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赤毛のアン  感想

 言葉では言い表しにくいのですが、この赤毛のアンのアニメは、それまでの「アルプスの少女ハイジ」から「ペリーヌ物語」までの世界名作劇場とは少し違った印象を持たないでしょうか? 子供の頃からハイジ〜ペリーヌとずっと見てきた私にとって、赤毛のアンはそれまでの世界名作劇場とは違った作風の為、本放送の時、最初の数話だけは見ましたが、途中から面白くなくなって見なくなってしまいました。そして月日は流れ1999年にこのホームページを立ち上げようとした時、世界名作劇場の全作品をもう一度すべて見直しました。その時、子供心に面白いとは感じなかった赤毛のアンが、大人になって見直したら面白く感じるのではないだろうかと、半分期待して見たのですが、やっぱり子供の頃に感じたあの感覚に襲われ、どうしても面白いと感じる事ができず、せっかく世界名作劇場のホームページを立ち上げたのに赤毛のアンだけは未完成という状態がそれから10年続きました。ホームページ開設10年を記念して赤毛のアンも完成させようと一大決心し、赤毛のアンを再び見直す事にしたのです。ところが今回は面白いと感じるようになり、見終わった時には完全に赤毛のアンの虜になっていました。
 そこで子供の頃、何が面白いとは感じず、そして今、何が面白いと思うのか、もう一度考えてみたところ、赤毛のアンのアニメがあまりにも原作を忠実に再現しているという事に行き当たりました。赤毛のアンの原作は世界的に有名なカナダの小説ですが、この小説は世界名作劇場を見るような小学生程度の子供を対象とした作品ではありません。どちらかと言えば中学高校生から大人の女性向けの小説と言っていいでしょう。この原作を忠実にアニメ化したのだから、子供達にとって面白く感じなくてもおかしくはありません。それまでの世界名作劇場の作品はすべて原作を小学生程度の子供達が楽しく見られるように脚色されていましたが、赤毛のアンにはそれがないのです。これまでと違った作風と、ひたすらセリフのオンパレードに、子供の頃の私はなかなか感情移入する事ができませんでした。
 ちなみに松本正司氏著の世界名作劇場大全によると、赤毛のアンはアニメ化にあたり監督である高畑氏がどうしてもアンの心情を理解する事ができず、脚色せずにストーリーを忠実に追うしかなかったそうだ。しかしそれにも限界があったのか、赤毛のアンで作画を担当していた、かの有名な宮崎駿氏は第14話の途中で「アンは嫌いだ、あとはよろしく」と言い残して赤毛のアンを去り、ルパン三世カリオストロの城へ去っていったそうだ。14話どころか、数話で見るのを止めた私にはその気持ちがわからないでもないが、30話あたりまで我慢すれば面白くなっただろうにと思わずにはいられない。
 さて、ホームページ開設10年にあたり、赤毛のアンを三度見始めたわけですが、最初のうちは従来の世界名作劇場とは異なる作風、そして癇癪持ちのアンの性格も加えてやはり面白いとは感じませんでした。しかしアンがグリーンゲイブルズに来て1年が経過し、もはやアンはグリーンゲイブルズになくてはならない存在になり出した頃、つまりアニメの第20話あたりから面白いと思えるようになりました。さらにアンがお喋りで想像好きな子供から、物静かな大人へと成長していく過程を描いた第32話あたりからはますます面白いと感じるようになり、その頃にはすっかりとのめり込んでいました。特に親友であるダイアナとは何でも一緒でなければならないと思い込んでいたアンが、ダイアナとは別々の道を進む事を理解した時や、物語クラブの解散、そしてクィーン学院への入学と、アンは少しずつ大人への階段を登りながら、大人になるというのが自分の思っていたのと少し違うという葛藤に悩み、マリラはそんな大人になっていくアンに寂しさを覚えるあたりが面白さを深めています。また第30話から第37話にかけて作品の中で2年も経過しているので、回を重ねる事にアンの身長が伸び、大人になっていくのも見所でしょう。
 そしてクィーン学院の入試と合格発表を経て、第41話あたりからクィーン学院での生活が始まりますが、ここではアンがグリーンゲイブルズからいなくなった事で、あれだけアンに厳しかったマリラがすっかりと年老いて寂しがり、それと対照的にアンがますます大人になっていきます。さらに第45話の卒業試験の発表とエイブル奨学金受賞で物語はクライマックスとなり、第46話でエイブリー奨学金受賞という栄誉を手にグリーンゲイブルズに戻り、アンの人生でもっとも輝いていた時を迎えます。物語がここで終わっていれば、アンの人生は光り輝く未来が待っていたかもしれません。
 しかし第47話でマシュウが狭心症の心臓発作で亡くなり、同時に全財産を預けていた銀行が倒産してカスバート家は無一文に。さらに第49話でマリラは目が見えなくなりそうだと判明し、アンとマリラはたった一週間で栄光から絶望のどん底に落とされてしまいます。しかしそんな中でもアンはしっかりと前を見据え、自分が今何をしなければならないかを考えた末、エイブリー奨学金を捨て、文学士になる夢をあきらめ、学校の先生になる事を決意。そして最終回でアンの為にアボンリーの学校の教師の座を譲ってくれたギルバートとの念願の仲直りを果たして物語は終わります。赤毛のアンは後半になるほど面白く、特に第45話あたりからは感情移入しすぎてアンやマリラと同様に胸が苦しくなってくるほどです。
 結局のところ、赤毛のアンのアニメは原作を忠実に再現したアニメなので、対象年齢も高く、子供向きではないというのが私の感想ですが、いつも喋ってばかりで想像好きの小さかったアンが次第に大きくなり、物静かな女性へと成長を遂げ、それを年老いていくマリラは寂しく思う描写が面白く、のめり込む原因となったようです。

評価
 項目 5段階評価 コメント
不幸度 ☆☆ アンの生い立ちと終盤は少し不幸ですが、全体的にはアンは幸せです。
ほのぼの度 ☆☆☆ アボンリーの自然を相手にダイアナとよく遊んでいたようです。
お薦め度 ☆☆☆☆ 前半は星3つで後半は星5つってところです。
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