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愛の若草物語  原作

原作本の紹介
原本 Little Men
発行年 1871年
原作者 ルイザ・メイ・オルコット
アメリカ人(1832年〜1888年)
訳書名 第三若草物語
出版社 ポプラ社、角川書店、他
翻訳者 蕗沢忠枝、吉田勝江、他

アニメとのストーリーの違い
 ナンとジョー先生のアニメと原作とでは、大きく異なる点があります。それはアニメでは主人公がナン(アニー・ハーディング)なのに対して、原作ではナットが主人公なのです。よって物語の始まりもアニメではナンがプラムフィールドにやって来るところから始まりますが、原作ではナットがプラムフィールドにやって来るところ、つまりアニメでの第5話から始まります。そしてナットがプラムフィールドでの生活に溶け込んでいく第6話、第7話、第21話と続きます。そして第8話のデーズィによるパイ焼きの後、ダンの登場となります。ダンの話は第11話から第17話まで一気に続き、そしてダンはページさんのところに行く事になります。
 ダンがプラムフィールドを去った後、原作ではようやくアニメの主人公であるナンの登場となります。アニメでは第1話からナンが登場しますが、原作では物語が1/3程進んでからの登場となります。アニメでのナンはプラムフィールドに来るのが初めてで、プラムフィールドの子供たちとも初対面でしたが、原作ではナンは何度もプラムフィールドに来た事があり、子供たちとも知り合いでした。
 ナンの登場で原作でもようやくアニメの第1話の話が登場した後、アニメにはないデミとデーズィ、ロブ、テディの生け贄の話やナンとデーズィのママゴトの話などが続く。そして第19話の舞踏会と凧揚げの後、ダンが再びプラムフィールドに戻ってくる。ここからアニメの第23話、第24話のダンの話に入る。そしてローリーも加わって第25話の博物館作りや第3話、第4話のいちご積みの事件とそのおしおきへと続く。それからアニメ化さらなかったベスの話が入る。
 そして原作はアニメの第26話から第28話の泥棒事件へと続く。さらにナンがお医者さんを目指す第32話、ジャックが戻ってくる第31話、ダンが馬を馴らす第36話、ダンに顕微鏡をプレゼントする第31話の後、アニメ化されなかった畑の収穫の話があり、そしてジョン・ブルック氏の亡くなる第34話へと続きます。
 物語のラストは原作とアニメでは少々異なります。アニメではフランツが大学に行き、トミーとダンがプラムフィールドを去り、そして10年後のそれぞれの人生で物語は終わります。しかし原作ではブルック氏が亡くなった後、暖炉前での物語、そして感謝祭でシンデレラの劇を行うところで物語は終わります。ハイドさんの誘いでダンが来年の夏には南アメリカに行こうとしているところは原作にも登場しますが、それぞれの別れは原作には描かれておらず、これらはすべてアニメのオリジナルとなります。
アニメとのキャラクターの違い
 アニメと原作で主人公が大きく異なる事以外はアニメと原作の登場人物やその性格付けなどはほとんど同じですが、プラムフィールドの子供たちで一部、原作には登場するのにアニメには登場しない人物がいるので彼らを紹介しよう。
 まずドリー・ペティンジルという重度の吃音者である少年がいた。彼はうまく喋る事ができず、プラムフィールドでは目立たない存在だったようだ。そしてディック・ブラウンという少年は背中が曲がっていてコブがあるが、明るく快活な少年だ。さらにビリー・ウォードという少年は小さい頃、並外れて頭のいい少年だったので、父親がビリーに難しい勉強をさせ無理に知識を詰め込ませようとしたが、高熱が原因で精神薄弱児になってしまい、13才になるというのに6つ子供のようで、何一つ覚える事ができなくなってしまった。3人とも原作にもほとんど登場しないので、おそらくアニメでは割愛されたものと思われる。
 プラムフィールドの子供ではないが、原作には登場するがアニメには登場しない関係者がいる。それはベスである。ベスといっても四姉妹の三女のベスは、もう10年以上前に亡くなっているので、ここでいうベスはローリーとエイミーの娘である。ローリーは若くして亡くなったベスを悼んで自分の娘にベスと名付け、時々プラムフィールドに行かせていた。さらにアニメではエイミーはまったく登場しないが、原作では終盤にわずかばかりではあるが登場している。
 またダンを引き取ったページさんのキャラクター設定も原作とアニメでは少しばかり異なる。ページさんはアニメでは学会で発表するほどの博物学者だが、原作のページさんは単なる農場の労働者兼経営者に過ぎず、厳格な人だったのでダンは農場を飛び出してしまいます。その代わりにアニメのページさんに相当するハイドさんという博物学者が原作には登場し、彼がページ農場に泊まりに来ていた事からダンはハイドさんの影響を受けて動物や植物などの博物学に興味を持っていく。
まとめ
 ナンとジョー先生のアニメ化にあたっては40話の物語にする為に、原作から話を広げる必要があり、いくつかのアニメの中の話はアニメオリジナルだが、ほとんどは原作を踏襲していると言ってもいいだろう。アニメオリジナルの話の中でも、大人になったら何になりたいかとか、トミーやダンの旅立ち、そして子供たちが大人になった10年後の世界など、原作にはないがなかなか優れた話も多い。
 原作の第三若草物語にはアニメ化されていないが第四若草物語という続編がある。この第四若草物語は第三若草物語の10年後から始まる。10年後のプラムフィールドの子供たちは、フランツはドイツのハンブルクで商人を、エミルは子供の頃からの希望通り船乗りに、ダンは南米で地質学の研究をやった後、オーストラリアで牧羊を試み、今はカリフォルニアで金鉱を探し回っていた。ナットは音楽学校で音楽の勉強に精を出し、トムはナンに気に入られたいというただそれだけの理由で医学を勉強しこれを好きになろうと努めていた。ジャックは父親と一緒に商売をして金持ちを目指し、ネッドは法律を勉強し、ドリーとスタッフィは大学で勉強していた。そしてディックとビリーは既にこの世を去っていた。ロブとテディはプラムフィールドで勉強していたが、ロブは子羊のような優しい気質であるのに対し、テディはライオンのような激しい気性だった。デミは優秀な成績で大学を卒業後、新聞記者を目指し、父親の後を継いで牧師にさせたかったメグを落胆させた。デーズィは相変わらず家庭的な女の子、ジョーズィは若き日のジョーやナンを見るようなおてんばな娘、そしてベスは幼い頃と同じように優雅な物腰と上品な好みをそなえていた。そしてナンは子供の頃目指した医者への夢を片時も忘れる事なく、医学の勉強を続けていた。そしてローレンスのおじいさんと四姉妹のお母さんは既に他界していた。
 10年後のプラムフィールドはナンやトミーが子供だった頃と大きく異なり、子供たちがよく凧揚げした丘には大学が建ち、マーチ家やメグの家だけでなくローリーの屋敷までプラムフィールドに移転し、関係者一同はこのプラムフィールドに集結している。そして年をとったメグやジョー、エイミー、ローリーなどがデミ、デーズィ、ジョーズィ、ロブ、テディ、ベスなど子供たちの恋愛を中心とする話をするところから始まる。
 そして物語はジョーの作家としての生活へ進む。ジョーは少女時代から作品を書いており、数年前から再び物語を書き始めたが、それが予想外にも大ヒットし、世界中の読者から感想や励まし、サインを送ってほしいという手紙をもらったり、はたまた雑誌社や新聞社、そして読者まで家に押しかけてくるようになったエピソードが描かれている。このあたりは原作者であるルイザ・メイ・オルコット自身が経験した実話をそのまま掲載したような雰囲気だ。
 それから物語はエミルとダンの帰郷となる。船乗りとして長く航海に出ていたエミルと、荒野を飛び回っているダンが2年ぶりにプラムフィールドに帰ってきたのだ。しばらく物語はダンの土産話を中心に進む。しかし土産話よりもトミーとナン、それからナットとデーズィの恋愛話の方がおもしろい。トミーはナンが好きでナンに気に入られたい為に好きでもない医学の勉強をしているが、ナンはトミーの事などこれっぽっちも想っておらず、いつも邪険にしてトミーを落胆させている。ナットとデーズィは相思相愛だが、デーズィの母親であるメグがナットの事を快く思っておらず、結婚には反対していたので、ジョーが仲裁に入ったりナットを音楽の勉強の為にドイツへ行かせたりする事になる。そしてプラムフィールドあげての華やかなパーティーの後、エミルとダン、そしてナットもプラムフィールドを離れていく。
 3人がプラムフィールドを去ってからプラムフィールドにいくつかの事件が起こる。まずはテディのせいでロブが犬に噛まれて狂犬病で命を落としかけたのだ。この事件以来、それまでいたずら好きで落ち着きがなく気性の激しかったテディが、すっかりとおとなしい大人になってしまう。また、ジョーズィが大物女優のミス・キャメロンと偶然にも出会い、ジョーズィはキャメロンの屋敷に招待され、女優を目指すジョーズィに対しキャメロンは役者の勉強だけをするのではなく、学校を卒業し、心と体を錬磨して聡明で美しく健康な人になるようアドバイスしたのだ。このアドバイスを受け入れ、彼女はあれだけ嫌いだった勉強に打ち込むようになり、母親であるメグを喜ばせた。
 さらにプラムフィールドの住人を驚愕させたのは、トミーの婚約だ。あれだけナン一途だったトミーがナン以外の女の子と婚約してしまったのだ。トミーはずっとナンに虐げられていたので、トミーはナンにやきもちを妬かせようと企み、ほんの出来心のつもりでドーラと付き合ったのだ。ところがドーラはトミーにぞっこんで、ドーラの偶然の出来事や勘違いもあって、いつの間にかトミーはドーラに婚約していたという次第だ。トミーの事を何とも思っていなかったナンはこれを素直に歓迎し、トミーは医者になる勉強を止め、父親の後を継いで商売への道を進んでいく。
 さらに物語はエミルの遭難話へと続く。エミルは船員として働いていたが、その船が大洋上で火災の為、沈没しボートで脱出。それから何日も海の上をボートで漂い、あきらめかけた4日後に通りかかった船に助けられるのだ。そして今度はダンの刑務所話が始まる。ダンは西部を旅行中に一人の気のいい少年に出会った。彼は大金を持っており、その大金を狙ってペテン師が彼から大金を巻き上げようとしていたので、ダンはそのペテン師を殴り飛ばして運悪く殺してしまったのだ。ダンは殺人の罪で1年間刑務所の独房に入る事になり、せっかくプラムフィールドで善人に改心していたのが、このすさんだ独房の中で希望を失ってしまい、すっかりと元の悪人に戻ろうとしていた。しかし一人の仲間の忠告と牧師さんの励ましを受け、ダンは再び更正していく。
 ナットはドイツで音楽の勉強をしていたが、プラムフィールドを出て初めてお金を持ち、社交界など金のかかる遊びを覚え、分不相応な上流社会と付き合ううちに、とうとう学費まで使い果たしてしまい、再び貧乏な学生に戻ってしまう。そしてプラムフィールドでの演劇やエミルの遭難の知らせ、ジョーズィのテニスの試合とスタッフィとドリーへの忠告。そして裁縫部屋への貴族の訪問と続く。
 そして物語の終盤はプラムフィールドの卒業式で始まる。卒業式ではフランツとエミルがプラムフィールドに花嫁を連れて帰り、デミはジョーズィの助けを借りてアリスにロマンチックなプロポーズをする。そしてダンの事件がプラムフィールドにもたらされる。ダンは炭鉱の落盤事故で自分の命をかけて20名の仲間の命を救い、自分は瀕死の重傷を負ってしまったのだ。すぐにローリーとテディが看病に駆けつけ、プラムフィールドに連れて帰るが、そこでジョーとローリー、フリッツおじさんはダンが刑務所に入っていた事を知る。それでもダンの看病は献身的に続けられたが、ダンは叶わぬ恋と知りつつベスの事が好きになってしまい、やがてプラムフィールドを去っていく。そしてようやくナットがプラムフィールドに戻り、めでたくデーズィと結ばれる。
 物語の最後にプラムフィールドの子供達の将来が少しだけ書かれているので紹介しよう。ベスとジョーズィは芸術の成果で才能を開花し、伴侶にも恵まれて結婚した。ナンは一生独身を貫き、医者として怪我や病気で苦しむ人を救った。ダンは自分を理解してくれる人を護ろうとして銃弾に倒れ帰らぬ人となった。またスタッフィも宴会の後で卒中で倒れて帰らぬ人となった。ドリーは社交界の紳士になったが財産を失い、洋服仕立ての仕事に就いた。デミは共同経営者、ロブは大学教授となり、ライオンのように気性の荒かったテディは牧師になり母親のメグを喜ばせる事となった。

評価
 項目 5段階評価 コメント
アニメとの類似性 ☆☆☆☆ ナンが主人公でない点もあるが、ほとんど内容は同じ
入手の容易度 ☆☆☆☆☆ 有名な原作ゆえ、たいていの本屋で入手可能です
お薦め度 ☆☆☆☆ 有名な作品でもあり原作を知らなくても楽しめます
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