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フランダースの犬  原作

原作本の紹介 フランダースの犬
原本 A Dog Of Franders
発行年 1871年
原作者 ウィーダ(本名:ルイズ・ド・ラ・ラメー)
イギリス人(1839年〜1908年)
訳書名 フランダースの犬
出版社 新潮社 他
翻訳者 村岡花子 他

原作の補足説明
 フランダースの犬の日本語翻訳本は上記以外にも発売されているが、ここでは新潮文庫版を紹介する。新潮文庫版は入手が非常に容易で、置いてない本屋を探す方が難しいくらい簡単に入手できる。
アニメとのストーリーの違い
 原作とアニメとはストーリーはほとんど同じだが、アニメ化するにあたり何点か原作から変更されている点があるのでそれを紹介しよう。
 まず第1にネロとパトラッシュの一緒に暮らした年月の違いが挙げられる。アニメにおいてはネロが8歳の時にパトラッシュに出合い、それから1年ちょっと後に2人とも亡くなっている。ところが原作ではネロが2〜3歳の時には既にパトラッシュと出合い、一緒に生活するようになっているのである。そして原作ではネロが亡くなるのは15歳の時だから、12〜13年は一緒に暮らしている事になる。ネロと出会った時のパトラッシュの年齢は3歳ちょっとなので、まさにネロとパトラッシュは人生の大半を共に過ごした事になり、絆が深まるのは当然だろう。
 アニメと原作との違いで何より驚かされるのはコンクールに出品したネロの絵である。アニメを先に見ていた私は「ネロの描いた絵はおじいさんとパトラッシュの絵に決まっている」と思い込んでいましたが、原作では何とミシェルおじさんの絵をコンクールに出品しているのです。これには驚かされました。
 他にもネロの家出を認識する時間の違いも挙げられます。アニメではネロが家を出てすぐに村人総出で村中を捜索しました。そしてネロが亡くなった瞬間、アロアはネロの死を感じ取ってさえいました。ところが原作ではネロが亡くなった時、コゼツ家ではコゼツ旦那は2000フランが戻った嬉しさで大喜びし、アロアも明日からネロと一緒に遊ぶ事ができると浮かれているのです。そして翌日の朝、ネロの死を知る事になります。
 アロアの家もアニメと原作では異なります。アニメでは風車は丘の上に単独で立っていましたが、原作では丘の上にはアロアの家があり、アロアの家の敷地の中に風車が立っているのです。だから風車はアニメのように村人全員の共同所有物ではなくコゼツ旦那のものだったようです。
 「フランダースの犬」の原作は60ページ程度と比較的短いので、1年間放映するアニメとするには多数のエピソードを盛り込む必要があり、それに伴って原作にはないアニメオリジナルの話が多数追加されている。逆にオリジナルでない話の方が少ないくらいであったりする。例えばアロアがイギリスに行ったり、ネロが木こりの仕事をしたり、ジェハンじいさんが野菜売りの仕事をする話などは、すべてアニメオリジナルである。ただし、原作の内容もほとんどアニメに網羅されており、内容が異なるという点は少ない。
アニメとのキャラクターの違い
 原作とアニメではキャラクターの性格はほとんど同じですが、ネロとジェハンじいさんと金物屋は少し設定が異なるのでそれを紹介します。
 アニメではジェハンじいさんは亡くなる数ヶ月前までは元気に働いていたが、原作では何年も寝たきりの状態になっているのだ。原作ではジェハンじいさんは80歳の時に娘を亡くして2歳になる孫のネロを引き取り、それからしばらくしてパトラッシュと出合い、毎日アントワープまで2人と1匹で荷車を引いて歩いていた。しかしネロが6歳の時にジェハンじいさんはリューマチの為、歩く事ができなくなり、それ以来9年間牛乳運びの仕事はネロとパトラッシュだけでこなしているのである。特に亡くなる数年前からは寝たきりの状態で動く事すらできなかったらしい。またジェハンじいさんの亡くなったのはアニメではアロアの誕生日の前日だが、原作ではそれよりもずっと後、風車小屋の火事やコンクールへの出品よりも後で、クリスマスの1週間前となっている。
 ネロで設定が異なるのはネロの名前である。ネロはネロ・ダースという名前だと思い込んでいたが、原作ではネロは愛称であり、本名はニコラス・ダースというらしい。ネロもアニメでは9歳の時に亡くなる事になっているが、原作では15歳まで生きている。それよりもネロに関して設定が違うのはコンクール落選後のネロの考えである。アニメではハンスに家を出て行くように言われていたので、失意の中あてもなく歩き続け、気が付いたら大聖堂にいたというように描かれていますが、原作では「死にに行く」とはっきり決意しているのです。さすがにアニメで自殺は描けなかったので、結果的に死んでしまったという事になったのでしょうか。
 金物屋は原作でも性格はあの通りですが、原作では少しばかり設定が違います。それはパトラッシュを捨てて、しばらくしてから祭りで酔っぱらってケンカをして殺されてしまうのです。だからアニメにあったようにジェハンじいさんが金物屋にパトラッシュを大金で買い取ったり、金物屋がパトラッシュを連れ戻しに来るエピソードはアニメのオリジナルとなります。
 「フランダースの犬」は前述のとおりアニメオリジナルの話が多いので、それに伴って登場人物もアニメオリジナルという人たちが多く存在する。原作ではまともに登場するのがネロとジェハンじいさん、アロア、コゼツ旦那、エリーナおばさんの5人だけだが、これら5人の性格はアニメと原作でほとんど共通である。それ以外のアニメの登場人物、ジョルジュやポール、アンドレ、ノエルじいさんなどは、すべてアニメのオリジナルキャラとなる。ミシェルおじさんとヌレットばあさん、ハンスの3人だけは原作でも登場するが、ミシェルおじさんとヌレットばあさんは名前が登場するだけで本人は登場しないし、ハンスに至っては「欲の深い冷酷な金好きの人間」と書かれているだけで名前すら登場しない。
まとめ
 原作はアニメと異なりネロやアロアの年齢が上な事もあって、多少の恋愛やネロの将来の夢が描かれていたりする。アニメでもネロの将来の夢は描かれていたが、それは単に将来絵描きになりたいという純粋な少年の夢であったが、原作ではそれに少し尾ひれを付けた形で描かれており、ネロはこんな事を考えていたんだと思ってしまう。最後にそのネロの将来の夢を紹介しよう。
 未来のある日、彼は懐かしい故郷に帰り、アロアをほしいと家の人たちに申し込む。すると断られるどころか、うやうやしく迎え入れられる。一方、村人たちは彼を見ようと群をなして集まり、「あの人を見たかね? あの人はいわば人間の中でも王様のようなものさ。偉い画家で世界中に名が知れているんだからね。しかももとはといえば、わしらの貧乏小僧のネロにすぎないじゃないか。乞食も同然で、犬のおかげで食べていたんだからね」と小声で話し合っている。それからおじいさんには毛皮と紫の着物をきせ、セント・ジェイムス聖堂にある聖家族の絵の老人のように描くし、パトラシエの首には金の首輪をはめて自分の右手にすわらせ、人々に向かい「かつては、これが私のただ一人の友でありました」と言う。それから大きな白い大理石の宮殿をたて、そびえたつ大伽藍の尖塔を見晴らす傾斜に、豪華な庭園をきずく。そこは自分で住まうためではなく、貧しくよるべない身ながら偉大な事をなしたいという志の青年すべてに、ここを君らの家にしなさいと言って呼び集める。その青年たちが彼に感謝しようとするたびに決まってこう言うのである。「いや、私にお礼を言うことはない。ルーベンスにお礼を言いなさい。ルーベンスがいなかったら私はどうなっていたか知れないのだから」

評価
 項目 5段階評価 コメント
アニメとの類似性 ☆☆☆☆ ストーリーはおおむね共通です
入手の容易度 ☆☆☆☆☆ おそらく世界名作劇場の原作の中では一番簡単
お薦め度 ☆☆☆☆ 値段も安いしページも少ないので手軽に読めます
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