夜中の1時くらいにかなり激しい雨が降っていたようだったが、それ以外はまったく気づかずぐっすりと眠っていた。目が覚めると5時ちょうどだったが、外はまだ雨だった。何となく起きる気にならずそのまま二度寝してしまい、気づくと5時30分になっていた。 雨は相変わらずだしどうせ待っても雨は止みはしない。ここに連泊することも考えたが上士幌まで雨の中を87kmだけ走ってみよう。ここに連泊してもやることはないし、明日の天気予報では帯広は晴れとのことなので、今日一日だけ我慢して明日は晴れの十勝平野を満喫するのも悪くない。
どうせ今日は上士幌までしか行かないのだからのんびりしていても大丈夫だ。そこで昨夜に続いて今日も朝から足湯に行って20分だけ旅の日記を書いた。これから標高645mの雨の足寄峠まで標高差で220mほど登らなければならないという地獄が待っているのだから、これくらいのサービスがあってもいいではないか。
私も北海道の多くの観光地を回ってきたので、こうした観光地の駐車料金の相場は知っている、車が400円、バイクが100円、自転車は無料というのが相場だ。ところがここでは自転車なのに200円も請求するとは。しかも駐車するわけでもないのに。さらにそのおじさんは「うちの看板は200円の商品価値があるんだよ」とまで言うではないか。おじさんには200円の価値があるかもしれないが、私にはその価値はないので「結構です」と言って引き上げた。 2年前に阿寒湖に来た時もそうだったが、阿寒湖は見学できる場所が非常に限られている。湖岸は一応遊歩道があるが、ほとんどがホテルのプライベート湖岸のようになっており、ホテルに宿泊していない一般観光客には入りにくいように作られている。遊覧船でさえ船着き場からきれいな阿寒湖を見せてしまったら遊覧船に乗ってもらえなくなるとばかりに、湖岸に壁を作ってわざと阿寒湖を見えにくくしているのだ。 確かに湖岸に面した一部のホテルや遊覧船に乗る人にはそれでも問題ないだろう。しかし阿寒湖を訪れる人の果たして何%が、上記に該当するというのだろう? 例えば車やバイクでちょっと訪れて、湖岸から離れた無料の駐車場に車を止めた人や、バイクの人、そして湖岸に面していないホテルに泊まった人は阿寒湖をまともに見ることさえできないのだ。もちろん阿寒湖にも展望台はあるが、スキー場の上という非常に不便な場所にあり、一般の人はそこまで行かない。やはりこの周辺で阿寒湖を見渡すことのできる解放された場所が必要なのではないだろうか。 よくよく考えてみると阿寒湖という場所はホテル街や土産物屋が建ち並ぶ北海道でも有数の観光場所だ。そしてここの人たちは土産物をたくさん買ってくれる宿泊客は歓迎し優遇してくれるが、車やバイクでふらっと立ち寄るだけの人はあまり歓迎していないように感じる。土産物も買わずに写真だけ撮って立ち去るような観光客を毛嫌いしているような雰囲気を肌で感じるのだ。 実際、阿寒湖では撮影が有料のものがたくさんあると聞く。今回私が体験した有料駐車場にある阿寒湖と書かれた看板もそうだし、それ以外にもアイヌコタンの土産物屋の店頭に置かれた熊の像にも「土産物購入者のみ撮影無料」と書かれているし、アイヌコタンの長老も撮影するにはお金がかかるという。こうしたことで小銭を稼ぐのは結構だが、これを見た一般観光客がどのように感じるのか考えたことはないのだろうか? 少なくとも私はがめつい町だと嫌悪感を覚える。 一部のホテルや土産物屋、遊覧船、有料駐車場は自分達の得になるように行っているのだろうけど、こんな事をしていたら車やバイクでフラっと立ち寄っただけの人や、湖岸に面していないホテルに泊まった人は不満や不審だけがつのり、阿寒湖へは二度と来なくなるだろう。阿寒湖ビューホテルが潰れたのもそのせいのような気がする。あれだけ豪華なホテルだったのに、宿泊しても阿寒湖を楽しむことができないのだから宿泊客は二度と来なくなるだろう。 私が知る限り同じような観光地である屈斜路湖や支笏湖、洞爺湖などは、すべて国道から直接見えたり無料の駐車場や展望台が用意されている。有料なのは摩周湖くらいだが、これも有料なのは第一展望台だけで第三展望台や裏摩周展望台は無料だ。国道からは一切見えず、かつ湖岸横の商店街に来ても見ることができない阿寒湖は私が見ても異常だ。上記の湖に比べて土産物屋の数がとても多いことから、彼らを養うためには必要なことかもしれないが、これを続けていたのでは間違いなく阿寒湖畔は衰退の一途をたどるだろう。 やはり温泉街の東側にある湖岸に面した眺めのよい高台に道の駅を作って、誰でもいつでも阿寒湖を無料で見学してもらえるようにすべきだ。このまま一部の業者の都合のいいようにさせていたら、阿寒湖は阿寒湖そのものが観光の目玉なのにその阿寒湖を見せない、見たいのならお金を払いなさいなどと言っていたら、ますます阿寒湖全体のイメージが低下するだろう。そうすれば誰も阿寒湖に来なくなってホテルや土産物屋は次々と閉店し、阿寒湖という観光地そのものが衰退していくような気がする。今回の一件でそう思わずにはいられなかった。阿寒観光協会の人たちはそんな事にも気付かないのだろうか? これを読んでいるチャリダーやライダーの諸君。私は阿寒湖に行くなとは言わない。しかし行っても満足に阿寒湖を見る場所はほとんどないことは覚悟した方がいい。そして私が書いていることが本当かどうか、ぜひとも自分の目で確かめてもらいたい。大自然の中にある阿寒湖を満足に見るためにはそれ相応のお金を払わなければならない。それがこの阿寒湖温泉街のやり方なのだ。 駐車場のおじさんの言葉に気分を害し、もう阿寒湖の写真も撮る気もなくして、そのまま国道241号線に戻り7時50分から足寄峠を登り始めた。ここはいきなり標高差で220mの峠がはじまるのだが、先ほどのおじさんの悪態をつきながら走っていたら、気づくと何の苦労もしないまま標高差で100mも登ったところにある国道240号線との分岐に来ていた。う〜む、おじさんに意地悪されたおかげで楽に登ることができた。こんな効果があったとは。ここからはさすがに急坂を登るのは暑かったし国道241号線に入った頃から雨も止んでいたのでレインスーツを脱いで登った。
ここからはずっと下りが続いたのでとても楽だった。北海道自転車ツーリングがずっとこんな感じだったらいいのにと思ってしまったが、そううまくはいかない。途中オンネトー湖へ向かう道道664号線への分岐があった。私はもし今日晴れていればオンネトー湖に行ってもいいかなと思っていたが、この天気では苦労して坂を登ってオンネトー湖に行ってもエメラルドグリーンの湖は見えないだろうから行くのは断念する。 私は足寄峠の足寄側の麓にある茂足寄パーキングエリアで水の補給とパンを食べて休憩しようと考えていた。ここは2年前に逆方向に走った時の私のお気に入りの場所だったのだ。ところが茂足寄パーキングエリアは足寄峠を下りきってすぐの場所にあり、あまりに簡単に着いてしまったので、ここではないだろうと勝手に決めて見逃してしまった。後で気づいた時にはもう通り過ぎてずいぶん走った後だった。 2年前にここを走った時には前方に雌阿寒岳や雄阿寒だけがよく見えたので、今回もそれを期待しながら時々後ろを振り返りつつ走ったが、残念ながら雲に隠れて雌阿寒岳も雄阿寒岳もまったく見えなかった。今日は景色は断念して走りに徹するしかなさそうだ。 この国道241号線を走っていた頃、チェーンが油切れしているような感覚があった。昨日一日中雨の中で走っていたのだから仕方がない。北海道自転車ツーリングの初日にキャンプ場で耐久性の高いフィニッシュラインのクロスカントリーウェット潤滑剤をつけていたが、さすがに効果が切れたようだ。どこかで自転車を止めて油を差そうかとも考えたが、どうせ今日も雨が降るだろうから明日以降に雨が止んでから油を差す事にしよう。
東屋にはライダーの先客が2名おり一緒に雨宿りさせてもらう。一人は弟子屈から、一人は足寄の大阪屋食堂というライダーハウスから来たそうで、お互いこの先の天気について教えあう。いずれの方向もさっきまでは曇りだったが、ここに来たとたん滝のような雨になったというものだった。すると大雨が降っているのはこの地域だけで、雨宿りしていればすぐに雨は止む事だろう。 私はこの農作物販売所の東屋で10時10分からパンを食べて休憩し、ついでに旅の日記まで書いた。こんな滝のように降る雨の中で見つけた東屋は天国のようだ。大阪屋食堂から来たライダーは朝食を食べていなかったとかで、とうもろこしなど色々と販売所で買って食べていた。20分ほどで雨は小降りになりライダー達は次々に出発。私も10時40分に出発した。
それからも雨は止むことはなく、アップダウンはあるが下りの多い国道241号線を走り、11時30分に足寄の道の駅「あしょろ銀河ホール21」に到着した。到着したと言っても言葉で書くのは簡単だが、ここに来るまでには先程の東屋から雨の中を50分も走り続けているのだ。「もしものシミュレーションバラエティー お試しかっ! 人気メニューBEST10を全部当てるまで帰れま10」で放映されている裏には黙々と食べているシーンが延々と続いているはずだが、それと同じでここには書かれていないが黙々と雨の中を50分も走り続けているのを忘れてはいけない。 この道の駅「あしょろ銀河ホール21」はまだ工事の途中で、東屋はあるが駐車場から離れているのが問題だ。ところがこの道の駅の裏のバス停には屋根の付いた自転車置き場があった。通常雨の日に道の駅に自転車を止める時は屋根がないのでずぶ濡れになるしかないが、ここの自転車置き場には屋根があったのでずいぶん救われた。 私が自転車置き場で雨宿りしながらパンを食べていると、突然すぐ側にお巡りさんが近づいてきた。何だろうと思っていたが、どうやらそのお巡りさんは私の横に止めている電動アシスト自転車を私がいたずらしようとしているのではないかと思って見に来たようだ。しかしそうではないことがわかると何も言わずに引き上げていった。普段ならどう見てもチャリダーにしか見えないような格好をしているので疑われることはないが、レインスーツを着ていたのでチャリダーとわからなかったのだろうか。 この道の駅の東屋で雨を避けながら20分ほど旅の日記を書き12時前に出発する事にした。ここから上士幌までは30kmちょっと。途中足寄を出てすぐのところに標高差で180mもある大きな丘越えはあるが、それを考慮しても上士幌への到着は15時と言ったところで、ちょうどくらいだろう。 ところが出発する直前になって雨が激しく降りだした。先程と同様、また雨が滝のように降り始めたのだ。これでは出発できない。仕方なく私は屋根のある自転車置き場で先程と同様に雨が小降りになるまで雨宿りすることにした。私は自分の自転車の横で何をするでもなく雨が止むまでボーっと立ち尽くしていた。 いつもだったらこのような滝のように降る雨は30分か1時間もすれば収まるものだ。しかし今回は台風の影響によるもので、30分待っても1時間待っても雨は収まらなかった。そのうちに今日はキャンプ場ではなく、どこかに宿を取った方がいいのではないかと思い始めた。なぜなら雨が止んで上士幌の航空公園キャンプ場に行ったとしても、河川敷の公園ではこの大雨でキャンプ場が閉鎖しているかもしれない。それにこれだけひどい雨が降り続いていると、おそらくテントを張る地面は水たまりになっていることだろう。それだったらライダーハウスに逃げ込んだ方がいいのではないか。 そこでツーリングマップルを見ると、この近くの宿と言えば先ほど通り過ぎたラワンドライブインとあとは上士幌に2件ほど。まだ昼の早い段階だし予約の電話を入れれば泊まれそうな気がしてきた。その間にもこの道の駅の自転車置き場には屋根があったため、続々とライダーが雨宿りに押し寄せてきた。ライダーからの情報では台風4号は北海道を直撃することはなく、かなり南にそれたらしい。しかしそれでもひどい雨だ。ライダーの一人と話をしているうちに、このすぐ近くに大阪屋食堂というジンギスカンの食堂があり、そこで食事をすれば無料で二階にあるライダーハウスに泊めてくれるという。大阪屋食堂と言えば先程東屋で一緒になったライダーの一人が昨夜泊まっていたライダーハウスだ。 私はその話にとても心を引かれた。やはりこれだけの雨ではキャンプ場のどこも地面が濡れているのは当然だし、そんな場所にテントを張ったのではテントの中の床までびしょびしょに濡れてしまう。それだったらライダーハウスに泊まった方が遙かに快適だ。私の心はどんどん宿に泊まる方に傾いていき、そのライダーから大阪屋食堂の場所を詳しく聞き出した。 既に1時間30分ほど屋根のある自転車置き場で雨宿りしながら待ったが、雨は滝のように降り続け、まるで私は自転車置き場の主のようになっていった。ふと朝出発する時、GPSの電源を入れ忘れていた事に気づいた。ポケットを調べると確かに電源が入っていない。今からでも電源を入れておくが、せっかく越えてきた足寄峠の情報が取れていないのは痛い。 やることもない私は自転車置き場を離れ、道の駅の中に入ってみることにした。すると道の駅の掲示板には足寄近辺の宿の情報が一覧にして張っているではないか。足寄にはビジネスホテルも何件かあって、一人部屋も安くで確保できそうだ。私はそのうちの1件の電話番号を覚えると、携帯電話を取りに自転車置き場に戻った。そして電話をかけようとしたその時、急に雨が小降りになった。小降りと言っても傘は必要なレベルだが自転車で走れないレベルではない。 大雨の為に1時間40分も道の駅で足止めを食らっていた私は、雨が小降りになった途端、急に宿ではなく従来通りキャンプ場に泊まろうとやる気になった。それから10分ほど様子を見ていたが雨はひどくなる気配もない。私はここぞとばかりに道の駅を出発して、13時30分から上士幌の航空公園キャンプ場目指して国道241号線を走り始めた。台風のおかげで2時間近くも道の駅の自転車置き場で足止めを食らってしまった。
13時30分に足寄の道の駅を出発。足寄でコンビニに寄るのも忘れてしまい、ひたすら上士幌目指して走り始めた。上士幌へ向かうには足寄を出発すると、まず標高差で180mほどもある峠を越えなければならない。これが難関だ。しかしこれを越えればあとは下りか平地だけで上士幌まで行ける。途中に道の駅「足寄湖」もあるので、ここで様子を見るのもいいだろう。 雨の降り続く中を登坂車線のある急坂を登り続けていると、里見が丘公園キャンプ場の看板が見えてきた。ここも緊急避難用に目を付けていたキャンプ場で、気にとめていたものだ。とりあえずどんな場所にあるのか確かめようと中に入っていくが、管理棟には誰もおらず、細い道を下った後かなり急な登りが待っていた。私はこの登りを自転車で登る気にならず、その場に自転車を止めて歩いて見学に行くことにした。キャンプ場にはいくつかテントが張ってあったが、私が一番気に入らなかったのはキャンピングカーがエンジンをかけたまま停車しており、それに雨を避けるための東屋もテントの持ち込みまではできそうになかったので断念する。仕方なく自転車まで戻ると自転車はなぜか倒れており、倒れた先が泥だったので自転車のサイドバッグとフロントバッグをドロドロにしてしまう。こんな日についていない。 寄り道はしたものの再び国道241号線の急坂を走り始めた。すると少し走った先の路肩にハイエースが止まっており、この雨の中、外で待っていたおじさんが何やら私に話しかけてきた。どうやら帯広まで行くから乗っていかないかと言うではないか。私は突然の事にどうしようかと悩んだ。 今までの北海道自転車ツーリングでは、道内での輪行というのは一度も経験がなく、すべて自転車による自走。5年前に一度だけ自転車が壊れたとき、レンタカーを借りて10kmだけ走ったことはあった。しかし今回は自ら手を挙げたわけではないけど事実上のヒッチハイクだ。いつもだったら「自分の力で走りたいから」と丁寧にお断りするところだが、そのおじさんは雨の中を傘も差さずに私が登ってくるのを待ってくれており、私を乗せる気満々でよもや断られるとは思っていないような雰囲気だったので、お断りするのも申し訳ないと考え乗せてもらうことにした。今日の寝床の心配で私が弱気になっていたのも事実だろう。 おじさんの車はハイエースで、しかも荷物は空で自転車など分解しなくてもそのまま積み込めた。そして助手席に座ってどこまで送ってもらうか考えた。おじさんは帯広まで帰ると言っていたが、私も帯広に行きたい用があった。というのは、昨日釧路のライダーハウスに泊まっていたライダーからチャリダーに転向した人が今日は帯広のライダーハウスに泊まっており、ぜひとも会って話しがしたかったのだ。そこでとりあえず帯広に向かって車を走らせてもらい、その間にその人と連絡を取ってライダーハウスの場所を教えてもらうことにした。 14時10分から自転車ではなくヒッチハイクでの旅となった。車の中でおじさんと話をするうちに、おじさんが無類のキャンプ好きだという事がわかった。4月〜10月の間は必ず月一回はキャンプに行くそうだ。そこで話題が十勝周辺のキャンプ場の話題になったが、私も負けてはいない。このあたりのキャンプ場は半分以上泊まり尽くしており、車の中で北海道十勝周辺のローカルなキャンプ場の話題で大いに盛り上がった。 さて上士幌が近づいた頃、帯広のライダーハウスに泊まっている人からライダーハウスは満室との連絡が入った。別のライダーハウスはまだ空きがあると紹介されたが、ライダーハウスに泊まりたかったわけではないので一緒のライダーハウスに泊まれないなら帯広まで行くこともないし、帯広まで行ってしまうと明日以降のコースに影響がでてしまう。またおじさんの目的地は帯広だが帯広市内までは行かないようなことを言っていたので、とりあえず上士幌の航空公園が閉鎖されていないかを確認し、閉鎖されていなければそこに泊まることにした。 27kmほどの道のりを30分ほど走ると14時40分に上士幌の航空公園キャンプ場に到着。とりあえず閉鎖されていないことを確認し、ここで下ろしてもらうことにした。おじさんには大変世話になったが、おじさんとはとても話が合い向こうも十勝周辺のキャンプ場のローカルな話で盛り上がって相当喜んでくれたようで、別れ際にジュースを2本もくれた。私もおじさんにお礼を何度も言って車が見えなくなるまで手を振っていた。 おそらくおじさんの車に乗せてもらわなくてもここまでたどり着いたであろうけど、乗せてもらったおかげでキャンプ場への到着が2時間早まったのと、その2時間の間の今夜の寝る場所についての心配事がなくなったのがありがたかった。問題はそうでなくても少ない今日の走行距離が、さらに27kmも短縮されてしまったことくらいか。 さて航空公園キャンプ場に来たまではいいが、どこにテントを張ろうかとキャンプ場内を歩き回った。しかしこの雨で芝生は完全に水を吸っており、どこも水たまりに近い状態でとても芝生にテントを張れそうにはない。そもそも広いキャンプ場の手前の方にテントが3つばかり張ってあるだけだったので、私は一番奥の屋根付きの炊事場の中にテントを張ることにした。ここなら雨の心配はないが、屋根が小さくてどうしてもテントに雨がかかってしまうのが問題だ。
そして屋根のある炊事場の中で旅の日記を書いた。この時ようやくサイクリンググローブを脱いだが手がすごい事になっていた。昨日見た時には右手の手のひらに1ヶ所だけ壊死したような、どす黒くなった場所があったが、今手のひらを確認すると、両手に10ヶ所近くそういった場所があるのだ。どうやら雨の中で濡れたまま走ると、さらに手に負担がかかって症状を悪化させてしまうようだ。とりあえずマッサージして血行をよくしておく。 16時から炊飯開始。今日は明日の朝おじやにしようと、いつもより多めに米を炊く。16時20分には炊きあがり10分だけ蒸らす。すると蒸らしている間にキャンプ場の管理人さんがやって来た。もちろんキャンプ代を徴収しにきたのだが、炊事場にテントを張っていることについては何も言われなかったので黙認状態であろう。そればかりか今日は台風が近づいているから、緊急時には高台の上のプレハブ小屋に避難して下さいと言われた。ついでに管理人さんにナイタイ高原牧場への行き方と、入り口までの距離を聞いておく。自転車で10分くらいと言っていたので案外近いのかもしれない。 今日の夕食はカレーと油揚げの味噌汁。今日は一度もコンビニに立ち寄らなかったので夕食はこれしかないが、今日もご飯はうまく炊けたので食が進む。明日の朝おじやにしようと米を多く炊いたはずなのに、気づいたら全部食べてしまった。仕方がない、明日の朝はラーメンにしよう。 16時40分には後片づけも終わり、支度をして17時ちょうどにようやくテントに入ることができた。もちろんテントはあらかじめ設営しているのでいつでも入る気になれば入れるのだが、レインスーツを着ていたのであまり脱ぎ着したくなかったのだ。テントの中に入るとようやく自分の場所に戻ったようで、これまでの緊張から解き放たれたかのように落ち着く。 この上士幌にはこのキャンプ場から3kmほど東に行ったところに温泉ふれあいプラザがある。いつもだったら意地でも温泉に行くところだが、今日は一日中降り続く雨の中を再び自転車で走る気にならず、今回の北海道自転車ツーリングで初めて温泉を断念する。そればかりか今日は一度もコンビニにも寄らなかった。しかし食料はすべて自転車に積んでいるし、寝酒も昨日買ったウィスキーとつまみがまだ残っているのでコンビニに寄らなくてもそれほど問題はない。 17時からテントにこもって着替えを済ませ、久しぶりにアンメルツを足と肩に塗って至福の時を過ごす。キャンプ場に到着した時から雨は降り続いておりまだ止む気配はない。屋根のある炊事場にテントを張っているので雨の心配はないが、屋根が小さくてかつ炊事場の床がコンクリートなので水が染み込まず、吹き込んできた雨がコンクリートの床を伝ってテントの床を濡らしてしまい困ってしまった。濡れたテントの床にマットを敷くのが嫌だったので、テントの床にレジャーシートを敷いて、その上にマットを敷いた。思わぬレジャーシートの使用法だ。
18時から昨日の残りのウィスキーを飲みつつ旅の日記を書き始めるが、今日はいつもの半分しか走っていないのに書くことは多く、書き終えるのに2時間もかかってしまい書き終わった時には20時になっていた。 キャンプ場に着いた時から19時頃まではずっと雨が降り続いていたが、19時を過ぎた頃からようやく雨は小降りとなり傘を差さなくていい程度になった。風もほとんどないし台風の影響はなさそうだ。これならライダーハウスに逃げ込まなくてもキャンプ場で全然問題はない。 今日は本当に大変な1日だった。これだけの大雨は北海道自転車ツーリングでは経験したことがなく、ニュースでも記録的豪雨と言っていた。足寄の道の駅で足止めをくらい雨の止む気配のなかった13時頃にはどうなることかと思ったが、今は台風とは思えないほどの穏やかな天候になっている。 明日は晴れていたらテントはそのままにナイタイ高原牧場までひとっ走りして景色を堪能。そしてテントを撤収して狩勝峠を越えてかなやま湖まで行くとしよう。当初の予定では明日は然別峡のはずだったが、ナイタイ高原に行ってかなやま湖まで行けないようであれば、然別峡でもいいかもしれない。 キャンプ場に着いた時間が予定よりも早く、かつ温泉にも行かなかったので時間も余ってしまい、やることもないのでウィスキーを飲みながら映画鑑賞でもしてみた。が、肝心なところで電池切れで終わってしまった。明日はコンビニで電池を購入するとしよう。 21時には完全に雨は止んでしまい、ありがたいことにフライシートはすでに乾き始めている。これなら浸水も気にすることなく、ゆっくりと寝る事ができそうだ。21時30分には就寝する。はずだったが、予備の電池を使って携帯で映画を見始めてしまい、寝たのは22時を過ぎていた。
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