養子にしなかったのでしょうか。パレーおば様はチルトン先生と結婚した後、名前をパレー・ハリントンからパレー・チルトンに変えていますがポリアンナは相変わらずポリアンナ・フィティアとお父さんの姓を名乗り続けていましたし、パレーおば様の事も「お母さん」とは呼ばずに「おばさま」と言い続けていましたから… あれだけ可愛がっているのだから養子にしてもいいような気がするのですが、何か事情があったのでしょうか。ペンデルトンさんだってジミーを養子にしているのだからポリアンナも養子にしてあげれば良かったのにと思わずにはいられません。
 ところでこの作品、はっきりいって名前が非常にややこしいです。ジミー、ジェミー、ジェニーなどと似たような名前が登場するし、しかも結婚したり養子になったりで名前がころころと変わるのです。パレーおば様の姓がハリントンからチルトンに変わるのはかわいい方で、モロフェイ横丁のジェミーはジェームスと呼ばれているし、ジミーにいたってはペンデルトンさんの養子になってジミー・ビーンからジミー・ペンデルトンに名前が変わり、しかも本当の名前はジェミー・ケントだったというおまけまで付いているというありさま。さらにウェザビー家の3姉妹は3人とも姓が異なっていたりします。一番上のお姉さんはドリス・ケント、真ん中はルース・カリウ、一番下がデラ・ウェザビーといった具合で、ややこしい事この上なしです。さらに余談ですがカリウ夫人やデラのお父さんの名前は、お墓に彫られていた名前はフランク・ウェザビーだったのに、ジミーの書類袋にはウィリアム・ウェザビーと書かれていたりします。どちらが本当なのでしょう?
 この作品で決して外す事のできないサブキャラクターは間違いなくメイドのナンシーでしょう。メイドとしては新人で手際はあまり良くないし、ドアは足で蹴って閉めるし、夜中パレーに起こされても起きないし、陰でご主人様の悪口を言い回ったりとメイドとしては完全に失格ですが、優しい心を持った人間味あふれたキャラクターとしては彼女を上回る使用人はそう多くはないでしょう。ポリアンナの事を心から気にかけ、ポリアンナが悲しんで泣いている時は一緒になって泣いて悲しみを分け合う彼女の姿は物語になくてはならない人物だと思います。カリウ家で働いていたポリアンナ専属のメイドのメアリーもいい人ですが、やっぱりナンシーにはかないません。
 「愛少女ポリアンナ物語」では世界名作劇場としては初めて愛だの結婚だのといった恋愛ストーリーが登場します。それまでの世界名作劇場はあまり愛だの恋だのに無縁で、せいぜいお友達関係でしたが、「愛少女ポリアンナ物語」以降の作品は、しだいに恋愛感情が多くなっていきます。と言っても「愛少女ポリアンナ物語」の場合は主人公のポリアンナの恋愛物語ではなく、それを取り巻く大人たちの恋愛物語で、しかもあまり若くないペンデルトンさんやチルトン先生、パレーおば様など40才に近い人たちの恋愛ですが… カリウ夫人だけは29才でしたね。主人公の恋愛や結婚がストーリーに登場するのは「愛の若草物語」のジョオ、「私のあしながおじさん」のジュディ、「トラップ一家物語」のマリアあたりになります。これらの主人公はそれまでの世界名作劇場の主人公と異なり、年齢も10代後半ですから自然と愛だの結婚だのといったストーリーになってしまうのでしょう。
 この作品の訴えている事は、ポリアンナやジョン牧師がいつも言っていたように、毎日の色々な事の中から喜びを探してそれを幸せに感じる事でしょう。どんなに辛く悲しい事の中にも良かったと思える事は必ずある、その良かったを見つけた時、生きている事が幸せになると言うのです。ポリアンナはその言葉を実行して自らの幸せを掴み取っただけではなく、ベルディングスビルの不幸な人々も幸せにしたのです。ポリアンナがいつも口にしていた“良かった探し”は本当にいいゲームですよね。この「愛少女ポリアンナ物語」が放映されていた当時、小さな子供や、その親たちはこの番組を見て良かった探しを始めた人が何人もいたそうな。聖書の中には“喜び”や“楽しみ”の言葉が800も書かれていたとポリアンナは数えましたが、この「愛少女ポリアンナ物語」の中にも“良かった”や“幸せ”、“嬉しい”などの言葉が800回くらい登場するような気がします。

評価
 項目 5段階評価 コメント
不幸度 ☆☆☆☆ 打ち続く不幸の連続にも決してくじけないポリアンナに好感度大
ほのぼの度 ☆☆ ほのぼのしていたのは子供達4人で夏休みを過ごしていたくらいか…
お薦め度 ☆☆☆☆☆ 泣きたければこれを見るべきです。
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