第1話 ファンティーヌとコゼット |
1810年代後半のフランス郊外の花畑の中を、3歳になる娘コゼットを連れ、母ファンティーヌはパリから仕事を探して歩いてきました。パリでは仕事がなく田舎に行けば仕事があると聞かされ、地方に働き先を求めてやって来たのです。モンフェルメイユ村まで来た二人は住み込みで働ける仕事を探しますが、不景気の上に子連れではどこからも雇ってもらえません。パン屋の旦那からモントルイユ・シュル・メールの町では景気のいい工場があって、どんどん人を雇っていると教えてもらいますが、ここからモントルイユ・シュル・メールの町までは遠く、子供連れで歩ける距離ではありませんでした。 |
第2話 ジャン・ヴァルジャンの秘密 |
コゼットはおかみから掃除を厳しく言いつけられ、おまけに赤ん坊のガヴローシュの世話まで命じられます。おかみはエポニーヌとアゼルマの2人の娘には優しかったのですが、息子であるガヴローシュにはまったく興味がなく、ガヴローシュが泣いても世話もしなかったのです。まだ3歳のコゼットはお母さんが恋しかったのですが、それでもお母さんと一緒に暮らせる日を信じてお母さんの帰りを待ちながら一生懸命働きました。そしてファンティーヌはコゼットがワーテルロー亭で厳しく辛い日々を送っている事を知らぬまま、無事にマドレーヌの経営する黒ガラス工場で働き始めます。 |
第3話 新しい友だち シュシュ |
今日もコゼットは朝から馬小屋の掃除、洗い物、水汲み、洗濯、二階の掃除と、おかみから罵声を浴びせられながらこき使われます。テナルディエは酒屋の借金を返すお金の工面に苦労しますが、お金を返す期限が10日、間に合いそうにありません。そこでおかみはコゼットを酒屋のところに行かせてお金を返すのを1ヶ月待ってもらうようにお願いに行かせます。酒屋はコゼットの頼みでも聞き入れようとはしませんでしたが、聞いてもらえないと食事が食べさせてもらえなくなるコゼットは一生懸命頼んだおかげで10日だけ待ってもらえる事になりました。 |
第4話 お母さんの手紙 |
ファンティーヌは愛する一人娘のコゼットに手紙を書きました。しかしコゼットはまだ字が読めないので、テナルディエへの手紙にコゼットへ読んでもらえるように書き添えました。数日後、ワーテルロー亭ではテナルディエはモントルイユ・シュル・メールから手紙が来たと大喜びです。テナルディエはファンティーヌがコゼットの養育費に送った7フランを封筒から取り出すと、中の手紙には目もくれずに暖炉に投げ込んでしまったのです。それを見ていたコゼットはお母さんからの手紙を何とか暖炉から回収しようとしますが、おかみに怒鳴られコゼットは手紙を暖炉から取り出す事はできませんでした。 |
第5話 ジャヴェールの疑惑 |
雨の日に馬車を走らせていたフォーシュルヴァンは石に乗り上げて馬車は車輪が外れてしまい、フォーシュルヴァンは馬車の下敷きになってしまいます。アランから知らせを聞いたマドレーヌは事故現場に駆けつけました。ジャヴェール警部は蹄鉄屋からジャッキを持ってくるよう手配しますが、マドレーヌはそれでは間に合わないと言って自ら荷馬車を持ち上げようとします。誰もが人間の力では荷馬車を持ち上げる事などできるはずかないと考えていましたが、ジャヴェールだけはツーロンの監獄にいた怪力のジャン・ヴァルジャンなら持ち上げる事ができるかもしれないと言います。マドレーヌは怪力を発揮し、見物人と協力して荷馬車を持ち上げ、無事フォーシュルヴァンを助け出す事ができました。しかしジャヴェールはますますマドレーヌがジャン・ヴァルジャンではないかと疑念を強めるのでした。 |
第6話 コゼットの誕生日 |
ファンティーヌは子供のいる事がゼフィーヌ達同僚に気付かれてしまい、工場の中で噂になってしまいます。しかしファンティーヌはコゼットと一緒に暮らせるようになるなら何があっても辛抱するつもりでした。そして切り詰めた生活をしたおかげでお金も貯まってきたし、今度のコゼットの8歳の誕生日にはコゼットを迎えに行こうと決心します。一方コゼットはお母さんに早く迎えに来てと手紙に書きたかったので、一生懸命字を覚えるのでした。 |
第7話 迷子のエポニーヌ |
ある日の事、コゼットが客間の掃除をしていると新聞が置き忘れていました。コゼットは字を勉強したおかげで新聞を少しは読めるようになっており、新聞を読んで色々な事を勉強しました。そんな時、ワーテルロー亭にパリ帰りのお客であるベランジェが立ち寄りました。夕食の時、食卓を囲みながらエポニーヌはベランジェの土産話に聞き入り、華やかな都・パリへの憧れを募らせていきます。モンフェルメイユ村から出た事のないエポニーヌにとって、パリはまさに憧れの地でした。コゼットは仕事をしながらもベランジェの話を聞くうちに、自分が幼少の時代にパリに住んでいた頃の事を想い出します。しかしおかみでさえ行った事のないパリにコゼットが住んでいたと聞いておかみは怒りだし、コゼットはまたしても食事抜きにされてしまいます。それでもコゼットはパリでお母さんと一緒に暮らした頃の事を想い出し幸せでした。 |
第8話 お母さんのスカート |
住む家も仕事も失ったファンティーヌは住み込みで働ける場所を探してモントルイユ・シュル・メールの町を歩き回りますが、仕事は見つかりませんでした。ファンティーヌは郵便局に立ち寄りテナルディエからの手紙を受け取ります。手紙にはコゼットの病気は治ったと書かれていましたが、これから冬を迎えるのに、また病気が悪くならないように暖かい毛のスカートを買いたいから、すぐに10フラン送るようにと書かれていました。住む場所も仕事もなく、パンを買うお金にさえ不自由しているファンティーヌにとって10フランは、とても送る事のできるお金ではありませんでした。しかしファンティーヌはどうしてもコゼットの為に暖かい服を買ってやりたくなり、ファンティーヌは意を決すると理髪店に行き自分の美しい金色の髪を10フランで売るのでした。 |
第9話 テナルディエの悪だくみ |
警察に捕まったファンティーヌはジャヴェール警部による即決裁判で禁固6ヶ月が言い渡されます。ファンティーヌは6ヶ月も牢屋に閉じ込められたらコゼットへの送金ができなくなると哀願しますが聞き入れられません。そこへマドレーヌがやって来ました。ファンティーヌはマドレーヌのせいで自分が落ちぶれてしまったと思い込んでいたので、マドレーヌを見るなりマドレーヌの頬をビンタします。しかしマドレーヌは怒るどころかファンティーヌを釈放するようジャヴェールを説得しファンティーヌを連れて帰ります。ファンティーヌは修道院の病院に運ばれました。ファンティーヌはひどい暮らしの為に病気となり、ファンティーヌを診察した医者はもう助からないだろうと言います。それほどまでに病気はファンティーヌの体をむしばんでいたのです。 |
第10話 迷いのマドレーヌ |
ファンティーヌは体の衰弱も激しく、一日も早くコゼットに逢わせてあげなければならないような状況でした。マドレーヌはファンティーヌの看病をしながら、自分にはコゼットを連れ戻すという使命もあるし、何よりこの町でまだまだやり残した事がたくさんあるので、自分がジャン・ヴァルジャンだと名乗り出る事はできないと考えますが、その為に無関係なシャンマチウが投獄されるのが本当に許されるのかマドレーヌにはわかりません。マドレーヌは悩み続けました。明日アラスの町で裁判が開かれますが、アラスの町にはここから半日もかかるので、今から馬車を乗り継いだとしてももう間に合わないのです。マドレーヌはシャンマチウもリンゴを盗んだという罪があるのだし、運が悪かったのだと考えます。そしてマドレーヌはシャンマチウがジャン・ヴァルジャンとして徒刑場に行けば自分は晴れて自由の身となれると考え、自分がジャン・ヴァルジャンである唯一の証拠であるミリエル司教から頂いた銀の燭台を暖炉に投げ込んで証拠を消そうとしますが、マドレーヌはミリエル司教が言っていた「決して忘れてはなりませんぞ、あなたがその銀を心正しき人になる為に使うと約束した事を」という言葉を想い出し、どうしてもマドレーヌには銀の燭台を暖炉に投げ込む事ができませんでした。 |
第11話 サンプリスの嘘 |
日に日に弱るファンティーヌを元気づけながらアランとシスター・サンプリスはマドレーヌの帰りをひたすら待ち続けました。もうファンティーヌの命も長くはないと思われ、一刻も早くコゼットを連れて帰る必要があったのです。そこへ突然マドレーヌが帰ってきました。マドレーヌは疲れ切った顔をしており、髪は一晩のうちに真っ白になっていました。アランはコゼットに逢えたのかをマドレーヌに聞きますが、マドレーヌは事情があってまだコゼットを迎えには行っていないと言います。マドレーヌはファンティーヌを見舞おうとしますが、ファンティーヌはマドレーヌがコゼットを連れて帰るのだけをひたすら待ち続けており、それが彼女の命の支えと聞いてマドレーヌはファンティーヌを見舞わず、すぐにコゼットを迎えに行こうとします。しかし今からコゼットを迎えに行っても、ファンティーヌはコゼットの帰りを待つ事ができないほど弱っていたので、マドレーヌは眠っているファンティーヌを一目だけでも見る事にしました。 |
第12話 ひとりぼっちのコゼット |
ジャヴェール警部はモントルイユ・シュル・メールの町に検問を張り巡らせましたが、マドレーヌは警察の網をかいくぐり、モントルイユ・シュル・メールの町を出るとモンフェルメイユ村へと急ぎます。マドレーヌはファンティーヌにコゼットを逢わせる事はできませんでしたが、コゼットを連れ戻す約束だけは何としても守ろうと考えていました。 |
第13話 ジャン・ヴァルジャンとコゼット |
コゼットは15スーを落とした事でおかみから厳しく怒られました。そして落としたのなら見つけてくるまで家には入れないと言われてしまいます。コゼットはこんな真っ暗な夜では見つける事はできないと言いますが、おかみには受け入れられません。その時、マドレーヌことジャン・ヴァルジャンがワーテルロー亭に入ってきたのです。ジャン・ヴァルジャンは薄汚い格好をしていた事から通常の2倍の40スーの宿代を前払いで請求されますが、それをあっさり払うと、コゼットの落としたお金を拾ったと言って20スーを差し出しました。それは明らかにコゼットが落としたお金ではありませんでしたが、おかみの気も収まりコゼットはお金を探しに行かなくてもよくなります。 |
第14話 二人きりの旅 |
ワーテルロー亭から無事コゼットを連れ出したジャン・ヴァルジャンは、追っ手を避ける為に馬車を乗り換えながらコゼットと共に街道沿いをパリへと向かいます。しかし立ち寄った村でも警察がジャン・ヴァルジャンを探し回っており、このまま真っ直ぐにパリを目指すのは危険だと判断したジャン・ヴァルジャンはコゼットを連れて山を越え、一日中歩き続けました。しかしコゼットの歩みが遅くなった事に気付いたジャン・ヴァルジャンがコゼットの足を確かめると、コゼットの足にはひどい水ぶくれができていました。コゼットは靴など履いた事がなく真冬でも裸足でいたので、慣れない靴を履いて歩いたせいで靴擦れをおこしていたのです。 |
第15話 二人の絆 |
ジャヴェール警部はパリへ向かう街道沿いの村々に検問を張りジャン・ヴァルジャンを追いかけましたが、ジャン・ヴァルジャンの行方は依然としてつかめません。ジャン・ヴァルジャンはパリへ直接向かうのは危険と考え、運河と大聖堂のある大きな街に立ち寄りました。賑やかな街並みに目を見張るコゼットは、次から次へと楽しそうに店先を覗き込んでは人形に文字を読んで聞かせて歩きました。 |
第16話 パリのゴルボー屋敷 |
ジャン・ヴァルジャンはコゼットをシスター・サンプリスに預けるのは断念し、コゼットを連れて馬車でパリに向かいます。そしてパリの町外れにあるゴルボー屋敷でジャン・ヴァルジャンは部屋を借り、ダンベールと名前を偽って新しい生活を始めます。コゼットは藁ではなく自分のふかふかなベッドが与えられ、そして自分の部屋まであった事から大喜びでした。そしてコゼットは自分が水汲みや掃除や洗濯や薪割りだってできるから、ずっとここにいさせてほしいと言いますが、ジャン・ヴァルジャンは「もう働いたりしなくていいんだよ、コゼットはこれから子供がしなくちゃいけない事だけしていればいいんだ。遊ぶ事、そしてこの世の中の色々な事を勉強するんだ」と言うのでした。 |
第17話 迫り来るジャヴェール |
春になってもコゼットは学校にも行かず、昼間は部屋でジャン・ヴァルジャンと一緒にずっと勉強し、夕方になると散歩に出かける生活を続けていました。管理人の老婆は何とかコゼットからダンベールことジャン・ヴァルジャンの秘密を聞き出そうとしますが、コゼットは管理人の老婆を怖がっており聞き出す事はできませんでした。コゼットは散歩の途中に市場に行くと、花屋の主人からマリーゴールドの種をもらいました。コゼットはこれを庭に植えて花畑を作るのだと大喜びでした。 |
第18話 忘れていた再会 |
ジャヴェールによって路地に追い込まれたジャン・ヴァルジャンとコゼットは高い塀を乗り越えて間一髪でジャヴェールから逃げ切る事ができました。ジャン・ヴァルジャンとコゼットが逃げ込んだ先は墓場のような場所で、なぜこんな場所がパリの真ん中にあるのかジャン・ヴァルジャンには理解できませんでした。ジャン・ヴァルジャンは納屋にコゼットを休ませ、あたりを調べに行くと、一人の男が何やら仕事をしていました。ジャン・ヴァルジャンは男に声をかけ宿を貸してほしいと頼みます。ところがこの男はジャン・ヴァルジャンの事をマドレーヌと呼んだのです。男は荷車が倒れて下敷きになった時にマドレーヌに助けられたフォーシュルヴァンだったのです。フォーシュルヴァンはここがプチ・ピクピュス修道院だと言い、足をケガして仕事ができなくなった自分をマドレーヌがこの修道院の庭師としてここに自分を送り込んだのだと言います。フォーシュルヴァンにとってマドレーヌはまさに命の恩人のような存在でした。 |
第19話 預けられたコゼット |
ジャヴェールは厳格な修道院の院長がジャン・ヴァルジャンをかくまうはずがないので、いずれはジャン・ヴァルジャンも動き出すはずだからと、プチ・ピクピュス修道院の包囲を固めます。その頃、フォーシュルヴァンの小屋では修道院から抜け出す計画が着々と進んでいました。院長は空の棺桶を担いで墓地に埋葬するつもりでしたが、その中にジャン・ヴァルジャンが入ることになったのです。フォーシュルヴァンは自分も年だから弟とその子供に庭師として雇い、手伝いをさせてほしいと院長に頼んで、渋々認めてもらうことができました。そしてコゼットは一足先にフォーシュルヴァンが籠に入れて外に連れ出し、果物屋のおばあさんに一晩預かってもらう手はずになっていました。しかしそれを聞いたコゼットは、また預けられてひとりぼっちになってしまうと怯え、小屋から逃げ出してしまいます。危険を顧みずにジャン・ヴァルジャンは修道院の中を探し回り、ようやく馬小屋の藁の中に隠れているのを見つけることができました。コゼットは自分が邪魔だからジャン・ヴァルジャンが自分を預けようとしているのだと思い込んでいました。ジャン・ヴァルジャンはここでコゼットと一緒に暮らす為には一度外に出なければならないので、自分が迎えに行くまでフォーシュルヴァンの知り合いの家で待っていてほしいと言いますが、コゼットは信じようとしません。「お母さんもそう言ったわ、お金を貯めて迎えに行くって。テナルディエさんに私を預けて。でもお母さんは…」「コゼット。約束する、お父さんは必ずお前を迎えに行く。信じてくれ」コゼットは渋々、ジャン・ヴァルジャンと別れて預けられる事になりました。 |
第20話 修道院の日々 |
ジャン・ヴァルジャンとコゼットはフォーシュルヴァンの荷馬車に隠れて再びプチ・ピクピュス修道院に戻ってきました。修道院はジャヴェール率いる警官が周りを取り囲んでいましたが、修道院から出てくる人は警戒しても、中に入る人にはあまり警戒していなかったのです。再び修道院に戻ったジャン・ヴァルジャンとコゼットはフォーシュルヴァンに案内され、かねてよりお願いしていた通り庭師として雇ってほしいと院長の元を訪れました。ジャン・ヴァルジャンはフォーシュルヴァンの弟のユルティーム・フォーシュルヴァンを名乗り、無事庭師と雇われる事になり、コゼットは修道女として明日から女子学校に通う事になったのです。それを聞いたコゼットは大喜びでした。 |
第21話 マリウス・ポンメルシー |
ベアトリスが修道院の女子学校を離れ、貴族である家族の元に戻ることになりました。仲の良かったコゼットを始めオドレイやシャルロットはベアトリスを見送り、別れを悲しみました。そんなベアトリスを見ていたコゼットは、いつか自分もベアトリスのように外の世界に出る日が来るのだろうかと想いをはせるのでした。 |
第22話 それぞれの旅立ち |
翌日、ガヴローシュとシュシュがワーテルロー亭に行くと、そこはもぬけの殻で廃墟と化していました。そこへ借金取りがやって来たのです。借金取りはテナルディエの息子から父親の借金を取り立てようと考え、鍛冶屋に行きますが、鍛冶屋の旦那はガヴローシュはテナルディエが連れて行ったと嘘を言い、どうにかガヴローシュは難を逃れます。しかしガヴローシュもいつまでも鍛冶屋に隠れている事はできない為、モンフェルメイユ村を出てパリへ向かう事にしました。鍛冶屋の旦那に別れを告げパリに向かうガヴローシュとシュシュ。ガヴローシュにとって5年も前にコゼットから届いたパリの絵はがきだけが頼りでした。 |
第23話 パリの空の下で |
塀の中からパリの町に出たジャン・ヴァルジャンとコゼットは馬車で新しいアパートに向かいます。6年ぶりに見る外の世界は新鮮で、コゼットは人の多さにびっくりしてしまいます。しかし6年前に比べて貧しい人の数が増えており、コゼットもジャン・ヴァルジャンも心を痛めるのでした。ジャン・ヴァルジャンは今度こそパリの町に腰を落ち着けて暮らそうと考え、アパートの4階に立派な部屋を借りており、コゼットはあまりの立派さに大喜びです。そればかりではなく、ジャン・ヴァルジャンは二人の身の回りの世話をしてもらえるようトゥーサンという名の女中まで雇っていたのです。コゼットは自分の部屋に案内されますが、それはコゼットが見た事もないほどきれいな部屋で、窓から見える景色もすばらしい眺めで、コゼットはうっとりとしてしまいます。 |
第24話 リュクサンブールの出会い |
ジャン・ヴァルジャンとコゼットは貧しい子供達の為に教会でパンを配ります。コゼットは王様が変わってパリの人々の暮らしは前より悪くなったと感じていました。コゼットはワーテルロー亭での辛かった時代の事を想い出すと、飢えた貧しい人々を助ける事はできないものかと考えますが、今のままパンを配り続けるだけでは飢えた人が減る事はないだろうとジャン・ヴァルジャンは言います。それでもジャン・ヴァルジャンは自分達がパンを配り続ければ、彼らは盗みをせずに済むと考えていました。 |
第25話 届かぬ想い |
ジャン・ヴァルジャンとコゼットがいつものようにリュクサンブール公園に向かう途中、コゼットは若くて華やかなドレスを着飾ったきれいな女の人を見ると「あんな衣装を着たらどんな気分かしら」とたいそう羨ましがります。しかしジャン・ヴァルジャンは「お前は今のままだって十分美しいよ、それにそのドレスだってとってもよく似合っている」と言います。 |
第26話 パリのすれちがい |
ブリュメ通りの古い一軒家に引っ越したジャン・ヴァルジャンとコゼットは家を掃除したり庭の手入れをして過ごしました。コゼットはリュクサンブール公園に行きたいと言いますが、ジャヴェールに嗅ぎつけられたのではないかと疑うジャン・ヴァルジャンは引っ越しして遠くなったからと理由をつけてリュクサンブール公園に行こうとはしません。それを聞いてコゼットはがっかりとしてしまいます。 |
第27話 飛び出した女の子 |
ジャン・ヴァルジャンはコゼットとトゥーサンと一緒に教会に礼拝に行った帰り、神父様から呼び止められました。ジャン・ヴァルジャンは貧しい子供達の為に学校を作る事を計画しており、その事で相談があったのです。コゼットとトゥーサンは教会の中で待ちますが、教会の中には女の人が青ざめて苦しんでおり、コゼットは女性を屋敷まで連れて帰りました。ロザリーヌという名前の女性はひどい過労と栄養失調で倒れてしまったのです。ロザリーヌにはそうしなければならない訳がありました。なぜならロザリーヌはまだ小さい娘ポーレットを知り合いのパン屋に預けて遠くのマルセイユの町に働きに出ていました。ところが一年ぶりに娘を迎えに行くと、娘はパン屋を飛び出して、どこに行ったかわからなくなっていたのです。ロザリーヌはあちこちポーレットを探しましたが、どうしても見つからず神様にお願いしていたところをコゼットに助けられたのです。それを聞いたコゼットはまるで自分の事のように感じてしまい、「大丈夫です、私が探します。お嬢さんを見つけてお母さんに逢わせてあげる」と言います。ロザリーヌは初めて会ったばかりの自分に対して、どうしてそんなに親切にしてくれるのかと尋ねると、ジャン・ヴァルジャンは「あなたが困っていたりするから、ただそれだけです」と答えるのでした。 |
第28話 拾われた手紙 |
今日もマリウスは部屋でコゼットの事を考えていました。お腹が空いたマリウスは食べ物を買いに行こうと外に出ますが、ゴルボー屋敷の近くの道で4通の手紙を拾います。マリウスは誰か落とした人はいないかと探しましたが、あいにく誰もいません。仕方なくマリウスは手紙をポケットに入れて買い物に行ってしまいます。その直後、エポニーヌとアゼルマがやって来ました。アゼルマはテナルディエが書いたお金を無心する偽の手紙を落としてしまい慌てて探しに来たのですが、あいにく手紙は見つかりませんでした。 |
第29話 テナルディエの罠 |
マリウスは夢を見ているようでした。半年間探し続けたコゼットが壁の向こうにいるのです。ジャン・ヴァルジャンとコゼットは俳優のファバンティアを名乗るテナルディエに食べ物と暖かい服を差し出しました。ところがテナルディエはやって来た金持ちの男の顔に見覚えがありました。それは忘れもしないコゼットを連れ去ったジャン・ヴァルジャンだったのです。テナルディエはその事は胸の内に秘め、運命の巡り合わせに感謝しつつ、ジャン・ヴァルジャンへの復讐を誓います。そしてエポニーヌもコゼットに見覚えがありました。それはリュクサンブール公園で隣に住んでいるマリウスの恋した人だったのです。テナルディエは早速お金の無心を始めました。半年間溜めた家賃の60フランを明日までに用意しないとこの寒空に部屋を追い出されてしまうと言い出したのです。ジャン・ヴァルジャンは今は手持ちが5フランしかないからと言ってその5フランをテナルディエに渡すと、家に戻って60フランを取ってくるから6時にはここに戻ってくると約束し家に戻っていきました。 |
第30話 残されたコイン |
マリウスは驚きました。テナルディエはマリウスの父の命を救った恩人だと遺書に書かれていましたが、そのテナルディエはパトロン=ミネットに属する悪党だったのです。マリウスはここで拳銃を発砲してジャヴェール警部に合図を送るべきか悩みました。自分が合図を送ると父の恩人であるテナルディエは間違いなく警察に捕まってしまいます。。しかし合図を送らなければ自分の愛するコゼットの父親の命が危ないのです。テナルディエはジャン・ヴァルジャンに散々悪態をつきますが、ジャン・ヴァルジャンは人違いだと言い張ります。そしてジャン・ヴァルジャンはテーブルを振りかざして逃走を図りますが、パトロン=ミネットのメンバーに取り押さえられてしまいます。マリウスはその様子をずっと見ていましたが、結局拳銃を発砲する事はできませんでした。 |
第31話 穏やかなプリュメ通り |
ジャン・ヴァルジャンはテナルディエの罠から抜け出し、どうにか家まで戻る事ができました。心配するコゼットにジャン・ヴァルジャンは、やはりあのファバンティアはテナルディエだったが、テナルディエもおかみも警察に捕まったから安心するように言います。ジャン・ヴァルジャンは疲れたと言って先に休もうとしますが、心配したコゼットがジャン・ヴァルジャンの後を追うと、コゼットはジャン・ヴァルジャンが腕にひどい火傷をしているのに気付きました。コゼットはテナルディエの仕業だと考えてしまいます。 |
第32話 あの日の面影 |
ジャン・ヴァルジャンはそれからも療養を続け、ようやく庭に出られるようになりました。コゼットはジャン・ヴァルジャンが元気になって良かったと心から喜びました。その頃、フォルス監獄ではテナルディエがジャン・ヴァルジャンへの恨みをさらにつのらせていました。パトロン=ミネットのメンバーは監獄から出る見込みがない事を知ると脱獄を企てますが、テナルディエは得意の嘘八百を並べ立て、自分も一緒に脱獄させるよう要求します。テナルディエはエポニーヌが脱獄の手助けをしてくれると考えていました。 |
第33話 あきらめかけた再会 |
ようやく元気になったジャン・ヴァルジャンは新しい学校を作る計画に賛同してお金を出してくれる人に会いに、モンフェルメイユ村まで2〜3日家を空ける事になりました。コゼットは心配しますが、ジャン・ヴァルジャンは留守をしっかり守ってくれと言い残し旅立っていきます。モンフェルメイユ村に着いたジャン・ヴァルジャンは、クリスマスイブに初めてコゼットと出会った森の中の水汲み場を訪れ、そこでコゼットの出会いの想い出に浸ります。そしてその夜、ジャン・ヴァルジャンはモンフェルメイユ村の森の中でかつて自分が隠していた大金を掘り出すのでした。 |
第34話 象の中の子供たち |
翌朝、コゼットはとっても機嫌が良く、元気でした。そしてマリウスもいつものように落ち込んでいるのではなく、人生がバラ色に輝いていました。その日の夜もコゼットがジャン・ヴァルジャンに隠れて庭のベンチで待っているとマリウスはやって来ました。ベンチに座った二人は他愛もない話をしました。マリウスはジャン・ヴァルジャンに自分が嫌われているのではないかと思っていました。しかしコゼットはジャン・ヴァルジャンが貧しい子供達の為に学校を作ろうと教会の神父様と毎日話したり、お金の工面に駆け回っていると言います。それを聞いたマリウスは自分とは大違いだと感じました。マリウスは貧しい人がいるという事も知らずに祖父の元でぬくぬくと暮らしていたのです。 |
第35話 パトロン・ミネットの脱獄 |
激しい雷鳴と雨が降る夜、パトロン=ミネットのメンバーにワインを差し入れされた看守はすっかりと酔いつぶれてしまい、その間にパトロン=ミネットのメンバーとテナルディエは壁を破ると煙突の中をよじ登り、屋根に出ました。そして屋根を伝って塀まで走り、とうとうフォルス監獄から脱獄したのです。しかし警備兵に追いかけられて屋根から足を滑らせてしまったテナルディエは塀の上から再び監獄に落ちそうになったところを、突然現れたガブローシュに助けられます。ガヴローシュは悪事に手を染めるつもりはまったくありませんでしたが、自分がこの世の中に生まれてきて良かったと思っていたので、その点だけはテナルディエに感謝していたと言うと走り去っていくのでした。 |
第36話 病める都・パリ |
監獄の中でおかみは亭主のテナルディエが脱獄した事を看守から知らされ、亭主からも見捨てられたと落ち込みます。しかしそれを聞いたアゼルマは、もうこれ以上お父さんであるテナルディエの言う事を聞かなくていいかと思うと嬉しくなり、監獄を出たらモンフェルメイユ村に行こうとおかみを誘います。アゼルマはテナルディエに命じられてお金持ちの家にお金を無心する手紙を届けに行くのがとっても嫌でした。ワーテルロー亭もテナルディエが変な儲け話に乗って借金を作らなければ夜逃げすることなく今でも続けられていたのです。そう考えるとアゼルマは監獄を出たら、おかみとエポニーヌの3人で楽しく暮らそうと言うのでした。 |
第37話 マリウスの誤算 |
イギリス行きの話を聞いてコゼットはびっくりしました。コゼットはラマルク将軍が病気になり市民は暴動や革命を起こそうとしているという噂を信じたジャン・ヴァルジャンがパリを脱出しようとしているのだと思っていましたが、そうではありませんでした。そしてイギリス行きの話はもうジャン・ヴァルジャンが決めており、一週間後にはここを出発する事になっていたのです。ジャン・ヴァルジャンは文字を知らない貧しい子供達の為に学校を建てようとしていましたが、その計画を中断したままパリを離れるのは後ろ髪を引かれる思いでした。しかしそれ以上にこの屋敷が危険だと感じていたのです。ジャン・ヴァルジャンはファンティーヌを守ってやれなかった事からコゼットだけは守ると決心していたのです。 |
第38話 コゼットとエポニーヌ |
ジャン・ヴァルジャンが家に戻ると庭にしおりが落ちていました。そのしおりはコゼットがマリウスから借りた本を返す時に、誤って落とした物でしたが、ベンチの周りに足跡が残っていた事からジャン・ヴァルジャンはパトロン=ミネットがこの家を狙っているのではないかと考えます。パトロン=ミネットの襲撃を恐れたジャン・ヴァルジャンは今すぐに別の家に引っ越すから荷物をまとめるようとコゼットに言いました。しかしコゼットは一週間後にイギリスに行くのに、なぜ今、別の家に引っ越すのか理解できません。マリウスとの約束があったので、せめて明日まで待てないかとお願いしますが、ジャン・ヴァルジャンは今日でないとだめだと言うのです。コゼットは言いました。「わけを教えて。パリに来てからずっと人目を避けて暮らしてきたわ。ゴルボー屋敷から出た時も、この家に来た時も、いつも逃げるみたいに引っ越して。お父様に何か考えがある事はわかっているわ。だから今までは不思議に思ってもいつも黙って従ってきた。でも私だってもう子供じゃないの。知りたいの、お父様の考えている事。お父様がいつも何かから逃げているのはどうして?」「コゼット、そうだな、私はコゼットに話さなくてはならない事がまだある。しかし今はまだその時ではない。約束する。いつかその時が来れば何もかも話すと。とにかく荷物をまとめなさい」と言うのでした。 |
第39話 1832年6月5日 |
コゼットはやはりイギリスに行くべきだ。しばらく逢えなくなるのは辛いが、それもコゼットの為だと考えながら、マリウスはプリュメ通りの屋敷にやって来ました。ところが家には誰もおらず、コゼットは既に引っ越した後でした。マリウスは打ちのめされパリの町を歩くと、いつのまにかリュクサンブール公園に来ていました。そこでもマリウスはコゼットの事ばかりが想い出されました。マリウスはコゼットが急にイギリスに行ってしまったと思っていました。しかしコゼットは自分に必ず手掛かりを残してくれているに違いないと考えると、再びプリュメ通りの屋敷に戻り、ベンチに手紙を残してくれていないかを確認しますが、手紙はありませんでした。 |
第40話 革命の夜 |
バリケードの中では夜を徹して準備が進められた。男たちは金属を溶かして弾薬を作り、女たちがシーツを裂いて包帯を作っていた。ガヴローシュも革命の参加を名乗り出て、町の偵察に出かける事になりました。 |
第41話 エポニーヌの恋 |
エポニーヌはマリウスを追ってバリケードまでやって来ました。エポニーヌは自分のせいでマリウスをこんな危険な場所に来させてしまって申し訳ないと思っていました。しかしマリウスをコゼットにだけは渡したくなかったのです。その時マリウスは偵察の警官と鉢合わせになり、警官の銃が火を噴いたのです。しかしその時マリウスの前にエポニーヌが立ちふさがりエポニーヌが撃たれてしまいました。マリウスはすぐにエポニーヌを運んで治療してもらおうとしますが、エポニーヌはお医者さんよりマリウスのそばがいいと言うと、マリウスをこんな危険な場所に導いたのは自分だと言います。なぜならマリウスが幸せになるのを見たくなかったのです。エポニーヌにとってマリウスが毎日プリュメ通りのあの屋敷の庭に入っていくのがとても辛い事でした。エポニーヌはマリウスを騙したままでいるのが耐えられず、コゼットの手紙を取り出すとマリウスに渡しました。それはコゼットが書き残した新しい住所の書かれた手紙でした。エポニーヌはマリウスをコゼットに逢わせたくなくて、ずっと持っていたのです。マリウスはエポニーヌとコゼットが知り合いだった事を驚きました。 |
第42話 マリウスからの手紙 |
ガヴローシュの言う事は本当でした。ジャヴェールはアベセ友の会のメンバーによって捕らえられ柱にくくりつけられてしまいます。そして朝になったら激戦が始まると考え、女性とけが人は今のうちにバリケードの外に退避する事になりました。ミレーヌはクールフェラックとの別れを惜しむように、別れ際にペンダントを渡しました。クールフェラックはペンダントを受け取ると、パリの町に平和が戻ったらまたみんなでピクニックに行こうと言ってミレーヌと別れました。 |
第43話 ガヴローシュの願い |
政府軍は大砲の次の斉射を準備しますが、それを邪魔する為、アンジョルラスは政府軍の兵士を狙撃しようとしますが、まだ自分と同じくらいの若い兵士にコンブフェールは止めさせます。アンジョルラスは砲撃を止めさせないとバリケードは突破されると言い張りますが、その時ジャン・ヴァルジャンは政府軍兵士の帽子を次々と打ち抜いていったので、狙撃の腕前に恐れをなした政府軍は撤退していきます。その間にもアベセ友の会は壊れたバリケードを補修しようとしますが、今度は政府軍の銃撃が始まり、バリケードでは身動きがとれません。銃弾の飛び交う中をジャン・ヴァルジャンは荷車まで走ると、たった一人で重い荷車を引きずり、バリケードを補修してしまうのでした。 |
第44話 未来へのともしび |
ロマルメ通りのアパートに運び込まれたガヴローシュは医者に治療してもらい、何とか一命を取り留めました。あと少し治療が遅かったら命が危なかったと言われ、シュシュがガヴローシュを助けたのだとコゼットはシュシュを抱きしめました。それからもコゼットはガヴローシュの看病を献身的に続けました。トゥーサンはコゼットに二度と一人で外に出ないよう涙を流してコゼットにお願いしました。まだジャン・ヴァルジャンが町から戻ってきていなかったのです。トゥーサンはジャン・ヴァルジャンが一人でゴルボー屋敷に行った時も帰ってきたのだから、今度も旦那様は必ず帰って来ると言うのでした。 |
第45話 パリの下水道 |
ついにすべてのバリケードが陥落し、理想を掲げて革命を起こした学生たちはみんな撃ち殺されてしまいました。瓦礫の中でジャヴェールは必死にジャン・ヴァルジャンを探しますが、ジャン・ヴァルジャンの姿はどこにもありませんでした。しかし瓦礫の中にマンホールを見つけ、ジャン・ヴァルジャンはここから下水道に逃走したと思われました。 |
第46話 ジャヴェールの正義 |
ジャン・ヴァルジャンを見つけたジャヴェールは言います。「騒ぎに乗じて姿をくらますつもりだったのだろうジャン・ヴァルジャン」「違う」「俺の命を助け、恩を売っておけば追跡の手をゆるめるとでも思ったのか。やはり俺の考えは間違っていなかった。一度犯罪を犯した者は二度と立ち直れない」「何と言われても構わない、だがこの青年の命だけは助けてやってくれ。肩を撃たれている、早く医者に診せなければ。一刻を争うんだ」「そいつはアベセ友の会か」「そうだ、だが私はこの青年を助けなければならない。何よりも先にこの青年を家族の元に送り届ける。ジャヴェール、私はもう逃げはしない」 |
第47話 心の絆 |
コゼットはマリウスの為に一生懸命ガーゼを縫います。ガヴローシュはブレソールとユーグを思い出すと、寝ている場合ではないと考え部屋を飛び出そうとしますが、ガヴローシュはまだ起き上がれる状態ではなくコゼットに止められてしまいます。コゼットはブレソールとユーグの事をガヴローシュから聞くと、シュシュに頼んで二人のところに連れて行ってもらおうと考えますが、あいにくシュシュはいませんでした。するとジャン・ヴァルジャンが二人を連れて帰ってきたのです。ジャン・ヴァルジャンは教会の帰りに偶然シュシュが走っていくのを見かけて二人を連れ帰ってきたというわけでした。 |
第48話 コゼットとマリウス |
秋になりマリウスは元気を取り戻し、杖なしで歩けるようになりました。これも毎日看病に来てくれるコゼットのおかげだとジルノルマンもコゼットの事を褒め称えます。マリウスには急いでやらなければならない事がありました。マリウスはあのバリケードから自分を助け出してくれた人を探そうと考えていたのです。最初はそんな事を考える余裕などありませんでしたが、アンジョルラス達の想いを受け継いで生きていこうと考えた時、その人の事が気になり始めたのです。そしてバリケードでもう一人マリウスを助けてくれた人がいました。でもその人はマリウスを銃弾からかばって亡くなったのです。いくら伝えたい事や謝りたい事があっても、もう何も言う事かできないのです。だからもう一人の恩人にだけはきちんと会って感謝の気持ちを伝えたかったのです。 |
第49話 私のお母さん |
もうすぐ秋も終わろうとしていました。コゼットの結婚式は来年の二月に決まっていましたが、それももうすぐのように思われました。そしてこれから準備で忙しくなりそうでした。コゼットはジャン・ヴァルジャンにモントルイユ・シュル・メールの町に行きたいと言いだします。それはお母さんに結婚を報告する事と、お母さんが自分と一緒に暮らす為に一人で働いていた町を一度でいいから見ておきたかったのです。コゼットはジャン・ヴァルジャンと一緒に行きたかったのですが、ジャン・ヴァルジャンはコゼットがファンティーヌの事を知る為の旅なら一人で行った方がいいと言います。そして教会にシスター・サンプリスがいるから、彼女に手紙で連絡してもらう事になりしまた。それを聞いたガヴローシュも行きたいと言いだします。ガヴローシュはモントルイユ・シュル・メールに行くついでにモンフェルメイユにも行きたかったのです。ジャン・ヴァルジャンは賛成し、コゼットはガヴローシュと二人でモンフェルメイユの村を経由してモントルイユ・シュル・メールの町に行く事になりました。 |
第50話 永遠のリング |
ジャン・ヴァルジャンが願ってやまなかった学校の建設は進み、学校建設のおかげで多くの人が雇われ仕事を得る事ができました。コゼットの結婚式の頃には学校が完成しそうでした。学校ができれば子供達は教育という大きな物を得る事ができる。そうすればただ人から食べ物をもらうだけでなく、自分達の力で生きていくすべを身に付ける事ができるのです。 |
第51話 明かされた真実 |
ジャン・ヴァルジャンは語りました。「昔、盗みの罪を犯して監獄に入っていた事があるんだよ。その罪を償って出獄した。しかしその後で自分では気付かずにさらに罪を重ねてしまい、最近までずっと警察に追われる身だった。フォーシルヴァンという名前も偽名だ。私の本当の名前はジャン・ヴァルジャンと言うのだ。私の過去のせいでコゼットには不自由な思いをさせてしまった。いつかはすべてを打ち明けると約束したが、今の私にはその勇気がない。だから私はコゼットの前から姿を消す事にした。このまま過去について何も話さずに父親としてコゼットの近くに留まる事ができればどんなに幸せだろうと思う。しかしその為には嘘を重ねなければならない。現にもういくつもの嘘をついてしまった。過去にコゼットを守る為についてきた嘘ではなく、自分の為でしかない嘘を。それは罪だ。これからは私ではなく君がコゼットのそばにいて、力を合わせて一緒に生きていけばいい」そう言ってジャン・ヴァルジャンはマリウスに貧しい人達の為に職場や病院を建てる為の計画書とその資金を託しました。ジャン・ヴァルジャンは「昔、徒刑場を出た後、私はある方に助けられ、新しい人生をもらったんだ。だから私は自分の人生をかつての自分と同じように無知や貧しさに苦しむ人達を救う為に、その為だけに使わなくてはならない。どうしても一人になる事が必要なんだ」そう言い残すとジャン・ヴァルジャンは姿を消したのです。 |
第52話 銀の燭台 |
ジャン・ヴァルジャンがパリを去ってから1年以上が経過しましたが、何の手掛かりもありませんでした。ジャン・ヴァルジャンが望んでやまなかった貧しい子供達の学校は無事に開校し、ガヴローシュやブレソール、ユーグは学校に通うようになりました。そしてマリウスはジルノルマンの屋敷から離れたパリの外れに弁護士事務所を開き、困っている人を助けるようになります。この場所はマリウスがジルノルマンの屋敷を飛び出した時に、初めて借りた想い出の部屋でした。 |