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北海道自転車ツーリング 4日目
白滝〜滝上〜岩尾内湖 −雨の峠越え−
2012年08月13日

4日目の走行地図

4日目の速度グラフ
速度
4日目の高度グラフ
高度

 昨夜は早くから寝て、寝付きよかったものの、0時あたりに目覚めてしまい、それ以降はほとんど寝ることができなかった。4時に目覚めたが、二度寝していたら次に目覚めた時には4時50分になっていたので起きることにした。朝の気温は16℃だった。標高が高いのでもう少し寒くなるかと思っていたがそうでもなかったようだ。
 今朝も気分がすぐれない。どうも頭痛と吐き気までしてきた。どうやらこれは二日酔いのようだ。昨夜は少しウィスキーの量を減らしたはずだが、それでもまだダメだったようだ。よく考えたらこんなこともあろうかと二日酔いの薬を持ってきていたので飲んでおく。しかし北海道自転車ツーリングで二日酔いとは情けない。
 自転車に干していた洗濯物は、この気温では乾いていないだろうと考えていた。今朝は寒かったので濡れた服を着る気にはならず、新しいサイクリングジャージーを出して着ようとしたが、念のために干していた洗濯物の乾きを確かめたら、完全に乾ききっていた。どうやら風が強くて乾いてくれたらしい。そこで新しいサイクリングジャージではなく、昨日洗濯したものを着る事にした。
 昨日はテーブルの横にテントを張っていたので、テーブルをフルに活用することができ撤収ははかどった。ただし、テントの周りに蛾が群がっていたので、それを振り落とすのに苦労する。テントを撤収した後、朝食としてラーメンを食べた。しかし二日酔いで胃がむかついている時にラーメンなど食が進むはずもなく、かなり苦労して無理して食べる。
撮影日時:2012/08/13 05:08:18 シャッター速度:1/13 絞り:F6.3 焦点距離:34mm
白滝高原キャンプ場でのキャンプ風景
撮影日時:2012/08/13 06:01:12 シャッター速度:1/25 絞り:F6.3 焦点距離:42mm
白滝高原キャンプ場
 撤収も完了し6時ちょうどに白滝高原キャンプ場を出発しようとしたら小雨が降り始めた。今日の天気予報では曇り後雨だったはずだが山沿いなので仕方がない。まだ小雨だったし麓まで降りれば雨は止むに違いないと考え、レインスーツは着ずにそのまま走り始める。しかしキャンプ場から少し下ったところで雨は激しさを増し、路面も濡れてきたので、道ばたに自転車を止めてレインスーツを着ることにした。ついでに本格的な雨に備えてシューズカバーも装着する。
 雨仕様にチェンジして再び坂を下り始めるが、国道333号線まで下った時には雨は止んでしまった。しかし路面は濡れていたので、きっとさっきまで降っていたのだろう。とりあえずシューズカバーを外し、レインスーツの上だけ脱いで、ツーリングマップルを自転車のフロントバッグの上に出した。そして6時20分から国道333号線を走り始めた。
 国道333号線まで下る途中に道の駅「白滝」があった。私はキャンプ場で出たゴミを捨てたかったが、道の駅にゴミ箱がないような気がしたので、そのまま素通りする。この先、ゴミを捨てられる場所は滝上のコンビニまでなく、ゴミを持って峠越えするのは厄介だが、ゴミの重さはほとんどないのでそれほど問題はないだろう。
 国道333号線に出ると、ここからは標高857mの北見峠越えとなる。キャンプ場から下って来た場所の標高は520mなので、337mの登りだ。すぐ横を旭川紋別自動車道の橋が見上げるばかり高い場所に設置されており、お金をかけて作っているなと実感する。朝早いこともあって体力は十分あり、しかも気温も低いので登りやすい。しかし峠を標高で100mも登ると気温が低くてもうっすらと汗をかき始めた。
撮影日時:2012/08/13 06:25:09 シャッター速度:1/30 絞り:F6.3 焦点距離:85mm
はるか上に旭川紋別自動車道の橋が見えた
撮影日時:2012/08/13 06:52:25 シャッター速度:1/25 絞り:F6.3 焦点距離:24mm
しばらく登ると同じ橋がはるか下に見えた
 標高700mちょっとのところの道ばたに見晴らしのいい場所があったので、7時から休憩することにした。ここまで標高差で200m弱ほどを40分で登っているので計算通りのペースだ。峠を登っている途中で続けざまに2匹のリスが道路を横断しようとしているのを見た。一匹はエゾリス、もう一匹はシマリスだった。どうせ見るならエゾリスの方が珍しいし風格もある。この道路は並行して無料の旭川紋別自動車道が走っているので極めて交通量が少なく、リスたちも安心しきっているのだろう。
 下を見ると、先ほどは見上げるほどの場所にあった旭川紋別自動車道の橋が、はるか下に見えており、高くまで登ってきたことを実感する。ところが休憩しようとしたその時に急に雨が激しく降り始め、慌ててレインスーツを着用し、先ほど外したシューズカバーも付けなおした。
 激しい雨が降り始めたので休憩は断念し、それからも雨の中を登り続けた。雨は最初のうちは走りたくなくなるほど激しく降っていたが、雨宿りをできる場所もなく走り続けるしかなかった。しかし頂上に近づくにつれて普通の雨へと変わっていった。そして7時20分に標高857mの北見峠の頂上に到着。頂上にはなにやら広い駐車スペースと何かの碑があった。私は東屋など雨をしのげるものがあればそこで休憩しようと考えていたが、何もなかったのでそのまま素通りして坂を下り始めた。
 峠の下りは楽と言えば楽だが、今日のような雨だとブレーキをかけないわけにはいかない。しかも雨の日はブレーキシューの減りが晴れの日に比べて異常に早いので気を使う。今日は30km/h以上出さないように気をつけながら下ってきた。通行する車がきわめて少なく、片側車線一杯を使って走ることができたので走りやすかった。
撮影日時:2012/08/13 07:19:15 シャッター速度:1/50 絞り:F6.3 焦点距離:34mm
北見峠頂上に到着
撮影日時:2012/08/13 08:42:37 シャッター速度:1/160 絞り:F6.3 焦点距離:24mm
浮島峠頂上のパーキングで雨宿り
 20分ほどで標高差280mほどを下りきり、7時40分に国道273号線との交差点に到着。ここからは国道273号線に入り浮島峠を目指す。峠は標高711mだが、この交差点が標高576mなので、標高差であと135mだけ登ればいい計算だ。国道273号線に入ってすぐにパーキングがあったので雨をしのげる場所がないかと探したが無駄だった。仕方なく休憩することなくパーキングを通過する。
 それからも坂を登り続けて8時ちょうどに浮島峠の頂上のトンネルの入り口に到着。ここにもパーキングがあり、おまけにパーキングの脇には何かの電源施設があり、その軒下で雨をしのぐことができたので、ここで今日初めて休憩しながら旅の日記を書くことにする。雨の日はこうした雨をしのげる場所でしっかりと休憩をとっておく必要がある。30分ほど旅の日記を書き、昨日遠軽で買ったおにぎりを食べた。まだ二日酔いは残っているが、走れないほどではない。逆に走っている時は問題がなく、休憩している時に気分が悪くなるくらいだ。
 のんびりと雨宿りしながら休憩をとり、8時50分に出発。休憩している間に雨は止んでしまったが、かなり寒かったのでレインスーツは着たまま走る。ここからはすぐに全長3332mの浮島トンネルだ。車の途切れた合間を見てトンネルに突入する。トンネルには比較的広い歩道があり、最初の500mほどは歩道を走っていたが、歩道が荒れていたので断念して車道に降りて走る事にした。このトンネルは勾配2.4%の下り坂なので、ペダルをこがなくても時速20km/hくらいのスピードで走ることができ楽だった。しかしペダルを回さないおかげで体が温まらず、寒いトンネルの中で濡れた体に風が当たるのは寒くて仕方がなかった。
 トンネルを抜けると気温計があり17℃を示していた。どおりで寒いはずだ。ここからは下りが続く。雨は止んでいたが寒くて仕方がなかったのでレインスーツは着たまま下る。トンネルから先は下りが延々と続き、しかも急な下りでなくブレーキをかけなくていい程度の緩やかな下りが続いたのでとても楽だったが、ペダルを回さないので体がなかなか温まらず、寒いまま凍えていた。
 10kmも下ると、下りだけでなく緩やかな登りもでてくるようになった。その頃にはあまりの寒さに体が痺れてくるほどの状態だった。普段だったら登りは嫌なところだが、この時ばかりは登りが見えると「これでペダルを回すことができ、体を温められる」と考えて嬉しかった。
 ペダルを回すようになった為だけではなく、標高が下がって気温が上がり、ようやく体が温まって本調子になってきた。それでも下りがメインなのでかなり楽に走り続ける。この国道273号線は滝上に向かって下るにはかなり走りやすい道だ。逆に走る場合でも登りの勾配が緩やかなので登りやすいようには思えるが、浮島峠を越えた後、北見峠を越えるとなると、補給できる箇所がほとんどないので食料と水は大量に用意しておく必要があるだろう。
撮影日時:2012/08/13 09:03:41 シャッター速度:1/800 絞り:F6.3 焦点距離:136mm
滝上まであと37km
撮影日時:2012/08/13 10:29:53 シャッター速度:1/100 絞り:F6.3 焦点距離:24mm
売店の軒先で休憩する
 滝上まであと10kmくらいまで走った時、雨が降りはじめた。ちょうど閉まっていた売店があり、10時20分からその軒先で休憩する。ふとレインスーツの裾を見ると、前輪が跳ね上げた汚れが付き、しかも雨が降っていないので雨で流れないまま汚れていたので、水たまりの水で汚れを落とす。これは帰ってからレインスーツも洗濯する必要がありそうだ。
 閉まっている売店の軒先で10分ほど旅の日記を書いて雨の中を出発する。出発からここまで4時間30分で50km走った。カメ作戦よりは遅いが、旅の日記を書きながら峠を越えているのでこんなものだろう。
 それからも滝上目指して走り続けた。売店を出発した時にはまだ雨はそれほどひどくなかったが、既に雨は本降りとなり、かなり激しさを増していた。困ったことに靴の中にまで水が入ってきた。ゴアテックスの靴にシューズカバーをしているので基本的に水は入らないはずなのだが、あまりの雨の激しさに靴の中まで水が入ってきたようだ。靴を濡らすと乾かすのが大変なだけに厄介なものだ。
 それでも若干の下りと追い風も手伝って快調に進み、11時に滝上の町に到着した。キャンプ場から水を補給できる場所がなく、今日は峠を登るので水の搭載量を最小限にしていたこともあり既にボトルの水が底をついていた。そこで道の駅に行って水の補給と、コンビニで食料の買い出しをしなければならない。しかしかなりの雨が降っており、どうしようかと考えながら滝上の町を走っていたら、ちょうど上紋峠への交差点を過ぎたところに河川公園があり、そこに東屋やトイレがあったので、そこで休憩することにした。
撮影日時:2012/08/13 11:10:56 シャッター速度:1/80 絞り:F6.3 焦点距離:24mm
滝上の河川公園の東屋で雨宿り
撮影日時:2012/08/13 11:36:06 シャッター速度:1/200 絞り:F6.3 焦点距離:35mm
コンビニで牛乳を飲む
 まずは公園のトイレでボトルに水を補給。そして東屋でようやくツーリングマップルを見る。ここから今日の目的地である岩尾内湖まであと44kmあり、しかも標高800mの上紋峠越えが待っている。時間にすると見当も付かないが、平地だと3時間くらい、標高差で670mの峠越えなので1時間300mとして5時間くらいだろうか。遅くとも17時には到着したいので、あまりノンビリはしていられない。この公園の東屋で雨宿りしながら少しだけ旅の日記を書いて、昨日遠軽で買った最後のおにぎりを食べた。10分ほど休憩すると、公園からすぐ近くにコンビニが見えていたので、とりあえずコンビニに向かって走る事にした。
 公園で休憩しているうちに土砂降りだった雨は小雨となり、すぐそばのコンビニに着いた時には雨は止んでいた。私は昨日のキャンプ場で出たゴミを捨て、昨日と同じく明日の昼までコンビニにはあり着けないので、パンとおにぎりとヨーグルトのパックを買い込み、牛乳を買って店の前で飲み干した。
 11時40分にコンビニを出発。ここからは標高800mの上紋峠を越えるだけだ。雨も小降りになり走るには支障もないし、何より涼しいのがありがたい。今日は標高857mの北見峠に始まり、標高711mの浮島峠、そしてこれから標高800mの上紋峠と、今日は峠デーだ。雨降りなのが嫌なところだが、どうせこれらの峠は眺めを楽しむことができないのだし、暑くてたまらないよりは雨の方がまだマシというものだ。
撮影日時:2012/08/13 11:44:17 シャッター速度:1/160 絞り:F6.3 焦点距離:34mm
芝桜で有名な滝上公園
撮影日時:2012/08/13 12:25:08 シャッター速度:1/800 絞り:F6.3 焦点距離:104mm
今日は朝日までは行かないが…
 コンビニを出発し滝上の町を走っていると滝上公園が見えてきた。ここは芝桜で有名な公園で、5月下旬になると山の斜面全体が芝桜で紫色に染まる。もちろん今の季節にそんな光景は見られない。この公園の麓にはキャンプ場がある。私は雨がひどくて上紋峠を越えられそうにない時の緊急避難時にこのキャンプ場を利用するつもりでいたが、もうその必要はなさそうだ。
 道道61号線に入って順調に走行距離を伸ばした。この道道61号線は交通量も少なく、車を気にせずに走ることができるのがありがたい。こんな道で絶対にチャリダーと出会うことはないと思っていたが、案の定、出会うことはなかった。今日も12時で65kmしか走らなかった。今日は峠を越えていたというのはあるけど、3日連続で同じ距離、しかも例年であればカメ作戦だったとしても75kmは走っているはずだから、今年はずいぶんペースが落ちたものだ。
撮影日時:2012/08/13 12:31:15 シャッター速度:1/500 絞り:F6.3 焦点距離:24mm
雨の中、道道61号線を走り続ける
撮影日時:2012/08/13 12:33:52 シャッター速度:1/200 絞り:F6.3 焦点距離:24mm
人家のほとんどない道だった
 それからも緩やかな坂を登り続けた。この道でも途中2つの動物に出会った。1つは蛇だ。すぐ近くまで接近すると路肩から蛇が首を出していたので、慌てて道路側によけるが、そんな時に限って交通量の少ない道で後方から車が来ており、危うくひかれそうになる。幸いにも蛇の方がよけてくれたので噛まれることはなかった。もう1つは大きなカタツムリだった。全長10cmはあろうかという巨大なカタツムリが道路を横断していたが、いくら巨大でもカタツムリの足では道路を渡りきる前に車にひかれてしまうことだろう。
 標高275m地点にパーキングがあったので12時50分から休憩する。岩尾内湖まであと29kmだ。お腹が空いてきたのでコンビニで買ったパンを食べるが、このパーキングには雨を遮るものがなく、雨に打たれながらパンを食べるのは辛かった。やはり雨の日のツーリングは雨宿りできる場所がほしい。
撮影日時:2012/08/13 12:54:34 シャッター速度:1/200 絞り:F6.3 焦点距離:24mm
雨に濡れながらパーキングで休憩
撮影日時:2012/08/13 12:59:02 シャッター速度:1/250 絞り:F6.3 焦点距離:24mm
急な登り坂が始まった
 それからも道道61号線を走り続けた。先ほど休憩したパーキングあたりまでは傾斜も緩やかで走りやすかったが、次第に傾斜がきつくなり登るのが苦しむようになる。雨は降ったり止んだりを繰り返しており、止んだ時にレインスーツのフードを外して前のファスナーもはだけて走ると涼しくて気持ちがいいが、雨が降り始めると途端に暑くなるからたまらない。
 傾斜は次第に増していき、標高500m付近にあったトンネルの中の傾斜は勾配10%程度もあり、ここを登るのにとても苦しめられた。14時ちょうどに標高570m地点で休憩する。岩尾内湖まであと19kmだ。2009年にオロフレ峠を越えた時もそうだったが、道道の峠は国道に比べて勾配がきついのだ。国道は勾配が6%程度で安定しているが、道道の峠の勾配は無制限で、ここも例外ではなかった。しかし所々、傾斜が緩やかで息抜きできる場所もあり、イメージ的には知床峠を羅臼側から登っているような感じだ。
 14時30分に標高700m地点のトンネル入り口に到着。またお腹が空いてきたのでエネルギーの補給にトンネルの中で雨宿りしながらパンを食べ休憩する。この頃には力が底を尽きかけており、一番厳しい時間帯だった。やはり何度経験しても感じることだが、雨の日の峠越えは修行に近いものがある。しかしそれでも、あれだけ活躍していたオリンピック選手達も、きっと陰ではひたすら努力をしていたに違いない。彼らのそんな頑張りに励まされ、自分もこんな峠くらいは越えなければと、そんな意気込みで坂を登る事にした。
撮影日時:2012/08/13 14:01:17 シャッター速度:1/80 絞り:F6.3 焦点距離:24mm
トンネルの手前で雨宿りしながら休憩
撮影日時:2012/08/13 15:00:56 シャッター速度:1/80 絞り:F6.3 焦点距離:34mm
上紋峠の頂上に到着
 どうにか坂を登りきり、15時ちょうどに標高800mの上紋峠の頂上に到着。頂上の少し離れた場所に上紋峠と書かれた標識があったので、雨の中自転車を押してそこまで持っていき、記念撮影を行う。せっかく苦労してここまで登ってきたのだから、それくらいのことはしたいが、雨の中で撮影しまくったのでカメラだけでなくレンズも濡れてしまい、それを拭く物もないので濡れたタオルで拭いたけどきれいにはならず、あまり写りはよくなかった。
 ここからは距離にして14km、標高差で480mの下りが続く。雨の下りはブレーキシューがすり減るので嫌だなあと思っていたが、それどころではなかった。まずブレーキを握る手が寒くてかじかんでブレーキを力強く握れない。さらに体全体が濡れている上に冷たい風に吹きさらされているため、体全体が痺れてきて、内臓が痛く感じるほどだ。5kmくらい下ったところで、これは下りでも休憩しないと死んでしまいそうだと思ったが、休憩したところで体温が回復するとは思えなかったので、そのまま下り続けた。
 10kmも走ると下りだけでなく登りの区間もでてきたので、ここぞとばかりにペダルを回して体を温める。この下りの距離は登り以上に長かったように感じたが、どうにか下まで下ってくることができた。しかし酷使した前輪のブレーキはブレーキシューがかなりすり減ったことがレバーの遊びだけでも感じられるようになった。
 寒さに震えながら坂を下っていると、道道101号線との交差点が見えてきた。フロントバッグの上にツーリングマップルを出していなかったので私はどっちに行っていいのかわからず、雨の中、ツーリングマップルを取り出して確認する。するとまっすぐ道道61号線を走ればいいことがわかった。岩尾内湖白樺キャンプ場はこのすぐ近くのようだ。
 この交差点から少し下ったところに岩尾内湖への入り口があった。キャンプ場とは書いていなかったが、場所的にはこの付近のはずなので、入ってみることにした。広い駐車場とクラブハウスがあり、このクラブハウスに屋根付きのデッキがあり、ここならテントを濡らさずに設営撤収できると考えたが、こんな場所にテントを張ったら怒られそうだったので素直にキャンプ場に行くことにした。
 岩尾内湖沿いの雰囲気の良い道を自転車で走るが、かなり走ってもキャンプ場に到着しない。いったいキャンプ場はどこにあるのだろうと心配になってきた頃、ようやく家族連れのテントが見えてきた。この雨の中、家族連れのテントは数多く張ってあり、正直びっくりしてしまう。そして15時40分に岩尾内湖白樺キャンプ場に到着。滝上から4時間ちょうどだった。
撮影日時:2012/08/13 16:13:18 シャッター速度:1/10 絞り:F6.3 焦点距離:42mm
岩尾内湖白樺キャンプ場に設営
撮影日時:2012/08/13 17:36:26 シャッター速度:1/8 絞り:F6.3 焦点距離:24mm
サイトからは岩尾内湖がよく見える
 とりあえず管理棟に行って受付をしようとするが、ここはキャンプが無料なだけでなく、受付すらも必要のないキャンプ場だった。しかもフリーサイトに自動車を乗り付けてのオートキャンプも無料で可能だし、管理棟には温水シャワーやコインランドリー、キャンプ場とは思えないほどの品数の売店があり、トイレも清潔で、これで無料なら家族連れが押し寄せるわけだと納得してしまう。
 私が思うに、この岩尾内湖白樺キャンプ場は朱鞠内湖キャンプ場に非常に似ているように感じる。まずダム湖のほとりにある事。サイトが広大でテントが張り放題である事。場所によってはオートキャンプが可能な事。管理棟が充実していて温水シャワーやコインランドリーがある点。幹線道路から外れていて温泉やコンビニが遠い。ライダーやチャリダーが少なく、家族連ればかりである点などがそっくりだ。唯一の違いは岩尾内湖白樺キャンプ場が無料なのに対し、朱鞠内湖キャンプ場は500円と有料である事。しかしそれも一人500円でオートキャンプまでできてしまうのだがらほとんどタダに等しい。
 とりあえず今日は雨なので、東屋や炊事場にテントを張れないかと考えたが、宿泊客が多いのでちょっと無理そうだった。しかし白樺の林の中を見るとみんなテントを張っており、これだけの雨が降っているにもかかわらず地面もぬかるんでいないことから、私も雨の中、林の中にテントを張ることにした。
 雨の中の設営はスピードが重要だ。まずテント本体やフライ、グランドシート、ポールを取り出しておいて、一気にグランドシートを広げ、その上にテント本体、そしてそのテントをポールで立ててフライをかぶせる。この作業が2〜3分でできるようになればプロフェッショナルだ。どうにかテントを立ててフライだけペグダウンし、シュラフやマット、着替えを中に入れておく。
撮影日時:2012/08/13 16:31:04 シャッター速度:1/40 絞り:F8.0 焦点距離:24mm
キャンプ場から見た岩尾内湖
撮影日時:2012/08/13 16:31:38 シャッター速度:1/50 絞り:F8.0 焦点距離:24mm
岩尾内湖は人工のダム湖だ
 雨の日はレインスーツを着ているので、あまりテントの中に出入りしたくない。そこでテントには入らず、自転車に炊事道具を積んで16時20分から炊事場に自炊しに行くことにした。まずは米を水に浸して待つ。待っている間に少し自転車を確認した。雨の中、峠を下ってブレーキシューを磨り減らしたので、この時間を利用してブレーキシューがあとどれくらい残っているかを確認すると、ブレーキシューはほとんど残っていないことが判明した。かなり危険なレベルだった。明日いくつか低い峠は越えるが、明日は晴れとの天気予報だし、それ以降は峠はないはずだから、おそらく大丈夫だろう。ただし帰宅後すぐにブレーキシューを交換する必要がありそうだ。
 自転車のチェックをした後、炊事場で旅の日記を書いていたが、雨が止んだので岩尾内湖を撮影しに行った。そして16時50分から炊飯開始。15分ほどで炊きあがり、10分ほど蒸らしてできあがり。今日の夕食はカレーと味噌汁。ヨーグルトのパックも買ってあるのだが、これはテントに置いてきたので夜食にしよう。今日のご飯はおいしく炊け、食欲もあったことから久しぶりにおいしいカレーを味わうことができた。
撮影日時:2012/08/13 16:47:07 シャッター速度:1/15 絞り:F8.0 焦点距離:38mm
炊事場で自炊する
撮影日時:2012/08/13 17:08:56 シャッター速度:1/15 絞り:F6.3 焦点距離:70mm
今日の夕食はカレーと味噌汁だ
 後片づけは炊事場で自炊したので一瞬で終わった。せっかく干していたレインスーツが乾いていたのだが、食事の間に雨が降り始めたので、結局レインスーツを着てテントまで戻る。17時30分にはテントに戻ったが、テントに入る前に最後の確認として管理棟のトイレに行き、シャワーとコインランドリーの空き具合を確認する。一応空いているようだったが、あまり雨の日に出歩きたくなかったので、シャワーもコインランドリーも中止する。今日洗濯しなかったとしても服は十分あるので問題ないはずだ。ついでに管理棟で旅の日記が書けないものかと偵察するが、自分のテントで書いた方が良さそうな雰囲気だったので、テントに戻る。
 17時50分に意を決してレインスーツを脱ぎ、ようやくテントに入り、裸になって濡れタオルで全身を拭く。そして着替えを済ませて旅の日記を書き始めるが、18時頃から雨が激しくなりだした。いわゆる通常の雨ではなく、滝のように降る雨だ。この大雨が1時間以上も続いたので私は少し心配になってきた。自分がテントを張った時には雨はそれほど降っていなかった。だから地面もそれほど濡れていなかったが、これだけの雨になると水が流れてテントに押し寄せているのではないかと。
 もちろんテントは雨降りを予想して周りよりも少しでも高い場所に張ったつもりだが、テントのすべてのエリアが高台になるようないい場所など存在せず、どこかで妥協しなければならない。その妥協した場所がテントの後方だったのだ。大雨になってから10分ほど経過してから後方を確認すると、両サイドの隅から雨水が浸入しているのが見えた。私は雨水をタオルで吸い取り、対策を立てるためにこの激しい雨の中に再び出ていった。
 まずテントの後方に水の流れる川を作ろうとしたが、掘る物がないのに加えて地面は粘土質で歯が立たず断念。次にテントの四隅がフライに覆われていないため浸水しやすいことから、この部分をカバーしようと色々知恵を引き出す。出てきた答えが、フロントバッグの崩れ防止の厚紙をテントの四隅に被せて雨が直接かからないようにしようと考えた。これは効果的だったが、しかしテントの後方のフライが受けた雨水の逃げ場がないことに代わりはなく、これが時間と共にテントに押し寄せてくる事が判明した。これはテントに水が進入しそうな場所にタオルを敷いておいて、そのタオルに水を吸わせるしかないのだが、一時間もするとタオルが水を吸いきれないほどになってしまうため、この方法は効果的ではあるが、夜中に何度もタオルを絞る必要があるのが問題だ。そうでもしないとシュラフまで濡れてしまう。マットは初めての北海道自転車ツーリングの際、羅臼で台風に遭遇した時、テントの中は水浸しになったけど、マットの上だけは無事だったという心強い経験があったので、マットは今回も大丈夫だろう。
 19時30分には雨は大雨ではなく通常の雨に戻ったが、それでも雨は止むことなく降り続いた。その間もテントの浸水の対応に追われながらも旅の日記を書き続け、20時には書き終えることができた。昨日今日と朝方、二日酔いで気分が悪かったので、それを踏まえて今夜はウィスキーをシングル一杯だけにした。あまり酔っぱらうことはできなかったが、こんな雨の日ならそれもいいだろう。
 余裕ができたので明日の天気予報を確認してみると、明日と明後日は旭川も稚内も晴れになっている。この調子だと朝には雨も上がり、日が出ていればテントやマット、シュラフを干して、出発時間が遅くなるようなら、ここから70km離れた朱鞠内湖キャンプ場に、予定通り6時に出発できるなら、ここから120km離れたとままえ夕陽ヶ丘オートキャンプ場まで行くことにしよう。
 しかしそれにしても今日はよく走った。距離は107kmと大したことないが、標高857mの北見峠、標高711mの浮島峠、標高800mの上紋峠と800mクラスの峠を3つも制覇した。もちろんこれらの峠をすべて海抜0mから登ったわけではないが、今日だけでも登った高さは、北見峠が337m、浮島峠が135m、上紋峠が671mと、合わせて1143mも登ったことになる。よくまあこの雨の日にこれだけ登ったものだと我ながら感心する。
 そしてもう一つ、それだけ登ったのだから下った高さも半端ではなかった。ブレーキをかけずに下った高さは無視して、ブレーキを酷使して下った高さだけでも、白滝高原キャンプ場で150m、北見峠で280m、上紋峠で480mのうち3/4をブレーキを使って降りたとして360m。合わせて790mも雨の下りでブレーキを酷使したことになる。雨が降り続いていたのでブレーキシューの再調整はできなかったが、相当すり減ったことだろう。それ以上にリムがすり減っていないか心配だ。
 今夜紹介するグッズはサイドバッグだ。私が使用しているサイドバッグは2003年の最初の北海道自転車ツーリングからオーストリッチのパニアバッグ特大を使用し続けている。最初は同じオーストリッチのP−115という小型のパニアバッグを使っていたが、いかんせん容量が少なく、テント一式とシュラフ、自炊道具を入れたら他は何も入らなかった。前輪側にもキャリアを付けて4サイドにすればいいのだが、それをするとフロントキャリアの交換が必要だったり、重量がとにかく重くなる。そこでとにかく容量の大きいリアのサイドバッグを探して行き着いたのが、このパニアバッグ特大だった。
 当時大きなサイドバッグと言えばこのサイドバッグ特大しかなかった。今でこそチャリダーの多くはオルトリーブのバックローラーを使用しているが、当時はそんな選択肢はなかった。今となってはどちらを選ぶかと言われると難しいところだ。サイドバッグ特大は10年間使い続けて長所や欠点は知り尽くしている。バックローラーも旅先で出会ったチャリダーに散々見せてもらったので、知っているつもりだ。そこでパニアバッグ特大をバックローラーを比較した時の、長所と欠点を挙げてみよう。
 パニアバッグ特大の最大の長所はその容量だ。まずバッグの大きさが半端ではない。カタログスペックではあまり変わらないように見えるが、パニアバッグ特大はその構造上、巾着袋の口を閉めて蓋をベルトで締めるだけなので、ベルトを緩めてやれば上にスペック以上にかなり積み上げる事ができる。また左右両側にポケットが1つずつと、後部に1.5リットルのペットボトルの搭載場所が1つずつある。これが意外と便利で、水の搭載量が大幅に増えるだけでなく、私の場合ここに三脚やレインスーツを搭載している。さらに私は使った事がないが、パニアの上の部分にもマットやテントを縛るベルトが標準で用意されており、使い勝手がよくなっている。バックローラーと比較して容量は1.5倍くらい多いように思える。
 防水ではないが雨の日に備えてバッグの中に大きなゴミ袋を広がして、その中に荷物を入れれば中の荷物が濡れる事もない。またバックローラーのような完全防水のバッグだと濡れたテントや乾いていない洗濯物を入れると、乾かないどころかその他の荷物まで湿ってしまうが、パニアバッグ特大だと濡れたものはゴミ袋に入れずに外側に置いて蓋をしてしまえば、乾くまでは行かないが、濡れたテントのしずくで他の荷物が濡れる事はない。濡れたテントの水分も雨が降っていなければバッグの底を通り抜けていつの間にか乾いている事だろう。またバックローラーだと防水ゆえに歩道の段差等でバッグの底を擦ると破れるまでには至らなくても防水の能力は落ちてくる。しかしパニアバッグ特大だと元々防水ではないので防水の能力は下がらないし、帆布の強度は異常なまでに高く、10年間酷使し、そうとう底を擦ってきたが、破れる気配はまったくない。
 パニアバッグ特大のいい点ばかりを書いてきたが欠点もある。一番大きな欠点は付け外しが面倒な事だろう。バックローラーはワンタッチで外す事ができるので、サイドバッグをテントに持ち込んでいる人も多い。しかしパニアバッグ特大は取るのに1分、付けるのに5〜10分はかかるので、安易に外そうという気が起きない。この付け外しの容易さだけはバックローラーの圧勝だろう。
 またパニアバッグ特大は防水ではないので、雨が降るとバッグ自体が水を吸って重くなる問題がある。中の荷物をゴミ袋に入れておけば濡れてしまう事はないが、バッグが重くなる事は避けられない。これはバックローラーでは起きない現象だ。自分の場合、毎年北海道自転車ツーリングの前にバッグ全体に防水スプレーを吹きかけて水を吸わないようにしているが、それでも効果は限定的だ。
 さらにパニアバッグ特大は縦に長いので、バッグの底がリアディレイラーよりも低い位置に来るので、リアディレイラーガードが必須となる。これは重心を低くできると言う利点でもあるが、リアディレイラーガードを必要としないバックローラーの方が使い勝手がいいだろう。他にパニアバッグ特大はペダリング時に踵が当たるという人も聞くが、パニアバッグ特大はバッグの下部をベルクロで前後好きな位置に固定できるようになっているので、踵が当たらない位置に固定すればいい。
 パニアバッグ特大には以上のような長所と欠点がある。個人的には容量を重視するならパニアバック特大、付け外しの容易さを重視するならバックローラーを選べばよいだろう。ただし最近では北海道を走るチャリダーでパニアバック特大を見かける事はほとんどなく、半分以上のチャリダーはオルトリーブのバックローラーを使っているのも事実だ。
 雨は17時頃から降り続いており、21時になっても止まないどころか再び激しさを増してくる。台風でもないのにこれだけ雨が降り続くのも珍しいだろう。タオルの水を絞る仕事が残っているが、1時間でタオルが水浸しになるのは大雨の時だけで、通常の雨ならそれ以上にタオルが持つということがわかってきた。旅の日記も書き終わったし、ここは携帯電話のワンセグの電波も入らないのでやることもなく、眠くなってきたので21時には就寝する事にした。とりあえずシュラフを濡らさないように、浸水している後方を頭にして寝ることにしよう。
 21時に寝たはずだったがどうしても雨と浸水が気になって、ウトウトしてもすぐに目覚めてしまう。22時頃には一度雨は止んだので、もうこのまま降らずに朝には晴れになってくれるのだと思っていたら、23時頃から再び激しく降り出した。しかも0時頃からは、雨に加えて風が吹き始めたのだ。もっともキャンプ場は林の中にあったのでテントへの風の影響は少なかったが、風が葉を揺らす音がすさまじく、まるで嵐のようだった。

走行データ
走行距離   107.7km
走行時間   7時間11分
ペダリング数   21500回
平均時速   15.0km/h
最大速度   41.2km/h
平均ペダリング数   50rpm
総走行距離   356.7km
天候   雨
最高気温/最低気温   22℃/19℃

食事
朝食   おにぎり
昼食   トマト
夕食   サンマの蒲焼き(自炊)

出費
昼(コンビニ)   おにぎり×2、パン、牛乳、ヨーグルト   488円
合計   488円

キャンプ場
名称   岩尾内湖白樺キャンプ場
場所   岩尾内湖の東岸
  北緯44度5分44秒、東経142度43分40秒
費用   無料
設備   トイレ、炊事場、コインランドリー、温水シャワー
風呂   温水シャワーあり
ゴミ   ゴミ箱なし
行きやすさ   岩尾内湖に行けば標識あり
乗り入れ   可
特徴   岩尾内湖の東岸の湖畔にあるキャンプ場
  白樺の林の中にフリーサイトが広がり、
  車の進入も可能なことからオートキャンプもできる
  管理棟にはコインランドリーや温水シャワー、売店もあり無料とは思えないほど充実
  場所的にチャリダーやライダーが訪れる場所ではなく、家族連れが中心
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